特異災害対策機動部二課からの協力要請。
結論から言えば、士はそれを承諾した。
この世界でするべきこと、自分がリディアンの教師になった事は恐らくこの為であった。
弦十郎と同じく、士も直感でしかなかったが、一先ずそれを信じてみようと。
その後、士も響と同じく精密検査にかけられる事になった。
様々な機会が並ぶ中で、一般成人男性が4、5人程度入れそうな透明なボックスの中で士は立たされている。
この中で様々な記録を取るのだろうとは士も思ってはいた。
しかし、1つだけ予想外な事があった。
「……何で変身する必要がある」
検査の割に服を脱げと言わない辺りおかしいと思ったら、士は検査前に『変身』する事を強要されていた。
おまけに検査が既に終わった響と、響から引き続き検査担当の了子だけでなく、局員の殆どがその光景を見に来ている。
ついでに弦十郎やゴーバスターズの3人もだ。
透明なボックスの中で外から人目に晒されると、まるで檻の中の動物の気分だった。
「変身する前の貴方は通常の人間と変わらないわ。
私達が調べたいのは変身した貴方がノイズに対抗できるかどうか。あ、通常の検査もするわよ?
ともかく、響ちゃんの話では、ノイズの位相差障壁を無効化したとしか思えない攻撃をしていたようだし、ね?」
ね? と言われても、変身は見世物ではない。
しかし了子や弦十郎、ゴーバスターズはともかく、響や一部の局員が妙に目を輝かせているのは士の気のせいだろうか。
「それにぃ、みんなも見たいみたいだし、仮面ライダーの生変身」
どうやら気のせいではないらしい。了子も随分と面白がっている様子だ。
確かに『都市伝説のヒーローが目の前で変身してくれる』というのは、恐らく殆どの人が食いつくだろう。
響は一度見たはずだが、どういうわけか期待の眼差しを士に送っている。
響が見たのは後姿だけで前からの変身は見ていない。しかも混乱の中ではっきりまじまじと見たわけではない。
何より目の前にいるのは話に聞いていただけの都市伝説、仮面ライダー。
そんなわけで、今回の変身は目に焼き付けようとしているのだ。
唯一、翼だけは神妙な顔をしていたが、むしろその方が士にとっては良い。
下手に目を輝かせているよりは、余程真面目な気分になって変身もしやすい。
こんなに大勢に近くでじっと見られての変身はさすがの士も初だ。
「……変身」
非常にやる気のない声で士はベルトとカードを使い、ディケイドへと変身した。
「おおっ」という歓声が起きるが、正直どうでもよかった。
ディケイドになった後も仮面ライダーらしからぬ呆れたような雰囲気が醸し出されている。
「そんじゃま、データ収集に入りま~す!」
了子の明るい声とは対照的に呆れかえっているディケイドの検査が始まった。
そうして、翌日。
検査結果の発表という事で士と響は再び呼び出された。
というよりは昨日と同じように強制連行されたというのが正しい。
またもや手錠をかけられた事に響は苦笑い、士は思いっきり不機嫌そうな顔だ。
昨日の響は疲れて帰り、同居人の未来に心配をかけてしまった。
さらに未来を含めた創世達4人のお好み焼屋へ行こうという誘いも今回此処に来るために断ってしまった。
少々心が痛んだが、次も誘ってくれると言ってくれた。
今度は必ず行こう、そう思っても今回断ってしまった事は申し訳なさでいっぱいだった。
何より、行きたかった。
響は思う。
私、呪われてるかも────と。
一方の士は昨日、冴島家に帰り、ある事を告げられた。
『此処に居候させる代わり、時間がある時にホラー狩りに付き合え』というものだ。
この世界での拠点がそれで得れるのならば、別に構わないと士は頷いた。
