スーパーヒーロー作戦CS   作:ライフォギア

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第62話 数多の脅威。されど、強意をもって

 剣二と銃四郎の危機に、ロッククリムゾンの前に立ちはだかった異形の影。

 それは栄光と呼ばれる7人の1人にして、最初の2人の片割れ。

 仮面ライダー2号の姿であった。

 

 誰もが突然の乱入者に驚く中で、唯一、ロッククリムゾンだけが怒りの様相を見せていた。

 

 

「ぬうぅ……お前、こんなところまで!」

 

「お前が日本に行くって言ったんだろ。だから日本に来て、騒ぎを聞きつけたらこの状況だ。

 助けに入る以外、何かあるか?」

 

「忌々しい奴……!」

 

「お前等みたいなのから忌々しく思われるのが、趣味みたいなもんでね」

 

 

 赤い拳を握り、力強い構えを見せる威風堂々とした姿。

 悪の幹部の前に立ち塞がるその姿は、異形にも拘らず頼もしさを覚えさせる。

 そして彼が名乗ったその名に、彼の事を知らない者達が驚いた。

 

 

「仮面、ライダー……!? あの人も、士先生達と同じ……」

 

 

 自分が戦っていたロッククリムゾンを前にする2号を見て呟く響。

 同じように翼もレディゴールドにも意識を向けつつ、2号の事を注視している。

 

 

(仮面ライダー……。鳴神さん達を助けてくれた事と、その名を冠している事を考えれば……)

 

 

 此処までの事を鑑みれば、彼は味方。そう考えるのが自然。

 見知らぬ存在でこそあるものの、彼は謎の魔弾戦士とは違い、明確に味方であるように感じられた。

 翼は2号から謎の魔弾戦士へと視線を向けた。

 

 

(私達が到着した時点から既に傍観を決め込んでいるが、何が狙いなのか……)

 

 

 謎の魔弾戦士が現れたのは士、翔太郎、響、翼が到着するよりも前だ。

 通信する暇もなく、奴が何者なのかを翼達は一切知らない。リュウケンドー達もそれは同じであるが。

 変身も解かず、常に見続けるだけのそれは、2号が現れた事に若干の反応を示していた。

 しかし特に何をするでもなく、やはり傍観の姿勢を崩さない様子でいる。

 

 

(……見ているだけだというのなら、いないのと変わりはしない。ならば、集中すべきは目下の脅威ッ!)

 

 

 そうして翼は思考を整理し、レディゴールドだけに意識を集中させた。

 2号登場のインパクトで敵味方全員の気が散っている今ならまだしも、再び戦闘に突入したら他に気を向けている余裕などない。

 翼がレディゴールドに一点集中をした時、レディゴールドもまた、翼へ意識を向けていた。

 その顔は怪しい笑み。2号が現れても、レディゴールドは一切態度を変えていなかった。

 

 

「まあ、何が現れようと関係ないわ。私の敵じゃない」

 

「こちらの追い風にも、慢心を絶やす気はないか」

 

「はぁ? 慢心? 貴女如き────余裕なだけ」

 

 

 翼とレディゴールドは再び火花を散らす。

 レディゴールドも常に高速移動をし続けているわけではない。付け入る隙はある。

 勝算がはっきりとあるわけではないが、負けが確定している戦いでもない。

 ならば岩の魔物を赤い拳の仮面ライダーに任せ、こちらは自分で足止めをする。

 そんな考えと共に、翼はレディゴールドと戦い続けた。

 

 

 

 

 

 一方、ロッククリムゾンと相対する2号。

 それとは別にWが剣二と銃四郎の元へと駆け寄った。

 倒れ伏せ、傷の痛みに苦悶の表情を浮かべる2人は額や袖の中から血を流している。

 重傷。そんなものは素人目で見ても分かった。

 

 

『彼等を運ぼう、翔太郎。命に別状はなさそうだが、重傷だ』

 

「見りゃ分かるぜフィリップ。2人となると、リボルギャリーを呼ぶしかねぇか」

 

 

 Wの力ならば2人を同時に運ぶ事は出来る。

 が、それはどうしても丁寧な運び方にはならない。

 重傷の人間を乱雑に運んで万が一傷が悪化したらマズイ。

 ならば2人以上を同時に運ぶ方法は乗り物を呼ぶ事。つまり、リボルギャリーだった。

 乗り心地が良いとは言えないが、Wが無理矢理2人を担ぐよりはいいだろう。

 

 と、リボルギャリーを呼ぼうとスタッグフォンに手を掛けたその時。

 

 

「……あん?」

 

 

 轟音が響く。

 ロケットの音。そんな音を出す存在は、Wの知る限りでは1人しかいない。

 白い姿に右手にオレンジ色のロケットを携えた仮面ライダー。

 どうやら大学から大急ぎで来た結果という事らしい。

 

 

「遅れてすんませんッ! 仮面ライダーフォーゼ、助太刀させてもらうぜッ!!」

 

 

 上空から現場に接近し、着地後、即座にロケットスイッチを解除してモジュールを解除。

 そして辺りを見渡して、フォーゼは非常に大きな驚きのリアクションを見せた。

 

 

「うおっと、2号先輩ッ!? って剣二さんと銃四郎さん! 大丈夫ッスか!?」

 

「あー、詳しい話は後だ。まずはこの2人を運ぶ。手伝えよ、弦太朗」

 

 

 遅れてきたが、彼も日常という事情がある。蔑ろにはできないものだ。

 しかしながら非常に良いタイミングで来てくれた。

 これならリボルギャリーを呼び、此処に到着するまでの数分の時間が省ける。

 ところが、フォーゼの返答はWの考えていたそれとは違っていた。

 

 

「いや、翔太郎先輩とフィリップ先輩は残ってて大丈夫ッス!」

 

「ハァ? お前1人で2人を運ぶのかよ?」

 

『見ての通り2人は重傷だ。あまり雑な運び方は良くないよ』

 

「勿論ッス。だから、『2人』で運ぶんでッ!」

 

 

 2人? とWの両人がハモった瞬間、再び上空から何かが飛来した。

 今度はロケットの音ではなく、それでいて人が降りてきたわけでもなかった。

 落ちてきたのは青く輝く球体。その速度と球体という形は、まるで『青い流星』を思わせる。

 降り立った流星からは輝きが徐々に消えていき、流星の内部から人型が現れた。

 Wが誰だ、と仮面の中で訝しげな表情を向ける中、フォーゼは仮面の中で笑い、その存在に勇ましく呼びかけた。

 

 

「来たな、流星ッ!」

 

「ああ。待たせたな、弦太朗」

 

 

 青と黒の戦士。そして流星という名。弦太朗と友達であるかのようなやり取り。

 そこから類推し、翔太郎はその青い戦士に声をかけた。

 

 

「流星……って事はお前、照井の言ってた朔田流星って奴か?」

 

「貴方は仮面ライダーW、ですね。照井さんの仲間の」

 

『では君が……仮面ライダーメテオ?』

 

 

