Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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11:裏側(前編)

ルーフスとジャックは三人の貧しい女の子達をつれ、都会を駆け抜けていた。

 

 

「おい!お前ら!あいつら捕まえろ!!」

 

背後から追いかける黒スーツが声を上げた。

 

横の路地裏から次々と黒スーツが姿を現す。

 

「「「「コノヤロォ!待て!!」」」」

 

「くそ・・・あんなビジネス街が夜はこんなことになってたなんて!」

 

「あんちゃん、この女の子達が危険だよ。どこかに身を隠しておかないと・・・」

 

「でも、そんな余裕も無さそうだぜ?・・・もう俺達の情報は広く知れ渡ってるようだ・・・」

 

「そんな・・・チェリーさんも捜さなきゃいけないってのに!!」

 

「どうすれば・・・」

 

「待てぇ!!」

 

「うわ!前からも・・・!!」

 

ルーフス達は女の子達の手を引き、ただただ、逃げることしかできなかった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは牢獄。

 

女性秘書とチェリーは檻の中で話す。

 

 

 

檻の中とは思えない、幸せな内容であった。

 

 

 

都会での暮らしと、旅人としての暮らしを交互に話し合った。

 

 

 

「・・・あ、申し遅れたわね、私はヴァイオレット。」

 

「私はチェリー。よろしくね!」

 

「ふー。でもいいな。私も、旅人を目指していれば、こんな窮屈な所で仕事しなくても良かったのに・・・」

 

 

 

「でもあなたはビジネスウーマンとして働きたかったんでしょ?」

 

「確かにそうだった・・・だからこそ他の暮らしにも憧れてくることがあるわ。」

 

 

女性秘書は立ち上がる。

 

自信に満ちた顔だ。

 

「でも私はやっぱりこの仕事がいい。男じゃなくても仕事はできるの!その事を社会に伝えたい!!」

 

「その意気だ!!」

 

チェリーは笑う。

 

 

 

 

一瞬にしてバイオレットの顔が曇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬時に後ろを振り返る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一発、後ろから近づいてきた黒スーツの腹にパンチを入れたのだ。

 

 

 

 

 

 

「ウッ・・・」

 

 

 

 

 

黒スーツは倒れる。

 

 

 

 

 

 

チェリーは驚きの顔を見せる。

 

 

 

 

 

 

「あなたって・・・本当に強いのね・・・心も体も。

 

なんであんな『セクハラ男』を超えられないのかが疑問だわ・・・」

 

 

 

 

 

 

「それは・・・」

 

ヴァイオレットはためらいながらも話す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いします!!この私を秘書にしてください!」

 

ヴァイオレットはビルから車に乗ろうとする市長に懇願する。

 

 

 

三人の内、一人の黒スーツは叫ぶ。

 

 

 

「こらお前!市長に向かって失礼だ!今市長は忙しいのだ!下がれ!」

 

「まあまあ・・・君はこの私のサポートをしたいんだね。歓迎さ。今ちょうど、

 

秘書がいなくなったからね。付いてきなさい。」

 

市長は笑顔を向けて言った。

 

 

 

良かった・・・偶然秘書がいなかったんだ・・・

 

これでやっと、市長になる夢に近づける・・・

 

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 

市長の働く光景は輝かしいものだった。

 

市民に必ず声をかけ、市民の意見を反映させる。

 

暴力団撲滅ののろしを上げ、活動する。

 

最高の市長であった。

 

私も、こんな素晴らしい市長になりたいと思ってしまった。

 

 

 

思ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

ヴァイオレットは市長の部屋に重要書類を置きに言った。

 

 

トントン・・・

 

 

「失礼します。」

 

 

 

 

市長はいなかった。

 

 

 

 

 

秘書は重要書類を机において、こっそり壁に寄りかかる。

 

 

 

ふう・・・・

 

 

 

 

ちょっとがんばりすぎたかな?