とはいえこれから教師、ホラー狩り、二課と三足の草鞋をする事になるかもしれない。
それにこの世界で行きたい場所もある。
しかしそれでも、士はどうにかなるだろうと思っていた。
それは今までの旅の経験から来る、彼の直感と経験談である。
二課本部につくと2人は手錠を外され、しばらく座って待機させられた。
目の前には弦十郎が座り、後ろにはオペレーター2人、男性の方は『藤尭 朔也』、女性の方は『友里 あおい』と自己紹介された。
その場にはゴーバスターズの3人、そして翼もいる。
ゴーバスターズまでここにいる理由だが、実はこの3人、シンフォギアに関しての説明をまだ受けていないのだ。
何せ特命部と特異災害対策機動部が協力関係になってからすぐ、響と士が現れた為、そんな暇がなかったのだ。
とはいえ、今回の響と士に対しての説明はゴーバスターズへシンフォギアの特性を説明する絶好の機会。
というわけで此処に呼ばれたのである。
しばらくすると指示棒を持った了子が入ってきて、同時に宙に浮かぶ画面が展開される。
そこには響の検査結果と思わしきものが表示されていた。
「それじゃあ、2人のメディカルチェックの結果発表の時間よー!」
ハイテンションな了子。
何のために持ってきたのか、指示棒で画面をつつく事もせず手で適当に弄りながら了子は説明を始めた。
「響ちゃんの体に異常はほぼなかったんだけど、負荷がねー。
ま、簡単に言えば疲れが取れてないって事よ。あ、士君は健康そのものね」
「ほぼ……ですか」
「そりゃそうだろ」
了子の説明にそれぞれ反応する。
響はほぼ、という言葉に少し不安を感じつつも、一先ず大丈夫ではあると分かりホッとしているようだが、どうも浮かない顔をしていた。
士もまた、微妙に興味のなさそうな顔だ。
そう、2人の聞きたいことはそれではなかった。
「……んー、やっぱ聞きたいのは、シンフォギアの事よねぇ?」
シンフォギア、という単語に響と士がピクリと反応を示す。
その反応を見た了子は翼に手で何かの指示をしたのを見て、指示棒使わないのか、と士は思った。
指示を受けた翼は首にぶら下げていたペンダントを響と士に見せるように持ち上げた。
「第一号聖遺物、『天羽々斬』。君の纏っていたものは、第三号聖遺物『ガングニール』だ」
聖遺物、天羽々斬、ガングニール。
何れも聞いた事のない単語だ。
いや、後者2つは何かで聞いたような気もするのだが。
「んー、士君の事も話さなきゃいけないから、掻い摘んでいくわね」
了子の簡易的な説明を纏めると、以下のようになる。
聖遺物とは、各地の伝承、例えば神話なんかに登場する武器の事。
当然伝承や神話になるレベルで古いのだから、経年劣化が激しく、当時の能力をそのまま保持した物は極僅かだ。
その為、基本的に聖遺物の力を使うにはその欠片に残ったエネルギーを増幅させる必要がある。
その鍵が、『歌』。
「歌って……そういえば、私も……」
響が鎧を身に纏った時、そして身に纏った後の事を思い返す。
胸の中に歌が浮かび、それを口ずさんだら鎧が装着された。
その後、鎧から流れる音楽に合わせて自分の胸に湧いた歌詞を歌い続けた。
そしてそれは翼も同じであった。
(成程、あいつらが戦っている時に歌い続けてたのはそういう理由か)
歌を歌いながら戦う事を不思議に思っていた士もその言葉で理解したようだ。
弦十郎達の後ろにいるゴーバスターズの3人も納得したような表情だ。
「んで、聖遺物を歌で起動させると、アンチノイズプロテクター……つまり『シンフォギア』を響ちゃんや翼ちゃんは纏えるってわけね」
その言葉の直後。
「だからとてッ!
