Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

51 / 96
21:Herobrine

 

 

 

 

 

「お前が好きだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!!」

 

 

 

 

 

チェリーの顔が真っ赤に染まる。

 

 

「え、ちょっ、ルーフスさん?えっと…この体勢は…ぇえ!?」

 

チェリーは突然の出来事に戸惑う。

 

 

 

 

 

ルーフスはゆっくり顔を近づける。

 

 

 

 

 

 

本気だ。

 

 

 

 

 

ルーフスさんが本気だ…

 

 

 

 

 

チェリーはかなわず目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

チェリーが目を閉じると、ルーフスは白目になり、口を裂けて大きく笑う。

 

 

 

まるで悪魔のような顔つきだ。

 

 

 

 

 

チェリーを飲み込む気なようだ。

 

 

 

 

キィ…!

 

 

 

 

 

ズシャ!!

 

 

 

ズシャ!!

 

 

 

 

 

二つの剣がルーフスの背中を斬る。

 

 

 

背中から二本、血が垂れる。

 

 

 

「てめぇ!俺のチェリーに何しやがる!!」

 

「ワオン!!」

 

 

 

本当のルーフスは大きく怒鳴る。

 

チェリーは目を開けて本物のルーフスを見た。

 

「ルーフスさん!」

 

 

続いてジャックが家の中に入ってきた。

 

 

「池に行ってもステーラなんていなかったよ…?ルーフスの偽者さん。」

 

「グルルルルル…」

 

ステーラは偽者のルーフスに怒っている。

 

偽のルーフスは大きく飛び上がり、チェリーから離れた。

 

 

「…あなたは偽者だったんですね。」

 

チェリーは少しさびしい表情で言った。

 

 

 

Herobrineは舌打ちをして本性を現す。

 

「黙って喰われていりゃ、いいものを…」

 

 

 

本当のルーフスは問う。

 

 

「お前は何者なんだ?」

 

 

 

 

 

 

偽のルーフスは答える。

 

「俺はHerobrine(ヘロブライン)…形のねぇ妖怪さ。」

 

「形の無い…妖怪?」

 

「この姿を見りゃ分かるように、俺は好きな人間の姿に変身する事が出来る。」

 

 

 

偽ルーフスの姿が歪む。

 

 

そしてジャックの姿に、

 

 

更に歪んでチェリーの姿になった。

 

 

 

「ぼ、僕…違う…チェリーさん…?」

 

 

 

チェリーの姿のHerobrineは更に続ける。

 

「俺はこの能力を使って、大好物の人間を食って生きてきたのさ。」

 

 

 

輪郭が歪んでルーフスの姿になる。

 

 

 

 

「さて、これで食べ物が4倍になったってことだ。」

 

「お前、バカじゃないの?」

 

ルーフスが剣を構える。

 

ジャックも弓を引き絞る。

 

ステーラが唸る。

 

 

ジャックが言葉を跳ね返す。

 

 

「お前が倒される確率も4倍に増えたってことだろう?」

 

「そうか…じゃあ0%ってことだな…!」

 

Herobrineは口を裂けて笑った。

 

 

 

「…ここじゃ、おめぇらの本当の力を引き出せないだろう。

 

外へ出ようぜ。」

 

「はは、親切なんだな。」

 

ルーフスは睨みながら笑う。

 

「お前らには丁度いいハンデだろう?」

 

 

ルーフスとジャック、ステーラ、そしてHerobrineは外へ出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーはその場に座る。

 

 

 

 

…なーんだ…偽者かー。…

 

 

 

 

…本当だったら良かったのに…

 

 

 

 

 

チェリーはハッとして、首を横に振る。

 

 

 

 

…それよりも…

 

 

 

 

 

 

チェリーの瞳が燃えている。

 

 

 

 

 

…女心につけこんで、食べようとするなんて…!

 

 

 

許しません!!!

 

 

 

 

 

チェリーは飾り棚からソードを手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜も明けてゾンビ達が燃え出した。

 

 

 

「さあ、バトルスタートだ!」

 

ルーフスが言った。

 

 

 

Herobrineにルーフスが剣を振るう。

 

Herobrineはやすやすと避ける。

 

ジャックが矢を放つ。

 

またしてもHerobrineはやすやすと避けた。

 

ステーラも何回も噛むが…

 

 

やはり避ける。

 

 

 

「あんちゃん、あいつ、攻撃すら当たらないよ!」

 

「…まだだ、続けていくぞ!」

 

「ワン!!ワン!!」

 

 

 

ルーフス達は次々に攻撃を仕掛けていくが…

 

Herobrineに全て避けられた。

 

剣を振っても全く当たらない。

 

矢も全て空に放たれた。

 

 

 

 

「バカが…俺はお前らに変身できるのだ。

 

お前らの攻撃など全てお見通しだ。」

 

 

「グルルルルル…」

 

ステーラは唸り声を上げる。

 

 

ルーフスは考える。

 

「くそ…どうすりゃ良いんだ…」

 

「何か方法は…」

 

ジャックが辞書を探しまわす。

 

 

 

ズシャ!!

 

 

 

「な…!?」

 

ジャックとルーフスはHerobrineを見た。

 

チェリーがHerobrineを剣で斬っているではないか。

 

「チェリー!」「チェリーさん!?」

 

 

 

「女の子の恋心につけこむなんて…最低です!」

 

「ばかな…俺に攻撃を当てられる奴がいるだと!?」

 

Herobrineは見えない速さで逃げる。

 

 

 

その途中でチェリーに変身する。

 

 

 

チェリーの背後をとる。

 

 

 

 

 

 

 

が。

 

 

 

 

 

 

 

またもや斬られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何!?」

 

チェリーは怒った顔で言う。

 

「私の努力を…なめないでください!」

 

 

 

Herobrineはさっきとは違うチェリーの顔に、

 

恐怖を感じて動けなくなっていた…

 

 

 

「…え…?…ちょっと…まっ」

 

 

 

ズシャ!!…ズシャ!!

