Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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20:絶交‏

セコイアの樹のびっしり生えた森の中。

 

ルーフス達は家を建てていた。

 

松の独特の黒色を基調にした

ログハウスだ。

 

ジャックが松明を挿したところで、雨が降る。

 

 

「おお、グッドタイミングだ。それじゃ皆、家で休むか!」

 

「ふぅ~腹減った~…」

 

「クゥン…」

 

「ベイクドポテト、焼きましょうか!」

 

「「賛成!」」

「ワン!」

 

ルーフス達はドアを開けて家に入っていった。

 

ジャックは疲れで眠ってしまったようだ。

 

ステーラはその隣でベイクドポテトを嬉しそうに頬張っている。

 

「…うめぇか?ステーラ。」

 

「ワンワン!!」

 

狼は元気よく答える。

 

「だよな!なんせチェリーが作ったんだからな!」

 

ルーフスは笑う。

 

チェリーは一瞬、心の奥底で何かが揺れ動くのを感じた。

 

その揺れはまだ収まらない。

それどころか強くなっていくように感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、ルーフスさんに…恋してるのかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスさんは私のこと…どう思っているのかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは顔を真っ赤にしながら、ルーフスにきいてみた。

 

 

 

「あ…あの…ルーフス…さんは…私のこと…どう…思ってるんですか?」

 

「え?…」

 

 

 

ルーフスの顔が一瞬で真っ赤になる。

 

 

チェリーは恥ずかしくて、下を向くことしか出来ていないようだ。

 

 

 

 

ルーフスも同様で、チェリーの顔から目を逸らしている。

 

 

 

 

一度ほおを掻いてごまかしながらルーフスは考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で…今…ここで…こんな事をきいたんだ…?

 

えっと…チェリーは…俺にとって…かの…

 

 

心の中でルーフスは自分を蹴飛ばす。

 

 

いやいやいや…まだそんなレベルじゃ…ってか「まだ」ってなんだよ…

 

俺はデートしてんじゃねぇんだぞ!?これはただの旅だぞ?

 

…えっと…どうすれば…

 

 

 

 

 

 

 

 

「…仲間…そう!旅の『仲間』だよ!そう!『仲間』!」

 

 

 

 

チェリーの心の揺れがピタッとやんだ。

 

 

一瞬、ルーフスを見てからの静寂。

 

 

 

「そ、そうですよね。」

 

チェリーはとぼけるように笑う。

 

 

 

 

 

 

…私…なんで満足してないんだろう…

 

仲間でいいじゃん!私を仲間と認めてくれたってことじゃん!

 

…でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

雨音が去っていく。

 

 

「…お…雨やんだな…」

 

 

 

 

ルーフスは立つ。

 

 

「俺、食糧採ってくるよ。」

 

「あ、はい!いってらっしゃい!」

 

「行ってきます。」

 

 

ルーフスは扉を開け出て行った。

 

 

 

 

 

チェリーは後ろに倒れる。

 

 

 

ふぅ…

 

 

私は…ルーフスさんに『彼女』って言ってもらいたかったんだ…

 

 

 

 

 

キィ…

 

 

 

チェリーは起き上がる。

 

 

 

扉には、赤いアウターに茶色のTシャツの男。

 

ルーフスさんだ。

 

 

 

 

「あれ…何か忘れ物ですか?」

 

 

 

 

 

 

目の前のルーフスは口が裂けるように笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いただきます。」

 

ルーフスは倒した豚や牛に感謝し、肉を拾う。

 

ルーフスは小屋へ向かう。

 

 

 

 

はぁ…

 

あそこで本当のこと、言えば良かったのかな…

 

チェリーの事を…好きだって言えば良かったのかな…

 

 

ルーフスはうろうろと考えているうちに、セコイアの樹にぶつかった。

 

 

 

「…あいて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キィ…

 

 

 

「ただいま…!?」

 

 

 

見ればチェリーとジャックが倒れている。

 

 

 

 

眠ったわけではない。

 

 

 

 

二人の服はボロボロになっている。

 

 

 

 

 

ルーフスは手始めにジャックを起こす。

 

 

 

「おい!大丈夫か!ジャック!ジャ…」

 

ドゴッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャックがルーフスの頬を殴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスは床に倒れた。

 

 

 

 

「ツ…何すんだ!」

 

 

 

「あんたこそ何してんだよ!」

 

 

 

ジャックがいつもより強い口調で喋る。

 

 

「今まで旅をしてきて…それで仲間を滅多打ちかよ!」

 

「…ジャック…お前何言ってんだよ…?」

 

 

ルーフスの頭には疑問しかなかった。

 

 

 

俺がジャックとチェリーを滅多打ち…?

 

 

 

「俺は…お前らを滅多打ちなんかしねぇよ!」

 

「したじゃないかよぉ!!」

 

 

 

ジャックとルーフスは睨み合う。

 

 

 

ルーフスはチェリーを見る。

 

 

 

斬られたのか、血が広範囲に広がっている。

 

 

「…チェリーの手当てをしなきゃ」

 

「しなくていいよ。」

 

ルーフスが手を伸ばすのをやめたとき、

 

ジャックがチェリーに近づいて手当てを始める。

 

 

 

「…あんちゃんは…僕達が仲間じゃ不満なんだろ。

 

それなら…勝手にすればいい。チェリーさんとステーラで旅を続けるよ。

 

あんちゃんは違う仲間を見つければいいじゃん。」

 

 

 

ルーフスは自分の心にヒビが入ったかのように感じた。

 

ジャックが…自分について来てくれたジャックがそんな事をいうなんて…

 

 

 