 フィリップも翔太郎や帰国した照井夫妻を通して話は聞いていた。

 今の言葉に頷く彼は、仮面ライダーメテオ。

 ヨーロッパのパワースポット爆発の件と大ショッカーの件で、ジャマンガや大ショッカーが最も活発に動いている日本にやって来ていたのだ。

 インターポール側としても仮面ライダーの存在は正体までは分からずとも、既知のもの。

 何より一度フランスで竜と共闘をしている流星にとって、Wは完全な第三者というわけでもない。

 それに友人である弦太朗が先輩と呼ぶ仮面ライダーだ。知らない筈が無かった。

 

 

「インターポールだったよな。フランスから日本に来たのか?」

 

「ええ。丁度、今日来たばかりです。

 こっちの空港について帰国の連絡を弦太朗にした時に、今すぐ合流してくれと言われて」

 

 

 日本に帰国後、流星はかつての仲間と連絡を取ろうと弦太朗とコンタクトを図った。

 それが丁度、今回の出撃とかち合った結果が、このタイミングの助っ人に繋がったのである。

 偶然ではあるが、弦太朗の友情が起こしたナイスタイミングの偶然だ。

 フォーゼも「良いタイミングだったぜ」とメテオにサムズアップを送る。

 メテオはそれに頷きで返し、再びWの方へ目を向けた。

 

 

「これ以上の話は後にしましょう。この人達を安全な場所に運べばいいんですね?」

 

 

 重傷者がいる中で長々と話をしている訳にもいかない。

 話を切り上げ、フォーゼは剣二を、メテオは銃四郎を抱き上げた。

 そしてフォーゼは来た時と同じようにロケットスイッチでロケットモジュールを展開。

 後は噴射して飛ぶだけのタイミングで、彼はWを見た。

 

 

「あと、お願いしますッ!」

 

「俺達はお前の先輩だぜ? 安心しな」

 

 

 カッコつけな翔太郎の返答だが、今回のそれは間違いなく頼もしさを感じさせるものだった。

 仮面ライダーの先輩として、多くの場数を踏んだ者としての。

 フォーゼは仮面の奥でニカッと笑い、普段よりもやや出力を抑え、剣二の負担にならないよう、Wに後を任せて飛び去った。

 

 メテオもそれに続いて、最初に来た時と同じように青い光に包まれた。

 ただし、今度は抱きかかえた銃四郎ごと。

 青い流星となったメテオは空が飛べ、他の人も共に運ぶ事が可能だ。

 それでいて青い光の内部は宇宙空間でも息ができる程に安全。

 移動という意味ではかなり安全で、今回のように怪我人を運ぶのにも適していると言えるだろう。

 

 フォーゼとメテオが剣二と銃四郎と共に、戦線を離脱。

 これで完全に手が空いたW。そんな彼に2号がちらりと目を向けた。

 

 

「なぁ、後輩。お前はあっちの方を手伝ってやりな」

 

 

 あっち、と言いながら首をクイッと動かす。

 それが示した方向はゴーバスターズとエスケイプの方だった。

 錆びてしまったバディロイドをブルーバスターが守り、レッドバスターとイエローバスターが幹部を相手にしている状況。

 ただ、いつ何時、エスケイプの銃がバディロイドを狙うとも限らない。

 それでいてエスケイプは強く、油断ならない状況が続いているようだった。

 

 

「俺だってできればあっちの美人と戦いたいさ。

 だがよ、こっちの岩野郎は俺が逃がしちまった相手だ。俺に任せてくれよ」

 

 

 軽口を叩きながらも、その姿の貫禄は凄まじい。

 魔弾戦士の2人は決して弱くない。

 が、それを完封と言えるほどに圧倒したのは、単純に硬く、強いから。

 ゲキリュウケンの刃が通らず、ゴウリュウガンの銃で傷1つ付かないロッククリムゾンには、並み以上の力であっても傷をつける事は容易くないだろう。

 だが、2号はそれを逃がしたと、平たく言えば『今まで戦ってきた』と発言したのだ。

 

 

「強敵だぜ、大丈夫か?」

 

「なんの。フォーゼがこの場を託した先輩の、さらに先輩だぜ?」

 

 

 先輩風を吹かすWよりも、2号はさらに上を行く先輩だ。

 フォーゼが感じた頼もしき先輩風を、今度はWが2号から感じていた。

 Wはフッと笑うと、ゴーバスターズの方へ体を向ける。

 

 

「頼んだぜ、先輩!」

 

「頼まれたぜ、後輩!」

 

 

 そうしてWはゴーバスターズの増援に、2号はそのままロッククリムゾンと相対する。

 さらにWと入れ替わりで、ロッククリムゾンの攻撃から復帰した響が2号に向かって足のパワージャッキを用いて一気に接近。その横に並び立った。

 長く戦ってきた2号でも流石にシンフォギアというものは初見。

 しかし、そこは流石に歴戦の勇士。取り立てて動揺は見せていなかった。

 

 

「仮面ライダー2号さん……で、いいんですよね? 私もお手伝いしますッ!」

 

「こりゃまた可愛い子が来たねぇ。聞きたい事は置いとくにしても、大丈夫か?

 正直、君みたいな子を戦わせたくはないんだけどさ」

 

 

 2号の本音、というよりも仮面ライダー全体の本音を語る2号。

 恐らくシンフォギア装者やこの場にいないプリキュアの事を知れば、仮面ライダー達は大体同じ反応を示すだろう。

 戦わせたくない、と。

 人を助ける為に悪と戦うと言えば聞こえはいいが、年頃の娘が戦場に出るという事がどういう事なのか、そしてその戦場がどういう場所なのかをよく知っている仮面ライダーからすれば、当然の反応だ。

 しかし、響はそれに笑って返して見せる。

 

 

「大丈夫です。これでも良い師匠を2人も持ったもので!

 それで少しは強くなったつもりですし、今までだって戦ってきましたッ!」

 

「ハハ、オッケー。嘘でもハッタリでもなさそうだ……。信じるぜ、嬢ちゃん!」

 

 

 仮面ライダー達は彼女達が戦う事に難色を示すだろう。

 とはいえ、彼女達の意思を捻じ曲げてまで戦場から遠ざけようとは思わない。

 それが考えた上での答えならば、自分自身で決めた答えならば仮面ライダーも文句はない。

 今の響の言葉に2号は、彼女の『意思』を感じ取ったのか、共同戦線の提案に乗った。

 対し、ロッククリムゾンは感情を表には出さないが、余裕の姿勢を取っている。

 

 

「雑魚がいくら集まっても、雑魚だ」

 

「強いのは認めるさ。俺もお前を逃がしちまってるわけだし。

 だがなロッククリムゾン。お前も俺は倒せてないし、同じようなもんだぜ」

 

「フン」

 

 

 ロッククリムゾンが無口なのは2号も知っている。

 何度か戦い、何度か逃がした。その度に2号はロッククリムゾンを追ってきたのだから。

 敵幹部との関係としては妙な言い方になるが、そこそこに長い付き合いなのである。

 

 

「んじゃ、べらべらと話すのもおしまいだ」

 

 

