……………………………………………………。
……………………私は…………いったい…………。
…………寝ているのか? ……身体が、重い。……寝る前、私は何をしていた?
意識がハッキリとしない……。私は何をしていた? 眠りにつく前は、何を?
…………そうだ。私は戦っていたはず。戦い……誰と? 強かった。とても強い何かと……。
強い……キメラアント……王……メルエム……!
そうだ! 私はキメラアントの王と、メルエムと死闘を繰り広げて……!
倒した? そう、倒した……はずだ。……駄目だ。記憶が朧げだ。
ここは何処だ!? 私は……生きているのか? ゴン達は? リィーナやビスケ、カストロさんは? ネテロは?
ぐ、瞼が重たい……。目を開くんだ。ここは一体どこなんだ……?
ゆっくりと目が開いていく。そしてうっすらとした光が私の目に注がれて……。
「ここ、は……」
目に映ったのは知らない天井だ。だがこの雰囲気は何処か覚えがある。
そう、これは病院の――
「うう……」
もしやと思って自分の周囲を見渡す。
まともに首を動かすのも億劫だ。鈍い痛みが全身を走っている。
痛みか……痛いということは生きているという証だ。どうやら私は生きているようだな。
それに……やはりここは病院の一室か。
私の周囲には夥しい数の医療器具が揃っていた。
私に繋がっている点滴や脳波を調べるだろう機器。他にも私の知らない幾つもの機器がずらりと私に繋がっている。まるで重体患者のようだ。
…………まるでじゃないな。重体患者そのものか。軽く全身を確認してみたけど……こりゃあかん。自分でも把握しきれない程の怪我を負っているな。
両腕は動きそうにないな。指先の感覚はあるから使い物にならなくなったわけじゃなさそうだ。でもしばらくはまともに動かせないな。骨が剥き出しになって肉を突き破っていたからなぁ。
腹部は鈍痛が走っている。身じろぎしたらより強い痛みが走りそうだ。手術をしたのだろう。引きつったような感覚はあるが、既に穴は閉じているようだ。……ま、空きっぱなしだったら出血多量で死んでるしな。
あとは全身至るところに縫合しただろう傷があるかな?
見えないから分からないけど、最後の方はメルエムの攻撃を受けながら攻撃を返していたからな。肉が裂け、中には骨が見えていた場所もあったはず。
内臓も幾つか確実にやられてるなこれは。
良く生きてたものだ。……いや、本当に良く生きてるな。我が事ながら大した生命力だ。治療がなければ確実に死んでたろうけどね。
しかし……それでも生きている、か。
………………勝った、のか。
私は、キメラアントに、王に、あのメルエムに……勝ったのか。
そうだ。確かに勝った。今、ふつふつと実感が沸いてきた。
私はあの最強の王に勝ったんだ。
……全身を痛みではなく充足感が襲ってくる。
強大な難敵を相手に勝利を得た。武人として最大の幸福だ。
あのひと時は……本当に充実したひと時だった。
王が怖かった。負けるのが怖かった。そしてそれ以上に興奮し、楽しかった。
あれほどの強者と戦える機会など生涯にどれほどあるか。
別に戦いを好む性格じゃないと思っていたけど、ああも血が滾るとはね。
メルエム、感謝するよ。お前と戦えたことを……。
……メルエム、か。
ずっと忘れていた名前だった。キメラアントの王の名前なんか記憶の彼方に消えていたはずだった。けど、あの時。メルエムの最期の瞬間に、何故か唐突に思い出した。その名も、名の由来も。何故かは分からないけど、思い出せて良かったと思う。
しかし……持てる手を全て切っての辛勝だったな。ああまでしないと一分の勝率もなかったんだ。本当に強かった……。もしメルエムと戦うのがあとひと月も遅かったら……。確実に負けてたな。そう思うとホッとするような、どこか勿体ないような、よく分からない感情が私を襲った。
ふぅ…………。
って! いかんいかん! 感慨に耽ってる場合じゃないよ!
あれからどうなった!? ゴン達は無事なのか!? 巣にはまだ大量のキメラアントがいたはず! あれらはどうなった!?
「だ、誰か……いませんか?」
く、大きな声はまだ出せないか。口を開くだけで痛みが走るとは。
ナースコールはあるけど押すことも出来ない。誰か気付いてくれ。
「誰か……」
む。……こちらに向かってくる誰かの気配。それも複数だな。
ゴン達……じゃないな。知ってる人じゃない。それに武の経験のない人だな、そういう歩き方だ。
「失礼します!」
入ってきたのは白衣の女性とそれに追従するナースか。どうやらこの病院関係者のようだ。タイミングといい、慌てようといい、モニターか何かで私の様子を窺っていたのか?
「意識が戻ったようですね?」
「ええ……」
「良かった。あ、失礼しました。私は貴方の担当医のケイトと申します」
心底ホッとした様子を見せるケイトさん。
……これは誰かに何か言われたな? 恐らくリィーナあたりに私が無事で済まなかったらタダじゃおかない的な何かを。
「り、リィーナに」
「はい! 検査後直ちにロックベルト会長に連絡いたします!」
こりゃあかん。絶対言われてるわ。めっちゃ脅されてるわきっと。
あとでこっぴどく叱っておくから勘弁してねケイトさん。
……いや、リィーナも私を心配してのことだし、私の為に死地に飛び込んでくれたんだ。ちょっとだけにしよう。
しばらく検査してから病室を移動した。
集中治療室にいる必要はもうないようだ。本当だろうか? あれだけの重体なのに、そんなに簡単に出られるものなのか?
