Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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6:真夜中の怪物

「よし!明日の力仕事に備えてみんな、おやすみ!!」

 

「おやすみなさい。」

 

「おやすみ!」

 

「クゥン・・・」

 

家の明かりが消えた。

 

ここは何の人影も見えない草原。

 

今日はいつもより風が強い。

 

草がざわざわとなびいている。

 

 

 

 

 

 

 

・・・前言撤回しよう。

 

 

 

 

 

 

草原の中に一人、人影が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

人喰い狼達が群がる。

 

 

 

 

 

 

いかにも危ない。

 

 

 

 

 

 

喰われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思われた矢先。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人影は大きくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もはや人影ではない。

 

 

 

 

 

その横顔の影はまるで

 

 

 

 

 

 

『狼』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴォォオオオオン・・・・」

 

 

 

「ワォオオォオン・・・」

           「ワォオオン・・・」

  「ワォオオオオオン・・・・」

「ワォオオン・・・」

 

 

 

 

 

遠吠えが一軒の小さな豆腐小屋にまで響いた。

 

 

「うぅん・・・」

 

 

ジャックは、布団を肩までかけなおした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間を進め、翌日の正午。

 

少年達は拠点を半分まで完成させていた。

 

「チェリーさん、ガラス余ってる?」

 

「あ、1スタックありますよ。」

 

「おい、ジャック、ちょっと斧取ってくれるか?」

 

「ごめん、今手が離せない。」

 

「ああ、大丈夫だ・・・」

 

「ワン!!」

 

見ると狼が斧を咥えている。

 

「おお!お前も手伝ってくれるのか・・・よしよし、あとで肉いっぱい食べさせてあげるからな!」

 

「ワン!!」

 

 

 

 

 

 

「おーい!あんたら、何してるんだい?」

 

「あ、住人の方ですか・・・こんにちは。」

 

「「こんにちは。」」

 

そこに居たのは中年のおじさん。

 

「グルルルルル・・・」

 

狼は険悪そうに唸る。

 

「ああ、こらこら。ごめんなさい・・・」

 

「ははは・・・いいんだよ。」

 

おじさんは笑いながら言った。

 

「わたしはペットの狼には嫌われやすいんだ。」

 

 

 

(ペットの狼『には』・・・?)

 

ジャックは少し疑問に思う。

 

 

 

「ところで、何をやっているんだい?」

 

「あ、今灯台をここに建てようと思いまして・・・まだ拠点を作ってるのですが・・・」

 

「な・・・なるほど・・・そうか。・・・」

 

 

 

(・・・なにやら不満そうだ・・・)

 

子供はまたも疑問に思う。

 

 

 

「まあ、気をつけてやれよ。」

 

「「ありがとうございます!」」

 

おじさんは森の中に入っていった。

 

「・・・」

 

「グルルル・・・」

 

 

少年は考える。

 

 

「・・・?・・・ジャック、どうした?」

 

「あんちゃん・・・おかしいと思わない?」

 

「なにが?」

 

「あのおじさんだよ。あんちゃんやチェリーさんは、昨日のそれぞれの作業の時、

どこかに一軒家を見た?」

 

「いいや。」「私も。」

 

「おいらも見てないんだ。じゃあおじさんはどこで夜を過ごしてるんだ?」

 

「いや、それは初めてここに来たからじゃ・・・」

 

「それもないよ。おじさんは自分で森へ入っていった。初めてなら絶対に迷うし、

迷ってたなら高く見渡せるジャングルに行けばいい。

おじさんが持ってたのは斧だけ。リュックもしょってないんだよ。」

 

「ちょっと考えすぎじゃないのか?」

 

ルーフスは笑う。

 

「ただ地下で生活してただけだよ。地下に拠点があるんだ・・・さあ、続けようぜ!!」

 

「地下にしては汚れてもいなかったけど・・・まあ考えるだけ無駄か。・・・」

 

「ワン!!ワン!!」

 

狼は「俺もそう思う」といったような、そんな様子に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

「拠点も完成したし、明日はいよいよ灯台作りだ。皆、しっかり寝て、体力つけておくんだぞ。」

 

「「はい!!」」

 

「ワオン!!」

 

皆それぞれの部屋に入る。

 

 

 

 

 

ジャックは部屋の電気を消した。

 

「さあ、寝よう。」

 

ベッドにもぐりこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガォォオオオンン・・・

 

 

子供は電気をつけた。

 

 

 

 

なんだ・・・?

 

 

 

 

いつもと違う狼の鳴き声。

 

 

 

近い。

 

 

 

ガォオオオオオン・・・・

 

 

近い!!!