 

 

「どわぁあああああ!!」

 

 

 

 

ズシャ!!…ズシャ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Herobrineが倒れる様を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフス達はただ口を開けたまま見守るしかなかった。

 

ルーフス達から無数の汗が流れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…チェリー…怒らせないようにしないとな。…」

 

「…うん………」

 

「クゥン………」

 

「ぎゃぁああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

「では、おやすみなさい。」

 

「「おやすみ。」」

 

「ワン!!」

 

 

チェリーは二階に上って寝室へ行く。

 

 

ふぅ…

 

 

 

チェリーはすぐにベッドに寝転がる。

 

 

 

今日は疲れたな。

 

 

 

…はぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

トントン。

 

 

 

二階の窓を誰かが叩く。

 

 

 

「!?」

 

 

 

チェリーは窓を覗く。

 

 

 

 

見ても窓に映った自分しかいない…

 

 

 

 

 

…と思ったら窓に映った自分が勝手に動いた。

 

 

 

チェリーに変身したHerobrineが、窓の外にいたのだ。

 

 

 

「うわあ!…ってあなたは!まだいたの!?」

 

窓を開けろ、と言ってるらしい。

 

 

 

「…女心を利用するような人を、私の部屋に入れるような事はしません!」

 

チェリーはそっぽを向く。

 

 

それに対してHerobrineは手を合わせて懇願し続けている。

 

 

 

 

チェリーはその真剣さに気になって、剣を持ちながら窓を開ける。

 

 

「すまないな、夜分遅く。」

 

「…30秒ほどで帰っていただけませんか?」

 

「ちょっと、早すぎるだろう!お譲ちゃん!」

 

「自分にお譲ちゃんなんて言われたくありません!」

 

 

Herobrineは咳払いをして話を本題に変える。

 

「俺はあの時、お前を襲っただろう?」

 

「…それがどうしたのですか?」

 

「俺は本当は、家に入ってからすぐお前を食べようと思ったんだ。」

 

チェリーは嫌そうな目でHerobrineを見る。

 

「…はあ…さっきのカウント、15秒ほど縮めてもいいでしょうか?」

 

「ちょっと!本題はここからだっつーの!」

 

 

 

 

 

 

「つまり、あれは俺の食欲が敵わないほどの愛の気持ちってことだよ!」

 

「へ…?」

 

チェリーは真っ赤になる。

 

Herobrineも真っ赤になった。

 

 

 

「…今見てる通り、俺の感情はその変身元の本人とリンクする。

 

…あいつはお前のこと、本当に好きなようだぜ。」

 

 

チェリーは顔が真っ赤になったままだ。

 

 

 

「…それに、お前を助けに来た時、あいつはなんて言ったか思い出してみろ。」

 

 

 

 

(俺のチェリーに何しやがる!!)

 

 

 

 

カァ…!

 

 

 

 

チェリーの顔が最大に真っ赤になる。

 

 

 

 

 

「…妖怪が言うのもなんだけどよ…俺はお前らを応援してるぜ。

 

…約束の時間は過ぎてねぇか?」

 

 

チェリーは言葉が理解できないままうなずく。

 

 

「じゃあな!」

 

 

Herobrineは姿を消した。

 

 

 

 

 

10分ぐらい経って。

 

 

 

 

 

チェリーはやっと冷静になり、笑顔になった。

 

 

 

Herobrineさん…

 

あなたが教えてくれなければ、私は前に踏み出せませんでした。

 

 

 

…ありがとうございます!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

チェリーはかまどの前で、焼き魚を焼いていた。

 

ジャックは武器の整備をしている。

 

焼き魚を焼き終わってから、チェリーはジャックに問う。

 

 

「あれ?ジャックくん、ルーフスさんは?」

 

「ああ、まだ寝てるよ。」

 

「起こしにいってきますね。」

 

 

 

 

チェリーは二階へ上がっていった。

 

 

 

 

ギィ…

 

 

 

 

「ルーフスさん?朝ですよ!」

 

 

 

 

起きない。

 

 

 

 

 

チェリーは左右を確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Chu…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは、ルーフスの頬に一つ、キスをした。

 

 

 

 

 

…やっぱり起きない。

 

 

 

 

 

「…ふふ♪」

 

チェリーは笑顔になる。

 

 

 

 

 

 

 

「ルーフスさん、お先に食べていますね!」

 

 

 

 

 

 

バタン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やべぇ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、今、チェリーにキスされたのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスは寝床で顔を赤くしながら、しばらく横になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼。

 

 

 

 

 

ルーフス達はセコイアの森を探索することにした。

 

 

「よし!お前ら、行くぞ!」

 

「おう!」「ワン!!」

 

 

「はい!…きゃあ!!」

 

 

 

バタン!

 

 

 

チェリーはロングスカートにつまずく。

 

 

 

 

ルーフスは笑顔で手を差し伸べた。

 

「ほら、行くぜ!」

 

 

 

 

 

チェリーは手を取る。

 

「…はい!!」

 

 

 

 

 

 

「あんちゃーん!チェリーさーん!」

 

「ワン!ワン!」

 

ジャックが遠くで手を振っている。

 

ステーラも元気そうに跳ねまわっている。

 

 

 

「おお!今行く!」

 

ルーフスとチェリーはジャックとステーラの元へと駆け出した。

 

 

 

 

 

深緑の葉に白い陽光が降り注ぐセコイアの森の中。

 

 

 

 

楽しそうな、3人と1匹の話し声が響いていた。

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。