Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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22:世界を結ぶ道

 

セコイアの森を歩く3人と1匹。

 

 

小鳥が木から今、飛び立った。

 

狼は鳥の飛び立った木に向かって吠え続けている。

 

「…広いですね、この森。」

 

「この景色も退屈してきたな…」

 

ルーフスは肩を落とす。

 

ステーラが後ろからついてきた。

 

「次のバイオームはまだ見えないね…」

 

3人と1匹は休みついでに立ち止まる。

 

 

トン…

 

トン…

 

「…………」

 

狼は無言でどこかを見ている。

 

「こういう時に馬があると便利だよなー…」

 

「そうですね。馬を見つければ一日でもっと進めるはずですし!」

 

「馬を早くみつけたいなー…」

 

トン…

 

トン…

 

何かを置き続ける音がする。

 

「…ステーラ、何を見ているんだ?」

 

「…?…」

 

「……!?」

 

「……」

 

3人も見続け始めた。

 

 

 

目の前で線路を引き続けている女の子だ。

 

めがねに垂れ目、車掌帽に登山服。

 

髪はぼさぼさのロング。

 

無理やり詰め込まれたようなバッグをしょっている。

 

 

こちらには気づいていないようだ。

 

「うーん…方角はこれであっている…わね。」

 

「あ、あの~」

 

「きゃ!」

 

女の子はびっくりして倒れる。

 

ルーフスは初めに気になった質問を投げかける。

 

「えっと…何をしていたのですか?」

 

「あ…んと…失礼しました…えと…」

 

女の子は立ち直し、深呼吸してから答える。

 

「私は世界中を結ぶ列車を通すために、線路を引いていたのです。」

 

「世界を結ぶぅ!?」

 

「「列車!?」」

 

「ワン!」

 

 

「いきなり驚いてごめんなさい…すごく壮大な計画をお持ちなんですね…」

 

「いえいえ、お褒めいただきありがとうございます!」

 

女の子は笑う。

 

 

 

 

一同は自己紹介を始める。

 

「俺はルーフス。いろんな世界を見るために旅してんだ。」

 

「いろんなことを学ぶためお供している、ジャックです!」

 

「つ、強さを求めている、チェリーと申します…何か恥ずかしいですね…」

 

「ワン!ワン!」

 

 

「皆さんもとても大きな夢をお持ちで!

 

…私はリナ。自称、世界一の鉄道マニアと自負しています!」

 

リナは自信ありげに話す。

 

 

 

「今の所、どこを線路で繋いでいるんだ?」

 

「一年前からはじめたのですが、結構繋がりましたよ~!!」

 

リナは何枚かの地図を見せる。

 

カラフルな印が地図上に描かれている。

 

「それぞれの駅に目印の旗を立てて、記録しています。

 

まず私の故郷から、アルコバリノ・ブリッジを通って、サクラノ国、

ショウグン雪原、エンヘル村、その隣のジャングル、森と行って、海を越えて

グレート・スライヴシティ、メディウス・ライブラリーの森、クレイ・ソルジャーズの村、

そして現在に至るわけです。」

 

「メディウス・ライブラリー…!…バンダさんにもあったのかぁ!?」

 

「図書館の館長さんですね。会いましたよ。」

 

「私の村に…グレート・スライヴシティまで!?」

 

「俺たちの行ったところ、ほとんど行っているじゃないか!」

 

「え…!?ってことは、ヴァイオレット市長やスチルさんにも…!?」

 

「あいつ…市長になったのか!?すげぇな!!」

 

「スチルさんは元気だったのか?」

 

「えぇ!元気でしたよ!」

 

 

「お前とは話が合いそうだ!」

 

「私もです!…もう日が暮れてしまいますね。

 

私の小屋でお話しませんか?」

 

「いいなぁ!」

 

「よろしくお願いします!」

 

チェリーは笑顔で言った。

 

「ワン!ワン!」

 

ステーラは嬉しそうに尻尾を振った。

 

 

 

 

 

 

 

リナとチェリーはかまどの前で料理をしている。

 

リナは涙を垂らしながら焼き魚を持っていた。

 

「うう…こげちゃったよぅ…」

 

「…あなたって、一年間一人だったんでしょう?

そんなに下手で今まで何を食べてきたのよ…」

 

「パンとかクッキーだもん!クラフトすれば食べられるもん!