 

 

子供はおそるおそる一階へ降りる。

 

 

 

 

 

あ!・・・

 

 

 

 

 

玄関が空いている。

 

 

 

 

 

あんちゃん・・・鍵閉め忘れてます・・・

 

 

 

 

 

ジャックは涙目になる。

 

 

 

 

ゴト・・・ゴト・・・

 

 

 

 

何者かがいる。

 

リビングだ。

 

ジャックはリビングを覗く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこに居たのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

狼男。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ・・・」

 

 

 

子供は大声を出しかけた。

 

狼が左右を確認した。

 

だめだ・・・気づかれる。

 

ここは・・・こっそり・・・

 

 

 

 

しんと静まり返った家の中。

 

 

 

子供には狼男しか見えなかった。

 

 

 

ドクン・・・

 

 

子供はリビングの端にあったチェストをこっそり開く。

 

 

剣・・・剣・・・

 

 

 

 

チェストにあったのは、まだ一回しか使ってない金剣。

 

ルーフスがただただかっこいいから作ってみて、使えなかったので放置された剣。

 

これしかないなぁ・・・もっといいのは

 

「カラン・・・」

 

 

 

 

 

 

 

狼は後ろを向く。

 

 

 

 

 

床にはチェストから落ちた鉄のシャベル。

 

 

 

 

 

 

 

その横に―――剣を持った子供。

 

 

 

 

 

 

 

「ばれちまった・・・」

 

狼男が口を開く。

 

 

「ひっ・・・!!」

 

 

「しょうがねぇ・・・消すしかねぇなぁ!!!」

 

 

「うぉおお!!やけくそだぁあ!!」

 

 

子供は狼男に斬りかかる。

 

 

狼男は剣を見てあせった。

 

 

「ちょっと・・・あれ?それ?おま、金って・・・」

 

 

 

 

 

ズバシ!!

 

 

 

 

 

「お・・・俺の・・・弱点・・・」

 

 

 

 

バタン!!

 

 

 

 

「・・・ありゃりゃ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月はもう沈もうとしている。

 

少年はあぐらで、腕をくんでいる。

 

テーブルの向かい側に、狼男が正座している。

 

その横で、子供とメイド、狼が見守っている。

 

 

 

 

「なんで石なんか盗もうとしたんだ?」

 

「あんたら、都会の奴らだろ。ここに灯台を建てて、その場所を起点にして!

この森を開拓するんだろ!」

 

「はあ?そりゃ間違いだよ・・・俺らはただの旅人だ。森なんて焼き払ってどうするんだよ。」

 

「え・・・そうか・・・」

 

狼男はうなだれた。

 

 

「俺としたことが・・・すまなかった!!」

 

 

 

狼男は頭を下げた。

 

「分かればいいんだよ!」

 

少年は笑う。

 

狼男は悲しそうな目で問う。

 

「なあ・・・一つ、頼みを聞いてもらえないか?」

 

「あんちゃん!そいつは泥棒だよ!頼みなんて聞く必要が・・・」

 

「待て、ジャック。なんだ?頼みって。」

 

 

 

 

「俺も・・・その灯台、手伝わせてくれねぇか。」

 

「「「え・・・?」」」

 

「クゥン・・・」

 

狼は眠そうにあくびをする。

 

もう朝日が昇りかけていた。

 

「・・・ここから、ずぅっと離れた都会に、俺の娘がいる。」

 

 

 

朝日が部屋に差し込む。

 

 

狼男は縮んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきまで凶暴だったその顔立ちは・・・

 

 

 

 

 

 

まさに、父親そのものの優しい顔立ちであった。

 

 

 

 

 

「お前は・・・昼間の時の・・・!!」

 

 

「私は、娘にその灯台の光と共に私の声を届けたいんだ・・・!なあ・・・頼む!!」

 

 

「・・・分かった。異論は無いよな、二人とも。」

 

 

「分かりました。灯台を完成させましょう!」

 

 

「そんな頼みなら大丈夫だ!」

 

 

少年は狼にも問う。

 

「お前も、いいか?」

 

 

「ワン!!」

 

狼は元気よく答えた。

 

 

「ありがとう・・・皆さん・・・」

 

狼男が涙を流す。

 

「おいおい・・・泣くなよ・・・」

 

「泣いてない!こりゃあ、汗だ!!」

 

「はははは・・・」

 

「ふふ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、今日から、灯台作りをはじめる!みんな!怪我に気をつけて、楽しく作るぞ!!」

 

 

「「「おおー!!」」」

 

「ワン!!ワン!!」

 

 

こうして、ルーフス達と狼男の灯台作りが始まった。


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