誰の歌、どんな歌にも、聖遺物を起動できる力が備わっているわけではないッ!!」
翼の怒鳴りにも近い声。それだけで空気が静まった。
響や士、ゴーバスターズの3人にはその理由が分からないが、二課の面々は翼の怒鳴るわけが分かっていた。
それも、とてもとても痛いほどに。
「……聖遺物を起動させ、シンフォギアを起動させられるのは特定の人間のみ。
そういう人物を我々は、『適合者』と呼んでいる」
翼の言葉に補足するような、それでいて以前の明るい雰囲気を引っ込めた真面目な弦十郎の言葉に続き、了子も口を開く。
「……それでもって、何で聖遺物を持たない響ちゃんがシンフォギアを纏えたかっていうと……」
宙に浮かぶ画面が別の画面に切り替わる。
響の上半身のレントゲン写真だ。
健康な状態である事に違いはないのだが、ただ一点だけ、普通の人には映らないはずの影が映っている。
「心臓付近に複雑に食い込んでいるため、手術でも摘出負荷な無数の欠片……
君はこれを、知っているね?」
弦十郎の言葉に響は頷いた。
「は、はい! 2年前の、ライブ会場で……」
響はそっと、自分の胸に手を当てる。
正確に言えば、服の内側、胸にある傷に。
響の胸には小文字の『f』、より細かく言えば音楽記号の『フォルテ』に似た傷がある。
「2年前のライブ会場……ツヴァイウイングがどうたらってやつか」
士がこの世界に来てから自力で仕入れた情報。少し検索すれば嫌でも出てくる事件。
弦十郎が士の言葉に頷き、それに関しての説明も始めた。
「2年前、ライブ会場でのノイズ発生。
その時に奏君と翼はシンフォギアを身に纏い戦った……。
その時、天羽奏が身に纏っていたシンフォギアこそ、『ガングニール』だ」
「そして、どういう経緯かその破片が響ちゃんの胸に突き刺さって、それが今回、響ちゃんにシンフォギアを纏わせた……って事になるわ」
弦十郎と了子は今までからは考え付かない程の憂いの表情を浮かべた。
その中で誰よりも、いや、ただ1人、翼だけが言葉を失ってしまっていた。
一言で表すなら、戦慄。
翼はふらつき、辺りの椅子を支えにして必死に倒れないようにしながらも、自分の感情の爆発、どうしようもない感情を抑えるかのように顔に手をやった。
「奏ちゃんの、置き土産ね……」
了子のその言葉が、さらに翼に突き刺さる。
誰よりも大切だった仲間、友達、相棒。
家族のようですらあった奏のギアを纏う者が、2年も経って現れたのだ。
怒りでも悲しみでもない、しかし受け止めきれない何かが翼の胸にこみ上げてきていた。
翼はふらふらとした足取りで部屋を出ていく。
誰もそれを追う者はいなかった。
今の翼は1人にしておいた方がいい、事情を知らぬ者達も、誰もがそう直感したからだ。
「……っさて! シンフォギアの特性はノイズの能力を無効化し、位相差障壁を調律しこちらの世界に実体化させる。つまり、無条件で攻撃を当てられるところよ」
了子が先程までの明るい調子に戻って話を再開した。
この空気で説明を続けるには忍びないと思ったのだろうか。
説明は尚も続く。
「で、ノイズに攻撃を当てられるのはシンフォギアだけ。
例え都市伝説の仮面ライダーでもノイズを殲滅したという話は聞かないわ。
ノイズから人命救助したという話はあるから炭化能力は無効化できるんでしょうね」
そう言いながら画面を切り替える。
そこには士のよく知るライダーが何人か映し出された。
1号、2号、ストロンガー、オーズ。
何れも他の世界で出会ったライダー達だ。
ノイズから人命救助のために奔走する様子が画像として収められていた。
「でも、士君はその常識を破壊してる」
ようやく指示棒を伸ばして使い、士をピッと指す。
「調べた結果、炭化能力の無効化は勿論、位相差障壁もお構いなしみたいね」
「だろうな、ディケイドってのはそういうもんだ」
