スーパーヒーロー作戦CS   作:ライフォギア

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第48話 新たな動き

 フィルムロイドとの戦いの中で撤退したエンターとフィーネ。

 エンターが疑似亜空間の中に行く前に、「今回はもう、ノイズはいいです」という言葉を受けてフィーネは自分の屋敷に戻って来ていた。

 戻って最初に黒服を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿となったフィーネは屋敷の奥にある、自分が普段から座る椅子に腰かける。

 

 

(私の目的の為には、連中は確実に邪魔になる。

 その為にヴァグラスやジャマンガ、大ショッカーとも手を組んだ……)

 

 

 脳裏に浮かぶのはシンフォギア装者、仮面ライダー、ゴーバスターズ、魔弾戦士の姿。

 彼女には彼女の『目的』があり、その目的を知れば、彼等彼女等が邪魔をしてくるであろう事は明白。

 だから、人類の敵とも呼べる連中とも手を組んだ。

 やや不本意だったのも本当だが、目的の為に手段を選んではいられない。

 

 

(ただ、邪魔になるのはもう1つ……)

 

 

 フィーネは普段使う機器のモニターに1つの機体を映し出す。

 その機体を見て、フィーネは顔をしかめた。

 

 

(ダンクーガ……)

 

 

 苦々し気な目でモニターに映るダンクーガを見つめる。

 ダンクーガは基本的に戦争の調停、及び人類の敵と戦う事が主だった出現理由。

 フィーネの目的はダンクーガ側から見れば阻止したい事柄であるだろうとフィーネ自身考えていた。

 そうでなくともゴーバスターズに協力した事があるのだから、自分の敵になるのは十分に想定できた。

 ほぼ確実にダンクーガは敵になるであろうとフィーネは予感している。

 だがそれでいて、フィーネはダンクーガとは違う存在の事を考えていた。

 

 

「月には観測者。地球には守護者。

 『あの方』と比べれば紛い物にすぎぬ機械仕掛けの神が、すっかり本物気取りか」

 

 

 思わず口をついて出た『紛い物にすぎぬ機械仕掛けの神』とは、ダンクーガに向けられた言葉ではない。

 しかし言葉からは憎々しげな感情が露わになっており、月と地球に存在していると語られたそれに対し、敵対心を向けている事は容易に感じ取れた。

 その『観測者』や『守護者』からフィーネが実害を受けた事は一度もない。

 だが、どうしても許せないのは、それらが『紛い物』である事。

 そしてそれが、まるで本物であるかのように振る舞っている事だった。

 彼女は『本物』を知っているが故に、『偽物』を許す事が出来ない。

 

 

「いずれにせよ、観測者の方は消え失せる。自分を神だと奢る偽物は」

 

 

 彼女は守護者よりも観測者の方を特に嫌悪していた。

 どちらも紛い物である、というのは同じなのだが、月の観測者の方は特に自分を『神である』と奢り高ぶっているから。

 

 

「……ん?」

 

 

 ダンクーガ、地球の守護者、月の観測者。

 今後に姿を現すと仮定している邪魔者の事を考えていたら、突然大きな音が鳴った。

 音の方を向けば屋敷の広間の扉が乱暴に開け放たれ、その先には自分が切り捨てた雪音クリス。

 彼女が顔を俯かせて立っていた。

 

 

「あたしが用済みってなんだよ! もういらないって事かよ!

 アンタもあたしを物のように捨てるのかよッ!!」

 

 

 喧嘩するけど、仲直りするから仲良し。

 あの時出会った兄妹がそんな事を言っていた。

 だから、一度ぶつかってみようと意を決して、もう一度フィーネの前に姿を見せたクリスは自分の心情を叫び続ける。

 

 

「頭ン中グチャグチャだ! 何が正しくて何が間違ってるのか分かんねぇんだよォッ!!」

 

 

 唯一無二に信頼していたフィーネにいらないと言われ、綺麗事ばかり語る敵が諦めずに手を指し伸ばしてくる。

 自分以外の力を持つ者を全てぶっ潰して、争いを無くすという彼女の目的は揺らぎかけていた。

 戦争を無くしたいという気持ちは変わらない。けれど、何を信じていいのか、何をすればいいのか。

 でも、何かを聞こうにもクリスが頼れるのはフィーネだけだった。

 例え、一度は自分を切り捨てようとした人だとしても。彼女にはフィーネしかいなかった。

 

 だが──────。

 

 

「はぁ……」

 

 

 溜息をついたフィーネは、ソロモンの杖よりノイズを数体放った。

 ノイズ達はクリスを狙う。フィーネの指示1つでノイズ達はクリスに襲い掛かるだろう。

 

 

「流石に潮時かしら」

 

 

 ゆっくりと立ち上がり、ノイズに囲まれているクリスに向かって冷徹な微笑を見せた。

 

 

「そうね。貴女のやり方じゃ、争いを無くす事なんて出来やしないわ。

 精々1つ潰して、新たな火種を2つ3つバラまく事くらいかしら」

 

「アンタが言ったんじゃないか!? 痛みもギアも、アンタがあたしにくれたもの……!」

 