 何処か軽かった2号の雰囲気が一気に変わった。

 恐ろしさすら感じさせるその空気感は、長き経験があるからこそ為せるものなのか。

 味方である響ですら、その雰囲気に圧倒されていた。

 素人は脱却したものの、まだまだ熟練には程遠い響。けれどそんな彼女でもわかる。

 間違いなく、仮面ライダー2号は強いのだと。

 

 

「まず、は……ッ!」

 

 

 2号はバッタの力を秘めた仮面ライダーである。

 バッタそのものは小さな虫であるが、それが人間大にまで拡大されればその跳躍力は驚異的だ。

 脚力を用いて、真横に向かって跳ぶようにしてロッククリムゾンへ接近する2号。

 まずは一撃、パンチを見舞う。

 殴り飛ばす様な横薙ぎに振るわれた赤い拳はロッククリムゾンの胴体に、剣も銃も弾いた強固な岩の肌にぶち当たる。

 

 

「ぬぅッ!?」

 

 

 しかし拳は岩にダメージを与えた。

 ロッククリムゾンが思わず出してしまった声に加えて、よろよろと数歩分後退した事からもそれが分かる。

 そう、2号は拳でダメージを与えて見せたのだ。あの頑丈過ぎる程の強固な体に。

 外から見える損傷こそないが、明確な一撃を与えたのだ。

 

 

「もう、一発ッ!」

 

「グウッ!?」

 

 

 右拳に続き、左拳。今度は横薙ぎではなく、正拳にも似たストレート一発。

 咄嗟に腕をクロスさせて防御姿勢を取ったロッククリムゾンだが、さしもの彼も後ろに大きくずり下がってしまっていた。

 一連の動作は何て事は無い、接近して一発、相手が怯んだところに逆の拳でもう一発を入れただけの、普通の攻撃。

 目を見張る部分は『威力』。2号のパワーは尋常なそれではない。

 

 

(凄い……振りの勢いも、籠めてる力も、私とは全然違う……ッ!)

 

 

 響もその威力に驚愕していた。

 彼女の基本的な戦闘スタイルは徒手空拳であり、決め技としてパンチを用いている。

 響が先程ロッククリムゾンに放った一撃は、剣二達を助ける為に咄嗟に放ったものだ。

 力も完璧には籠めれておらず、とてもじゃないが絶唱級の威力は出ていない。

 とはいえ、腕部ユニットまで用いたパンチ。生半可な威力というわけでもなかった。

 しかし2号のパンチは少なくとも、先程の響の攻撃を超えている。

 絶唱並の威力は無くとも、ただのパンチですら2号の一撃は強烈なものであると、響は感じていた。

 

 

「ッ、私も……!!」

 

 

 何もせずに傍観しているわけにもいかないし、するつもりもない。

 しかし勢い任せに出した一撃では2号の足を引っ張ってしまうだけだ。

 響はまず、地面をしっかりと踏みしめる。

 次に足のジャッキを全力で伸ばし、右腕に今までで一番の集中を、力を籠めた。

 

 

(エネルギーを、欠片も残さず右手に……ッ!!)

 

 

 集中。そして、右腕の腕部ユニットが開く。

 2号はロッククリムゾン相手に攻撃を仕掛け続けているが、その実、攻撃は効いているが仕留めきれないという状況だった。

 確かに2号の力は凄まじい。だが、その2号が今まで逃がし続けてきてしまったのだ。

 生半可な一撃では駄目。ならば、響にできる事は1つ。

 自分ができる全力を、全開で、真っ直ぐに、一直線に────ッ!!

 

 

「ハアァァァァァッ!!」

 

 

 2号の攻撃で怯んだ一瞬を狙い、響は足のジャッキを全力作動。

 真横に向かってロケットを飛ばしたような超高速にて接近し、ロッククリムゾンの胸部に勢いと力を全力で乗せた拳を叩きつけた。

 間髪入れずに腕部ユニットが作動。

 パイルバンカーのように、ロッククリムゾンに響の拳からエネルギーが叩きつけられた。

 

 

「ヌッ、ウゥゥンッ!!?」

 

 

 耐えようと踏ん張るロッククリムゾンであったが、腕部ユニットから繰り出された想定外のインパクトには耐えきれない。

 そうしてロッククリムゾンは浮き上がり、後ろ目掛けて幾らか吹っ飛んだ。

 並の怪人が食らえば吹っ飛ぶでは済まない様な一撃。それに耐えただけでも流石は幹部。

 それ以上に、今までびくともしなかった幹部を吹き飛ばして見せた響が凄まじいのだが。

 

 

「ヒュウ、やるねぇ嬢ちゃん。いいパンチ持ってんじゃんか」

 

「ハイッ! ……ちょっと痛かったですけどね」

 

「アイツ、かってぇからな。分かる分かる」

 

 

 ロッククリムゾンが復帰してこない事を良い事に軽い会話を行う2人。

 確かに響の一撃は凄まじいものだった。

 それこそ、歴戦の2号が見ても『いいパンチ』と称する程度には。

 ところが響自身はその一撃に、あまり満足はしていなかった。

 

 

(でも、ダメだ。あれだけ集中してあれだけ溜めて撃ったんだから、そりゃあ威力もでるよね……)

 

 

 内心で呟くそれが答えだった。

 響の今の一撃は、敵からの攻撃を気にせず、集中して、全力で『溜め』をしたから出た威力。

 数的有利な今のような状況ならば仲間に隙を作ってもらえばいいが、仮にこれがタイマンだったら今ほど溜める事はできないだろう。

 間違いなく過去最高威力を打ち込んだが、その最高威力を出す為の溜めが長すぎる。

 おまけに過去最高威力とはいえ、ロッククリムゾンは『吹っ飛んだだけ』。

 敵が相当にタフで頑丈という事はあるにしても、倒し切れなかった事は事実。

 そういう意味で言えば実用性は無いに等しかった。

 

 もう1つ言うのなら、2号のパンチも響と同じく、長所は間違いなく『威力』にある。

 2号と響の違いは、それを確実に当てられる『速さ』や『技術』があるかという事。

 未だ威力だけにしか集中できない響と、隙を見せずに高威力を常に保つ2号。

 言葉にすれば短いが、その差は歴然で、響もそれを感じていた。

 

 ところが2号は、その不満足そうな響の表情を見て「へぇ」と声を漏らした。

 

 

(……今の一撃は溜めが長すぎるし、実戦的とはとてもじゃないが言えない)

 

 

 2号の目から見ても響の今の一撃は欠点だらけ。褒められた場所は威力だけだ。

 彼の言う通り間違いなく『いいパンチ』ではあるのだが、それは『威力』の一点に置いては、という事である。

 しかし2号は響を良い意味で評価していた。

 

 

(だけど、この様子だとそれは自覚してるのか。

 だったら俺がとやかく言う必要はないワケだが……頼もしいねぇ、どうも)

 

 

 自らの欠点を、冷静に自分で判断できるという点。

 彼が素直に感心していたのはそこだった。

 出せた高威力に浮かれるでもなく、即座に修正すべき点を考えられる力。

 自分なりに強くなろうという響の姿勢が、2号には垣間見えたのだ。

 

 

「グゥ、ヌ……ッ!!」

 

 

