Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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今回は少し長めです。覚悟してね。


10:表と裏

昼食をとった後、ルーフス達はエメラルドを5個ずつ持って、解散した。

 

集合場所と時刻は午後6:30、都市の中心の噴水だ。

 

 

 

 

 

ルーフスはただただ気ままに、電気屋や釣り道具屋などをめぐりめぐる。

 

ステーラはルーフスについていく。

 

ジャックは図書館でこの付近の気候帯の調査や、本を読んでいた。

 

 

 

チェリーは本屋で料理本を選び、服屋で服を見ていたりしていた。

 

 

 

チェリーが服屋から大きな紙袋を持って出ると、さっきのアロハシャツの老人がいた。

 

「おお、これはこれは・・・先ほどのお嬢さんではありませんか。」

 

「あ、こんにちは・・・」

 

「おや?他の二人はどうしたのかね?」

 

「今は自由行動中です。午後6:30分に噴水に集合する予定で・・・」

 

 

 

その時、老人の目が大きく開く。

 

そして老人は服屋に少し入ってから、受付の上に飾ってある時計を覗く。

 

午後5:16。

 

 

老人は服屋から出て、チェリーの肩を掴む。

 

()()()この街から立ち去りなさい!

()()()だ!!」

 

「えっと・・・おじいさん・・・どうしたのですか?」

 

老人は血相を変えて言った。

 

「いいか、お嬢さん、この街の夜間人口に対する昼間人口の比率は96%だ。」

 

老人は年の割りに難しいことを喋っている。

 

チェリーが要約して喋る。

 

「つまり・・・夜の間の人の数より昼の間の人の数が大幅に大きいってことですよね・・・」

 

「そうじゃ、なぜこうなっているかっていうとな・・・」

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは老人の言葉を耳にして、驚愕した。

 

た、大変!!

 

ルーフスさんとジャック君に知らせなきゃ!

 

チェリーは都市を駆け抜けていった。

 

 

 

「くれぐれも気をつけるんじゃぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルーフスはじーっと見ていた。

 

ステーラと一緒に。

 

 

蛙だ。

 

 

 

 

 

 

ルーフスが足を踏みおろす。

 

 

ダン・・・

 

 

 

ゲェーコッ。

 

蛙が鳴いた。

 

 

 

 

ステーラも同じく。

 

 

 

ポン・・・

 

 

 

ゲェーコッ。

 

蛙が鳴く。

 

 

 

 

 

ルーフス。 ダン。 ゲェーコッ。

 

ステーラ。 ポン。 ゲェーコッ。

 

ルーフス。 ダン。 ゲェーコッ。

 

ステーラ。 ポン。 ゲェーコッ。

 

 

 

「面白いな・・・これ。」

 

 

 

「クゥーン。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・!・・・今は・・・」

 

 

午後6:27。

 

 

「うわ、蛙に見とれてたらもうこんな時間かよ!!急ごう、ステーラ!!」

 

「ワンワンワン!!」

 

ルーフスとステーラは雑貨屋さんから出た。

 

 

 

 

 

 

午後6:40。

 

「あぁー!!あんちゃん、なにやってたのさ!!」

 

「ごめんごめん、蛙が・・・」 「ワン!!」

 

「蛙?・・・それよりかチェリーさんが来ないんだ。どうしたんだろ?」

 

「え・・・?あのチェリーが?・・・あいつはおっちょこちょいだけど時間は必ず守るはずだよな。」

 

「・・・あんちゃん、何かチェリーさんの身に何か起きたんじゃないの?」

 

「でもあいつにゃ剣術が・・・」

 

 

 

「「あ゛あー!!!」」

 

 

 

ルーフスのジャックの中に、三人の武器一式とエメラルド5個。

 

 

 

「まままままずいジャック・・・どどどどどどどうしよ・・・」

 

少年は顔面蒼白になっている。

 

「大丈夫だよあんちゃん、この街はとてつもなく広い、3時間程度じゃ都会から逃げ出せないよ。・・・捜そう!チェリーさんを!!」

 

少年は気を引き締める。

 

「・・・ああ!」

 

「ワンワン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと見つけましたね兄貴。」

 

「ばっきゃろー!!」

 

兄貴と呼ばれる男は弟分を殴る。

 

「てめぇが雑貨屋さんの『あの玄関によく置いてある防犯用の蛙の置物』に見とれてたからだろうが!!」

 

「ひぃ!すいません!!」

 

廃ビルの3階。

 

銃を持ったスーツのたくましい男は銃口をセットする。

 

照準・・・旅人の少年。

 

 

 

 

 

 

「だが俺の銃のテクニックにかかりゃ、一秒で終わりさ・・・」

 

「いっけー!やっちまえ!兄貴!!」

 

 

 

少年の頭が照準に合わされる。

 

 

 

 

 

アディオス・・・

 

 

 

 

 

 

「おっ!・・・なんじゃこりゃ!」

 

 

サッ

 

 

 

 

バピューン。

 

 

 

 

 

バシャ!!

 

 

 

 

少年はかがみ、水鉄砲の水は後ろの車に当たった。

 

 

 

 

「・・・これすげぇな!!クリーパーのフィギュアじゃねーか!!」

 

「1/8サイズぐらいか・・・僕も買えばよかった・・・」「クウン・・・」

 

 

 

 

「えっと・・・兄貴?・・・そりゃ、訓練用の水鉄砲じゃ・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

兄貴は思う。

 

(やっべぇぇええええ・・・この俺が照準をはずしかつ訓練用の水鉄砲でバッピューンと撃ってしまうとは・・・)

 

「兄貴、バッピューンじゃなくてバピューンかと・・・」

 

「なんでお前俺の頭ン中の声聞こえてんだよ!!」

 

 

ゴチン!