 

 必死の叫びもかき消して、フィーネはあくまで蔑むような視線を崩さず。

 

 

「私の与えたシンフォギアを纏いながらも、毛ほどの役にも立たないなんて」

 

 

 次の瞬間には、クリスの目の前でフィーネは光に包まれていた。

 光が収まると同時にフィーネは何も纏っていなかった裸の姿から変わる。

 身に纏うは金色の鎧。肩に装備されている棘や、鎧の意匠には見覚えがある。

 銀色から金色へと変化こそしているものの、それはネフシュタンの鎧に相違なかった。

 

 

「私も、この鎧も不滅。未来は無限に続いていくのよ」

 

 

 ネフシュタンの鎧が一番得意としている能力は再生能力。

 鎧としての強靭さではなく、鎧がどれだけ傷ついても朽ちる事の無い復元能力だ。

 だから、鎧が不滅という意味は分かる。だがフィーネ自身が不滅という意味がクリスには分からない。

 いや、それ以上に、目の前のフィーネが本気で自分を消しに来ていると肌で感じてしまったクリスは、そんな事を考える事もできない。

 

 

「『カ・ディンギル』は完成しているも同然。もう貴女の力に固執する必要もないわ」

 

 

 カ・ディンギル。

 フィーネと長く一緒にいた筈のクリスですら、知らされていなかった単語。

 それが何なのかを問うよりも前に、フィーネはソロモンの杖を振るった。

 

 

「貴女は知りすぎてしまったわ。だから、そろそろ幕を引きましょう? クリス」

 

 

 ノイズ達は容赦なくクリスに突進し、命からがらそれを避けるクリス。

 避けられたノイズ達は壁や地面に激突して爆発し、壁や地面を粉々に砕いていく。

 間違いのない本気の殺意をもってして仕留めに来ている事がクリスには分かった。分かってしまった。

 誰よりも信頼していた人からの、決定的な裏切りが。

 

 屋敷の外に出てもノイズ達は追いかけてくる。

 むしろ、ソロモンの杖より無尽蔵に繰り出されるノイズ達は数を減らす気配がない。

 クリスを追ってフィーネもゆっくりと歩を進め、屋敷の外に姿を現した。

 その時の彼女の表情は、酷く笑っていて。クリスを追い回して殺そうとする事に躊躇などなくて。

 

 

「ちくしょう……」

 

 

 裏切られた痛みに涙を流すクリスを見ても、フィーネは笑ってソロモンの杖を向ける。

 クリスはただ、慟哭する他なかった。

 

「ちくしょう────ッ!!」

 

 心の何処かで、まだ信じていたいという気持ちがある。

 悲痛な叫びを聞こうともフィーネは止まらず、クリスは──────。

 

 

 

 

 

 結論から言うと、クリスには逃げられた。

 彼女にはネフシュタンが無くともイチイバルのシンフォギアがある。

 敵がノイズである以上、シンフォギアを所有している事は大きなアドバンテージだ。

 フィーネもイチイバルの正規適合者であるクリスをそう簡単にノイズで仕留められるとは思ってはいない。

 だが、シンフォギア装者とて、纏う前はノイズに炭へと転換されるただの人。

 行く当てのないクリスに延々とノイズをぶつけていけば、自ずと力尽きたクリスはノイズに炭にされるだろう。

 わざわざネフシュタンを纏って自分が出向くまでもなく、逃がしたクリスには追手としてノイズを定期的に放ち続ければいい。

 そう考え、クリスを逃がした直後のフィーネは屋敷へとさっさと戻り、ネフシュタンを解除した。

 そして椅子にかけられていた白衣を含む服一式を手に持って、着替えを始めた。

 

 

(さて、そろそろ戻らないといけないわね……)

 

 

 聖遺物関係の仕事だとか、政府や各組織とのパイプとしてのやり取りだとか、適当な理由をつけてその場を離れていた彼女だが、戻りが遅すぎるのはマズイだろう。

 そう考え、彼女は『普段自分が演じている自分』へと変身する。

 学者のような服を着て、金髪は茶髪にして、長い髪の毛を纏めて、眼鏡をかけて。

 

 その姿は──────。

 

 

 

 

 

 

 

「で、何でまた此処?」

 

 

 リディアン近くの病院の一室にて、剣二が大変不服そうな声を上げる。

 ジャークムーンの城と疑似亜空間を打ち破った彼等が特命部に戻ると、剣二は有無も問われずに「病院に行け」、と言われてしまったのだ。

 

 

「病院を抜け出した身ですからね。こうなるのも無理はありません」

 

 

 翼が言うが、そんな彼女も病院服に身を包んでいた。

 クリスの襲撃、フィルムロイドの来襲、ジャークムーンの城の出現、疑似亜空間の発生。

 これらは昨日と今日の僅か2日間で発生した事だ。

 昨日にクリスとフィルムロイドが襲撃してきて、さらに疑似亜空間の発生。

 そしてグレートゴーバスターが完成したのとフィルムロイド撃破、及びジャークムーンの城を落としたのは今日。

 実は翼も病院を抜け出してから1日しか経っておらず、非常事態が続いていたためにメディカルチェックだけで見逃されていたのだが、今日のメディカルチェックで弦十郎からこんな事を言われてしまったのだ。

