Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
ライモンと別れ、新たな旅へと向かったのだった。
共に戦ってくれた仲間達も、それぞれの所に戻りいつもの生活を始めていた・・・
1:新たな旅
緑色に染まった草原の中。
動物達の鳴き声が飛び交う中を少年達は歩いていた。
「ふぁぁあああああああ!!」
「あんちゃん、大きなあくびだね。眠れなかったの?」
「そりゃそうだよ・・・昨日の夜はやけに雷がうるさかったからな・・・
ってかお前よく眠れたな・・・」
「はははは。おいらは眠い時にはいつでも、どこでも眠れるからね。」
終わりの世界でエンダードラゴンを倒したルーフス達は、
ご覧のとおり平和な旅を続けていた。
少年達が草原を描きかけの地図を持って歩いていると、
前方には民家が広がっていた。
「・・・お!村があるぞ。立ち寄ってみるか・・・」
「ちょうど暗くなってきたし、ここで泊まらせて貰おうよ。」
少年達は村へと向かう。
「ようこそ!私達の村へ!」
「へ・・・」
「え・・・」
そこにいたのはたくさんのメイド服を着た、女の子達であった。
「さあ、どうぞ~」
「「あは、いや、どうも・・・」」
少年達はメイドさん達と一緒に村の中へと、頬を染めながら入っていった。
「村長さん、旅人の方がいらっしゃいましたよ。」
「おぉぉそうかいそうかい・・・さあ、上がってください。今日はここで、一晩泊まるといい。」
「ありがとうございます。村長さん。」
「この村には女の子達がいっぱいいるんですね。」
「はい・・・この村のほとんどがおなごですわい。伝承といいますか、この村では
生まれてくる赤ちゃんが、女の子であることが多いのです。」
「へえ・・・」
「きゃ!」
ドタン・・・バシャァン!!
「うわ!きったね・・・何すんじゃあ!?このアマ!!」
「!?」
「あんちゃん、今のはなんだ?」
隣の宿泊民家から聞こえてきた怒声。
「・・・行ってみよう!」
「うん!」
少年達は宿泊所の扉を開けた。
見れば一人のびしょ濡れになった男がメイドに怒鳴っていた。
「すみません!!すみません!!」
「あやまれば済むって問題じゃねぇんだよ!このスーツいくらしたと思ってんだ!」
「本当に・・・すみません・・・」
「だ~か~ら~・・・!!弁償せんかい!エメラルド持ってこんかい!あぁ?」
「ぐすん・・・」
メイドは首を横に振る。
「ほう・・・そうかい・・・だったら、体で払ってもらうしかねぇなあ?・・・」
メイドははっとする。
その時、メイドの口から大きな声が出た。
「やめてください!このセクハラ男!」
カチン・・・
「何だとぉ!?このアマァ!!!」
男の拳がメイドに襲い掛かる。
ビュォオオオオ!!
ズバシ!!
「ヒョォ!!」
バタン!
男は殴られ、床に倒れた。
ルーフスに殴られていた。
「・・・嫌がっているじゃないか、止めてやれよ。」
「キサマァ!!俺を・・・この俺を・・・殴ったなぁ!?」
ビシッ! ズバシ!
ドン!!
少年の三発の拳が男のあちこちに当たる。
その様子を村のメイド達と村長が見守っていた。
泣いていたメイドは呆然と少年の姿を観ていた。
「グホォオオ!!」
「・・・俺は終わりの世界のドラゴンを倒したんだ。なめてもらっちゃ困るな。」
「くそぉ!覚えてろ!バーカ!!」
男は逃げていく。
「ありがとう・・・ございます。」
「大丈夫だったかい?」
「キャー!!」 「かっこいいわー!」
黄色い声がたくさん聞こえてくる。
「かっこよかったが・・・何か胸騒ぎを・・・感じるわい・・・複雑じゃ!!」
村長は言った。
「お礼に紅茶を・・・ああ!」
ドタン!バシャァン!!
「わわわわわわ!!」
またスカートの裾を踏み転んで紅茶をこぼしたようだ。
「すみません、すみません!すぐに拭きます!」
村長は口を挟む。
「紅茶は上手いがこぼすと服はぬれる・・・複雑じゃー!!」
・・・口癖なのだろうか?
「ははははは・・・君はドジなんだな。」
かぁ・・・
メイドの顔が赤くなる。
「お恥ずかしい・・・限りです・・・」
「お姉さん、おもしろいな!!」
さらに赤くなり、眼はぐるぐると回り始める。
そして倒れてしまった。
「大丈夫か!おい!」
「はははははは!やっぱり面白いや!」
こうして、一晩は過ぎていった。
朝。
少年達は木を調達するため、村の近くのジャングルへと向かった。
「私の村のおなごを派遣してはどうかな?こやつらは良く働きますわい。」
「じゃあそうしようかな。」
「おぉい、手が空いている奴はおらんかのぉ?」
みればほとんどが小麦収集に励んでいた。
・・・が、昨夜のメイドだけ、鍛冶屋の隅で、座っている。
「・・・何をしておるんじゃ?・・・ほっほっほ・・・またつまみ食いかね?」
ビクゥ!!
こっちを向いたメイドは口にクッキーの食べかすをつけていた。
村長は笑っている。
かぁ・・・
また顔が赤くなった。
「す・・・すみません!!」
「なんのなんの・・・腹が減っては戦はできん。さあ、旅人の方々と共に、木を切ってくれんかのぉ。」
「は、はい!!」
「じゃあ、行って来るよ。」
「じゃあね!」
「で、では、行ってきます。」
「行ってらっしゃいませ。」
少年達はジャングルへ歩を進めた。
「?・・・この実はなんだ?」
「?・・・おいらも分からないよ。なんだろう、新種なのかな?」
少年と子供は首をかしげる。
「はい、それはカカオの実です。これを材料として、先ほど私の食べていたクッキーが作れるのです。
今ではこの村で、パンの次に主食としているものです。」
「へぇ、お前詳しいんだな。」
「お姉さんすごいや!」
かぁ・・・
またまた顔を赤くした。
「わ・・・私は料理に関しては人一倍の興味を持っているのです・・・」
といって、下を向いてしまった。
「クッキーを山ほど作れるように、これも沢山とっておこうな!!」
少年は笑顔で言った。
「!・・・はい!」
少年と子供はこの村に来て、初めて彼女の笑顔を見た。
彼女の笑顔は、とても明るかった。
まるで太陽を見ているかのようだ。
少年と子供は、つられて笑顔になってしまった。
その時。
彼女の笑顔は、一つの鳴き声によって掻き消された。
「キシュウゥゥ!!」
蜘蛛だ。
メイドの脳裏にはいろいろな音が響く。
蜘蛛の鳴き声。
赤ちゃんの大きな鳴き声。
そして女の鳴き叫ぶ声。
「きゃぁあああああああああ!!!!!」
メイドはその場に座り、大きな声で叫ぶ。
「ど、どうしたんだろう?」
「大丈夫か!?」
「やめて・・・!!こないで!!・・・・きゃあああぁぁ・・・」
女はその場に倒れこむ。
「こんにゃろ!こんにゃろ!」
キシュ!!キシュ!!
クシュウゥゥ・・・
蜘蛛は倒れた。
「あんちゃん、お姉さんは?」
「良かった・・・気を失っているだけだ。」
「一旦戻ろう、あんちゃん!」
「ああ。・・・」
少年の腕の上に寝込んでいる女の目から
一粒の涙が垂れた。