Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

47 / 96
17:小さな戦士達

 

 

何も知らぬ村での一夜を過ごしたルーフス達。

 

 

小屋の扉を開け、村人達に挨拶をすることにした。

 

 

まず出向いたのは石の屋根で作られた鍛冶屋だ。

 

 

 

「こんにちはー…」

 

返事が無い。

 

 

 

「あれ、誰もいないのかなぁ?」

 

 

 

 

 

中を覗くと…

 

 

 

 

 

 

うん、誰もいない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いるじゃん…」

 

中には筋肉の整った男性がいた。

 

ワイルドな白髭の顔が似合っている。

 

 

男性はしかめっ面をしながら返事をした。

 

「お前達、どこのよそもんだ。」

 

「あ、えっとー…昨夜あそこの小屋を勝手ながら使わせていただきました…

 

それで、挨拶をしようと…」

 

 

 

男性は耳をほじりながら答える。

 

「なるほどねぇ…昨夜のあのやかましさはあんたらだったのかい。」

 

 

「「「ギクッ」」」

 

ごもっとも。

 

 

 

 

「…まあいい…とりあえず、ここに来たからにゃあ、剣を渡してもらおう。」

 

 

「えっ、剣を?」

 

 

「さあ、さっさとよこせ。」

 

 

少年はしぶしぶ3本の剣を渡した。

 

ルーフス、ジャック、チェリーの3本だ。

 

 

 

 

男性はルーフスの剣を手に取る。

 

 

「…これはひどい。なんて乱暴な斬り方をしとるのだ。

 

剣がぼろぼろに傷んでいる…」

 

 

「グサッ」

 

ルーフスの心臓に何かの突き刺さる音がした。

 

「…だが、それと同時になんと破壊力のある斬り方だ。

 

そこだけは褒められる。」

 

ルーフスはほっとすると同時に、『だけ』に反応し地面にへたり込む。

 

 

 

続いてジャックの剣。

 

「…お前さんは剣をまだほとんど使っていないのだな。

 

まだ新品のままだ。ほれ、これはもっておきなさい。」

 

ジャックは投げられた剣をあわてて取る。

 

何か仲間はずれにされたようで納得がいかない表情だ。

 

 

 

 

最後にチェリーの剣。

 

 

 

 

持つと同時に男性の目の色が変わる。

 

 

 

 

「こ、これはお前さんのかい?」

 

「は、はい…あの…そんなに扱いがひどいのですか?」

 

「とんでもない!静、動の剣さばきはどちらも完璧、

 

とてもきれいな傷み方をしている!!

 

その腕、さらに上達を目指したほうがいいぞ。」

 

「は、はい…」

 

チェリーはいきなりの褒め言葉に動揺する。

 

 

ルーフスは問う。

 

「でも、すごいですね…剣だけで普段の剣の扱い方まで分かるなんて…」

 

男性は真顔でルーフスの剣を研ぎながら答える。

 

「ものにはその人の愛情がどこかに垣間見えるものだ。

 

私はその細かい点を探しているだけだよ。」

 

 

 

 

 

「言い忘れたな。私の名前はスチル。この村の鍛冶屋を営む者だ。」

 

「私達はルーフス、ジャック、チェリー、そしてステーラです。」

 

「「よろしくお願いします。」」

 

「ワン!!」

 

 

カン、カン、カン!

 

 

鉄の槌を金床の上の剣に力強く振り下ろす。

 

 

ルーフスの剣は元の状態に戻されていく。

 

 

 

 

 

 

ひょこっ

 

 

家の陰から何かが覗いていた。

 

チェリーは気になり、家の後ろに回りこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーの目が見開いた…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャーーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェリーさんの声だ!!」

 

「なんだ、モンスターが残ってたか!?」

 

ルーフスは声の方角へ駆けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェリー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルーフスさん!見てくださいー!!」

 

みると腕の中に青色の人形達が3つもあった。

 

みんな腕から抜け出そうとしている。

 

 

「かわいい~!!」

 

チェリーは3つの人形に無理やり頬ずりした。

 

「なんだ…!?人形が動いてる!」

 

「電池でも入ってるのかな?」

 

「魔法、だよ。」

 

ルーフスの剣を持ってきたスチルは答える。

 

 

「「魔法!?」」

 

ルーフスとジャックは驚く。

 

 

「この村にはずっと伝えられている童謡があってな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むかーしむかし。

 

 

この村には人形好きの女の子がいました。

 

 

朝から晩まで、積み木もおにごっこもせずに、

 

 

粘土で作った人形で遊んでいました。

 

 

 

 

 

ある時、一人のお婆さんがこの村を通りかかりました。

 

 

 

伝説で有名な魔女です。

 

 

 

黒く大きな帽子に黒の洋服。

 

 

 

そのお婆さんはまさにその伝説の魔女そっくりだったのです。

 

 

 

そのお婆さんを魔女だと思い込んだ女の子はこうお婆さんに頼みます。

 

 

 

「このお人形さんを生き返らせて!!」

 