 

 

「流石に病み上がりでやりすぎたな。メディカルチェックで問題だらけだったぞ?」

 

 

 自分のミスだと弦十郎は詫び、翼が「もう大丈夫」と言っているのも無視して病院に戻した。

 そして本当なら入院中である剣二と、仲良く病院送りになったというわけなのである。

 この2日間、敵の杖の力によってノイズが出現していた事もあって翼は出撃した。

 響や士だけでは頼りないというわけではないが、敵はノイズだけでなくメタロイドやジャマンガまでも出ていたから、というのが理由としてある。

 

 そんなわけで個人的には元気一杯、メディカルチェックでは問題一杯な2人は病院という場所で暇を持て余していた。

 翼と剣二の病室は当然別々なのだが、翼が剣二の病室に顔を出したのも『暇だから』である。

 

 

「退屈だなー。病院食は味が薄いしよー」

 

 

 猪俣さん家の魔物コロッケが食べてー。とひとりごちる剣二。

 そんな剣二と同じく退屈を感じていた翼は、ピンと閃いた提案を剣二に持ち掛けた。

 

 

「そうだ剣二さん、お互いに剣を使う身。軽い訓練くらいなら」

 

「おっ! そりゃいい考えだぜ!」

 

『……2人とも、大人しくしてろ』

 

 

 2人の青い剣士は、ゲキリュウケンというお目付け役にたしなめられているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「大人しくしてるだろうな、剣二のヤツ……」

 

「あはは、翼さんも一緒ですから大丈夫ですよ」

 

「どうだか。アイツもアイツで大人しくしてなさそうだろ」

 

 

 特命部司令室にて銃四郎、響、士が口々に言う。

 なお、その不安は的中しかかっている。

 多分、あの2人が変な事を言い出したら止めるのはゲキリュウケンの仕事なんだろうな、と銃四郎はゲキリュウケンを不憫に思った。彼に胃があったらキリキリとしている事だろう。

 

 この場には前線に立っていたメンバーがヒロムと剣二と翼を除いて全員揃っていた。

 ちなみにヒロムは未だに眠ったままでいる。しばらくすれば目覚めるだろう。

 戦いが終わっての事後報告という事で、二課とS.H.O.Tともモニターで繋がっている。

 まず口を開いたのは特命部の黒木だ。

 

 

「さて、みんな。今回の戦いは厳しいものだったが、よく無事に勝ち抜いてくれた」

 

 

 労いの言葉から入る黒木はその後、戦闘後の報告に移った。

 

 

「今回の戦いでグレートゴーバスターが出撃可能になったが、敵も疑似亜空間という新たな力を使ってきた事は見逃してはならない事実だ」

 

 

 全員の顔に緊張が走る。

 そう、幾ら最高の形で戦いが終わったとはいえ、敵が厄介な力を使用してきたのは間違いのない事実なのだ。

 しかも疑似亜空間はマサトがいなければ、戦う事すらできなかったかもしれない案件。

 今回は何とか勝てた、というだけなのである。

 

 黒木の言葉の後、今度はS.H.O.Tの瀬戸山が報告を引き継いだ。

 

 

『それからサンダーキーですが、これからは問題なく使えるでしょう。あの力は今後の役に立ちます』

 

 

 グレートゴーバスターとサンダーリュウケンドー。

 2つの強大な力は頼りになるものだ。

 それらを手にできたという事は掛け値なしに朗報と言える。

 

 

「グレートゴーバスターもだな。アレはメインパイロットのヒロムがもっともっと強くなりゃ、負担も考えず運用できる。ま、ヒロム次第ってこった」

 

 

 製作者であるマサトの言葉。

 ざっくり言うとグレートゴーバスターは負担に耐えうるだけの体力を手に入れればいいだけの話。

 それが難しいのだが、それさえできればグレートゴーバスターは長く運用することができるようになる。

 今後本物の亜空間に突入する事を考えれば必須要項とも言えるだろう。

 

 新たな力は喜ばしい事だが、ヴァグラスの疑似亜空間は今後も警戒しなければいけない代物。

 そして、敵に関してはもう1人、気を付けなければいけない存在がいる事を忘れてはならない。

 二課の弦十郎がそれを語りだした。

 

 

『次だ。フィーネと名乗る謎の女性の事だが……』

 

 

 現状、目的も正体も不明な、どの敵よりも不明だらけの敵。

 今回もエンターと共に活動していた事からヴァグラスとは協力関係にある事が伺えた。

 雪音クリスという少女を切り捨てるような発言をしていた件もある。

 それに、気になる事はもう1つ。

 

 

「俺も、そいつに関しては気になった事が1つある」

 

 

 声を発したのは士だった。

 

 

「そいつは俺が別の世界から来たのを知ってる口ぶりだった。どういうわけか知らんがな」

 

 

