Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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26:王様の気まぐれ

 

シャンデリアで明るく照らされた王室。

 

王室の床は絨毯で赤く塗られている。

 

たくさんの兵士達ががっちりと見張っている。

 

その部屋の玉座で王様は態度悪く座っていた。

 

 

「あ~暇だ。」

 

側近の一人の若い執事が呆れて言う。

 

「王様、客人がいないとはいえ、王としての態度は守っていただきたく思います。」

 

「うるさ~い。暇なんじゃぁ~。」

 

同じく側近の一人、メイドも同調する。

 

「王様、しっかりしてください。只今紅茶をお入れいたしますので。」

 

「あ~いーいー。今そんな気分じゃないから。」

 

執事とメイドは顔を合わせ、小さくため息をついた。

 

 

 

 

王様は思いつく。

 

「そうじゃぁ!ネクサスで遊ぼう!」

 

執事とメイドは慌てて反対する。

 

「駄目です!住民達にも迷惑がかかりますし、女王様がなんと言うか…」

 

「そうだ、レゴブロックで遊びましょう!」

 

「わしゃ子供か!なあに、私はこの国の王である!

さっさと持って来い!」

 

「…分かりました。住民の皆さんには私共から謝っておきます。」

 

「よろしい!さあ、早く早く!」

 

子供のような王様がせかす。

 

 

 

「あ!…プレイヤーがいないではないか!」

 

執事とメイドが笑う。

 

「お…そうでした、なら違うゲームに…」

 

「王様、」

 

一人の兵士が王の前にひざまずく。

 

「旅人と名乗る者が、あいさつをしに参りました。」

 

王様は一回手をパン、と打って。

 

「丁度良い!その者を連れて来い!」

 

執事とメイドは額を押さえる。

 

 

 

 

 

 

 

「王様の面前で、悪い態度はとらぬよう、お願いします。」

 

「はい。」

 

ジャックは答える。

 

ルーフスとチェリーは緊張から目を著しく開いたままコクンとうなずいた。

 

「ワン!」

 

ステーラも一声吠える。

 

 

 

 

ギギギギギ…

 

 

 

 

ジャックが普通に歩く中、ルーフスとチェリーはカチコチと動く。

 

ステーラも後をつく。

 

 

 

王様の前でとまり、ひざまずいた。

 

ジャックは肘でルーフスをつつく。

 

「…ほら、あんちゃん、あいさつ。」

 

「はは、初めまして…

ジャ、ジャック…じゃない、チェリー、じゃない、

ルーフスと申します。」

 

「ジャックと申します。」

 

「お、おな、同じくジャックと申します。」

 

「チェリーさん!間違ってる、間違ってる!」

 

「あ、すすすみません、チェリーと申します。」

 

 

王様はさっきとは違う、王の顔で旅人と接する。

 

 

「ほっほっほ、王の目の前とはいえ、そんなに緊張するでない。

ようこそ、ディラベル王城に。ここまでの長旅、ご苦労であったな。」

 

「ありがとうございます。」

 

ルーフスはやっと落ち着いて話す。

 

 

「して、旅の者達よ、そなた達は幾日もわたりモンスターと

戦っておるのじゃろう?」

 

「はい。」

 

 

王様は声を大にして懇願する。

 

「その力、とくと見せて欲しい!」

 

「?…は、はい。」

 

いきなりの懇願にルーフス達は戸惑う。

 

 

 

 

 

 

「で。」

 

 

「門前まで戻されたわけだけど…」

 

「ははは…またもとの道を行かなきゃいけないね…」

 

「申し訳ございません、王様のわがままでこのようなことになってしまって…」

 

一人の執事が謝罪する。

 

「いいんですよ。僕達も少しワクワクしているので。」

 

 

見るとメガネをかけたピッグマンや、蜘蛛、ゾンビが襲ってくる。

 

 

 

 

 

「じゃ、お前ら、準備はいいな?」

 

「はい!」「うん!」

 

「ワオン!!」

 

 

 

 

 

ルーフスとチェリーがゾンビを斬り進める。

 

ステーラが蜘蛛の足を噛む。

 

ジャックにゾンビと蜘蛛、ピッグマンが一斉に襲い掛かる。

 

ジャックは手に持ったハンマーの重みを感じていた。

 

「メット…君の力を…貸してくれ!」

 

ジャックが力強くハンマーを振るう。

 

 

 

 

 

ドォォオン!!

 

 

 

 

 

モンスター達が吹っ飛んで行く。

 

 

 

 

「…強い!」

 

 

 

 

ジャックは手に汗を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後も次々と襲い来るモンスターを倒して行った。

 

スケルトンや、クリーパー、の他にも、

 

母蜘蛛や、危険な油まみれのゾンビに、少し大きいゾンビ、

 

黒い謎の人型モンスター、石のようなモンスター…

 

 

ルーフス達はいい汗を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「只今戻りました。」

 

「ご苦労、双眼鏡で見ていたが、さすがの強さであったぞ。」

 

 

「王様!」

 

 

一人の兵士がボロボロになって駆けつけてきた。

 

ルーフス達は慌てて場所を空ける。

 

「黒い反逆者たちが…!」

 

「なんじゃと…!?」

 

 

 

バリィン!!

