Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
「何が『強く』だよ・・・」
!
見ると少年は手から血を出していた。
扉のすぐ先の床で皿が割れ、まだ湯気の出ているキノコシチューがこぼれている。
「お前は・・・『弱い』から死ぬのか?・・・」
「私は・・・強くなれないの・・・!!何も・・・守れないの!!」
「あきらめていたなら・・・蜘蛛に襲われて死んでしまえば良かったんだ・・・」
「・・・!!」
「・・・じゃあ・・・お前は今・・・何で生きているんだよ!!!」
「!!!!・・・」
(この子を・・・育てよう。ニース・・・)
村長の温かい声が響く。
「強くなるために残しておいた命を・・・お前は全て踏みにじる気か!?」
少年の口調はとても厳しかった。
が
それでいて、とても優しい言葉であった。
「・・・お前は・・・一人『だった』・・・でも。」
少年は、笑顔でこう言った。
「今は、お前は『皆』と強くなれる。」
キィッ・・・
「あんちゃん!!その血はどうしたんだい!?」
「何事であるか・・・?」
「どうしたの・・・?」
「きゃ!!血・・・大変!!救急箱をお持ちします!!」
「チェリー・・・あなた・・・」
村の皆とジャックが家に駆け寄る。
「俺達は、どんなにお前がドジしたって、どんなに赤くなって倒れたりしたって気にしない。」
「俺達は、お前と一緒に強くなりたい。そして、お前を支えて生きたいんだ!!・・・
お前が、決して暗い陰を見せないように・・・!
俺達は、お前の・・・明るい太陽が見たい!!!」
ベッドの中心が、一粒一粒、濡れていく。
ぽろぽろと涙が落ちる。
女は少年の傷ついた手をとる。
そして、顔をうずめて泣いた。
「・・・う・・・う・・・ごめんなさい・・・旅人さん・・・皆さん・・・」
「ほっほっほ・・・なんのなんの・・・ほれほれ・・・涙を拭きなさい。」
「な~に言ってんの!!あんたは私のかわいい妹じゃないの!!」
「チェリー・・・あんた、あの時からほんと強くなったよ・・・!!」
「「「「ほらほら、泣かないで!!」」」」
「そうだよお姉ちゃん、笑ってよ!」
「さあ、あっちで皆クッキー焼いて待ってるぞ。」
少年は手を差し伸べる。
メイドは手をとる。
「・・・はい!!」
少年と村の皆は、今日、今までに無い明るい太陽を見た。
それから三日後。
少年の手の傷も回復し、
少年と子供は既にジャングルの木を取り終えた。
カカオの実と共に。
チェリーはそのカカオの実を床にばらまき。
皆と笑い。
そして農作業を手伝い、
村のメイド達との優雅なお茶をたしなみ。
ぐっすりと眠り。
ついに別れの時が来た。
「・・・忘れ物は、大丈夫ですかな。」
「はい、全部荷物は大丈夫です。そうだよな、ジャック。」
「うん、『ぜんぶ』もったよね・・・!!」
「ほう・・・それは良かった・・・しかし、去るというのも、
仕方ないというか悲しいというか、複雑な気分でございますじゃ。・・じゃが。」
「ルーフス殿、チェリーを救ってくれて、本当に、ありがとう。」
「そんな・・・またこの村に遊びに来ますよ。」
「いつでも、お待ちしております。」
「「「「「また遊びにきてね~!!」」」」」
?・・・
少年は思った。
そういえばチェリーの姿がどこにも無い。
ははあ・・・あいつのことだから部屋で泣いているのかな・・・?
ここは触れずに行こう・・・
「では、また会いましょう!!」
「キャー!!」 「ワー!!」
「ありがとねー!!」
村のメイド達と村長に手を振りながら、少年と子供は村を去っていった。
少年はジャングルの中を歩いていた。
「・・・そういえばチェリーさん、どこ行ったんだろう?」
「さあな、そっとしておけ。俺達に一番なじんでいたのは、今思えばあいつだったな。」
「そう思うとなんだかさびしいな・・・」
ガサ・・・
ガサ・・・
「「・・・?」」
ビュォォオ!!
その時、草むらから影が襲い掛かってきた。
「こ・・・これは・・・新種のモンスターか・・・!!」
「ちょっと待って・・・!!違うよ!」
「きゃあああああ!!!」
どさっ!!!
メイドだ。
「チェ・・・チェリー!?」
「あ!ルーフスさん!さ・・・捜しました!」
「え・・・?」
ニースは村を教会から見渡す。
そしてはしごを降り、村長のもとへ駆け寄った。
「村長さん・・・まさか、チェリーは・・・」
「あやつは決める時にはその心にまっすぐに従う。
きっと、自分の求めていた人を見つけたのであろう。」
「・・・止めは・・・しないですよね。」
「・・・ああ。」
村長は涙をたらす。
「旅立ちというものは・・・嬉しければ悲しくもある・・・
とても、複雑な気分じゃ・・・!!」
チェリーは照れながらあるものを手渡した。
白く、細長い糸。
蜘蛛の糸だ。
「お前がしとめたのか・・・!?」
「・・・はい・・・!!・・・そ、それと・・・!!」
メイドは顔を赤くして、
「私も!お供させてください!!」
「・・・ああ!もちろんだ!!」
「やったあ!!チェリーさんが仲間になった!!・・・?」
「本当だな!!・・・?」
「「・・・・・・」」
「「あ゛!!」」
「どうしたんですか・・・!?」
「お前のために秘密に作ったクッキーを置いてきた!!」
「大丈夫です、」
「既に、私の、お腹のなかです♪」
「「えええぇえええ!?はえぇええええ!!」」
「こ・・・この速さなら、このジャングル全体のカカオを3日ぐらいで
全部食べちゃうんじゃないか・・・?」
「カカオは定期的に貯蓄しないとね・・・」
「ちょっと・・・私もそこまで・・・食いしん坊じゃ・・・ないですよぉ!!」
「はははは!!また赤くなった!!」
「ほんと恥ずかしがりやなんだからな!」
こうして、チェリーが新しく仲間になったのだった。