 当然、それはおかしい話だ。

 士が『他の世界から来た』と語った人物と言えば、この部隊のメンバー以外には冴島家の鋼牙とゴンザのみ。

 敵方であるフィーネがそれに関して語るなど、本来は有り得ない事だ。

 だが、思い当たる節がないわけではない。

 

 

『やはり内通者、かしらね……』

 

 

 了子の言葉の後には沈黙が残る。

 以前にも思っていたが、早い段階から響の存在を知っていた事。

 それに今回の士の事情を知るような言葉。

 響の存在を知って狙っていたのはネフシュタンの少女、即ち雪音クリスなわけだが、そのクリスはフィーネと協力関係にあった。

 つまり、二課に入って日の浅い響の存在を知っていたのも、士の事情を知っていたのも全てフィーネだったという図式が成り立つ。

 誰かがフィーネに情報を流しているとしか考えられない。

 ただこの時、銃四郎はふと、疑問を覚えた。

 

 

(……妙だな。響ちゃんの存在はともかく、『士が別の世界から来た』って情報は……)

 

 

 もしも情報を流していた人物がいるとするならば、その人物が流している情報は重要な事柄ばかりだろう。

 例えば立花響が新たなガングニール装者となったという事が重要なのは分かる。

 だが、士が別世界出身である事は果たして重要なのか。

 言ってみればこれは『翔太郎は風都出身』とか『剣二はあけぼの町在住』のような経歴に過ぎない。

 であるならば、そこまで細かく情報を流す必要があったのだろうか?

 簡単に言うと、その情報に関してはそこまでの重要性を感じられないのだ。

 勿論、『別世界から来た』という経歴が特異過ぎたからフィーネにも情報がいった、と考えるのは自然なのだが。

 

 何より引っかかるのは、敵が『門矢士は並行世界から来た』という事を信用している事だ。

 味方ですらも簡単には信じきれないぶっ飛んだ経歴をどのような経緯で知ったかは置いておいたにせよ、まるで『並行世界』の存在を信じているような。

 まあ、ブラフ程度に発言した可能性もあるのだが。

 考えれば考える程、フィーネの言動は不可解だった。

 

 

「……ま、勝ったばっかなのに暗い話ばっかなのもアレだし。他にはないの? 黒リン」

 

 

 内通者というあまり良くない話題を切ってマサトが黒木に振った。

 渾名で呼ばれたことに黒木は不服そうな顔で溜息をついた後、前線のメンバー達の顔を見渡して語る。

 

 

「剣二君と翼君はしばらくすれば復帰。

 ヒロムも疲れているだけで、しばらくすれば目を覚ますだろう。

 今回の一件でこの部隊は漸く、完全な形になったと言ってもいい」

 

 

 その言葉で全体の雰囲気も明るくなる。

 今までは翼が絶唱して重傷を負ったり、剣二がサンダーキーを使用して再起不能になりかけたりと、完全に全員が揃う、という事が無かった。

 だが、その2人は精神的な苦悩を乗り越えて、後は怪我を完治させるだけ。

 ヒロムも心の中にあった弱さを露呈させた事でかえって強くなった。

 

 

「それに特命部、二課、S.H.O.Tに続く、第4の組織の参入も正式に日程が決まった」

 

 

 これまた吉報だ。

 元々想定されていた合併に参加する組織は4つ。その最後の1つの参入が確定したのだ。

 

 

「組織の名前は『警視庁国家安全局0課』。縮めて『国安0課』とも呼ばれている」

 

 

 新たに参入が決定した組織の名を口にする黒木に、銃四郎が首を傾げる。

 

 

「前から疑問だったが、0課って何なんですか。聞いた事ないですよ、そんな部署」

 

 

 銃四郎はあけぼの署、S.H.O.Tメンバーになる以前は警視庁刑事部捜査第一課の刑事だった。

 故に警視庁の事についてはある程度知っているのだが、そんな部署を見聞きした事は一度もない。

 疑問に答えのはS.H.O.T司令の天地だ。

 

 

『当然だ。0課は警察内部でもトップシークレット、知っている者は0課所属の人間と、一部の上層部、他はイレギュラーだけだ』

 

 

 さらに続けて、天地は0課について語る。

 

 

『0課はS.H.O.Tと同じで魔法関係に明るい組織で、こちらとも時々交流があった』

 

「魔法に? 何で警察が魔法を?」

 

『0課が相手にしている怪物が、ジャマンガのような連中だからな』

 

 

 銃四郎の質問にも天地は即座に答えた。

 天地曰く、0課はファントムと呼ばれる敵を相手にしていて、それらは魔法に関係のある敵らしい。

 その為、時折S.H.O.Tとも関わる事があったのだが、本格的な協力関係はこれが初めてだという。

 会話を聞いていた翔太郎はぼんやりと、ある事を考えていた。

 

 

(魔法ねぇ……。そういや、なぎさちゃん達が会ったっていう仮面ライダーも魔法使いとか言ってたっけ……)

 

 