 

 

お婆さんは承諾し、粘土の人形に魔法をかけたのです。

 

 

 

するとたちまち粘土の人形は動き出し、女の子は大喜びしました。

 

 

 

しかし、近所の男の子達はその人形を赤と青に塗りたくってしまったのです。

 

 

 

人形たちは敵と勘違いして仲間割れ。

 

 

 

女の子はそれを見て泣いてしまいました。

 

 

 

男の子はあわてて色を戻そうとしますが、何をやっても全く戻りません。

 

 

 

大人たちもこの事を知り、ついに赤色の人形だけを隣の村に移すことにしました。

 

 

 

こうして、この村には青色の動く人形が住みついているのだとさ。

 

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 

 

 

「…というわけだ。」

 

「なるほど~わかりやすいな~」

 

ルーフスが童謡に納得する。

 

 

「魔女が本当にいたなんてなぁ…」

 

「だからこの子達は動くのですね!」

 

チェリーは自分に向かってファイティングポーズをとる人形の頭をぐるぐる撫で回す。

 

 

 

「その童謡の名残はまだ残っているのだ。」

 

「どういうことですか…?」

 

「ほら、始まるぞ。」

 

スチルは草原の水平線を指差す。

 

 

 

・・・

 

 

 

・・・・・トト・・・

 

 

 

・・・トトトトトト・・・・

 

 

 

・・トトトトトトトトトト・・!

 

 

 

トトトトトトトトトトトトトトトトト!!

 

 

 

赤色の人形の大群がボウルと棒を持ってこちらに向かってくる。

 

 

 

チェリーの腕の中3人はひょこっと抜け出した。

 

 

 

家の中からは青色の人形達。

 

 

 

ボウルと馬、棒を食器棚から取り出してやがて…

 

 

 

 

整列した。

 

 

 

 

一人の青色が右手を挙げた。

 

 

 

 

 

 

ト…                      …ト

トト…                    …トト

トトトト…                …トトトト

トトトトトトト…          …トトトトトトト    

トトトトトトトトトト…    …トトトトトトトトトト

トトトトトト…          …トトトトトトトト       

トトトト…                …トトトト

トト…                    …トト

ト…                      …ト

 

 

 

 

青色と赤色の軍勢は一斉に接近し、

 

 

互いに棒で叩きあい…

 

 

 

その棒を盾で防ぎあう。

 

 

 

青が一人倒れる。

 

 

 

すると赤も一人倒れた。

 

 

 

チェリー、ジャック、ルーフス、ステーラは攻防戦を見守る。

 

 

 

スチルは語る。

 

 

「見なさい。この戦いを。

 

 

やられてもやられても死なない彼らだが、

 

 

なぜやられたらそのままやられる私達はこのよう無意味な戦いをしてきたのだろうか。

 

 

彼らは私達にそのことを皮肉さをこめて伝えているのだ。

 

 

…だから私達は、この戦いをやめさせることが出来ても、やめさせたくはないのだよ。」

 

 

やがて一騎打ちになり、最後の一突きで両方がやられた。

 

 

 

 

「…ドロー。だな。3845回目のドローだ。」

 

 

「そんなに引き分けしているんですか!?」

 

ジャックは尋ねる。

 

「『そんなに』どころではない。全てが引き分けだ。

 

彼らは疲れているときでも、いつでも決まった日時に戦う。

 

おそらく、あと100年間は余裕で戦い続けるだろう。」

 

 

チェリーは考えていた。

 

 

この子達は『敵』がいるから戦っていられるんだ。

 

『敵』がいなくなればいいってわけじゃない。

 

『敵』がいるから強くなれるのかな…

 

この子達にまた一つ、教わった気がするわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、完成したぞ。」

 

チェリーの剣をスチルは渡す。

 

 

「ありがとうございます!」

 

「うむ。…おい、お前さん。」

 

ジャックをスチルは呼ぶ。

 

 

 

「今度ここに来る時には、しっかり傷をつけて来るんだぞ。」

 

 

「はいっ!!」

 

 

 

 

ルーフスは小さい兵士達と棒で戦っていた。

 

 

突く、守られる、

斬る(?)、弾かれる、

足をさばく、避けられる…

 

 

「なるほど、お前、なかなかやるなぁ…」

 

青色の人形は照れる。

 

 

 

「ほら、戦士の友情の証だ。」

 

ルーフスは右手を握り差し出す。

 

 

その右手に粘土の小さな手がぶつかった。

 

 

 

 

 

「「「ありがとうございましたー!!」」」

 

 

最後にスチルは笑って見送ってくれた。

 

そして青色の人形達も敬礼をしていた。

 

 

 

「あ、ルーフスさん、あれ!」

 

チェリーが横を指差す。

 

 

 

遠くで赤色の人形達も敬礼をしていた。

 

 

「あいつら、まとまってきたら強いんだろうな!!」

 

「そうだね。一瞬で負けそうだ!」

 

 

ルーフス達は青と赤に見送られながら、草原を進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。