 と、吹っ飛び転がっていたロッククリムゾンが起き上がってきた。

 今の一撃は流石に頭にきたのか、体を震わせて怒り心頭といった感じだ。

 

 

「許さんぞぉ……! ムゥン!」

 

 

 肩口に乗った砲台から2人にめがけて一撃、大砲を見舞う。

 2号は右に、響は左に跳んで、ギリギリのところで回避に成功した。

 外した砲弾はさっきまで2人がいた位置に炸裂し、大きな爆発とともに地面を抉る。

 

 

「ハッ、まだまだ元気ってわけかい?」

 

「でも、こっちだってやる気元気ですッ!」

 

「いい気迫だ。頼りにしてるぜッ!!」

 

 

 2号と響。

 岩石巨人に向けられる2人の拳は、強く、固い。

 

 

 

 

 

 同じ戦場、同じ時間。

 ディケイドは3体のレディゴールド親衛隊を追い詰めていた。

 

 

「ハッ!」

 

 

 ガニメデにライドブッカーの剣が振るわれる。

 エウロパにライドブッカーの銃撃が放たれる。

 フォボスにディケイドのハイキックが直撃する。

 3つに分身したディケイドはそれぞれに親衛隊を追い詰め、それらを纏めてレディゴールドと翼の戦う戦場へと吹き飛ばした。

 

 レディゴールドの近くに転がる3体の親衛隊遣い魔。

 すぐさま膝立ちの姿勢にまで復帰できるのは流石親衛隊という事か。

 吹き飛ばした3体を追う形でディケイドもやって来て、彼は翼と合流した。

 

 

「門矢先生!」

 

「無事みたいだな、風鳴」

 

 

 幹部と1対1を張っていても無事なのは、たゆまぬ鍛錬の賜物か。

 それともそんな翼ですら倒しきれないレディゴールドが強いのか。

 そんな思考をとりあえず置いておき、ディケイドは自分が追い詰めた3体の親衛隊とレディゴールドを一瞥した。

 視線を送ってくるディケイドを睨み付け、レディゴールドは忌々し気に吐き捨てる。

 

 

「私の親衛隊を退けるとはね……ッ!」

 

「フン、どうって事はなかったがな。風鳴、纏めて叩き潰すぞ」

 

「はい。此処で終わらせましょう」

 

 

 3体の親衛隊遣い魔は膝立ちの状態でレディゴールドを守るようにしているものの、既に肩で息をしているような状態。

 遣い魔に呼吸が必要かどうかという話は置いておいて、つまりそれだけ体力を消耗していた。

 この部隊の中でもディケイドは実戦における戦闘経験が長い。それこそ2年以上戦い続けている翼と同じか、それ以上に。

 経験と実力は必ずしもイコールではないが、ディケイドは士自身の戦闘センスも相まって非常に強い。

 1対1体が並の怪人程度の力は持っている親衛隊遣い魔だが、分身を用いて実質的な1対1に持ち込まれればディケイドの敵ではない。

 

 

「フン、まあいいわ。エンター達もこれだけやれば文句言わないでしょ」

 

「ッ、待てッ!」

 

 

 レディゴールドは親衛隊3体を伴い、姿が揺らいだかと思った瞬間、消失。

 ジャマンガ城の存在する空間へ離脱する為、姿が消えるのは本当に一瞬だった。

 翼もディケイドも追おうと1歩踏み出した時にはもう、逃がしてしまった後だった。

 

 

「此処で逃奔とは……ッ!」

 

「チッ……風鳴、他が残ってる。行くぞ」

 

「……はい」

 

 

 ディケイドと協力すれば勝てたのではないか、少しでも敵戦力を削げたのではないかという考えが過り、翼は悔しさで歯噛みをする。

 相手は幹部。甘い考えは禁物だし、苦戦していたのは事実。

 それでも倒しておきたかったという本音があるが、その悔しさを翼は押し込め、ディケイドと共に他の戦線へと赴くのだった。

 

 

 

 

 

 エスケイプVSゴーバスターズ。

 3対1のように見えるが、ブルーバスターはバディロイド防衛に専念しているため、実質2対1。

 数の上では有利だが、それ以上にエスケイプは強い。

 けれどゴーバスターズは、ゴーバスターズだけではない。心強い味方もいるのだ。

 

 

「手伝うぜ、ヒロム、ヨーコちゃん」

 

「翔太郎さん……。正直、助かります」

 

「リボルギャリーも呼んどいた。お前等の相棒も逃がさねぇとな」

 

「さっすが翔太郎さんとフィリップさん! 頼りになります!」

 

「へっ、まあな」

 

 

 2号に促され、ゴーバスターズの救援に入ったW。姿はサイクロンジョーカーだ。

 そしてWの言う通り、しばらくすれば独特のデザインをした大型車、リボルギャリーが戦場に到着し、直後にボディ部分が展開した。

 Wはブルーバスターに目配せをする。相棒達を運べ、と。

 意図を察したブルーバスターはそれに頷くと、ワクチンプログラムの賜物である怪力を使って3体のバディロイドを次々とリボルギャリーへ運び込んでいく。

 バディロイドとブルーバスターが乗り込んだリボルギャリーはすぐにボディを閉め、やや激しめの挙動で走り出し、Uターン。

 逃げるようにその場から去っていったリボルギャリーを、エスケイプは特に何でも無さそうに見送る。

 

 

「あんなのに用は無いわ。それよりそこの仮面ライダーさん? 貴方は、いいモノなのかしら?」

 

「試してみるか? 美人のねーちゃんよ」

 

「あっはは! いいわぁ、だったら……行くわよ?」

 

 

 妖艶な笑みを浮かべるエスケイプに、Wの翔太郎はあくまで余裕の態度を示す。

 これまでの戦いの経験が彼にその態度を取らせているのだろう。

 いくらエスケイプがスタイル抜群の美女の姿をしたアバターであっても、それに対してカッコつけているわけではない。

 流石に『敵』と定めた相手に鼻の下を伸ばすほど、翔太郎も阿保ではない。

 

 エスケイプはゴクとマゴクを向け、弾丸を連射。

 ターゲットはレッドバスターやイエローバスターを無視して、完全にWだけだった。

 狙われている事を察知したWは、サイクロンジョーカーが得意とする素早い運動性能を用いて駆け抜ける。

 Wを狙った弾丸が地面に着弾し火花を散らし、まるで火花がWを追うかのように、彼の背後で着弾音が鳴り響き続けた。

 対してWは、足を止めずに一旦大回りをしつつ、銃撃の回避に専念する。

 エスケイプに正面から突っ込んだら狙い撃ちだ。

 

 

『銃には銃。右側も変えるかい?』

 

「ああ、確実に行くぜ」

 

 

 フィリップも翔太郎も、考えは同じ。

 走りつつ、Wはダブルドライバーを閉じ、2本のメモリを引き抜き、ルナメモリとトリガーメモリを取り出し、起動させた。

 

 

 ────LUNA!────

 

 ────TRIGGER!────

 

 

 続き、ルナメモリを右スロットに、トリガーメモリを左スロットに差し込み、ダブルドライバーを展開。

 Wは右が黄色、左が青色。ルナの変則的な力を持った銃撃手へと変身する。

 