まあいい。もう少ししたらリィーナが来るだろう。そしたら色々と確認をしよう。
リィーナがいるということはきっと他のメンバーも無事なはずだ。そう思うと安心してきたな。
あ……この気配は。
「邪魔するぞい」
「ネテロか……」
やっぱりネテロか。この距離まで気付かないなんて流石だな。
リィーナよりも早くに来るなんてすごいな。リィーナなら飛んできそうなものなのに。まあそんなことはいいや。重要なのは私が気絶してから何があったかだ。
「無事で何よりじゃの。医者は最悪を覚悟してくださいとか言っておったぞ? めっちゃ青い顔でな。リィーナに何としても助けなさいと脅されておったしのー」
「やっぱりか。あとで、少し叱るとするよ……。それよりネテロ……」
「分かっとる。お主が倒れてから何があったか、じゃな?」
流石はネテロだ。言わずとも分かってくれるか。
喋るのも億劫だからしばらく聞きに徹していよう。
「まずは一番気になっとるじゃろうゴン達じゃが。安心せい。全員無事じゃ。何名か重傷を負っておったが、レオリオのオーラが回復したらすぐに治療されたわ。今では全員ピンピンしとるぞ」
それは何よりだ。レオリオさんの能力は本当にいい能力だな。
きっと将来はもっとたくさんの人々を助けることだろう。
「キメラアントじゃが、あの後巣に残っておった奴らの大半は討伐した」
大半、か。つまりまだ生き残りがいるということか。
数によっては新たな脅威になるな。メルエムや護衛軍程じゃないけど、一般人や並の念能力者には危険な存在だろう。
「残った少数じゃが、抵抗せずに降伏してきてな。人間並の知能と理性はある連中じゃったが故に条件付きで降伏を許可した」
降伏したのか? あのキメラアントが?
人間を餌やオモチャ扱いしていたあのキメラアントがか?
「女王も王もおらず、これ以上人間と争っても全滅必至と分かったのじゃろう。本当にごく少数名じゃが、降伏したキメラアントは隔離された土地にて厳重に管理及び監視しておる」
……そうか。あのキメラアントにもそういう理性的な者達がいたのか。もしかしたら私が殺した中にも争わずに済んだキメラアントがいたのかもしれないな……。
……よそう。考えても仕方ないことだ。それにあの時は女王が生きていたんだ。女王の命令に忠実なキメラアントでは話し合いも不可能だろう。女王が死んだからこその降伏だったんだ。
「じゃが、恐らく何匹かは逃げている可能性もある。しばらくはキメラアント捜索の為にハンターが動くじゃろうな」
やはり取りこぼしは出てくるか。あれだけの数がいたんだ。1匹や2匹くらい逃げられてもおかしくはない。
厄介だな。出来るなら何の被害も出ない内に討伐されてほしいが。
キメラアントについてはこんなものか。
万事解決とまでは行かなかったが、少なくとも被害は抑えられたはずだ。
私も武神とか言われたことはあるけど本当に神様というわけじゃないんだ。これ以上を望んでは罰が当たるだろう。
……そういえば、私はどうやって助かったんだろう? 治療出来る場所まで持つとは思えなかった傷だったけど。
「私は……どうやって?」
「ん? ああ、お主は緊急を要する状態じゃったからの。ワシが連れてきた討伐隊の1人に頼んで病院へ運んでもらったのじゃよ」
私が死ぬ前に病院へ運べる念能力者。移動系の念能力を持っているのか? それも私の【ボス属性】で無効化しないタイプの。
中々希少だな。その人にも礼を言っておきたいところだ。念能力がバレたくないならネテロから伝えておいてもらおう。
「その人に、礼を……」
「うむ。伝えておこう。取り敢えずはこんなところかの。もう少ししたらリィーナ達も来るじゃろう」
そうか。
ん? そう言えば……どうしてネテロはこんなところにいるんだ?
さっきも疑問に思ったけど、リィーナやゴン達よりも早くに来るなんて。
ここらに常駐でもしてるのか? 会長の仕事はどうしたおい。
「ネテロ……仕事は?」
「ないぞよ」
いやないぞよって。
お前会長だろうが。しかもキメラアントの件で色々とゴタゴタしてるんじゃないのか? ……いや待て。もしかしてそのゴタゴタは全部終わってるのか?
今まで気付かなかったけど、私が気絶してどれだけの時間が経ってるんだ? もしかしたら1ヶ月くらい経ってるんじゃ……。
「私が気絶して……どれくらい経った?」
「5日じゃよ。ワシん時より早く起きたからワシの勝ちじゃろ?」
何でそうなる。あの時の勝負で入院した時よりも早くに目覚めたから王様に勝ったとでも言いたいのか。子どもかお前は。
ってそうじゃない。5日で会長の仕事がなくなるものなのか?
結構な事件だったからもっと書類仕事や各所への報告とかあるだろうに。
「ビーンズに、迷惑かけてない?」
「かけてるかものう。だってワシ、会長辞めたもん」
もんじゃねーよ。何が会長辞めただ……。わっつ?
「ネテロ……! どういう、う、ぅ」
「興奮すんなよ重体患者が。まあ落ち着いて話を聞け」
く、そうだな。まずは落ち着こう。興奮すると傷に障るだけだ。
「一応会長としての仕事はちゃんと終わらせてきたぞ。キメラアントの件も大半は処理してきた。じゃから立つ鳥後を濁さずに辞職してきたわい」
「だからといって……」
会長を辞める必要はないだろう。お前を慕っているハンターが協会にはどれだけいると思っているんだ。まだお前を必要としている人だって……。
そういう考えが表情に出ていたのだろう。先程までとは打って変わってネテロは真面目な顔になった。
「仕方ないだろ……あんな戦いを魅せられて、それで大人しく会長なんてやってられっかよ」
「……!」
ネテロから闘志が溢れ出ている。
お前、それじゃあ……。
「もう十分に協会には尽くしてきた。オレがいなくてもやっていける下地もある。年寄りは引退さ。そして――」
ああ、その先は分かっているさ。
「残りの人生はお前との勝負に専念させてもらうぜ」
「ふ、望むところだ……」
そうか。そこまで言われたらもう私から言うことはない。
ネテロの人生だ。ネテロが道を決めて当然だ。
だが覚悟しろよ。私との勝負に専念しなかった方が良かったと思わせてやるさ。
かつての戦績は私が負け越しているんだ。今からそれを巻き返してやる!
私とネテロの闘気がぶつかり合う。
ふふ、私も寝入ってばかりはいられないな。
早く怪我を治さなくては!