士の言葉に了子は肩をすくめて呆れたジェスチャーをした。
シンフォギアやノイズの事を専門とする了子にとって、『ディケイド』は常識外れ極まりない存在だった。
しかし士は平然としている。
今までの世界で『ディケイド』という姿が起こすトンデモには慣れているからだろう。
「さて、では本題だ」
今までになく重い声色で弦十郎が切り出す。
「響君、君の手にした力は非常に強力なものだ。
他国や、何らかの敵にその情報が漏洩した場合、最悪、君の身の回りの家族や友人の命に関わる」
「命……!?」
響が驚く隣で、士はある人物を思い出していた。
『アギトの世界』で出会ったライダー、『芦川ショウイチ』。
彼は突如手にした力に戸惑い、それを付け狙う敵も現れた。
そしてその戦いに愛する人を巻き込まないために、自ら何処かへ姿を消した男だ。
実際に過ぎた力を狙う者はいる。
今回の例とは若干異なるが、士はその事を思い出していた。
「俺達が守るのは機密ではなく、人の命に他ならない。
君が周りの命を守りたいのならば、この件は誰にも言わないでほしい。
家族にも、友人にも」
「……はい、わかりました」
響の脳裏に浮かぶのは未来の顔。
響にとって、何よりも大切な日常。親友にすら秘密にするのは心が痛む。
しかし、その親友を守る為ならば、自分にとっての陽だまりを守る為ならば。
「脅しのようになってしまう事を、詫びさせてくれ。そしてもう1つ」
頭を下げ、響に詫びた後、響と士をそれぞれ見やる弦十郎。
「我々特異災害対策機動部二課は響君、そして士君に協力を要請したい。
……共に、人々を守ってはくれないだろうか」
そして放った言葉がそれであった。
「……この力で、誰かが救えるんですよね? だったら、私、やります!」
迷いは一瞬で、次の瞬間には決意に変わっていた。
人々を守る、それは響が信条とする『人助け』に他ならない。
ならば、長い時間迷う必要などなかった。
「ま、俺は元々承諾済みだが……」
言いながら、士はゆっくりと立ち上がり、弦十郎の前に指で『1』を示した。
「1つ条件がある」
「条件?」
「授業数を少しでいいから減らせ、こっちも色々と都合がある。
リディアンの地下に基地があるんだ、それくらいできるだろ?」
まるで授業を受けたくないから減らせ、という生徒のような言葉だ。
しかし士の言葉、『都合がある』に嘘偽りはない。
先程も言ったように、三足の草鞋状態である士にとって、少しは楽をしたいというのも本音だ。
元々士の授業数は少ない。
それは新任式後で誰がどの授業、クラスを担当するか決まった後の急な転任だったのと、新任だからというのが大きい。
とはいえ、減らせるものなら減らしたい。
士の言葉に苦笑しつつも弦十郎はそれを承諾した。
「うむ、少し掛け合ってみよう」
その言葉に頷いた後、士は部屋を出て行こうとする。
「もういいだろ? 俺は帰るぞ」
「すまない。もう1つ、聞かせてくれ」
しかしそんな士を弦十郎が引き止めた。
既にドアの前まで行き、背中を見せていた士は弦十郎の方を振り向いた。
「仮面ライダーとは、皆そうなのか?」
「……何がだ?」
「命を懸けて誰かを助ける……それを平然とやってのける。
今まで仮面ライダーについても調査をしてきたが、全員がそういう行動をしていた。
それは、仮面ライダーとして当たり前なのか?」
その言葉に特に考えるでもなく、士は即答した。
「人類の自由と平和を守るのが仮面ライダー……らしいからな」
「それだけで、か?」
「ライダーによって事情も違う。だが大体はそういう事だ」
そう言い残し、手をひらひらと振って士は二課をあとにした。
響もドアの前で二課メンバーとゴーバスターズに丁寧に一礼した後、部屋を出て行った。
冴島家、2階のリビング。