 

 ────LUNA! TRIGGER!────

 

 

 名はそのまま『ルナトリガー』。

 ルナの力で銃弾を曲げ、追尾弾を発射する事のできる、必中を可能とする姿だ。

 Wは出現したトリガーマグナムを右手に持ち、辺りに銃弾をばら撒くかのようにトリガーマグナムを横薙ぎに振るいながら、引き金を何度も引いた。

 ルナの力で光弾となったトリガーの弾丸は、当然、見当違いの方向へ進む。

 が、光弾は突然、有り得ない軌道で曲がり始め、その全弾がエスケイプの方へと向かって行った。

 

 

「ッ!!」

 

 

 自らに迫る複数の光弾。エスケイプに幸いしたのは、弾速がそれ程でもない事か。

 エスケイプは光弾を跳んで躱すものの、光弾はしつこく追ってくる。

 そこで彼女は空中で体勢を整えて、光弾へ向けてゴクとマゴクを連射した。

 結果、両者の銃撃は激突し、相殺。

 エスケイプは着地をすると、ニタリとWを見て笑って見せた。

 

 

「あははっ!! へぇ、面白いことするじゃない。貴方も結構いいモノみたいね?」

 

「そりゃどーも。敵じゃなけりゃ、素直に喜べんだがな」

 

 

 美人に弱い翔太郎だが、流石に銃を向けてくる女はノーサンキューだ。

 肩を竦めるWに対し、エスケイプは心底愉快そうな笑みを向け続ける。

 一方、守護対象であるバディロイドが離脱した事で多少の余裕を取り戻したレッドバスターやイエローバスターも、イチガンバスターを構えてWの援護に入る体勢を整えていた。

 加えて此処で、レディゴールドの離脱により手の空いたディケイドが助っ人に入る。

 彼はWの隣まで滑り込むように駆け寄り、ライドブッカーを銃として構え、エスケイプと相対する。

 

 

「こっちも手こずってるみたいだな」

 

「悪いかよ。中々やるみたいだぜ、このトリガーレディは」

 

 

 エスケイプの前に並ぶ4人の戦士。

 全員を一瞥した後、戦況をちらりと見やる。

 スチームロイドは無事に目的を果たしたが、戦況は2号の参戦から一気に不利に傾いている。

 強い敵と戦うのはやぶさかではないが、だからといって此処に長居する理由も無い。

 

 

「フフ、今日は小手調べよ。ゴーバスターズ、それに仮面ライダー。

 中々いいモノみたいだし、気に入ったわ」

 

 

 笑みを崩す事無く、エスケイプはゴクを振るった。

 すると銃のグリップに付けられている狼の飾り、それを繋いでいる鎖が伸びて、まるで生きているかのように狼の飾りが吠えた。

 

 

「うおッ!?」

 

 

 凄まじい勢いで狼の飾りはW達に接近し、彼等の足元を抉る。

 小さな狼の飾りは見た目からは想像できぬほどの威力を発揮し、アスファルトを粉々に砕いて土煙を上げた。

 

 

「また会いましょう」

 

 

 そして次の瞬間、データの粒子となってエスケイプはその場から消えた。

 エンターのような消え方は正しくアバターと言ったところか。

 土煙が晴れた4人はそれぞれに前に躍り出るが、既に撤退したエスケイプを見つける事はできず、それぞれに銃を下ろす事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 エスケイプ撤退よりも少し前、ロッククリムゾンと2号、響が戦う戦場。

 こちらにも助っ人が1人。レディゴールド撤退により手の空いた翼が参戦していた。

 

 

「無事のようだな、立花!」

 

「はい! 2号さんのお陰で!」

 

「おおぅ、また可憐な嬢ちゃんが……って、何か、どっかで見た事……」

 

 

 驚くというよりかはおどけるような2号。

 そんな彼もまた、翼が芸能人であるという事に勘づいている様子だ。

 無理もない。翼の顔はあちこちに知れ渡っているのだから。

 

 ともかく3対1となってしまったロッククリムゾン。

 気付けばエスケイプと自分だけになってしまい、おまけにエスケイプもディケイドの参戦により4対1と劣勢気味の様子だ。

 

 

「フン……まあいい。今回は挨拶代わりだ」

 

「おいおい、今更俺に挨拶はいらないだろ? ロッククリムゾンさんよ」

 

「減らず口を……!!」

 

 

 2号の挑発に怒りを見せて、ロッククリムゾンはその姿を変質させた。

 結果、最初にこの場に降り立った時のような綺麗な球体へと姿を変えたロッククリムゾン。

 岩の球体は、一体どういう力が働いているのか、そのまま浮き上がり、高速で突進してきた。

 目標は2号。助走をつけているかのように速度は増していき、2号の元に辿り着くころには、岩の球体のスピードは恐るべきものとなっていた。

 

 ロッククリムゾンのスピードはそこまでではない。

 が、この球体の姿となった時、普段の二足歩行時よりも速度が出るようになる。

 おまけに硬度はそのままなので、突進くらいしかできなくなるが、速さというメリットがこの姿にはある。

 そして速度が上がれば、その分、勢いによる威力も加算されるわけだ。

 

 

「ヌッ、ウゥゥゥッ!!」

 

 

 しかし、その突進を2号は両手で抑えつけて見せる。

 勢いに押され、ずりずりと足元が後退していく2号だが、負けじと両手に力を籠めた。

 凄まじい硬度と重さ、そしてそれが高速で突進してきたのだ、2号といえど平気といえるような威力ではない。

 だが、止める。

 1号と2号。最初の仮面ライダーであるダブルライダーには、それぞれに異名がある。

 1号には『技の1号』、2号には『力の2号』。

 そしてその異名は、『力の2号』の名は、決して伊達ではない。

 

 

「ん……のっ、野郎ッ!!」

 

 

 受け止めたまま、岩の球体に右腕を振り下ろす。

 ところがロッククリムゾンはすんでのところで2号の手を離れ、まるで滑るように空中を駆け抜けて2号から距離を取った。

 結果、パンチは空を切る。ロッククリムゾンをぶち抜こうとしただけあり、空振りのパンチが空気を震わせて轟音が響く。

 空振りによる凄まじい風圧は、近くにいた響と翼にも感じ取れた。

 それだけで2号の本気のパンチがどれほどのものかを窺い知れるというものである。

 

 当人である2号は空振りしたパンチを引っ込め、間合いから外れたロッククリムゾンを睨み付けていた。

 対し、ロッククリムゾンは球体状態のまま、2号へ向けて言葉を発する。

 

 

「言った筈だ。挨拶代わりだと」

 

「……って、まさかお前ッ!?」

 

「フン」

 

 

 言葉少なに、ロッククリムゾンは球体状態で遥か後方へ離脱し、そのまま消え去ってしまった。

 恐らくはレディゴールド同様、ジャマンガ本部へ向かったのであろう事は想像がつく。

 何せエスケイプもほぼ同時に撤退。ロッククリムゾンも撤退したこの場に、最早敵はいなくなってしまったのだから。

 1人、2号だけが赤い拳を握りしめて、ロッククリムゾンの去っていった方向を悔しそうに見つめていた。

 