…………む。ヤバス。
「……ネテロ」
「ん? どうした?」
「済まないが、少し席を外してくれ……」
「……………………トイレじゃな?」
なぜバレたし。いや、ふと尿意がね。
体はまともに動かないけど、だからといって誰かの世話になりたくないし。
なんか前にも同じようなシチュあった気がする。でもあの時は目の前にこんな邪悪な笑みを浮かべる妖怪はいなかったがな。
「そうか、それは仕方ないの。どれ、ワシが下の世話をしてやろう。なに遠慮するな。まともに体も動かんじゃろ?」
「ぶっ殺しますよこのエロジジぶふぅっ!?」
「うおお!? あ、アイシャ!?」
あ、これあかん。あかんやつや。なんか傷開いたっぽい。しかも内臓。興奮して勢い良く体を起こした上に咳き込んだのがまずかったな。あ、目眩が。ナースコール押してくれネテロ。
「アイシャさん! お目覚めになられたとアイシャさーん!?」
「どうしたのよリィーナってアイシャー!? ジジイ何してんのよアンター!」
「アイシャ! 何があったの……血だらけだ! もう大丈夫じゃなかったの!?」
「ネテロ会長何しやがった! 場合によっちゃこの場の全員を敵に回すぜ!」
「落ち着け皆! まずはアイシャの容態を確認するんだ!」
「うおお! 【掌仙術/ホイミ】ーー!」
「アホかレオリオ! アイシャのオーラを失くす気か! しかもどさくさに紛れて胸触ってんじゃねーぞこらぁ!!」
そんなことより早く医者を呼んでください……。し、死ぬ。
「お前ら落ち着け。早く医者を呼ばなきゃアイシャが死ぬぞ」
『あ』
ありがとうカイトさん。あなたが命の恩人です。
そうして私は集中治療室に舞い戻った。
◆
「死ぬかと思いましたよ」
『申し訳ありませんでした』
再手術が終わり、更に1週間の期間を開けてようやく面会が出来るようになった。
以前の検査で集中治療室から出られたのは早くにリィーナに連絡したいが為だったようだ。それほど切羽詰っていたんだろう。施術後も何度も謝られた。逆に申し訳ないよ。
今、私の前であの場にいた全員が土下座している。
全く。見舞いに来てくれたのはありがたいが、怪我人を余計に悪くしてどうする。
主にネテロのせいだがな!
「あいすまんかったアイシャ。この通りじゃから許してくれ」
この通りだから。言葉としてはおかしいだろう。
だが今のネテロを見れば意味は良く分かる。
うん、全身ボロボロだな。皆から折檻食らったのだろう。
……まあなんだ。広い心で許そうじゃないか。流石にこれ以上は忍びない……。
「もういいですよ。あなたにも助けられましたからね」
実際ネテロが討伐隊を組んでNGLに来なければ私は死んでいたんだからな。
結果的に命の恩人の1人なんだ。これくらいは大目に見なくては。
「皆さんもです。私を助けに来てくれて本当にありがとうございました」
平頭する皆に逆に頭を下げる。
ゴン達が来なければ、レオリオさん達が来なければ。
私だけでは死んでいただろう。
皆が護衛軍を倒し、そして声援を送ってくれたから勝てたようなものだ。
あの声援は確かに私の力になった。限界を越えていた体を動かせたのは私の意思だけではなかったと思う。
「オレはむしろ礼を言う方さ。お前さんがいなければ確実にオレは死んでいただろうからな。ゴン達と違ってオレはお前を助けに来たわけじゃないからな。助かったよアイシャ」
「いえ、お互い無事で何よりですよ」
カイトさんは1人キメラアントの調査に来ていたんだったな。
それで戦闘になったんだろうけど、ゴン達と会ってなかったらきっと戻っていただろう。そうなるとやっぱりカイトさんがキメラアント戦で命懸けの戦いをしたのは私に原因があるんじゃ……。
「私がアイシャさんをお助けするのは当然のことでございます。礼を言われるほどのことではございません」
「うん、ありがとう。でもあなたはこの病院の医師に謝っておきなさいね?」
どれだけ圧力かけてたのか。
医者の面々の私への態度といい、私の病室の超VIP仕様といい。全く。
まあ、私を思っての行動と思うと可愛く思えもするけど。
「も、申し訳ございませんでした……」
「それは別の人たちに言うことですよ。でも、本当にありがとうリィーナ。それにレオリオさん、ビスケ、カストロさん。あなた達が助けに来てくれなかったら今頃は……」
ゴン達は確実に護衛軍に殺されていただろう。
そして私も……。
「オレがアイシャを助けるのは当然だぜ。気にすんなよ」
「私を諌めてくれたアイシャさんの助けとなれたなら本望だよ」
「そうそう。それより、感謝の言葉はいいから今度はあたしを助けてくれない? このままじゃ元の姿で風間流の道場を逆立ちして10周しなくちゃいけないのよ……」
どうしてそうなる?
一体何があったのさ?
「実はね……」
なるほど……。そんなことを言ってたのか。
私がピンチになることないと思ってたら、めっちゃピンチだったと。
それは申し訳ないというか、何というか……。
仕方ない。これは助け船を出しておこう。ビスケも私を助けてくれたんだし。
「リィーナ……」
「はい、分かっておりますアイシャさん。ビスケ、あんな口約束はもう結構ですよ。私に付き合って命を懸けてもらい本当に感謝しているのですから」
「セーフ! いやー良かったわさー。一時はどうなるかと思ったわよ」
「ちっ、つまらんのう」
止めとけネテロ。煽るとまたボコられるぞ。
「ゴン達も、ありがとうございました。皆が来てくれなかったら私は……」
そう、私はきっとキメラアントを殺した重圧に負けていただろう。
私自身も気付かない内に心に積もっていた負の感情。それをゴン達が気付かせてくれた。私の心を救ってくれたんだ。
「ううん。オレ達がもっと強ければアイシャも1人で無理しなくても良かったんだ」
「今度は1人で勝手に行くんじゃねーぞ。どうせオレ達は追いかけるんだからな」
「そういうことだ。1人で抱え込む必要はないさアイシャ。私はそうお前たちに教わったんだ」
「例え地の果てだろうとアイシャの為なら助けに行くよ。だからこっそり消えても無駄だぜ?」
皆……。うう、いい友だちを持ったよ私は。
……私の為に命を懸けてくれるこんな彼らに、何時までも黙ってはいられないな。
丁度いい機会だろう。気がかりもなくなったんだ。全てを打ち明けよう……。
童貞以外な。
「皆、ありがとう……。それと……皆に話したいことがあります」
「話したいこと?」
「……まさかアイシャ」
ん? これは……もしかしてクラピカは知っているのか?
