Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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13:雪国の裁き(前編)

「あ、そうだ。俺らさ、雪国を探しているんだけど・・・」

 

別れ際、ムフェックリーに問う。

 

「雪国なら、あっちの方角にあったぞ。そこで私は謎の炎の粉を見つけたんだ。

・・・君はThe Endにも行くんだろう?」

 

といって、博士はかばんから謎の光る玉を沢山取り出した。

 

「これは・・・?」

 

「これはその謎の炎の粉を宇宙人のだした玉に練り合わせたものだ。

この目のように光る光沢。これを私達はEnder Eye・・・終わりの者の目と呼んでいる。」

 

「エンダー・アイ・・・」

 

「この玉は遺跡の絵画にあったとおりのもの・・・だと思うのだ。

確信はできない・・・だが、」

 

ムフェックリー博士は袋に入れた沢山のエンダー・アイを少年に渡した。

 

「君が行くというのなら、確かめてほしいんだ。」

 

 

 

 

確かめる・・・懐かしい響きに少年は思いを馳せた。

 

(自分の目で確かめるんだ。)

 

父の力強い声だ。

 

 

The Endに行けば、きっと父さんもいるはずだ。

 

死んでなんか・・・絶対にない!

 

少年は信じていた。

 

父は死んでいないのだ。

 

絶対に・・・

 

「・・・分かった。ありがとう!」

 

「気をつけろよ!」

 

「ああ!」

 

少年はムフェックリー博士に手を振った。

 

 

 

 

「あ゛~熱い~」

 

「そんなに毛皮着てるからじゃないの。脱げば?」

 

「ああ、そうする・・・って脱げるわけねぇよ!」

 

砂漠をもう何時間歩いただろう。

 

目に見えるのは発色の良い緑のサボテンと、焼け付くような砂の肌色だけだ。

 

「しかし本当に広い砂漠だなぁ。・・・家を建てようか。」

 

「そうだな、・・・せっかく砂岩や砂があるわけだし、オシャレにいこうぜ!」

 

 

 

 

少年は汗をかきながら、砂岩を並べ続けていた。

 

「はぁ・・・ライモン、手伝ってよー!」

 

「俺はただお前にブロック渡すことしかできねぇんだって。」

 

といって、いつの間にかビーチパラソルを広げ、

ボーカロイドの情報誌を読んでいた。憎たらしい。

 

「どこに持ってたんだよビーチパラソル!」

 

「小説の裏を覗くことになるが実は

「わぁあああああ!止めて!話さないで!」

 

少年は砂岩をさっきより速く並べていた。

 

 

 

松明を立てた。

 

「よしできた!」

 

作ったのは宮殿をイメージしたオシャレな家。

 

窓にはガラスを張った。

 

その隣にはクリーパーをあしらった謎の砂オブジェ。

 

「なんでクリーパーのオブジェ作ったんだよ・・・」

 

「かわいいからだ!(キリリッ 」

 

「でも不吉すぎるだろJK(常識的に考えて)。」

 

「大丈夫だって!何もこないって!・・・というフラグを立てておいて・・・!」

 

何の変哲もない朝を迎えた。

 

「いやぁよく寝た!」

 

「でもすげぇ暑くて寝付けなかったぜ・・・」

 

狼はあくびをかいた。

 

 

 

 

 

 

「あ!見えたぞ!」

 

そこにあったのは黄色と緑だけでなく、深緑の木の上に白が積もっている景色。

 

雪国だ。

 

 

「やったやった!雪だ雪だ!」

 

「ライモンやけにうれしそうだな。

・・・そうか!犬は喜び庭駆け回るとか言う歌詞の

童謡があったな。」

 

「・・・俺は犬じゃねぇ!」

 

犬が叫んだところでタイガバイオームに踏み入った。

 

 

 

「また村だ。」

 

見ると村人達がいた。

 

子供達は雪で遊び、

 

老人達は鍛冶屋の火で温もりながら雑談していた。

 

青年達は畑仕事や鍛冶の仕事をしていた。

 