 

「クソッ、また逃がしちまった……」

 

 

 どうやら最後の突進は挑発への報復という意味でしかなく、元々撤退前提で動いていたようだ。

 頭があまり良くないロッククリムゾン。

 いくら2号ならダメージを与えられるとはいえ、彼の馬力も硬度も間違いなく脅威だし、何よりも本当に形勢が悪いのなら退くだけの知能はある。

 頭が悪くても、決して知能が0というわけではない。

 並の怪人より遥かに強く、知能もあるが故に撤退という選択肢を選ぶ事もあるからこそ、2号はロッククリムゾンを今まで倒せないでいた。

 

 レディゴールド、エスケイプ、そしてロッククリムゾンの撤退により、この場の敵は全て消えた。

 その様子に、終始傍観の姿勢を貫いたままだった謎の魔弾戦士は。

 

 

『どうすんだ~? アイツ等全員逃げちまったぜぇ?』

 

「……なら、もう用は無い」

 

 

 ザンリュウジンの呼びかけに、謎の魔弾戦士は一言そう答え、レディゴールドにすら追いつく高速移動で戦場だった場所から離脱。

 一瞬の内に消え去る謎の魔弾戦士に誰もが反応していたが、そのスピードもあり、誰も謎の魔弾戦士を追う事はできなかった。

 

 結局、バグラー以外の敵を1体も倒す事ができぬまま、この戦場は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 静けさだけが残った、戦場だった噴水公園。

 翼が冷静に周囲を見やり、敵がいない事を確認。

 一方で響は純粋な笑顔でもって、2号へ深々と頭を下げ、勢いよく上げた。

 

 

「何であれ、一先ずこの場は収まったようね」

 

「そうみたいですね。ありがとうございます、2号さん!」

 

 

 逆転の風を吹かせた2号の元へ、レッドバスター、イエローバスター、ディケイド、Wの4人も集まる。

 集合した7人の中で、最初に口火を切ったのはレッドバスターだった。

 

 

「ありがとう。貴方のお陰で助かった」

 

 

 最初はお礼。2号がいたから、剣二と銃四郎も助かったようなものだ。

「いいってことよ」、と手を挙げて返す2号。

 実際、2号が来てくれなければどうなっていた事か。

 しかし疑問はある。何故此処に、世界各国に散っている7人ライダーの1人である2号がいるのか。

 Wが右目を点滅させ、その疑問をフィリップが尋ねた。

 

 

『しかし、何故日本に、2号ライダーが?』

 

「ついこの前まで、俺はジャマンガのオーストラリア支部の連中と戦っててな。

 ロッククリムゾンはそこの幹部で、俺はアイツを追って来たんだ。

 で、日本に来てみたら騒ぎが起こってて、ロッククリムゾンがいるかと思ったら、ビンゴだったってわけさ」

 

 

 これまでの経緯を簡潔に説明すると、特に疑問も無く誰もがそれに納得した。

 ロッククリムゾンを追ってきたのなら、彼とロッククリムゾンがほぼ同タイミングで現れたのも当然と言える。

 と、此処で今度は2号の方が疑問を口にした。

 

 

「ところでよ、俺も聞きたい事があるんだが。

 Wはちょくちょく噂で聞いてるから分かるし、ゴーバスターズも結構有名だ。

 そこの線がいっぱいの奴と、このお嬢ちゃん達は何なんだ?」

 

 

 フォーゼやオーズが7人ライダーと知り合いなのと、Wというライダーが活動を始めてしばらく経っている為か、どうやらWは2号に認知されているらしい。

 ゴーバスターズも『ヴァグラスと戦うエネトロンを守る戦士』として日本ではかなり有名なので、知られていた。

 分からないのは国家機密のシンフォギアと、並行世界から来たディケイドの事。

 一先ずデリケートな問題があるシンフォギアの事は後に回し、線がいっぱいの奴ことディケイド本人が自分の事を話し始めた。

 

 

「俺は別の世界から来た。仮面ライダーディケイド……通りすがりだ」

 

「別の、世界? 異世界ってやつか? なんかまた、スゲェライダーが来たなぁ」

 

 

 別の世界という概念は2号も、ぼんやりと、何となくだが知っている。

 別の地球。別の可能性。言ってみれば異世界の事なのだろう。

 2号自身が非日常の体現者みたいなものなので、彼は特に疑う事もなくそれを信じた。

 そこでふと、2号はちょっとした疑問が過る。

 

 

「異世界のライダーって俺から見て後輩とか、そういう括りに当てはまるのか?」

 

「少なくとも俺とタメなんで、後輩でいいと思うぜ」

 

「ん、おっしゃ! じゃあ後輩が増えたって事でいいんだな! ディケイド!」

 

「俺に聞くな」

 

 

 2号の疑問にWの左側が回答し、フランクな2号をディケイドがあしらう。

 そんなやり取りを見ていた響や翼は思った。

 仮面ライダー2号。Wやディケイド以上の歴戦の戦士なのに、何だか親しみやすい人だな、と。

 軽い会話の後、2号はディケイドから視点を移し、今度は響と翼の方を見やった。

 

 

「で、嬢ちゃん達のソレは、何なんだ?」

 

「国家機密なので、例え仮面ライダーでもおいそれと話すわけにはいきません。

 見られてしまった以上、本来なら特異災害対策機動部までご同行願いたいのですが……」

 

 

 2号の問いに、慣れた様子で翼が答える。

 シンフォギアを見てしまった人には一定の発言の制限がなされる。

 生活に困るほどのことではなく、要するに『シンフォギアの事を口外するな』程度のそれだが。

 とはいえ2号もあまり正体は明かしたくない。

 世界各国で活動しているが故に、政府関係者などのお偉方に正体を知られるのは面倒なのだ。

 当然、政府と繋がりのある二課に正体は明かしたくない。

 それは信用しているとか信用していないではなく、今後もライダーとして活動していく為に必要な事だった。

 

 

「あー……そうしてやりたいけど、俺もあんまり顔を知られたくないし……」

 

「……と、おっしゃっていますが、どうしますか、司令」

 

 

 困ったような声色の2号の言葉を聞き、翼が二課本部の弦十郎へ連絡を取った。

 正体を明かしたくないというのは、多少なら許容できる。

 が、シンフォギアを見られたという点において許容はあまりできない。

 

 

『……周辺住人の避難と目撃者がいた時の対処の為に、緒川を初めとした二課職員が近くにいるから、彼らを向かわせる。

 それまでライダー2号には、そこで待機するように伝えてくれ』

 

「了解しました」

 

 

 弦十郎の判断を翼が2号に伝えると、2号は「それなら」と快諾。

 しばし、その場で待機する事になった7人。

 

 弦十郎の判断は「とりあえず、書類にサインだけはしてもらう」というものだった。

 基本的に二課が危惧しているのはシンフォギアの情報漏洩。

 それを防ぐ為に、発言制限の書類に、同意してもらった上でサインをしてもらったり、情報封鎖や情報操作をしたりする。

 以前にも語ったがゴーバスターズを隠れ蓑にしたりと、とにかく災害対策にしては過剰な戦力であるシンフォギアには各国政府の横槍が入り易い為、二課は慎重だ。

 けれど今回の相手は仮面ライダー。それも、数十年に渡って戦い続けるほどの男。

 信用はできる。何より、信用してみたいと弦十郎は思った。

 とはいえ流石にそんな個人的な感情で特例を作るわけにもいかないので、書類に目を通してサインをしてもらうという形をとったのだ。

 