「気付いていたんですかクラピカは?」
「推測だがな……グリードアイランドでようやく気付いたよ。当たっている確証もないし、荒唐無稽な話だが」
ああ、やっぱりか。多分それは当たってるよ。
転生なんて荒唐無稽過ぎて想像出来る方がすごいからね。
「良いのですかアイシャさん?」
「ええ、何時までも黙っているわけにもいかないでしょう」
リィーナが心配そうに見つめてくる。
大丈夫だよ。例えこれで嫌われても、仲直りすればいいだけさ。
それが友だちってものだろう。何年掛かっても謝り続けるさ。
「アイシャが隠していたことか」
「うん。キルアには前にいつか説明するって言ってましたね」
「そうだな……クラピカは自分で気付いたのかよ」
「ああ。だが、これは恐らくキルアには、そしてレオリオとミルキも気付けなかっただろうな……」
なんでその3人は気付けないんだ? キルアとかかなり洞察力高いと思うけど。
「そうね。その3人は無理ね」
「ですね」
ビスケとリィーナもクラピカと同じ意見なのか。
怪訝に思うけど、3人に何か共通点でもあるのかな?
「リィーナさんやビスケも知ってるんだ。ねえクラピカ、オレなら気付けるの?」
「いや、ゴンは素で無理だな」
「ひどいよクラピカ!」
ドッと笑いが巻き起こる。ゴンには悪いけど、こういうのはやっぱり楽しいな。
「ふふ、大丈夫ですよゴン。気付ける方がおかしいのですから」
「ううー」
拗ねるな拗ねるな。
さて、何時までもこうやって話を長引かすわけにもいかないな。
真実を告げよう……。
「私の正体は……リュウショウ=カザマといいます」
『……え? いや、え?』
キルア、レオリオさん、ミルキ、カストロさんが混乱している。
ゴンはそうでもないけど、キョトンとしているな。もしかしてリュウショウの名前を知らないのかもしれない。
「リュウショウって確かリィーナさんの道場の前責任者じゃなかったっけ?」
「ええ、そうですよ。良く知っていましたねゴン」
「うん、だってリィーナさんに教え込まれたしね……」
何教えてるんだリィーナ……私のことより武術教えろよ。
「でもその人ってずっと前に死んだんでしょ? それがどうしてアイシャの正体になるの?」
すごいなゴンは。こうもハッキリと自分の聞きたいことを聞けるのもある種の才能だよ。キルア達なんて未だに固まってるぞ。
「はっ! そうだよ、ゴンの言う通りだ! 冗談きついぜアイシャ!」
「だよな! 冗談だよな!」
「嘘だと言ってよアイシャ!」
落ち着けミルキ。何か口調変わってるぞ。
でも仕方ないか。こんなのすぐに信じられる方が稀だからね。
だけど……本当のことなんだよ皆。
「お主らの気持ちは分からんでもないがの」
「あんた達もネテロのジジイと仲良かったり、リィーナが傾倒しているのを見ておかしいと思ったでしょ?」
「もはや憚られることもないのでこう言いましょう。……先生の仰っていることは全て事実です」
ネテロ、ビスケ、リィーナと私と親しい者達が立て続けに同意する。こうまで言われてはキルア達も冗談とは受け取れないだろう。
「だ、だけどよ。リュウショウ=カザマが死んだのも事実じゃないのか?」
「はい、確かにリュウショウとしての私は死にました」
「じゃあ何で……いや、リュウショウっていつ死んだんだ?」
「14年と少し前ですね」
「今のアイシャの年齢は……」
「ええ、14才です。今年で15才になりますね」
キルアとミルキも気付いたか。
ここまでヒントが出れば聡明な彼らなら気付きもするだろう。
「確かに……アイシャさんがリュウショウ殿だと言うのならば色々と納得はいきますな。風間流の武術と念能力。ともにリィーナ殿を上回るともなると、そうはいますまい」
カストロさんの言葉が更に判断材料になった。
レオリオさんも認めたくないのだろうけど反論材料がないから唸っている。
……やっぱり前世持ちなんて嫌なんだろうか。
「でもどうやって……」
「念能力、だな?」
ゴンの疑問にはカイトさんが答えた。
その言葉に私は頷いて肯定する。
「特質系、もしくは具現化系ならば可能やもしれん。オレもそれに近い能力に覚えがある」
私以外にも似たような能力を作った人がいるのか?
世界は広いな。もっと経験を積まねば。
「リュウショウの時代に転生をする念能力を作っていました。それがリュウショウの死と同時に発動し、今の私となったのです」
「転生……」
「マジかよ……」
「嘘だろ……」
簡単には信じられないか。
無理もない、私も自分で体験しなかったら転生なんてそうそう信じられはしないだろう。
「うーん、リュウショウさんが死んで、アイシャになったんだよね?」
「ええそうです。その際にオーラや経験も引き継いでいるのでここまで強いわけですね」
「そっか。なら別に問題ないんじゃない?」
え? そうなの? 簡単に言うけど前世があって元130才以上のお爺さんだったんだよ? それをずっと黙ってたのにそうあっさりと問題ないで済ませられるの?