士はまだ帰ってきていない。
何でも、何かに巻き込まれたらしくそれについて何処かへ行っているらしい。
ゴンザも洗い物をしているらしく、広いリビングの中、鋼牙は1人、椅子に座って思案顔だった。
「…………」
昨日、士に鋼牙は言った。
「居候させる代わりにホラー狩りを手伝え」と。
しかしその言葉は、鋼牙の意思では無かった。
それは『番犬所』の指令だったのだ。
番犬所とは、東西南北にそれぞれ存在する魔戒騎士を束ねる組織のようなもので、そこに存在する『神官』が直接の上司筋に当たる。
鋼牙は『東の管轄』であり、東の番犬所の神官は三人の少女だ。
もっとも、姿こそ少女だが中身は少女なのか、人間なのかも分からない。
東の神官は悪戯好きで、その悪戯で命を落とした魔戒騎士さえいる。
その為、魔戒騎士からの評判はあまりよくなく、鋼牙自身もあまり快く思っていない。
だが、指令に従わなければ罰せられるし、ホラーを倒す事は魔戒騎士の使命である。
魔戒騎士がホラーを倒した後、ホラーを斬った剣には『邪気』が残る。
その邪気を浄化するために赴くのが、番犬所。
昨日の鋼牙は日中に『エレメント』を浄化して回っていた。
エレメントとは、ホラーが現れるゲート、その元となるもので、それを日中に潰せばホラーが現れる頻度はグッと少なくなる。
その為、魔戒騎士の勤務内容の1つとなっているのだ。
エレメント狩りにより剣に溜まった邪気と士の事を報告する為に、番犬所へと鋼牙は足を運んだ。
鋼牙は士の事、ディケイドの事を神官に話した。
すると帰ってきた言葉は。
「その男をしばらく見張りなさい。力があるならホラー狩りに付き合わせなさい」
この言葉。
その言葉を聞いて、何故かと質問をした。
「その者は危険かもしれません。だからです」
確かに謎が多く、ともすれば危険という見方もできる。
実際、鋼牙も士に対しての猜疑心が完全になくなったわけではなかった。
だが、ホラー狩りに連れていく事に納得が出来ない。
しかしいくら抗議しても帰ってくる答えは同じだった。
「人前で鎧を召喚した事は、相手がそのようなものなので不問に処します」
最後にそれだけ言われて、鋼牙は家へと帰宅した。
魔戒騎士には幾つか掟がある。
1つに、『関係者、即ちホラーを知る者以外の前では鎧を召喚してはならない』という掟だ。
初めて士と出会った時に鎧を召喚した事は当然掟を破った事になる。
例えそれが偶然でもだ。
だが、不問に処されたことが鋼牙にとって何よりも疑問だった。
悪戯好きの神官が罰を与えるという絶好の機会を自ら捨てた。
そうでなくても、魔戒騎士の掟はかなり厳しく扱われるはずなのだ。
(それだけ、アイツが危険だと判断されているのか……)
まるで爆弾か何かのようだ、と鋼牙は呆れる。
士に対しての警戒心は抜けない。
とはいえ今の所何かをしでかしている様子もなく、ホラー狩りも手伝うと言っている。
ゴンザから聞いたが仮面ライダーとは人を守る正義の戦士らしい。
まるで魔戒騎士のようだ、鋼牙はそう思った。
その名を冠するのなら士もそうであるのか。
考えても答えは出ないが、本人に面と向かって聞ける話でもない。
仮に人を守る為に戦う人物だとしても士は適当にはぐらかしそうだ。
逆に悪人だとしたら、本音を言う必要はなく嘘をつくに決まっている。
どちらにせよ判断は鋼牙が下すしかない。
そう考えていると、玄関の開く音がした。
恐らく士が帰ってきたのだろう。
ゴンザが出迎えに小走りしている音が聞こえる。
(しばらくは様子見か……)
そう結論付けた鋼牙は、その場でゴンザと士が上がってくるのを待った。
────次回予告────
日常を守る為に日常から足を踏み外す戦姫。
それは何も、音楽を纏う者だけに限らない。
きっかけは違えど、その者達は戦いに身を投じざる負えない────