 しばらくすると慎次が黒い車でやってきた。

 車から降りた慎次が見たのは、変身を解いた6人と、唯一変身を解かない2号。

 1人だけ変身を解いていないというのはやや異様だが、かなり親し気に会話をしているようだった。

 

 

「お、カメラぶら下げてっけど、ディケイドは写真家か?」

 

「だったら何だ」

 

「なぁに、俺も写真家でさ。同じカメラマンライダーがいるって言うのはちょっと嬉しいな」

 

「でも、士先生の写真って……ねぇ?」

 

「黙れ立花」

 

 

 良い意味で軽く接してくる2号。

 士の写真がどういうものかを知っている響は、同じ事を知っている翔太郎へ同意を求めるように顔を向ける。

 いつも通り、ムッと顔を顰めつつ響をぞんざいに扱う士。

 ところが2号が反応したのは士の写真ではなく、士が呼んだ名前だった。

 

 

「タチバナ? へぇ、嬢ちゃん、タチバナって言うのか?」

 

「えっ、はい。立つ花と書いて立花で、立花響って言います。……えっと、どうかしたんですか?」

 

「いや、昔、世話になった人と同じ名前でな」

 

 

 懐かしむような2号が何を想うのか、仮面の赤い目は、何処か遠くを見ているようだった。

 そんな会話を少しの間だけ眺めていた慎次は、仲の良さそうな彼等を見てほんの少しだけ笑った後、2号の元へ駆け寄った。

 2号と対面した慎次はまず、一礼。今回の件に関してのお礼だった。

 

 

「貴方が仮面ライダー2号さんですね。今回は助力のほどを、ありがとうございます」

 

「いいさ。で、何か話があるんだろ?」

 

「はい。彼女達が纏っていた装備、シンフォギアの件についてなのですが……」

 

 

 慎次の形式的な長めの説明を聞き、2号はシンフォギアの事情を理解する。

 要するに、自分と同じように正体を隠したいのだと。

 

 

「……ん、OKだ。つまりシンフォギアって物の事は一切口外するなって事だな?」

 

「はい。あとは、以下の事に同意してもらった後、サインを頂けますか?」

 

「了解だ。……大変だねぇ、おたくらも」

 

「そうですね。ですが、シンフォギア装者のお2人が安心して戦えるようにする事も、僕等の役目ですから」

 

「いい大人に恵まれてるみたいだな」

 

 

 同意書に目を通す2号の脳裏に一瞬、師匠とも父親ともいえるような、彼にとって最高の『大人』の姿が浮かんだ。

 時に優しく時に厳しい、そして強い人だった。

 彼女達もそんな大人と共にあるのだろうかと、目の前のスーツ姿の優男を見て思う。

 もしそうなら、彼女達はこれからも大丈夫だ。

 そんな事を考えながら、2号は書類に目を通し、慎次から受け取ったボールペンで同意の意味を示す署名をする。

 横棒一本を書いた直後、何かに気づいたような反応を示した2号。

 その後、彼はその横棒を斜線で消して『2号』と署名した。

 

 

「悪い、本名は勘弁な」

 

「はは、分かりました」

 

 

 2号という署名が法的に通用するかはともかく、とりあえず事情は知ってもらった。

 もしも情報が漏洩すれば2号が疑われるという事もキチンと伝えた。

 疑いたいわけではないというのは勿論だが。

 

 そんな長かったやり取りの後、2号は近くに停めてあった自身のバイク『新サイクロン号』まで歩き、バイクに跨った。

 周囲に集まる7人を2号は一瞥する。

 

 

「ロッククリムゾンを倒すまでは俺も日本にいるつもりだ。

 また一緒に戦う事もあるだろうさ。そん時は宜しくな」

 

「はい! こちらこそ、宜しくお願いします! 2号さん!」

 

 

 きびきびとした動きで頭を下げる響。

 翼やヒロム、ヨーコも一礼。翔太郎も4人ほどではないが軽く頭を下げ、士は言わずもがな、腕を組んでそのままだ。

 笑い、頷いた2号は新サイクロン号のエンジンをかけ、颯爽とその場を後にした。

 みるみるうちに遠く彼方へ消えていく2号ライダーを見送った7人。

 

 この場こそ切り抜けたが、彼等の戦いは決して終わっていない。

 慎次を除いた6人は一先ず、一番近い本部である特命部へ向かう事となり、慎次だけは二課本部へ戻る事となった。

 何1つとして解決していない現状。ぼんやりとしている暇はないのだ。

 

 

 

 

 

 リボルギャリーに乗せられたバディロイド3体とブルーバスター。

 特命部の指示の元、リボルギャリーは特命部が保有する格納庫の1つにやって来ていた。

 錆び付いたバディロイド達は特命部職員とブルーバスターにより運び出され、すぐに錆の正体の解析、及び、錆の侵攻を抑える処置がなされていた。

 

 その場にいても役に立てないブルーバスターことリュウジは変身を解き、特命部に合流。

 リュウジが特命部司令室に足を踏み入れた時には、既にヒロム達は集合していた。

 

 

「リュウさん、ニック達は?」

 

「今、職員のみんなで錆の侵攻を抑えてくれてる。そろそろ錆の原因も分かると思うんだけど……」

 

 

 職員がバディロイド達に行っているのは、真水を吹きつけて錆の侵攻を抑える応急処置。

 一応大事には至っていないが、予断は許さない状況だ。

 彼等の機能停止はバスターマシン発進が一切不能になる事を意味し、それ以上に、家族同然に接してきたゴーバスターズにとって致命的な心理ダメージを与える事になるだろう。

 特命部職員達にとってもニック達はただの機械ではなく、仲間だ。

 

 と、そこに席を外していたオペレーター、森下が司令室に駆け込んできた。

 

 

「研究班から分析結果出ました!」

 

 

 彼が手に持っている書類はバディロイドを苦しめる錆についてのデータ。

 森下はその書類とは別に、司令室にある自分のコンピュータに送ってもらっておいたデータを、やや急ぎ気味にメインモニターに表示させた。

 映し出されたのは、監視カメラに写っていたスチームロイドが黄色い煙を発生させた時の映像と、煙の成分など。

 その全てを説明しても意味は無いので、森下は掻い摘んだ説明をする。

 

 

「簡単に言えば、バディロイドやメガゾードに使われている特殊金属を錆びさせる煙を、あのメタロイドは発生させたようです」

 

「成程……だから、ニックさん達だけが錆びた、と」

 

 

 翼もずっと疑問だったのだ。

 あの黄色い煙が錆に関係しているのは想像に難くないが、では何故、バディロイド『だけ』が錆びたのか。

 金属でできているものはあの場には沢山あった。それこそライダーのベルトの類も。

 しかし今の説明で合点が言った。

 ヴァグラスは明確にバディロイドだけを狙い撃ちにしてきたのだ。

 

 

「先程リュウジさんがおっしゃったように、錆の侵攻を抑える処置はしています。

 ですが、元に戻るのには時間が……」

 

 

 煙や錆の正体が分かった事で、バディロイドを元に戻す目途は立った。

 しかし目途が立っても、すぐに錆を落とせるかと言えば、答えはノー。

 それまでバスターマシンは発進できないという事だ。

 

 

「でもよ、おかしくねぇか?」

 

 

 翔太郎が口を出す。

 全員が彼の方を向くと、翔太郎は疑問を口にした。

 

 

「メガゾードってのは、バスターマシンの事だろ?