 

 

 

 

まだ秘書としての仕事が慣れてないとか・・・

 

 

 

 

 

・・・よし!気合を入れないと・・・

 

 

 

 

 

 

ポチ・・・

 

 

 

 

 

 

「え・・・」

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・

 

 

 

 

 

寄りかかっていた壁が開く。

 

 

 

 

 

牢獄だった。

 

 

 

 

 

何でこんなものが・・・?

 

 

 

 

 

女性秘書は中へ入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を疑う光景があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人のスーツの男性がボロボロになって檻の中にへたれこんでいる。

 

 

もう死んでるようだ。

 

 

 

 

 

 

ヴァイオレットは恐怖に襲われ、後ろに下がる。

 

 

 

 

 

 

と同時に、何かを踏んだ。

 

 

 

 

 

バッジだ。

 

 

 

そこには、「第一秘書:ジール」と書いてある。

 

 

 

 

 

 

 

 

「見られてしまったか・・・」

 

 

 

女性秘書は後ろを向く。

 

 

すると、市長の後ろに黒スーツが二人。

 

いつものボディーガードじゃない。

 

 

 

 

一人は暴力団の副総長の顔にそっくりだ。

 

 

 

「市長、・・・その男達はどういうことですか。」

 

 

「なあに、その通りにとらえておけばいい。それより今はコッチのことだ。」

 

市長は顎で血まみれの男を指し示す。

 

 

 

 

「・・・全く、この男ときたら・・・私の計画を話せばいきなり秘書を辞めるとか言い出してね。

 

この都市をさらに発展させるための計画なのに。」

 

 

 

そうつぶやくと、市長は女性秘書の耳元に近づき、こうささやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰にも言うなよ・・・お前の情報はもう調べてある・・・

 

お前の親父の血が吹き飛ぶ羽目にあうぞ・・・」

 

 

「どういう・・・こと?」

 

 

女性秘書は聞き返す。

 

 

 

 

 

「なになに・・・ただの偶然さ・・・」

 

男は話す。

 

 

 

 

 

「まさか、焼き尽くそうと思っていた森の管理人が、お前の親父だったとはねぇ・・・」

 

 

 

 

 

女性秘書は目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

女性秘書は一瞬で市長を床に押し付け、護衛用の拳銃をスーツのポケットから取り出した。

 

 

 

 

 

カチャ。

 

 

 

 

市長の眉間に当てる。

 

 

 

 

 

「おやおや・・・そんなことしていいのかなぁ、こっちにはこの無線のスイッチがある。

 

これを押せば、森にいる俺の部下の受信機に送られて、そいつらが狼男を殺す。そしてから森に放火だ。・・・ハハハハハ!!楽しみだなぁ、押すのが!」

 

 

 

 

 

 

女性秘書は目に悔し涙を流し、拳銃を離して、押さえつけていた手の力を抜く。

 

「そうだ。お前の親父を大切にしたいんだったら、服従しろ。・・・」

 

 

 

あんなに人の事を考え、行動していた市長が。

 

 

 

 

 

 

 

あんなに市民に明るかった市長が・・・。

 

 

 

 

 

 

 

この都市の事を第一に考えていた市長が!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は、俺に逆らわなければいいんだよ・・・ハッハッハッハッハ!!」

 

 

 

 

 

市長はそういって明るい社長室へ出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う・・・うう・・・う・・・」

 

ヴァイオレットの遠い記憶が蘇ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、おとーたん。」

 

「んー?」

 

「なんでおとーたんは、いつも木をじっとみているの?」

 

 

父は笑いながら話す。

 

「お父さんはな、実は木のお医者さんなんだ!」

 

「木もおかぜ、ひくのー?」

 

「ああ、ひくよ。いいかいヴァイオレット。」

 

 

 

「木も私達と同じなんだ。だから、木にもお医者さんが必要なんだよ。」

 

 

 

少女は少し考えてから、

 

「よくわかんなーい。」

 

 

父親は少女を抱き上げ、頬ずりする。

 

「わが子ながら、かわいいやつだなぁお前は!!」

 

「おとーたん少しくたい・・・」

 

「・・・へ・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷の降る真夜中。

 

「ただいまー。」

 

「ううう、おとーたーん!」

 

 