「アイシャは念能力で転生したんだろうけどさ、転生って念能力がなくても出来るんじゃないの? だってそうじゃなきゃ転生って言葉が作られないだろうしさ」
時々この子は凄い核心を突くよな。概念としての転生は確かにある。
でもそれはそういう宗教観念であって、実際にそうあるわけではないと思っていた。
だけど、こうして私が念能力でとはいえこうして転生しているんだ。記憶の引き継ぎとかはなくても命は輪廻転生しているのかもしれないな。
「アイシャは念能力のおかげで記憶があるだけで、他の皆も……オレ達だって昔は別の何かだったかもしれないでしょ。それを忘れてるだけでさ。そんなの気にしてたら今を楽しめないと思うんだ。だから、アイシャも昔はリュウショウさんでも、今はアイシャでいいんじゃないの?」
ご、ゴン……。
「私は……私のまま、ゴンと一緒にいてもいいんですか?」
「当たり前だよ! 昔は昔、今は今でしょ」
この子の器にはきっと穴が空いているか……それとも、海よりも広いのかもしれない。
「昔は昔……」
「今は今、か」
キルアとミルキが私を見つめてくる。さっきまでとは違ってそこにはもう混乱は見られなかった。
「そうだな、ゴンの言う通りだぜ」
「ああ。オレ達だって過去は最低の仕事をしてたんだ……」
キルアもミルキも、かつての家業により重い過去を持っている。
けど今はそんな過去から離れて明るい人生を歩もうとしているんだ。
だからだろうか。2人とも私を認めてくれたのは。
「悪かったなアイシャ。お前の過去なんて関係ないよな」
「ああ、ちょっと、いや正直かなり動揺したけど……受け入れればこの属性もありかもしれない」
なんかミルキが遠い場所へ行ってしまいそうで怖いんだけど。
でも嬉しい。なんだか涙が出てきそうだ。
「クソっ! オレだけウジウジ悩んでて馬鹿みたいじゃねーか!」
「レオリオさん……レオリオさんが悪いわけじゃ……」
「いや待てアイシャ。別にオレはお前を責めているわけじゃない。こんなの簡単に話すこと出来ないのは分かるさ。そんなことでお前から離れたりしねーよ」
レオリオさんの優しい瞳を見てそれが本心であると理解出来る。
ああ、こんな私を受け入れてくれるのか。もっと早く話せば良かったなぁ。
「でも、正直自分の中で整理しきれない気持ちもあるんだよ……」
「分かる。それは分かるぜレオリオ……」
「そうか? もうオレは覚悟を決めたぜ。前世なんてなかった。今あるがままのアイシャを見るぜ!」
「今だけは兄貴を尊敬するぜ……」
「……何が気になるんだろ?」
「詮索してやるなゴン。奴らも男なんだよ……」
「? オレもクラピカも男だよ?」
「私も元男ですが、良く分かりませんね……」
「アイシャ、出来るなら元男という言葉は口に出してやるな、あまりにも奴らが不憫だ……」
はあ、まあ男に戻ることは出来ないからそれはいいけど。
「これでアイシャがここまで鈍感だった理由が分かったぜ」
「ああ、前世の記憶のせいだな」
「間違いない」
失礼な。私はそれなりに鋭いつもりですよ?
……戦闘関連はだけど。それ以外の機微に疎いのは分かってるけど。
「まあなんだ。グダグダ言っちまったけど、お前に言った言葉に嘘はないぜ。ゴンが言った通り前世なんて関係ない。アイシャはアイシャだからな」
レオリオさんの言葉に皆が頷いてくれる……。
こんな私をまだ友だちと思ってくれている。ずっと、大事なことを黙っていた私をまだ……。
「う、ぅぅ……」
『泣いた!?』
泣きもするよ。本当は怖かったんだ。ゴン達に嫌われたらどうしようって。
話したくはなかった。けど、もう話さずにいるのも嫌だったんだ。
「もう、思い残すことはありません……」
『死ぬ気か!?』
いえ、それくらい嬉しいということです。
実際思い残すことはまだあるので死にたくはないけど。
……もう1つ、けじめが残っているからな。
「これが本当に武神リュウショウの生まれ変わりなのか?」
「この泣きっ面見てそう思える奴がいたらそいつの脳を疑うぜ」
「やばい、可愛い。もう元とかどうでもいい」
「修羅の道を進むかミルキ……」
「何書いてんのリィーナ?」
「いえ、要注意人物のリストを更新していただけですよ」
「リュウショウ殿、後でサインを……」
「取り敢えず写メじゃ。こんなアイシャレアすぎる。後でからかおう」
「ゴン、お前ら何時もこんなノリなのか?」
「大体そうだよ!」
……何時も通り過ぎて安心するよ。
あとカストロさん。サインはいいですけど呼び方はアイシャでお願いします。
それとネテロ。お前は治ったらぶっ飛ばす。
「みんな!」
突然大声をあげた私に驚いて皆が一気に静まった。
私は息を吸い込んで勢い良く今の気持ちを言葉にする。
「私は、みんなと出会えて本当に幸せだよ!」
◆
~それぞれのその後~
※名前のないキャラは殆ど省いています。名前あっても省いているキャラもいます。また、既に作中で亡くなっているキャラもありません。
・リィーナ=ロックベルト(五話初登場)
キメラアント事件から少しして、バッテラとの取引で手に入れていた“魔女の若返り薬”を使って見た目相応に若返る。本来ならアイシャと同じ年齢まで若返りたかったが、薬がビスケにバレた為それも叶わなかった。グリードアイランドの報酬の一件により、2人で薬を分けることになる。
若返ってしばらくして風間流本部道場長の座を一時的にルドルに託す。本当ならシオンをとも思っていたが、彼女は妊娠・出産を繰り返しているので無理だった。
アイシャとの修行の日々に幸せを感じている時、カストロからの猛烈なプロポーズを受けて根負けし再婚する。ビスケからは相当妬まれたという。
・アイザック=ネテロ(五話初登場)
ハンター協会会長を辞職した後、修行とアイシャとの決闘に明け暮れる。メルエムとの戦いを経験し、その上未だ発展途上だった身体能力とオーラも成長し続けるアイシャを相手に多くの敗北を喫することになるが、最後の勝負には意地を見せての逆転勝利を得る。そしてその1週間後に満足したかのように息を引き取った。
享年132歳。奇しくもリュウショウ=カザマの享年と同じであったという。最期に発した言葉は「今度はオレが勝ち逃げよ」だった。その死に顔はいたずらが成功した子どものようだったそうだ。
・ドミニク=コーザ(六話初登場)