 でも、そいつはヴァグラス側だって使ってるわけだ。だったら、あの煙で錆びちまうんじゃあ……」

 

「その通りだ。その為か、今回はメガゾードの転送反応が無かった。

 メガゾードを使えないのは、向こうも同じという事なのだろう」

 

 

 黒木の言葉に、煙や錆についての書類をめくりながら森下も頷いた。

 つまり、黒木の言葉が正しいという事。

 バスターマシンとは、『ゴーバスターズが使っているメガゾード』という意味だ。

 敵味方どちらもメガゾードに使われている素材に差異は無く、メガゾードを錆びさせるという事は、ヴァグラスのメガゾードも錆びて使い物にならない。

 今回のヴァグラスは、両者のメガゾードを封じてきたのだ。

 

 

「つまりデカブツ対決はしたくないって事か。何でだ……?」

 

「疑似亜空間というアドバンテージを得ているのに、自分達からそれを捨てた現状……。

 確かに、気になりますね」

 

 

 翔太郎、翼の言葉は特命部側も疑問に思っている事だ。

 グレートゴーバスターでなければ対処できない疑似亜空間という新たな戦法を身に着けた上で、メガゾード戦を捨ててきたのだ。

 有利な状況、有利な条件を無視してまで何をしようとしているのか。

 その疑問に対しての答えになるかは分からないが、特命部はある情報を得ていた。

 もう1人のオペレーター、仲村がそれを読み上げる。

 

 

「関係があるかは分かりませんが、東京エネタワーから、微弱な転送エネルギーが出ているんです」

 

「転送、エネルギー? ……って何ですか?」

 

 

 それぞれに反応を示す中、響だけが純粋に疑問を口にした。

 辺りをキョロキョロと見渡す響に、リュウジが優しく転送エネルギーについて教える。

 

 

「読んで字のまま、転送する時に発生するエネルギーの事だよ。

 メガゾード転送の直前や直後とかが、一番分かり易いかな」

 

「え? でも、それが東京エネタワーから出てるって……」

 

「うん、普通じゃない」

 

 

 転送エネルギーは『転送直前、あるいは直後に観測されるエネルギー』だ。

 つまり転送エネルギーが感知されるという事は『転送が始まろうとしている』か『転送が終わった直後』である事を示している。

 それが東京エネタワーから出ている事は当然ながら普通ではない。

 確かに転送に必要なエネトロンを貯蔵するエネトロンタンクを管理してはいるが、転送に関する機能などある筈がない。

 

 

「……後で東京エネタワーを調べてみましょう。それもそうですが、剣二と不動さんは?」

 

 

 特命部本部で分からない事なら、直に調べてみる以外に方法は無い。

 そこでヒロムは一旦話題を変え、重傷でフォーゼ達に運ばれた剣二達の事を黒木に聞いた。

 黒木は神妙な面持ちでそれに答える。

 

 

「命に別状はないそうだが、重傷らしい。特に剣二君は手ひどくやられているそうだ。

 すぐに戦線復帰というわけにはいかないだろう」

 

「あの岩の魔物、凄く強かったです。あんなのを何度も受けたら……」

 

 

 ロッククリムゾンの一撃は非常に強烈だ。

 それはロッククリムゾンと相対し、拳を2回ほど受けた響がよく知っている。

 すぐに2号が来てくれたからよかったが、響だってあのまま戦い続けていれば無事で済んではいなかっただろう。

 それを剣司と銃四郎は10発以上貰っているのだ、重傷でない筈がない。

 特に剣司は何度も踏みつけられていたというのもある。

 

 

「あの趣味の悪い金色女もそれなりに強かったんだろ? 風鳴」

 

「はい、あのスピードは脅威です」

 

 

 ロッククリムゾン同様、レディゴールドも相当な強さを持っていた。

 片や力が、片や速さが桁違いな2人のジャマンガ幹部は、どちらも無視できるものではない。

 そして問題はまだある。それを口にしたのはヨーコだ。

 

 

「それを言ったら、あの黒い魔弾戦士も強かったんだよね? ヒロム」

 

「ああ、レディゴールドや俺と対等の速さだった。アイツもレディゴールド並かそれ以上だ」

 

「後はあのエスケイプってアバターだね。かなり好戦的な性格してるみたいだけど」

 

 

 ヒロムは一度だけとはいえ謎の魔弾戦士と刃を合わせているし、エスケイプが好戦的且つ強いのはゴーバスターズの3人が分かっている。

 強敵が3人。第3勢力とも言える謎の戦士が1人。

 先日にジャークムーンを倒し、サンダーキーを手に入れ、グレートゴーバスターが使えるようになったばかりだというのに、一気に問題が増えた感じだ。

 

 

「ま、だがこっちにも助っ人が2人だ。仮面ライダーメテオに、仮面ライダー2号」

 

「そうですね。楽観するには厳しいですが、悲観するには早すぎます」

 

 

 翔太郎と翼は、何もネガティブな事ばかりではないと周囲を鼓舞するように話題を変えた。

 メテオこと流星は現在S.H.O.Tに、2号は何処とも知れないがロッククリムゾン打倒までは協力してくれるらしい。

 流星に関してはまだ挨拶すらできていないメンバーが大半な上、かなり急な参戦であったが、少なくとも弦太郎の友達で味方だ。信用は十分にできる。

 

 

「とりあえず、今回のヴァグラスの目的をはっきりさせよう。

 敵がどれだけ出てきても、今の俺達にできる事をしていくしかない」

 

 

 ヒロムの言葉に全員が頷き、その頼もしさに黒木が笑みを浮かべる。

 どんな状況であれ、彼等がするのは悪を挫き、みんなを守る事。

 強敵が現れようと何だろうとその軸だけはブレないし、ブレさせてはいけない。

 

 今の彼等にできる事。

 それは東京エネタワーから出ているという転送エネルギーの正体を確かめる事だ。

 恐らくだが、ヴァグラスかジャマンガの目的はそれと関係しているのだろう。

 

 翼も言ったが、強敵が増えても悲観するには早い。

 決意を新たにした戦士達は特命部を後にし、東京エネタワーへと向かった。




────次回予告────
ジャマンガとヴァグラスに新しい幹部。
このままで終わるわけにはいかねぇ。
あのマダンキーの為に、リュウガンオーがパワースポットに向かおうとする。
不動さん、無茶しないでくれよ。
次回も、スーパーヒーロー作戦CSで突っ走れ!

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