 最初は「そんな馬鹿な」と思っていたのだが、リュウケンドーやリュウガンオーという魔法を武器に戦う連中を見ていたら、どうにも笑えなくなってきた。

 魔法というファンタジーなものが実在するとは思っていなかったのだろう。

 ただ、それを言い出したらガイアメモリとかアストロスイッチ、もっと言えば仮面ライダーという存在自体、一般的には有り得ないとされるものだが。

 

 さて、0課の説明は一先ず置かれ、黒木が改めてまとめに入った。

 

 

「ともかく、これで部隊が完全な形になる。

 今後も厳しい戦いが続くかもしれないが、共に協力していって欲しい」

 

 

 誰もがその言葉に頷いた。

 今の部隊は本来想定されていた戦力よりも増しており、その理由は仮面ライダーが正式に参入してくれたから、というのが大きい。

 ゴーバスターズ、シンフォギア装者、魔弾戦士、そして仮面ライダー。此処にまだ0課が加わるのだから心強い。

 敵は多い。だが、仲間だって同じくらい多い。その事実が頼もしくない筈が無かった。

 

 

「一先ずみんなは休んでくれ。特に、響君は明日も学校だろう」

 

 

 名指しされた響はそう言えばそうだったとばかりに「あっ」と声を上げた。

 一方で士がゲンナリとした表情をしている。どうやら明日は士の授業もあるようだ。

 

 

「立花、明日の授業は自習だ。喜べ」

 

「いや、それただのサボりですよね!?」

 

 

 授業放棄を堂々と宣言した士に驚いた響は思わずツッコミを入れる。

 そんな平和な時間が流れる中でも、響は心の中で思う。

 

 

(未来と、ちゃんと話さなきゃ……)

 

 

 戦いが一旦の終わりをみても、響の心は晴れない。

 親友との、まだ親友であると思っている彼女とのわだかまりが解けるまでは。

 

 

 

 

 

 前線のメンバー達はその疲れをさっさと癒したいのだが、そうもいかない理由がある。

 それがメディカルチェックだった。

 二課のメンバーは二課で、ゴーバスターズは特命部で、魔弾戦士はS.H.O.Tで、それぞれにメディカルチェックを受ける必要がある。

 

 さて、仮面ライダー達だが、士は二課の所属、翔太郎も弦太朗も二課の宿舎に住んでいるので、メディカルチェックは二課で受ける事になった。

 士は溜息をついた。理由は移動が面倒という事である。

 まず、響はリディアンの宿舎だし、翔太郎や弦太朗も似たようなものだ。

 ゴーバスターズはそもそも特命部住まいだし、魔弾戦士もあけぼの町在住なので家から近い。

 つまりただ1人、士だけが住まう場所とはまるで関係の無い方向に出向かなくてはならないのだ。

 休みたいというのに何故俺だけ、と、メディカルチェックを受ける中で士は大変不服そうである。

 

 チェックが終わった士は、先程否応なく寝転がさせられたCTスキャンの為の診察台から上半身を起こし、下半身を台の上から投げ出して座る体勢になり、腕と足を組んで溜息をついた。

 

 

「そう不貞腐れないの、男の子でしょ?」

 

「あのな、お前と違って俺は色々忙しいんだよ」

 

「あらひっどーい。私だってね、頭のかたーいお偉いさんとか、色んな人を相手にしてるのよ?」

 

 

 メディカルチェック担当の了子と士がそんなやり取りを繰り広げる。

 人を小馬鹿にしたというか、おちょくるような態度の了子がどうにも士は苦手だ。

 自分が皮肉を言おうが何を言おうが、了子は基本的に笑ったり、おどけた態度で返してくる。

 それは士が苦手なタイプの1つだった。

 相手を煽って自分のペースを作る事の多い士としては、了子はそれに乗ってこない人物だからだろう。

 皮肉も悪態も無駄だろうと悟った士は、メディカルチェックの結果だけ聞いて帰ろうと報告を急かした。

 

 

「……で、結果はどうなんだ? 至って健康だろ?」

 

「ええそりゃもう抜群に。ま、疲れやダメージはあるみたいだけど、そこは他のみんなと同じね」

 

 

 メディカルチェックの結果は全て機器類のモニターを通じて表示される。

 基本的にオールグリーン。疲労はあるものの、そこ以外は問題なしと表示されていた。

 激戦の後で疲労が残っていない方がおかしいので、この結果はむしろ正常と言える。

 

 

「この分なら、明日の授業も大丈夫そうね?」

 

「なんならお前が授業をしてみるか? 櫻井」

 

「私が人に教えられる事って、色んな分野の専門知識と恋バナだけよ?」

 

「片方は高校生なら飛びつく話題だろ」

 

 

 そんな会話の直後、士はボソッと呟く。

 

 

「……つーか、お前の恋バナって何年前の」

 

「何か言ったかしら?」

 

 

 言い切ったらマズイと本能的に思った士は顔を背けた。

 これもかつて笑いのツボを押されまくったが故の危機感知だろう。

 『敵わなさそうな女性に、あまり迂闊な事は言わない』。

 例えば笑いのツボを押してくるような奴とか、櫻井了子のように純粋に口で敵わない奴とか。

 いい歳の女性に年齢の話は禁句だと士は知っている。

 それでも言うのが士だが、了子に言ったら何をされるか分からないという謎の悪寒がしたので止めたのだ。

 面倒な事になる前に話題を逸らそうとした士は了子に聞いておきたかった事があるのを思い出し、いい機会だと思ってそれを口に出した。

 

