Minecraft ~ある冒険家の旅路~   作:セッキー.Jr

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11:砂嵐の男(中編)

ゴォ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴォォォォ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォオオオオオオ!!

 

 

 

 

 

バシャァアアアアアン!

 

 

 

「ぷはー!」

「下に水があったから良かったが・・・」

「ココは何なんだ?」

 

どうやら岩盤近くまで掘ってあるらしい。下のほうから

絶え間なくでる磁気を感じる。

 

「うぇえ・・・ここはマグマが近くにあるからか

硫黄のにおいがぷんぷんするぜ・・・!」

「そこにドアがあるんだが・・・」

石に囲まれた不審なドア。鉄製らしい。

「だめだ・・・あっち側からしか開かないらしい。」

「こっちから声が聞こえるぞ。」

長い長い道を行くとそこには・・・

 

 

 

「あれ?岩盤近くじゃなかったのか?空があるぞ。」

そこにはいつもの風景。木が張り、花が咲き、牛や豚もいるではないか。

「?????もうわけが分からない・・・」

「いや、ちょっとまて。これを見てみろ。」

狼は勢いよく向こうの空へ駆け出した。

「おい、ちょっと待てよ!・・・ってあれ?」

 

 

空がどんどん大きくなる。

 

 

地上がなくなってしまった。

 

 

そして狼は・・・空に跳ね返された。

 

ボフンッ・・・

 

「・・・これは空色と白の羊毛でできている空だ。」

「え!?」

確かに目の前の空に触ると柔らかい。

 

「おぉ、あなた方も迷い込んでしまいましたか。」7

 

そこにいたのは村長・・・といってもストート村の村長ではない。

違う村の村長だ。砂漠で住む人なのだろうか。肌の色が黒い。

 

「あなたたちは?」

「私たちは砂漠の中にある村の者です。

そしてここはムフェックリーの研究所です。」

 

「私たちは砂漠で日々を楽しく過ごしていました・・・

しかしちょうど五年前、ムフェックリー博士と名乗る男は私たちを

研究所へ招き入れました。そこでこの罠にはまったのです。

ムフェックリーは、あなたたちにはこれからここで暮らしてもらう

とだけ言い、鉄のドアの向こうに去っていきました。」

 

「何という奴なんだ!そいつはこんなに大勢の人たちを騙したってことか!」

「はい、幸い、食べ物や資源には困ることはないのですが、私たちは

本当の太陽と月の光を浴びてみたいのです。・・・ちょうど来たようです。」

 

鉄のドアが一瞬開き、一人の男が姿を現した。

 

 

肌は黒く、髪は茶髪、白衣を身に着けている。

 

「諸君の期待している太陽光、月光のことだが、

後ほど、天井をガラス張りにしたいと思う。」

「ふざけんな!そこまでするなら俺たちを外へ出しやがれ!」

「そうだそうだ!何のために俺たちを閉じ込めているんだ!ムフェックリー!」

 

 

「言っているでしょう・・・?閉じ込めているんじゃなく、『守っている』のだと。」

「ぐっ・・・」

 

 

 

「そこまでだ!」

「おや?新たな村人が生まれたのですか?よしよしここまで大きくなったとは・・・」

 

「俺は通りすがりの旅人だ!」

「旅人・・・!」

 

ムフェックリーは旅人の右手を引っ張り、走った。

「ワンワン!」

 

ガブッ!

 

「ぐっ・・・!」

ムフェックリーは噛まれた腿の痛みをこらえ、

鉄のドアの向こうへ少年と狼をつれていった。

 

 

 

「私はムフェックリー。この研究所の所長・・・といっても私しかいないのだがな。」

 

「そんなのは知っている!お前は村人たちを騙したんだ!いますぐ村人を解放しろ!」

 

少年は渡された紅茶を飲まずに話した。

 

「村人は解放できん・・・彼らは狙われているのだ。」

「狙われている?」

 

 

 

 

ゴォオオオオ・・・

砂嵐が吹いている。その中を小さな子供は歩いている。

「ハァ・・・ハァ・・・」

子供はお使いに買ってきたりんごをこぼし、

倒れた。

 

ザザザザザザ・・・!

