Minecraft ~ある冒険家の旅路~ 作:セッキー.Jr
「えーと・・・どこにしまったかなぁ・・・前やったゲーム・・・」
少年はチェストに首を突っ込んで探している。
母はあきれた顔をしながら言った。
「またゲームやるつもりなの?・・・あなたもう高校生でしょ?ちゃんと勉」
「分かったって!いつも言われてるから!・・・!あった!」
少年はチェストからゲームを手に取った。
そしてゲームと一緒にとれたものがあった。
「・・・?なにこれ・・・『冒険日誌』?」
「!・・・それはあなたのお父さんが書いたものよ・・・」
「お父さん?冒険日誌?」
・・・・・・・・!
少年は思い出した。
「・・・おやつのアイス、食べるの忘」
「いやなんでなのよ!?それ見たら他の事思い出すでしょ普通!」
「なにが?なにも思い出せないよ?・・・そうだ、それよりゲームゲーム!」
少年はゲームをやり始めた。
母はただため息をつくだけだった。
その夜。
少年は夕食を食べてから自室にこもった。
「ふう、食った食った!」
ふと少年はまたゲームをやろうとチェストの中身を見た。
そこにはさっきの冒険日誌。
「・・・お母さんにはあんなこと言ったけど・・・実際なにかつっかかるんだよなぁ?」
少年は沈黙した。
しばらくしてから少年は部屋を見渡した。
「・・・お母さんは・・・いないと・・・」
また少年は沈黙する。
「・・・よし!」
少年は勢いよく本を開いた。
中身を読み進めると、少年の頭の中から何かが無数に広がってきた。
白に包まれた森林、肌色が無限に広がる砂漠、緑と黄、赤が美しく混ざり合う森林・・・
そして自慢気に話す男と、それを瞳を輝かせながら聴く少年。
それと―――詳しくは覚えていないが、少年に語りかける優しく響く声。
どこかさびしさもあった声。
なんだ・・・!?なんで見たこともないのに・・・想像できるんだ・・・?
その時、一枚の紙が落ちてきた。
筆跡は「お父さん」と思われる人のものだろう。
乱雑だが、その字は丁寧なものでもあった。
一つの言葉だけであった。
「強くなれ、そして、世界の果てまで自分で確かめるんだ。」
少年は激しく後悔した。
俺は何をやっているんだ!?
なぜこんな大切なことを忘れていた!?
俺は父が大好きだった。
そして父と同じくらい冒険好きだった。
冒険が・・・したかったのだ。
翌日の朝、少年は荷物をまとめた。
そしてリビングへいった。
「ああ、おはよ。今日は早いわね。朝ごはんできてるわよ。」
「母さん!」
「えっ・・・!?」
「俺、俺!」
「・・・旅に出る!」
しばらく母は黙っていたが、ついに話した。
「・・・教科書の準備はもうしたの?」
「だから母さん!」
「あなたには今もっと大切なことがあるでしょ!」
母は目を大きく開きながら言った。
「俺は・・・世界を見に行くんだ!」
「勉強のほうが」
「俺は!お父さんのように強くなるんだ!」
母はまた黙った。
母から大粒の涙がぽろぽろと流れた。
「か、母さん?ご、ごめん。」
「・・・大きくなったわね。お母さんはすごくうれしい・・・」
母は涙を拭いてから笑顔でいった。
「・・・缶詰めやトランシーバーはどこにあったかなー?」
「・・・母さん!」
「あなたの強い意志をとめるつもりはないわ、ただし・・・」
「もう、私になにも失わさせないでね。」
「・・・はい!母さん!」
母は大きく手を振り、
「行ってらっしゃい!」
少年は駆けていった。
そして少ししたところでとまり、
息を大きく吸った。
「すぅーっ・・・」
「いってきまーーす!!」
これは少年の旅路を記した物語である。