 

 

兄貴は殴る。

 

「あ、あ、兄貴・・・照準が・・・」

 

「あー!!」

 

照準は既にいずこへ。

 

 

 

 

 

「チェリーさん!チェリーさん!!」

 

「チェリー!!返事しろー!!」

 

「表通りは一通り見たんだけど・・・」

 

「路地裏にいたりして!」

 

「いや、そんな・・・」

 

 

 

ジャックの動きが止まる。

 

 

 

 

「ジャック、どうした?」

 

「・・・あんちゃん、あれ。」

 

 

 

 

 

少年が路地裏を見ると、そこには皮の薄着一枚で、縄で縛られている

女の子が3人。

 

 

 

近くには目のよどんだ男達がいる。

 

 

 

「これは・・・」

 

 

「おう、おっさん、いまならこいつら、まとめてエメラルド3個だ!!」

 

 

 

 

少年の目が見開く。

 

「ほう・・・今日は特価じゃないか・・・どうしたんだい?」

 

「こいつら、全くもって使えないんですわ。よーするに、

 

売れ残りだよ。」

 

 

 

売れ残り。

 

 

 

 

人の。

 

 

 

 

「さあ、どうすんだい?おっさん、買うの?買わないの?」

 

「じゃあ、買おうかな。ほら、エメラルド3個だ。」

 

 

 

 

 

人3人で、エメラルド3個。

 

 

 

 

 

少年は言葉を思い出す。

 

おめぇは、この瞬間の都市を信じるか?疑うか?

 

 

 

 

 

こういう意味だったのだ。

 

 

 

 

 

この金欲にまみれた風景を見て、昼間の都市など信じられるわけがない。

 

 

 

 

 

表と裏だ。

 

 

「いやだ!!」

 

女の子が一人叫ぶ。

 

 

「おかあさんとこ帰るんだ!もう売られたくない!もう止めて!

 

止めて!」

 

 

 

男は蔑む。

 

「はあ?・・・ハッハッハ・・・止めれる訳ねぇだろこんな儲かる商売

 

・・・いいかぁ、お前。こうなるのもお前が貧しいから悪いんだぞぉ。

 

嫌なら儲かれ。嫌なら金を手に入れろ。」

 

「うっ・・・うっ・・・」

 

女の子は泣く。

 

「さぁ、メイルちゃーん、おじさんと、家へ来るんだ・・・」

 

女の子二人は呆然としている。

 

もう意識はほとんどないらしい。

 

中年の男はいやらしい目で女の子の腕を乱暴に掴む。

 

「やだ!!やだ!!・・・」

 

女の子は最後に泣き叫んだ。

 

 

 

 

「誰か助けてぇ!!」

 

 

 

 

 

ドォン!  バゴン!!

 

 

中年の男と販売人が同時に吹っ飛ぶ。

 

 

 

少年と子供がパンチをしたのだ。

 

 

少年は笑う。

 

「・・・やっぱお前もか。」

 

 

「・・・常識だろ、あんちゃん。」

 

 

 

少年と子供は女の子の縄を解く。

 

「さあ、逃げよう!」

 

女の子達は少年と子供に手を引かれ、表通りを駆け抜けていった。

 

 

 

「に、逃がすなー・・・てどわぁあ!!」

 

「ガルルルルル・・・」

 

「ステーラ!ありがとう!あとで肉たっぷり食わせてやっかんな!!」

 

ルーフスは叫ぶ。

 

 

ガブッ!!

 

「いててててて!!」

 

男は痛さで応援も呼べないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

・・・

 

 

 

 

ここは?

 

 

 

 

 

チェリーが起きると、そこは牢獄の中。

 

 

 

 

 

窓もない檻の中。

 

 

 

 

 

そうか、私・・・誰かに後ろから殴られて・・・

 

 

 

 

 

「気が付いたかい?」

 

 

見るとそこには昼間の市長がいた。

 

 

 

・・・いや、市長と呼ぶべきでない。

 

 

 

遠くからじゃ分からなかったが・・・

 

 

 

 

 

こいつは・・・!あの時の!!

 

 

 

 

 

「村じゃ、よくも私のことを『セクハラ男』と呼んでくれたもんだ。」

 

 

「だって実際にそうなんですもの。」

 

 

「な、なにをー!?」

 

 

 

 

男は咳払いをし、言った。

 

「まあいい、お前はあいつらを始末してから、終わりだからな・・・ハッハッハ!!」

 

男は去っていく。

 

 

 

 

あーあ・・・

 

 

油断していた。

 

 

あの時に思い出せばこんなことは予測できたはずだ。

 

 

バッグも無くなってる。

 

 

お腹すいたなー・・・

 

 

 

 

ギィ・・・

 

 

 

 

ドアが開く。

 

 

 

 

「!・・・あなたは・・・」

 

茶髪の女性秘書だ。

 

 

「・・・これ、あなたのバッグでしょ?」

 

「なんで・・・あなたはあのセクハラ男の仲間じゃないの?」

 

「ふふ・・・」

 

女性秘書は『セクハラ男』という呼び名に笑う。

 

 

「私はね、純粋にこの都市の市長として働きたかっただけなの。

 

だけど前にいたのが・・・ぷぷ、『セクハラ男』だったわけよ。」

 

「ぷっ・・・」

 

チェリーも笑ってしまった。

 

 

「あ、バッグ、ありがとう。」

 

「私、あなたとなら友達になれそうだわ。」

 

「友達になりましょ!」

 

 

 

牢獄の中小さな笑い声が響いた。

 

 


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