Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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3:太陽と陰(後編)

「何が『強く』だよ・・・」

 

 

見ると少年は手から血を出していた。

 

 

扉のすぐ先の床で皿が割れ、まだ湯気の出ているキノコシチューがこぼれている。

 

 

 

 

「お前は・・・『弱い』から死ぬのか?・・・」

 

「私は・・・強くなれないの・・・!!何も・・・守れないの!!」

 

「あきらめていたなら・・・蜘蛛に襲われて死んでしまえば良かったんだ・・・」

 

 

「・・・!!」

 

 

「・・・じゃあ・・・お前は今・・・何で生きているんだよ!!!」

 

「!!!!・・・」

 

(この子を・・・育てよう。ニース・・・)

 

村長の温かい声が響く。

 

 

「強くなるために残しておいた命を・・・お前は全て踏みにじる気か!?」

 

 

 

少年の口調はとても厳しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでいて、とても優しい言葉であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・お前は・・・一人『だった』・・・でも。」

 

 

 

少年は、笑顔でこう言った。

 

 

 

 

 

「今は、お前は『皆』と強くなれる。」

 

キィッ・・・

 

「あんちゃん!!その血はどうしたんだい!?」

          「何事であるか・・・?」

  「どうしたの・・・?」

        「きゃ!!血・・・大変!!救急箱をお持ちします!!」

 「チェリー・・・あなた・・・」

 

 

村の皆とジャックが家に駆け寄る。

 

 

「俺達は、どんなにお前がドジしたって、どんなに赤くなって倒れたりしたって気にしない。」

 

 

 

 

 

 

「俺達は、お前と一緒に強くなりたい。そして、お前を支えて生きたいんだ!!・・・

 

 

 

 

 

お前が、決して暗い陰を見せないように・・・!

 

 

 

 

 

俺達は、お前の・・・明るい太陽が見たい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ベッドの中心が、一粒一粒、濡れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽろぽろと涙が落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女は少年の傷ついた手をとる。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、顔をうずめて泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・う・・・う・・・ごめんなさい・・・旅人さん・・・皆さん・・・」

 

「ほっほっほ・・・なんのなんの・・・ほれほれ・・・涙を拭きなさい。」

 

          「な~に言ってんの!!あんたは私のかわいい妹じゃないの!!」

 

  「チェリー・・・あんた、あの時からほんと強くなったよ・・・!!」

 

 「「「「ほらほら、泣かないで!!」」」」

 

「そうだよお姉ちゃん、笑ってよ!」

 

 

「さあ、あっちで皆クッキー焼いて待ってるぞ。」

 

少年は手を差し伸べる。

 

 

 

 

メイドは手をとる。

 

 

 

 

 

「・・・はい!!」

 

 

 

少年と村の皆は、今日、今までに無い明るい太陽を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから三日後。

 

少年の手の傷も回復し、

 

少年と子供は既にジャングルの木を取り終えた。

 

カカオの実と共に。

 

チェリーはそのカカオの実を床にばらまき。

 

皆と笑い。

 

そして農作業を手伝い、

 

村のメイド達との優雅なお茶をたしなみ。

 

ぐっすりと眠り。

 

ついに別れの時が来た。

 

 

 

 

「・・・忘れ物は、大丈夫ですかな。」

 

「はい、全部荷物は大丈夫です。そうだよな、ジャック。」

 

「うん、『ぜんぶ』もったよね・・・!!」

 

 

 

「ほう・・・それは良かった・・・しかし、去るというのも、

仕方ないというか悲しいというか、複雑な気分でございますじゃ。・・じゃが。」

 

 

「ルーフス殿、チェリーを救ってくれて、本当に、ありがとう。」

 

「そんな・・・またこの村に遊びに来ますよ。」

 

「いつでも、お待ちしております。」

 

「「「「「また遊びにきてね~!!」」」」」

 

?・・・

 

少年は思った。

 

そういえばチェリーの姿がどこにも無い。

 

ははあ・・・あいつのことだから部屋で泣いているのかな・・・?

 

ここは触れずに行こう・・・

 

「では、また会いましょう!!」

 

「キャー!!」    「ワー!!」

   「ありがとねー!!」

 

村のメイド達と村長に手を振りながら、少年と子供は村を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

少年はジャングルの中を歩いていた。

 

「・・・そういえばチェリーさん、どこ行ったんだろう?」

 

「さあな、そっとしておけ。俺達に一番なじんでいたのは、今思えばあいつだったな。」

 

「そう思うとなんだかさびしいな・・・」

 

 

ガサ・・・

 

    ガサ・・・

 

 

「「・・・?」」

 

 

ビュォォオ!!

 

 

その時、草むらから影が襲い掛かってきた。

 

「こ・・・これは・・・新種のモンスターか・・・!!」

 

「ちょっと待って・・・!!違うよ!」

 

「きゃあああああ!!!」

 

どさっ!!!

 

 

 

 

メイドだ。

 

「チェ・・・チェリー!?」

 

「あ!ルーフスさん!さ・・・捜しました!」

 

「え・・・?」

 

 

 

ニースは村を教会から見渡す。

 

そしてはしごを降り、村長のもとへ駆け寄った。

 

「村長さん・・・まさか、チェリーは・・・」

 

「あやつは決める時にはその心にまっすぐに従う。

 

きっと、自分の求めていた人を見つけたのであろう。」

 

 

「・・・止めは・・・しないですよね。」

 

「・・・ああ。」

 

村長は涙をたらす。

 

 

 

 

「旅立ちというものは・・・嬉しければ悲しくもある・・・

 

 

 

とても、複雑な気分じゃ・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェリーは照れながらあるものを手渡した。

 

 

 

 

 

 

 

白く、細長い糸。

 

 

 

 

 

 

蜘蛛の糸だ。

 

 

 

 

 

 

「お前がしとめたのか・・・!?」

 

「・・・はい・・・!!・・・そ、それと・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

メイドは顔を赤くして、

 

 

「私も!お供させてください!!」

 

「・・・ああ!もちろんだ!!」

 

「やったあ!!チェリーさんが仲間になった!!・・・?」

 

「本当だな!!・・・?」

 

 

「「・・・・・・」」

 

 

「「あ゛!!」」

 

「どうしたんですか・・・!?」

 

「お前のために秘密に作ったクッキーを置いてきた!!」

 

「大丈夫です、」

 

 

 

 

 

 

「既に、私の、お腹のなかです♪」

 

「「えええぇえええ!?はえぇええええ!!」」

 

「こ・・・この速さなら、このジャングル全体のカカオを3日ぐらいで

全部食べちゃうんじゃないか・・・?」

 

「カカオは定期的に貯蓄しないとね・・・」

 

「ちょっと・・・私もそこまで・・・食いしん坊じゃ・・・ないですよぉ!!」

 

「はははは!!また赤くなった!!」

 

「ほんと恥ずかしがりやなんだからな!」

 

 

こうして、チェリーが新しく仲間になったのだった。

 


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