 

「そういや櫻井、立花の方はどうなんだ」

 

「女子高生のメディカルチェックの結果を? 士君、それセクハラよ?」

 

「阿保か。前の地下鉄の件やデュランダルの時の事だ」

 

 

 その2つの件は了子も士から聞き及んでいる事だった。

 地下鉄の一件で見せた黒い姿の響と、デュランダルを握った直後の黒い姿の響。

 状況は全く違うが、どちらにも共通するのは普段の響とはまるで違う、敵を叩きのめす事しか考えていないかのような凶暴さ。

 それらをとりあえず『暴走』と定義しているのだが、それを二度とも目撃しているのは士のみ。

 どうにもそこだけが引っかかっていて、改めて了子に尋ねたというわけだ。

 了子はメディカルチェックの結果を士から響の物へと表示を変え、顎に手を当てる。

 

 

「うーん、変わったところは無いのよね。強いて言えば融合が進んでいることくらいかしら」

 

「融合?」

 

「そ。心臓にあるガングニールの破片が体組織と融合しているのよ。まあ、現状はそれだけなんだけど」

 

 

 心臓の破片が融合。あまり良い意味には感じられない言葉だ。

 それに現状はそれだけと言うが、『現状は』というのが引っかかる。

 

 

「現状は、だと?」

 

「ええ、影響らしい影響がないのよ」

 

「暴走とは関係ないのか」

 

「多分あるんだろうけど、細かくは分からないわ。聖遺物との融合症例なんて前代未聞だもの」

 

 

 響は『身体の中に聖遺物を宿している』、つまりは聖遺物との『融合症例』という初の事例である。

 聖遺物の権威である了子ですら初めて見るという事で対応にも困っているようだった。

 恐らく、あの暴走に近い現象は『融合症例』という特異な状態が理由であろう事は分かる。

 例えば前任のガングニール装者であって天羽奏や天羽々斬装者の風鳴翼は暴走した事は無く、その2人と響の違いと言えば、『聖遺物が体内に宿っているか否か』、という点だけだ。

 だが、分かっているのはそこまでだし、そもそも『融合症例だから暴走が起きる』というメカニズムも不明。

 了子も思わず溜息をついた。

 

 

「貴方といい響ちゃんといい、私の予想を超える人が出てくる出てくる」

 

「俺もか?」

 

「あのね。シンフォギア抜きでノイズを倒せるのって、この世界だと相当な事なのよ?」

 

 

 この世界の『ルール』として、シンフォギアに頼らなければ基本的にノイズを殲滅する事は出来ないというものがある。

 炭化能力を無効化できればノイズが実体化する一瞬を狙う事も出来るようになる。

 ただ、実体化する『一瞬』とは、文字通りの『一瞬』。

 そこを狙う事は戦闘経験の豊富な仮面ライダーや訓練を受けてきたゴーバスターズですらも厳しいものがある。

 それを度外視してノイズを殲滅できるのはこの世界に唯一シンフォギアのみ。

 の、筈だったのだが。

 ディケイドはその持ち前の能力で見事にそのルールをぶっ壊して見せた。

 今となっては周知の事実だが、シンフォギアシステムを研究してきた了子にとっては今でも信じ難い事なのだろう。

 

 

「前にも言ったろ。ディケイドはそういうモンだ」

 

「ディケイドって言っとけば何でもアリって思ってない?」

 

 

 ピシッと指をさす了子だが、士は気にも留めずにスルーした。

 以前に了子はディケイドの能力が気になりすぎて士を尋問レベルで問い詰めた事がある。

 士は士で面倒だから答えなかったのだが、あまりにも問い詰める勢いが凄すぎて『答えない方がむしろ面倒になる』と判断し、ディケイドが今までにしてきた『破壊』の事を少しだけ教えた。

 そこで了子が耳にしたのは、唖然とするような事実。

 例えば『ブレイドの世界』での出来事。

 まず『不死身の生命体』がいるという前提の時点で了子は匙を投げかけたが、『不死身』と銘打たれているそれを『殺した』とか言い出すもんだから匙を全力投球した。

 しかも深く聞いてみれば、ブレイドの世界のライダーはその生命体を『封印』しているというのに。

 

 

「結局ディケイドって何なの? 頼もしいけど、ある意味怖いわよ」

 

「世界の破壊者。全てを破壊する事のできる、な」

 

 

 何者かと問われた時、彼は『通りすがりの仮面ライダー』か『世界の破壊者』と答える。

 後者の通り名に関しては破壊者という言葉のせいで誤解される事も多く、士は自分の力を皮肉る時によく、そちらの通り名を使う。

 自分は破壊する事しかできない。時に『悪魔』とすら罵られる力。

 今でこそ言われる事も少なくなっていたが、ディケイドが破壊者であるという事実は変わらないのだと。

 それを聞いた了子は、何故か神妙な顔つきになっていた。

 