ルーフスは悲しんだ。

 

 

ルーフスはジャックにさっき捕った豚肉や牛肉をジャックに渡そうとする。

 

 

「いいよ。あんたが食えばいい。」

 

「…くそ!」

 

 

ルーフスは豚肉と牛肉を床に投げ、扉を開けて出て行った。

 

 

 

 

バタン…

 

 

 

 

 

扉の閉まる音がジャックに響く。

 

 

 

「…僕だって…信じたくないさ。…」

 

ジャックも悲しい顔を見せる。

 

 

 

 

 

 

 

扉が今、そっと開く。

 

 

 

 

そしてそっと閉まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり。

 

ルーフスはセコイアの森の北にある砂漠の地下にいた。

 

あるだけの松明。

 

あるだけの食糧を食べて。

 

 

ジャックに殴られた頬をさする。

 

 

砂の隙間から満月が見える。

 

 

 

月は独りをあざ笑うかのごとく洞窟内のルーフスを照らす。

 

 

 

ルーフスは過去の事しか考えられなかった。

 

 

 

ブレイズとの共闘。終わりの世界での共闘。

 

ステーラとの出会い。チェリーとの出会い。

 

都会での奔走。都会での戦い。

 

廃坑での戦い。

 

 

そんな事が心をめぐりまわっている。

 

 

それは目からもあふれ出すほどの冒険であった。

 

 

 

 

ルーフスはそれらを拭う。

 

 

 

 

拭っても拭ってもあふれ出す。

 

 

 

 

 

涙がルーフスの目から垂れる。

 

 

 

 

 

「俺たちゃ…ここで終わんのかよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

 

 

「…!」

 

 

ルーフスは耳をすます。

 

 

 

 

…ォーン…

 

 

 

 

…ワォーン…

 

 

 

 

…ォーン!…

 

 

 

 

「ステーラ!!」

 

 

 

ルーフスは大声を上げる。

 

 

ステーラも気づいたようだ。

 

 

 

 

ルーフスはシャベルで狭くふさいでいた砂を掘り返した。

 

 

 

ステーラが洞窟に入ってくる。

 

 

 

ルーフスはステーラを抱く。

 

 

 

「ステーラ…おめぇ…帰ってきてくれたのか!」

 

「ワン!」

 

 

ステーラは嬉しそうに尻尾を振る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスはステーラから情報を抜き出そうとしていた。

 

ステーラの目の前の土に○と×が刻まれている。

 

「よし、まずはテストだ。お前はメスだ。」

 

「ワン!」

 

ステーラは×に手を置く。

 

 

「チェリーとお前はクッキーが大好きだ。」

 

○に手を置く。

 

 

「よし、本題だ。…ステーラ、俺が家に入ってきたんだな?」

 

○に手を置いた。

 

 

「そして俺がジャックとチェリーを襲った。」

 

○に手を置く。

 

 

「その姿は俺だったか?」

 

○に手を置く。

 

 

 

「俺じゃないってこと、お前は分からなかったか?」

 

×に手を置く。

 

 

 

「じゃああれは俺じゃない、違う奴ってことか?」

 

「ワン!」

 

 

ステーラは静かに○に手を置いた。

 

 

 

「よし…お前、よく出来たぞ…ごほうびだ。」

 

ステーラは持っていた豚の生肉をあげる。

 

 

 

「…ありがとな、ステーラ。」

 

 

 

 

ルーフスは口を引き締め、月を見た。

 

 

「…絶対に見つけてやるぜ。俺の偽者め…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック君…あれはルーフスさんじゃないわ、

 

あなただって、分かるでしょう。ルーフスさんはあんな事なんて絶対しない。」

 

 

 

「分かってるよ。チェリーさん。…でも、現にあんちゃんが僕達を襲ったんだよ?

 

どうやって疑えっていうのさ…」

 

 

「……」

 

 

「ステーラはたぶん、あんちゃんの所に行ったんだろう。

 

しょうがない、僕達二人で旅するしかないよ。」

 

 

「……やっぱり駄目。」

 

 

チェリーが言う。

 

 

「私達は!ルーフスさんとステーラ、ジャック君、そして私。

 

…この4人で『私達』だったでしょう!?

 

それなのに…その中の二人だけなんて…

 

ルーフスさんとステーラが恋しくて耐えられないの!!」

 

 

 

「…チェリーさん…そうだよね。

 

あの二人がいなきゃ、僕達は成立しないんだ…」

 

 

 

ジャックは反省する。

 

 

 

自分からルーフスを離してしまった事。

 

 

 

 

 

 

キィ…

 

 

 

「すまなかった!」

 

 

ルーフスが扉を開けて土下座する。

 

 

 

「俺が…お前らを裏切るような事しちまった!

 

俺を仲間に戻してくれないか!」

 

「ルーフスさん…!」

 

 

チェリーは喜ぶ。

 

 

ジャックがルーフスの肩に手を置く。

 

「いいんだ、あんちゃん。僕が言い過ぎた。

 

もう一度、仲間になってよ!」

 

 

「あ、ありがとう!」

 

ルーフスは泣く。

 

 

 

ジャックは笑う。

 

 

 

チェリーも微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「あんちゃん、ステーラは?」

 

「ああ、あいつなら近くの池で水飲んでるぜ。」

 

「分かった。…ちょっと僕、食糧取ってくるね。」

 

ジャックは家を出る。

 

 

 

「ふぅ…良かった、ルーフスさん。戻ってきて…」

 

 

 

 

 

 

 

バタン!!

 

 

 

 

「くれ…て…!?」

 

 

 

 

チェリーはルーフスに押し倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が好きだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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