少年の左の砂が吸い込まれていく。

蟻地獄ができたらしい。

「わ!わぁああああああ!」

少年は叫んだが、砂嵐でかすかに響くだけであった。

 

ぼくはもうしぬんだ・・・

ありがとう、かあさん・・・

 

 

 

 

 

ここは?

 

子供はベッドで寝ていた。

 

「おや気がついたかい?だんながねぇ、砂に半分埋もれてたあなたを

助けたんだよ・・・何をしてたんだいぼうや?」

 

知らないおばさんがいた。

 

「おつかい・・・」

「まったく・・・これからは砂嵐の恐ろしさを知っておくんだね!」

「あ、ありがとうございます・・・」

「・・・シチュー、食べるかい?」

 

少年は泣きながらシチューを食べていた。

 

かすかにしか聞こえない砂嵐のなかで、

かすかにしか見えない砂嵐の中で、

自分を救い出してくれたのだ。

 

 

 

時は経ち、ここは学校である。

一人の老人が青年に声をかける。

「えー次はこのたび、貴校を卒業し、若くして見事博士号をとった学生です。」

 

 

 

「―――――ムフェックリー君。」

 

「はい!」

 

 

 

 

ムフェックリーはそれから研究に没頭し、

毎日フラスコを掲げては、コンピューターと面を向けていた。

 

 

 

ムフェックリーは近年に騒がれている

住宅街の倒壊を研究していた。

 

なぜか住宅の一部分が抜き取られ、家はどんどん

家となくなりつつあるのだ。

パーツの行方は分かっていない。

ただ分かっていることが一つ。

 

 

 

その住宅が抜き取られた後には、必ず「宇宙人」が目撃されるのだ。

 

 

 

「やはり宇宙人が関連しているのではないか・・・?」

博士は考える。

 

「がぁー!考えてばかりじゃダメだ!」

といって、街をうろついていた。

 

 

道端の端に、ピカッと光るものがあった。

 

「・・・なんだこれは・・・?」

 

 

家に帰って、博士はテレビをつけた。

 

 

(ある冒険家が無人島に古代遺跡を発見したという連絡がありました。

その男は興奮した口調でこう伝えていました。

「いやあ地下の洞窟から奥へ進んでたらなにか円状に並んでてさ、

その場所には何かの絵があったんだよ。・・・確か、炎を体にまとったもの、

長身の生物が描かれてあったんだ!これは古代の遺跡に違いない!

ついに見つけたんだ!・・・!な、なんだこれは!うわ!う

ざざざざざざざざざざざざざざざざざざ・・・・」

それからその男とはまだ連絡がとれていません。

捜索隊は彼の居場所を探しています。・・・)

 

「長身の生物!?」

 

話題には触れていなかったが、その隣には謎の光る玉のようなものが

映されていた。

 

「やっぱりこれは・・・!」

 

 

翌日、若き博士は研究発表会でこの話題を提示した。

「・・・すなわち、ここ近辺の住宅の倒壊は宇宙人が原因で・・・」

 

ハハハハハハハ・・・        これだから若者は・・・  あほらしい!

    いかれてやがる!

            そんなばかな・・・   ふざけているのか!

         夢の見すぎだ・・・

フフフフ・・・      嘘ならもっと上手いのを作れよ!

 

あちこちから怒号と笑い声が響く。

 

「ちゃんと証拠もあるのです!これは宇宙人の落としたものです!」

前に拾った謎の光沢をもつ玉。

 

一人の科学者が前に出る。

「これが証拠?ばかばかしい・・・ただの大きなビー玉じゃないか!

・・・宇宙人だってたった三秒で証明できる。ただの嘘、背の高い人、見間違い。」

 

 

ギャッハッハッハッハ!        いいぞー!

  よく言った!                  もっといってやれ!

         フフフフフフフフフ・・・    

   ハハハハハハハ!         

 

若き博士は歯を食い縛った。

 

 

 

博士たちも、テレビも、新聞も、

誰一人意味の分からないことを言う博士を笑った。

 

若き博士は負けずに言い張った。

 

しだいに友人も近寄らなくなった。

 

マスコミもついに目を向けなくなった。

 

研究発表会も出場禁止。

 

誰からも嫌われる博士。

 

 

 

 

 

見放したわれわれは彼をこう呼ぶ。「砂嵐の男」と・・・

 


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