 

 

玉座の横の窓から黒い人が突き破ってきた。

 

 

兵士が行動するも空しく、王様に剣をかざす。

 

「うおっ!」

 

「これで天下は我が物だ…!」

 

「王様!」

 

執事は駆けつけようとする。

 

「待った!」

 

 

「こいつはこのまま殺してやっても良いが…

平和的な解決が俺の流儀だ。

おとなしく王位を渡してくれるのなら、王様は牢屋だけに済ましておこう。」

 

「くっ…貴様が王になって何ができる!」

 

「俺が王になって?…まずは古い街を取っ払って、軍事施設でも作ろうかな…

 

はっはっはっは!!」

 

 

ルーフス達はこそこそ話し合う。

 

「このままじゃ、この国、滅んじゃうよ!」

 

「あの美しい町並みが消えるなんて…許せません!」

 

「俺もだ。

…なんとか遠距離攻撃で、あの男の隙が作れねぇか…?」

 

「だめだよ、矢はさっきの戦いで使い果たしちゃったんだ…」

 

「くそ…どうすれば……!」

 

 

 

 

 

ルーフスのポケットにはコグウィルさんの釘撃ち器。

 

 

「…これなら!」

 

 

 

ルーフスは男を狙う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行け!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビュッ!…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キン!!

 

男の額に見事命中。

 

 

「いてっ!」

 

 

「今だ!」

 

 

 

執事は声に反応し男を取り押さえた。

 

 

 

 

カランカラン…

 

男の持っていた剣が床に落ちる。

 

 

 

 

「やった!」

 

 

「くそ~…」

 

 

 

 

 

 

 

「ルーフスといったな…よくぞ私を反逆者から守ってくれた。

…そして、私の気まぐれに付き合わせてすまなかったな。」

 

「いえ、僕も楽しかったから…」

 

「面白かったですよ!」「そうです!」

 

「ワオーン!」

 

 

「ほっほっほ…そうかそうか…

…ラズリー、今夜は宴会を行う。

これは旅人の歓迎と、王国死守のお礼だ。」

 

「はい!かしこまりました!」

 

メイドは笑顔で応えた。

 

 

 

 

 

王様は豪快に笑う。

 

「ほほほほ…今日は愉快な1日だ!」

 

「な・に・が・ゆ・か・い・で・す・っ・て…?」

 

 

王様の顔色が一瞬で青ざめ、汗が噴出す。

 

 

 

「「じょ、女王様…!」」

 

「あなた!ネクサスブロックは住民の皆に迷惑になるから駄目と言ったでしょう!?

しかも旅人の方にも迷惑をかけて!あなたには王の自覚が無いんですの!?」

 

「…だって…暇だったんだもん…」

 

「暇ならもっと小さなことで遊びなさい!」

 

「…分かりました…もうしません…許してください…」

 

「全く…」

 

ルーフス達は怖がる顔で女王様を見ていた。

 

 

女王様は素直な笑顔で向いて、

 

「夫を守っていただき、本当にありがとうございました。

今夜は目いっぱい、楽しんでいってくださいね。」

 

「「「はい!」」」

 

「ワオーン!!」

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

王室での愉快な晩餐が行われている。

 

王様はルーフスに話す。

 

「ルーフス、私にお前さんの旅行記を話してくれないか。」

 

「分かりました。まずは…」

 

今ではすっかり、王様と対等に話しかけている。

 

女王様はステーキを頬張るステーラをなでていた。

 

「まあ、かわいい狼ですこと…」

 

「ステーラって言うんです。お肉が大好きで、とっても強いんですよ。」

 

「そうなの。たんと、食べなさいね。」

 

「ワオン!」

 

ジャックが説明する。

 

 

「こちら紅茶、白身魚のムニエル、グリーンオムレツです。」

 

「この紅茶ってどうやって作るのですか?」

 

「そ、それは……え~っと…」

 

「茶葉を圧搾機で抽出して作るのですよ。」

 

「あ、ラズリー…」

 

「全く、シャルドったら料理に関しては何も知らないんだから…」

 

「べ、別に良いだろ!…おっと、赤ワインが切れてしまいましたね。

今、お持ちします。」

 

「あ、ありがとうございます。

あの…じゃあ、この白身魚のムニエルは…」

 

「焼き魚と小麦粉、レモン、マヨネーズをクラフトしています!」

 

「これもお願い!」

 

「これは…」

 

 

チェリーは相変わらず料理に夢中だ。

 

 

 

 

 

 

夜はどんどん更け、話も盛り上がる。

 

「グレートスライヴシティという街はですね。」

 

「なんと、雷の力で動いているというのか!…私の国も参考にしなければな。」

 

「この国は今のままでむしろ良いと思いますよ。

私はこの街の雰囲気が大好きです。」

 

「そんなことを言ってくれるとは、私も国政により力が入るな。ほっほっほ…」

 

 

 

「お手!おかわり!」

 

「こんなことまで出来るの!?」

 

「はい、頭も賢いのです。」

 

「私も狼が欲しくなってきたわ~!」

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ、あなたって、あの執事さんに恋してるでしょ?」

 

「な、そ、そ、そんなこと無いわよ!あんな鈍感!」

 

「ふふ、だってさっきからあなた、あの執事さんの事ばかり話してるわよ?」

 

「!!!…」

 

ラズリーの顔が赤く染まる。

 

 

「…ねえ、チェリー。」

 

「何?」

 

 

「恋の相談、聞いてくれない?」

 

「うん、もちろん!」

 

まだまだ楽しい夜は終わらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

ルーフス達は王城の玄関にいた。

 

 

「楽しかったぞ、旅の者達よ。」

 

「またいつでも、寄ってください。」

 

「はい!おいしい料理、ありがとうございました!」

 

 

 

 

王城が離れていく。

 

「「「さようなら~!!」」」

 

「オーン!」

 

 

 

王様と兵士達、執事とメイドが手を振り返す。

 

 

 

 

外の太陽がルーフス達を照らす。

 

 

 

 

ルーフス達の旅が、いつものようにまた始まった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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