※閲覧禁止。
・べロム(六話初登場)
アイシャのオーラを浴びて恐怖のあまり失神。激怒していたドミニクによって下っ端に降格されるが、すぐにマフィアから足を洗う。その後は故郷に戻り実家の畑を手伝いながら日々を過ごした。
・クロロ=ルシルフル(六話初登場)
他の幻影旅団とともに脱出不可能と言われる念能力者専用監獄に収容される。
全ての念能力も封じられ、他者を傷付けることも禁じられているため過酷な収容生活を強いられている。だが、残りの旅団員ともども脱走を諦めてはおらず、虎視眈々と機会を窺っている。
・ディオウ(七話初登場)
自称ダブルビーストハンター。アイシャのオーラを浴びて失神するも、その後も特に変わらず過ごすある意味図太い神経を持つ。
・流星街の議会員(八話初登場)
流星街を取り仕切る中、対処困難な事態が発生した時に以前の契約を利用しアイシャに救援を求む。その後も変わらず流星街を取り仕切っている。
・ヒソカ(九話初登場)
様々な掟で縛られるも意外と楽しく人生を謳歌する。人助けをしながら敵を排除し、アイシャと再び戦える時を楽しみにしながら牙を磨く。
・船長(十話初登場)
ゴンのようなハンターの卵を見ることを楽しみにしながら毎年ハンター試験志望者達を運ぶ。
・クイズババア(十話初登場)
レオリオのようなハンターの卵を見ることを楽しみにしながら毎年ハンター試験志望者達を篩いにかける。
・魔獣凶狸狐達(十話初登場)
今もハンター協会に協力してハンター試験案内人をしている。
・ビーンズ(十二話初登場)
ネテロの辞職後ハンター協会のゴタゴタであくせくする。ネテロ死後はハンター協会を辞職し、ネテロの墓の近くに家を建てて余生を過ごした。
・イルミ=ゾルディック(十一話初登場)
キルアに執念を燃やすも、キルアの周りにいる面子のせいで上手くはいかない。だがそれでも諦めることなくその歪んだ愛を貫き続けている。
・ゴン=フリークス(十一話初登場)
修行を続け、強化系として最強とまで言われるようになる。高速の流から発動する両手足から繰り出される変幻自在の【ジャンケン】は驚異の一言。この頃にはキルアとの勝率も五分五分に。
父親であるジンを見つけ、目標の1つを終えた後は信頼する友と一緒に世界を旅してハンター生活を満喫する。その後も様々なトラブルに巻き込まれたり首を突っ込んだりするが、一緒にいる友の力もあって困難を乗り越えていった。
・レオリオ=パラディナイト(十一話初登場)
念願の医者となってから、ハンターライセンスの力を借りて世界中を飛び回り自由に人々を治療する生活を始める。多くの人を助け、多くの人から感謝されるが、貧しい人から金を受け取ることは絶対になく、世界一貧しい医者と呼ばれるようになる。
ゴン達とも【高速飛行能力/ルーラ】の力で離れていてもすぐに再会出来るので、よく一緒に遊んだり冒険したりしていた。そう言った冒険や、多くの人を救った功績が認められ数少ないトリプルハンターの1人となる。
・クラピカ(十一話初登場)
多くの仲間の助けを得て、紆余曲折を経て長い時間を掛けてようやく全ての緋の眼を集め終わる。緋の眼を一族の墓に埋葬し、弔った後は夢であった冒険家となり世界中を旅する。その中でゴン達とも一緒に冒険をし、充実した人生を送った。
・トンパ(十一話初登場)
幾度となく脱走を繰り返し、その度に折檻される。諦めることはなかったが、ついぞ夢(笑)が叶うことはなかった。だが数年後にミズハと結婚。美しい妻と3人の子どもに囲まれるという、一般的にリア充と言える人生を得る。本人はそれでも充足していなかったが、なんだかんだで幸せになった。……周りからの嫉妬は激しかったという。
・キルア=ゾルディック(十一話初登場)
ゴン達とともに厳しい修行を続け、十分な自信をつけると実家に帰る。そして閉じ込められていた最愛の妹(?)を救い出し、再び家出をする。友と妹と一緒にそのまま世界中を旅したり、冒険したりと過去を乗り越えて楽しく生きていった。
・ニコル(十一話初登場)
引きこもった。
・ブハラ(十二話初登場)
美食ハンターとして人生を謳歌する。
・メンチ(十二話初登場)
同上(チチでけーな)
・ハンゾー(十二話初登場)
黒の書を読み、SINOBIとして実力を高める。その後隠者の書を見つけることに成功し、新たな任務……抜け忍狩りについた。
・トードー(十二話初登場)
第287回ハンター試験後、力不足に気付いて修行をし直す。その後プロハンターになれるかどうかは彼次第である。
・ロッククライマー(十三話初登場)
アイシャに助けられるも、3次試験をクリア出来ずにリタイア。次のハンター試験も受けるが、キルアとミルキのどちらかに一瞬で倒されてハンター試験そのものを諦める。
・リッポー(十三話初登場)
今も刑務所の所長を続け、時折ハンター試験の担当をこなす。
・ポックル(十五話初登場)
第288回ハンター試験にてキルアとミルキの攻防に巻き込まれて不合格となる。だが、多くの受験生が諦めた中、心折れかけるが持ち直して修行に勤しむ。結果、第289回ハンター試験にてプロハンターとなる。今は念願の幻獣ハンターとなって活動中。
・ビスケット=クルーガー(十六話初登場)
リィーナから分けてもらった“魔女の若返り薬”で20代に若返り再び青春を謳歌する。だが、アタックを仕掛けていたカストロがリィーナとくっ付いてしまったためしばらくグレて旅に出た。帰ってからは冷やかしながらもリィーナ達と仲良く過ごす。
恋人募集中。強くてかっこよくて金持ちで優しく言うことを何でも聞いてくれる人なら誰でもOKとのこと。
・ノヴ(十七話初登場)
キメラアント討伐隊に選ばれるも、ただの1匹も討伐することなくアイシャやゴン達を連れて帰る。彼のおかげで命が助かったのでアイシャには恩人として見られている。王や護衛軍のオーラを見ることがなかったので禿げてはいない。ある意味救われた人。
・ケンミ(十九話初登場)
風間流で修行の日々を送る。才能は普通だが、類まれなる努力により師範代まで登り詰めた。後に心源流のズシといいライバル関係になった。
・ゼブロ(二十話初登場)
身体が老いて試しの門を開けなくなるまで門の前で守衛のフリをしながら掃除夫として働く。
・ゼノ=ゾルディック(二十話初登場)