 

「……じゃあ、もしもの話をするわ」

 

「何だ?」

 

「仮に世界が呪われているとするわ。貴方の『破壊』は、その呪いを壊す事もできるの?」

 

 

 意味深長な質問。

 普段の櫻井了子としての性格は引っ込み、まるで別人であるかのような口ぶりで。

 一度も見た事の無い、普段からは想像もできない程の了子の姿に戸惑う士だが、その余りの雰囲気に押されて皮肉や悪態抜きの答えを出した。

 

 

「どうだろうな。俺の破壊にも限界が無いわけじゃない。

 それが世界にかけられた呪いなら、世界そのものを壊す事になるかもしれないな」

 

「……そう。じゃあ、無理なのね?」

 

「多分な。俺はこの世界を破壊する気はない。まあ、戦うくらいはしてやるから安心しろ」

 

 

 妙な空気が流れてしまった。

 おちゃらけた言葉でからかう了子と、皮肉と悪態を繰り返す士。

 2人のやり取りは傍目から見れば基本的には漫才のように明るいものだ。

 その筈なのに、今回だけは重たい空気が流れる。

 

 

「なーんちゃってぇ!」

 

「は?」

 

 

 そんな空気を吹き飛ばしたのは、話を切り出してきた了子の方だった。

 了子はいつも通りの雰囲気、いつも通りの笑みに戻って士を笑う。

 

 

「ふふっ、士君、ちょーっと真面目に聞くと真面目に答えてくれるのねー。

 冗談に決まってるでしょ?」

 

「……じゃあ、この世界が呪われてるってのは」

 

「初恋は実らないって言うじゃない? それって世界が呪われているからだと思うわけよ。

 『あの時の私の恋を返せー』みたいな?」

 

「……お前、馬鹿か?」

 

「あら。一応天才よ、私。できる女と評判だって言ったでしょ?」

 

 

 掴みどころのない了子に士はほとほと呆れるばかり。了子は変わらず笑う。

 でも、士は心の何処かで自分も気づかぬ内に思っていた。

 先程の重たい雰囲気の了子が、本当にただの冗談だったのかと。

 

 

 

 

 

 朔田流星は仮面ライダー連続襲撃事件に関して調査を進めていた。

 しかし目立った情報は得られず、最新の情報は日本に5体同時に現れたという弦太朗からの情報だけ。

 しかも特異災害対策機動部二課やら日本政府やらが関わっている案件の為、弦太朗も申し訳なさそうに全ては話せないと語っていた。

 

 今回の調査に訓練生や研修生と言われる、つまりは新米の立場である流星が組み込まれているのには理由がある。

 それは彼が仮面ライダーだからだ。

 敵が仮面ライダーを狙っているなら、仮面ライダーを調査員に使えば敵は勝手に出てくるだろう。

 そういう狙いがあっての事。悪い言い方をすれば囮捜査のようなものだ。

 ただ、それが敵をおびき出すには効果的であろう事は流星自身も分かっているので特に何も思わないし、不服とも思わない。

 むしろ仮面ライダー以外の人間が調査メンバーに加わって傷つくよりは良いとすら思えた。

 

 さて、そんな流星は今、とある爆発事故の現場にいる。

 幸いにも近隣の町からは離れた場所だった事が幸いして怪我人は出ていても死人は出ていなかった。

 ただ、爆発の規模は洒落になっておらず、なんと街1つが吹き飛ぶほどの威力はあったらしい。

 もしも街中で爆発していたらどれ程の人が犠牲になっていたか。想像するだけでゾッとする。

 爆発現場は大きなクレーターのようになっており、隕石でも落ちてきたと言われた方が納得できるレベルだった。

 

 

「で、爆発物の痕跡は無し、か……」

 

「ええ。ただ……」

 

 

 流星とインガは仮面ライダー連続襲撃事件の調査中にこちらの捜査にも駆り出された。

 ただの爆発事故なら新米の2人が駆り出される事も無いだろう。

 しかし今回の爆発はどうも普通の爆発とは様子が違っていた。

 そこで大ショッカーとの関連性も疑い、彼等にも召集がかかったというわけである。

 そして、次にインガの口から放たれた言葉に流星は目を丸くした。

 

 

「この近辺にはパワースポットがあったそうよ」

 

「……いや、何だそれは?」

 

「魔力の塊」

 

「まりょ……何だと?」

 

 

 意味不明な単語に首を傾げる流星と、さも当然のように語るインガ。

 インガは細かな説明を流星に始めた。

 

 

「まず、魔法が存在しているという前提条件はいいかしら?」

 

「全くよくないが、良いと言わなければ話が進みそうにないな」

 

「そうね。で、パワースポットは魔法を使う為に使う魔力の塊みたいなもの。それが今回、爆発したらしいわ」

 

 