「あ!けるべろすはっけん!」

 

「たいちょうめいれいだ!こうげき!」

 

「・・・へ・・・?」

 

子供達は雪球を相手ではなく狼に向けた。

 

「わわわわわ!止め!」

 

狼は逃げ惑う。

 

少年は腹を抱えて笑う。

 

「これでどうだ!ワンワン!」

 

ライモンはやめろといっていながらも楽しんでいるようだ。

 

狼は口に雪を含み、少年達に当てた。

 

「わあー!」

 

子供達が逃げ惑う。

 

「きゃはははは!」

 

子供達も笑う。

 

少年はそれを見て楽しくなった。

 

 

 

 

 

「大変だ!裁きだ!裁きだぁー!」

 

村人達はざわめく。

 

「なにしてるの!?家に入って!さあ、早く!」

 

お母さん達は子供達を家に入れる。

 

「どどどどどうしたんだ!?」

 

「・・・とにかく行ってみるぞ!」

 

少年と狼は村人達が走る方向へ走り出した。

 

 

 

 

 

燃えている。

 

白い雪とは対照的に黒い煙が舞い上がっている。

 

家が燃えているのだ。

 

「水をもってこい!はやく!」

 

村人達のバケツリレーが始まった。

 

「あ・・・!ミィ・・・?ミィィ!」

 

「どうしたんですか!?」

 

「私の娘が・・・助けて・・・!」

 

「ワンワン!」

 

狼は炎の中へ消える。

 

「ライモン!」

 

 

 

中から小さな女の子と狼が出てきた。

 

女の子の服を口に咥えている。

 

「ミィ・・・!」

 

「ママー!うえぇええん!」

 

女の子はお母さんに抱きついた。

 

 

 

バシャァン!

 

 

水をかける。

 

幾重にも幾重にも水を重ねる。

 

だが炎は消えることは無かった。

 

 

 

結局、誰もが無事ではあったが、家は全焼だった。

 

 

 

「さっきはありがとうございました!」

 

「わんわん!ありがとっ!」

 

狼は照れる。

 

「いえいえ、この狼がやってくれたことです。礼ならこの狼に言って下さい。」

 

「じゃあ、ほとんど燃えちゃったんだけど・・・骨でいいかしら!」

 

狼は渡される前に口に咥えた。

 

「・・・ところで・・・さっき村人が『裁きだー!』って言っていたのですが

どういうことですか?」

 

「それは・・・」

 

村の一児の母は語る。

 

 

 

 

この村には昔から信仰しているものがある。

 

 

それは地の果てに住むという「富と災を与えし鬼」・・・

 

 

不運の続いた年には収穫をもたらし・・・

 

 

悪い者がいれば災いを与えた。

 

 

その姿はいろいろ伝えられているが・・・

 

 

 

 

 

 

 

知られているのは意外なことに、金の剣をもつ醜い豚の姿らしい。

 

 

醜い豚の姿だが、正義の心をもつ優しい鬼なのだ。

 

 

 

 

 

しかし・・・二年前から、「富と災を与えし鬼」は「悪魔」と化した。

 

 

一年ごとに貢物をささげなければ、災いを起こすという強欲な悪魔と化した。

 

 

富は一個も与えようとしなくなった。

 

 

人は日に日に信仰を避けた。

 

 

豊作も無く、ついには生贄をささげるようになった・・・

 

 

 

「それが今日の災いなのです。・・・おかしいですよね・・・神聖な者を怖がる生活なんて・・・」

 

 

少年は黙っていた。

「何も私達は抵抗ができないのです・・・!相手が悪魔なのですから・・・!」

 

少女はさびしそうに母親を見る。

 

「ママ・・・?なんでおめめからなみだでてるの?」

 

「・・・さあ、もう遅いから寝なさい。おやすみ。」

 

といって、母親は娘の額に口付けをした。

 

 

 

 

 

「なあ、」

骨を口から離したライモンは問う。

 

 

 

「お前は・・・鬼を許せるか・・・?」


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