仕事以外では殺さない職業暗殺者の鑑のようなスタイルを貫き続ける。最近は孫の成長を確認するのが中々の楽しみになっている。
・ミケ(二十話初登場)
侵入者を丸かじりする癖は何時までも直らなかった。でも骨は食べずに捨てる。
・シルバ=ゾルディック(二十話初登場)
父親としてキルアやミルキの成長を嬉しく思うが、予想に反してキルアが家に戻って来ないので家督はイルミに継がせようかと思案中。
・キキョウ(二十話初登場)
お気に入りのキルアに付き纏っている(と思っている)アイシャを毛嫌いしていたが、同じ流星街出身と知って態度を改める。元々強さは気に入っていたので今はキルアかミルキの嫁にしようと画策中。
・ミルキ=ゾルディック(二十話初登場)
アイシャの正体を知った時は少々へこたれたが、すぐに開き直った。今は前世も含めてアイシャの属性だと割り切っている。だが中々想いを伝えることが出来ていない。
キルアと協力して妹(?)を救い出す。喧嘩をすることもあるが、仲良し兄弟となった。この作品でもっとも原作とかけ離れた人物の1人である。
・カルト=ゾルディック(二十一話初登場)
兄の殆どが家からいなくなった為、自ら家を飛び出し世界を旅する。目的は兄とともに日々を過ごすこと。カルトちゃんの冒険が今始まる!(嘘)
・ウイング(二十二話初登場)
シオンと結婚後も心源流の師範代として真面目に修行したり弟子の育成にあたる。結婚後も波乱万丈の生活を送るが、多くの家族に恵まれ何だかんだで幸せになった。最近の悩みは娘が性的に狙ってくること。
・ズシ(二十二話初登場)
真面目な性格もあり、努力を重ねてバトルオリンピアに参加するに至る。その後も修行を続け心源流の師範代となった。ウイングに教わったように、多くの弟子を取って教授する。
・シオン(二十二話初登場)
ウイングと結婚後、しばらく主婦に専念して風間流からは遠ざかる。結婚後も順風満帆な性活を送り、産めや増やせやと7男5女の子宝に恵まれた。子育てが落ち着いてから風間流に復帰。齢50にて本部長となった。
最大のライバルは娘。念のおかげで見た目は若いが結構年を気にしている。最近“魔女の若返り薬”を取りに行こうか悩んでいる。
・カストロ(二十五話初登場)
修行を重ね、ヒソカに再戦を挑む。ヒソカの片腕を奪うも自身も左目と片腕をやられ、それでも死闘を繰り広げるが結果は痛み分けに終わる。ヒソカとの決闘後、勝てはせずとも負けもしなかったことにようやく自信を取り戻す。その後ずっと敬愛していたリィーナに一世一代の告白をする。
結婚後は尻に敷かれていたが、それでも幸せだった。結婚後もヒソカに完勝することを目標に弛まぬ努力をする。
・ミト(三十一話初登場)
ずっとゴンの帰りをくじら島で待っている。時々帰ってくるゴンの話を聞くのが1番の楽しみとなる。
・ランド=グレーナー(三十三話初登場)
トンパの結婚を祝福するも、過去のトラウマから自身は結婚など考えずに修行に励む。実は彼を好いている女性が近くにいたりするが全然気付いていない。
・ルドル=ホフマン(三十三話初登場)
リィーナへの恋心は心の奥に追いやり、彼女の再婚を祝う。その後リィーナに託された風間流本部道場を切り盛りすることに粉骨砕身する。
・エイダ(三十三話初登場)
リィーナを尊敬し憧れていた為、その再婚相手であるカストロを嫌っている。だが、トンパやリィーナと結婚話が続いた為近くにいるある男性を意識するようになった。こっそりアタックしているが、当人には気付かれていない。
・サイゾー=キリガクレ(三十三話初登場)
何時もと変わらず修行に明け暮れていたが、ふとした拍子に風間流本部道場から姿を消す。数ヵ月後にボロボロの姿で帰ってくる。心配していた仲間に事情を聞かれるが、ケジメをつけて来たとだけいってそれ以上は語らなかった。その後も時々姿を消すことがあったが、最後には必ず風間流本部道場に戻ってきたという。
・ミズハ=トロイア(三十三話初登場)
数年後、好みのタイプど真ん中ストライクであるトンパに強化系の本領を発揮するような押しでゴールインする。本人は幸せだが、家族からは何度も反対されたり、多くの門下生から結婚を惜しまれたという。
・ピエトロ=カーペンター(三十三話初登場)
片想いだったミズハがトンパと結婚したことで失意のあまりに出奔する。過去を忘れるように心源流の門を叩き、しばらく修行した後に2つの流派を合わせた新たな流派を作り出した。
・幻影旅団員(三十六話初登場)
クロロ=ルシルフルの項を参照。
・バッテラ(四十五話初登場)
恋人と海辺の一軒家で幸せに暮らしている。
・ツェズゲラ(四十五話初登場)
しばらく黒の書捜索に力を入れていたが、大半をリィーナが集め終わっていることを知って肩を落とす。その後もマネーハンターとしてプロハンター活動を繰り広げる。
・ゲンスルー(四十八話初登場)
風間流本部道場で修行に明け暮れながら10年。ようやくリィーナから解放の許可を得る。サブ・バラと共にグリードアイランドの報酬で世界中を巡り豪遊するが、やがて虚しくなり3人で風間流本部道場へと戻ってきた。今では3人で風間流の外部念能力者指導員として働き充実した毎日を送る。
・ラターザ(四十八話初登場)
未だグリードアイランド内にいる。
・ある川の船頭のお姉さん(四十九話初登場)
よく仕事をサボるので上司のヤマなんたらさんに叱られている。
・ハメ組(五十話初登場)
クリア直前にクリアをかっさらわれた形となったので、その場で仲間割れが起きた。死人こそ出なかったが、多くが傷つき解散することになる。中には未だグリードアイランドから出られない者も。
・サブ&バラ(五十話初登場)
ゲンスルーの項を参照。
・カヅスール組&アスタ組&ハンゼ組(五十五話初登場)
グリードアイランドから離れてリィーナに報酬の1億ジェニーを貰う。その後は各々自由に活動した。
・ゴレイヌ(五十五話初登場)
ゴリラの住む森を守る為今も頑張っている。きっとグリードアイランドのクリア報酬もその一環だったのだろう(捏造)。
・レイザー(五十五話初登場)
グリードアイランドがクリアされたので、新たにイベントなどを他のゲームマスターと一緒に作り直している。その内ゲームも再開されるだろう。次は“一坪の密林”を守っていただろうゲームマスターに出番があることを祈る。