 流星は一先ず頭を抱えた。

 どういうわけだが相方がファンタジーな事を言い出しているという事実に。

 しかも真顔で真剣に、全く嘘でなさそうなのが尚の事問題だ。

 ただ、魔法という言葉に全く聞き覚えが無いわけでもない。

 かつてインガと初めて出会った宇宙鉄人の事件の時に助けに現れた宝石のような戦士。

 ウィザードと名乗っていた彼は自分の事を魔法使いと称していたはずだ。

 

 

「……まあ、魔法使いと名乗るやつとは会った事があるが」

 

「仮面ライダーの貴方が魔法を信じられないって言うのもおかしいと思うけれど?」

 

「…………」

 

 

 ぐうの音も出ない。

 どっちにしろ非常識なものである事に変わりはないのだから。

 さて、此処で1つ疑問が出る。

 魔法関係の事を、一体インガは誰から聞いたのか。

 まさかインターポールに魔法関係に明るい人間がいるわけもないだろう。

 

 

「その魔法がどうとかいうのは、誰から聞いた情報なんだ?」

 

「それは、私です」

 

 

 聞き覚えの無い男性の声。

 流星とインガが声のした方向を向けば、そこにはスーツ姿の初老の男性が歩いてきていた。

 インガはその男性に駆け寄り、流星に向かって紹介する。

 

 

「彼は『御厨博士』。都市安全保安局の博士で、部門は魔法全般よ」

 

 

 都市安全保安局。その名は流星も耳にした事がある。

 名の通り、都市を守る為に存在している場所で、言ってみればインターポールに近い組織だ。

 世界の幾つかに支部を持ち、世界平和の為に努めているという話だが。

 

 

「私からはまず、パワースポットとジャマンガについてお話させていただきます」

 

 

 御厨博士の語る内容は『魔法が存在している』という話と『パワースポットの存在と危険性』、そして『ジャマンガという組織について』の3点。

 魔弾戦士についての詳細は伏せられたが、S.H.O.Tについても言及され、日本が主な活動拠点になっている事や、パワースポットが日本にも存在している事も語られた。

 それらの話をしっかりと頭に叩き込んだ流星は爆発の惨状を見つつ、御厨博士に尋ねる。

 

 

「では、今回の爆発事故はパワースポットの破壊によるもので、間違いないという事ですか」

 

「はい。此処にあったパワースポットが無くなっていますから、間違いないです」

 

 

 そこに御厨博士は「私が呼ばれたのも、パワースポット関係の事だったから」と付け加えた。

 魔法の話云々は自分も仮面ライダーという非常識だから信じるとして、これほど大きな爆発を起こすような代物が日本にもあるというのは恐ろしい話である。

 何より、ジャマンガの事。人を脅かす敵が世界的に有名なヴァグラスや仮面ライダーを狙う大ショッカー以外にもいるというのか。

 

 

「詳しく調べないと分かりませんが、今回の件にもジャマンガが絡んでいると思われます」

 

 

 御厨博士曰く、ジャマンガの活動は日本が一番活発的というだけで、世界中でその活動は目撃されているそうだ。

 そしてジャマンガの活動は主にパワースポット周辺で行われる事から、今回の爆発事故に関わった可能性も高いであろう事という事だ。

 

 

「御厨博士。もしそのジャマンガが今回の爆発事故の主犯だとして、目的は?」

 

 

 流星の言葉に御厨博士は首を横に振った。

 

 

「分かりません。パワースポットの危険性はジャマンガ側も把握していて、滅多に手を出すものではない筈なのですが」

 

 

 例えば日本のDr.ウォームがそうだ。

 パワースポットを危険だと把握しているから手を出す事は臆病なまでに無い。

 今回のような爆発事故が起こってしまって人が死んでしまえば、マイナスエネルギーを集める事が出来なくなってしまうから、という理由もある。

 ジャマンガの目的は人を殺す事ではなく、生かしたまま苦しめる事なのだ。

 むしろ死なれては困る節すらある。

 そうでなくとも、その大規模な爆発は下手をすればジャマンガすらも吹き飛ばすほどの威力。

 以上の点を考えれば、このパワースポットを破壊したのがジャマンガならば、何故そんな真似をしたのかが謎なのだ。

 

 

「…………」

 

 

 爆発現場を睨みながら流星は考えた。

 ジャマンガの活動が一番活発的なのは日本。

 そして、最後に大ショッカーが目撃されたのも日本である。

 さらに弦太朗からは先輩ライダーと行動を共にしているという話も聞かされていた。

 大ショッカーがライダーを狙っているのなら、これからも弦太朗達を狙うであろう。

 

 

(……行ってみるか)

 

 

 ヨーロッパにいた方が爆発事故の手掛かりは掴めるかもしれないが、大ショッカーの事もある。

 それにジャマンガが一番活動しているのは日本なのだから、もしかすると向こうで爆発事故に関しての手掛かりも得られるかもしれない。

 ならば、と流星は拳を握りしめて決意した。

 

 ──────再び、彼等の元へ帰ろうと。




────次回予告────
『スーパーヒーロー作戦CS!』

「戻るところ無いんじゃないかって……」
「立花はきっと、立花のまま強くなれる」
「何でこっちを励ましてんだよ」
「私は、クリスの友達になりたい」

青春スイッチ、オン!

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