うえぇええん!!」

 

リナは号泣する。

 

「分かった分かった。私が今日はみっちりあなたに料理を伝授してあげる!」

 

「本当に!ありがとう!チェリー!!」

 

 

 

「はは、チェリーは誰とでも、すぐ仲良くなれるよな!」

 

「うらやましいよね…」

 

狼が机の上のリナの失敗作を、おいしそうに頬張った。

 

 

 

 

 

10回目のかまどを開けた。

 

「やっと成功だぁ…!」

 

「うん!完璧!!」

 

チェリーが指でOKサインを出す。

 

リナが全員分の焼き魚を机に運ぶ。

 

 

 

 

 

2人と一匹は既にへばっていた…

 

 

「もう月が真上になっちゃうぜ…」

 

「やっと食べられるね…」

 

「クゥン…」

 

「ご、ごめんなさい皆さん…」

 

「あはは…」

 

チェリーは笑いながら汗を流した。

 

 

 

 

「「「「いただきます!」」」」

 

「ワオン!」

 

 

 

それぞれが食べ始める。

 

ルーフスがリナに問う。

 

「お前はさ、なんで世界中を結ぶ列車を作り始めたんだ?」

 

車掌帽をはずした女の子は噛むのを止めて答える。

 

 

「私には一人の弟がいるの。

弟は生まれた時から、足が動かなくて…

でもそんな悲しいことを考えないで、弟は笑顔で『世界を旅してみたい』って言うの。

歩きでは到底無理でしょう?

…でも列車を使えば…世界中どこへでもいける列車があれば!

世界中の人たち全てがどこへでも、行ける。

もちろん弟も…!

 

素晴らしいことだとは思わない?」

 

「弟さんのためにそこまでがんばるなんて…流石だよリナさん!」

 

「とても素敵!…私がおばあさんになっても、どこへでも行けるのね!」

 

「世界中の人たち全て…か…

できるさ、お前なら。弟と列車を、ここまで愛してるならな!」

 

「ありがとうございます!!」

 

リナは笑顔でお礼を言った。

 

 

その後もルーフス達のおしゃべりは続いた。

 

 

楽しい夜はすぐに過ぎていった…

 

 

 

 

 

 

その後、ルーフス達は出発を延ばしてリナの線路の整備を手伝っていた。

 

リナが指示をし、

 

ルーフスは線路の両脇に石を詰める。

 

ジャックは灯台を立てていく。

 

チェリーは柵を立てていく。

 

ステーラはツールを手渡していた。

 

4人と1匹は汗を流しながら、線路を完成させていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

サクッ…

 

足元に砂の感触が伝わる。

 

 

 

ルーフスが後ろを向くと、そこには砂漠があった。

 

 

 

緑のサボテンがところどころに見える。

 

 

「バイオームが終わった…!!」

 

「皆さん!ありがとうございます。私はここから砂漠を横断していきます。」

 

「ああ、そうか。楽しかったぜ!…水には気をつけろよ。」

 

「こちらこそありがとう!リナさん!」

 

「もうお別れか…」

 

「また会えるわよ!チェリー!」

 

「…うん、ありがとね、リナ!」

 

 

 

 

 

 

 

砂漠の彼方で、リナが手を振っている。

 

 

 

 

…ありがとー!…

 

 

 

 

 

ルーフス達も手を振る。

 

 

 

 

…チェリー!…

 

 

「…!」

 

 

 

 

…また、料理教えてねー…

 

 

 

チェリーは涙が溢れてきた。

 

「…うん!もちろんよー!!」

 

 

 

「めずらしいな、チェリー。別れは何度もしてきたのに…」

 

「…何故か、悲しくなってしまって…」

 

「大丈夫だよ!別れは誰でも悲しいものだよ!チェリーさん。

現に僕も、少し悲しいもん…」

 

「そ、そうよね…」

 

 

 

 

 

…私、あんなことがあったから感傷的になっているのかな…

 

 

 

 

 

 

…だめ、チェリー。別れなんてこれからいくらでもあるのだから!!

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは笑顔で言う。

 

 

「私達も行きましょう!ルーフスさん!ジャック君!ステーラ!」

 

 

「おう!そうだな!」「がってん!」「ワオン!!」

 

 

 

 

 

 

ルーフス達は、一人で『世界を結ぶ道』を作る女の子を後に、

 

小屋へと戻って行った。

 


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