・ツェズゲラ組(五十七話初登場)
ドッブル、バリー、ロドリオット。今もツェズゲラと組んでマネーハンターとして活動中。
・カイト(六十話初登場)
キメラアント事件後、ゴン達と別れハンターとしての活動を続ける。優秀なハンターとして次々と新たな発見をし、師であるジンを追い越そうと更に邁進していた。
・生き延びたキメラアント達(六十話初登場)
殆どのキメラアントが討伐された中、コルトとペギーを筆頭とした比較的穏健派とも言えるキメラアントはネテロに投降。その後隔離された土地にて静かに余生を過ごす。中には人間の頃の記憶を取り戻し、無害と判断され故郷の村に帰れた者も。
・逃げ延びたキメラアント達(六十話初登場)
討伐隊からどうにか逃げ延びた者達。メレオロンはその能力を使って人間に見つからないようひっそりと過ごす。ハギャはある場所にて再起を図るが……。
そして――
1人の女性がその長き人生に終止符を打とうとしていた。
別に病気や怪我などが原因ではない。幸運にも老衰という天寿を全うした死に方だ。齢150年にもなろうというギネスにも乗っている最長寿だ。〈前世〉も含めると300年近い人生を歩んでいる、もう十分だろうと彼女は思う。
彼女……アイシャは死を間近にこれまでの人生を思い返していた。
好敵手との幾多の決闘。友との多くの冒険。多くの出会いがあり、多くの別れがあった。
好敵手が亡くなった時は悲しみ、そして悔しかった。勝ち逃げなんてしてと憤慨したものだ。自分も同じ気持ちを相手に与えていたことを思い出すと悔しさも多少は紛れたが、それでも悔しいものは悔しかった。
いつか自分のように生まれ変わったりはしないかと思っていたが、それに値するような敵についぞ巡り会わなかった。
そう、アイシャはネテロ亡き世界でハンター達から最強と謳われるようになっていた。幾度もネテロと戦い勝利を手にしていたのだ。その話がプロハンターに流れないことは流石になかった。……アイシャにとって、敵のいない最強なんて虚しいだけだったが。
友とはそれからも研鑽した。
彼らは瞬く間に成長し、アイシャも認める程の強者となった。
だが、そんな彼らももういない。時の流れは残酷だった。
アイシャは唯一の肉親であった父が死んでから、以前に夢に見た孤児院を設立した。
自分が愛され育てられたように、親のいない孤児達に愛情を注いであげたくなったのだ。
多くの援助もあり、孤児院は無事運営出来ていた。今も多くの孤児たちが楽しく遊んでいる声が聴力の衰えた耳に届いている。
孤児が多いということは良いことではないが、それでも子ども達が楽しそうに過ごせている事実は自分がしたことが無駄ではなかったと思わせてくれた。
そんな子ども達の声を眠り歌にして、アイシャはゆっくりと意識を落としていく。
既に逝ってしまった友たちに再び会えるだろうかと期待する。
愛弟子はきっと待ち続けているだろうと確信していた。
好敵手はきっと待つことなく先に進んでいるだろう。必ず追いつこうと心に誓う。
父と母は仲睦まじく過ごしているだろう。そうであることを願った。
長い、長い人生だった。
後悔は多く、やり直せるならやり直したいと何度も思った。
だが、それと同じくらい……いや、それ以上に充実した人生だった。
「母さん……私は、幸せだったよ」
孤児院の職員が昼食を運んで来た時には既にアイシャは息を引き取っていた。
その死には孤児院の子どもや職員を始め、多くの人々が悲しんだという。
齢150歳。激動の人生を歩んで来たアイシャのその死に顔は、とても安らかなものだったという。
――【輪廻転生/ツヨクテニューゲーム】発動!――
暗い暗い場所にいる。意識がはっきりとしない。ここが死後の世界なんだろうか? もしかして地獄かなとも思うが、何故か全身を安心感が包んでいる。地獄とはそのように安心感を抱く場所なんだろうか?
そう思っていると身体が外気に触れたのが分かる。どうやら先程まで液体の中にいたようだ。
不思議に思って周囲を確認しようとするが、身体の機能の殆どが自由にならない。感覚も大分鈍いな。これではどういう状況なのかさっぱり……って、痛い痛い。何で叩かれているのか。
――叩かないでもらえませんか――
そう声を上げても、声は言葉にならずに別の音となって口から飛び出た。
そう、オギャーという泣き声となって。
「良かった泣いた!」
「おめでとうございます! 無事生まれましたよ!」
「ああ、初めまして……私がママよ」
…………どうしてこうなった?
~Fin~
これにて、どうしてこうなった?は完結となります。この二次創作は、自分がハンターハンターの世界に行けたらどうするか、という中二心から始まりました。良くネット小説であるような長い時間を修行に費やしたとか絶対に私には無理です。ちょっとの訓練で強くなる才能もないし、チートなんてもらえるわけない。
それなら念能力はどんな風にしたらいいかって考えた結果が【絶対遵守/ギアス】だったりします。これなら怠惰な私でも強くなれるだろう! そういう思いで考えた能力ですね。
まあ、そもそも念能力を都合よく覚えられるのが既にご都合主義ですが。ちなみに1番のご都合主義はハンターハンター世界にトリップしたことです。
あとは題名にして作品コンセプトである、どうしてこうなった? の通りに主人公の思い通りには全てが運ばない流れを作っていきました。人生なんてそんなものさ。
さて、完結した当作品ですが、主人公の冒険はまだ続いたりします。またどこかの世界で色々と楽しむのでしょう。書くことはないかもしれませんが。やっぱり終わりはどうしてこうなったで締めたかったのです。
リュウショウの時は未発動に終わった【輪廻転生/ツヨクテニューゲーム】ですが、能力として作ってあったことに変わりはありません。なので特質系となった主人公が発動条件を満たしていればこうなるわけです。
また、どうしてこうなった?は本編としては終わりですが、短編や後日談的な話は少しだけ投稿する予定です。今までみたいに20時に定期的に投稿とはいきませんが。結構期間が空くと思います。また、蛇足になる可能性が高いのでそれが嫌だという方は見ないほうがいいかも。それでも良いという方はまたこれからもよろしくお願いします。