狼男に目を開いてない少女が飛びつく。

 

雷が相当怖かったようだ。

 

 

 

6歳の少女は顔をみる。

 

 

 

お父さんではなかった。

 

 

 

狼だった。

 

 

 

少女はベッドに飛び込む。

 

 

 

「わぁあああん!おおかみさんだぁ~」

 

少女はベッドを涙で濡らす。

 

 

「ああ、しまった!!」

 

狼男は叫ぶ。

 

 

狼男はもうすぐ朝日がくることを確認して、演技をした。

 

「がおー・・・雷が怖い子はたーべーちゃーうーぞー・・・」

 

「うぇぇえええええん・・・」

 

そっぽを向きながら、違う声をだす。

 

「ヴァイオレットー。だいじょうぶかー。」

 

野太い声で、大根役者は言った。

 

「おお、なんだとぅ、なんだ、にんがんかー。ってウワー。」

 

狼男は外へ引っ張られるふりをした。

 

 

バン、ボカ、バキ、ドカ

 

 

狼男は自分の体を叩く。

 

 

 

 

朝日が昇り、狼の姿から戻る。

 

 

「ヴァイオレットー。大丈夫だったかー?」

 

「うぇぇええええん・・・おとーたーん・・・」

 

「ハッハッハッハ・・・」

 

父親は少しヒリヒリする腰をさすりながら笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?都市へ出る?」

 

「うん・・・私、ビジネスウーマンとして働きたいの!」

 

「・・・?・・・びじ・・・ねす・・・うーまん?・・・何だそれ・・・ハッハッハ」

 

「真面目に聞いてよ!」

 

 

「ダメだ!!」

 

父親は怒鳴る。

 

「何でよ!」

 

「えっと・・・ダメなもんは、・・・ダメなんだよ・・・」

 

 

 

「・・・お父さんなら・・・分かってくれると思ってた。

 

 

『行ってらっしゃい』って、笑顔で行ってくれると思ってたのに。」

 

 

 

 

「・・・そんなに行きたきゃぁ・・・勝手に行ってくればいいじゃねぇか!!」

 

 

娘はバックパックを持って扉を開けて出て行った。

 

 

 

 

 

バタン・・・

 

 

 

 

開けたままのドアが、ゆっくり閉まる。

 

 

 

 

 

 

 

ガラス窓から、机に伏せていた父の姿が見えたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう・・・お父さん・・・うう・・・」

 

 

 

女性秘書はただただ、暗い場所で泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

私はあんな表裏のある奴についていこうとしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

バカだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただただ、自分を後悔するだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから私はあいつについていくことしか出来ないの・・・」

 

女性秘書は黙った。

 

 

が、少し経ってからチェリーが口を開く。

 

 

 

「私、あなたのお父さんにあったわ。」

 

 

「・・・え?」

 

 

「あなたのお父さん、『娘に自分の声を伝えたい』って・・・『自分がここにいることを伝えたい』って必死に言ってた!

 

私はあんな強いお父さんなら、絶対に死なない、いや、『死ねない』の。あなたのために!!」

 

 

ヴァイオレットは涙を流す。

 

 

 

あんなに反対してた理由は・・・私を心配してたからなのね・・・

 

 

 

 

私は大人になっていく中で、自分のお父さんを信じられなくなってきたんだ・・・

 

 

 

 

お父さんは昔から、強くて、逞しくて、嵐にも竜巻にも負けなかった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お父さんを信じなきゃ!!

 

 

 

 

 

 

「・・・ありがとう、チェリー。あなたのおかげで、大切なものを気づかせてくれた・・・」

 

 

 

 

 

「あなたはこれからどうするの?」

 

「戦争だわ。あの『セクハラ男』をぶちのめすの!」

 

チェリーは元気に、かつ壮大に話した。

 

 

 

「・・・私も、その戦線に参加してもいい?」

 

 

「もちろん!」

 

 

チェリーはヴァイオレットの手を握る。

 

 

 

 

 

 

 

「この都市を、『作り直す』のよ!!」

 

「・・・ええ!!」

 


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