スーパーヒーロー作戦CS   作:ライフォギア

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第32話 モノクロなH/White-Black-Xtreme

 ジョーカーとキュアブラックはサイ怪人を前にしている。

 

 

「奴はパワータイプだ。突進に気をつけろよ」

「はい!」

 

 

 ジョーカーの忠告を聞いたキュアブラックは気を引き締める。

 そうこう言っていると、サイ怪人が早速突進攻撃を仕掛けてきた。

 鼻から出ている白い鼻息は怒りの興奮によるものか。

 直線的、スピードの速く、力強い攻撃。

 避けやすいがカウンターが決めにくい攻撃だった。

 避けるだけなら簡単なのだが、カウンターを決めるとなると、ギリギリを見極める必要がある。

 そして直線的であるが故のスピードは見極める事を難しくしていた。

 見極めに失敗すれば突進の直撃が待っている。

 ジョーカーは一先ず避ける事を優先した。

 だが、その場から飛び退くジョーカーを余所にキュアブラックはその場から動こうとしない。

 

 

「ッ!? 馬鹿ッ! 一旦避けろ!!」

 

 

 忠告はして、ちゃんと聞いていた筈なのにその場から動かないキュアブラックに焦って叫ぶジョーカー。

 サイ怪人の突進は凶悪なスピードでキュアブラックに向かっていく。

 マズイ、そう思って助けに入ろうとするジョーカー。

 だが、キュアブラックは女子中学生らしからぬ眼光を鋭く光らせ、左足で後方の地面を力強く踏みしめた。

 そして両手を開き、体全体に力を籠める。

 

 

「はあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 サイ怪人の突進はキュアブラックを捉えた。

 確実に直撃コース。

 だが、目の前に広がる光景は過程から思い描かれた結果とは程遠いものだった。

 

 

「……マジかよ」

 

 

 呆気にとられるジョーカー。

 キュアブラックは、事もあろうに地面を踏みしめて踏ん張ってからサイ怪人の角を両手で抑える事で、突進を止めて見せたのだ。

 突進の衝撃で後ずさった跡が地面に残されているが、それでもキュアブラックはサイ怪人の突進を正面から受け止めた。

 ジョーカーは一瞬呆気にとられたが、すぐさま思考を切り替えてサイ怪人に全力で接近した。

 

 

「ブラックちゃん! そいつから離れな!!」

 

 

 叫びつつ走りつつ、ロストドライバーからジョーカーメモリを引き抜いて右腰のマキシマムスロットにメモリを装填する。

 言葉を聞いたキュアブラックはサイ怪人の角から手を離し、腹部に一撃、全力でパンチを見舞った。

 鳩尾に直撃したパンチはさしものサイ怪人と言えど大きな怯みを見せる形となった。

 キュアブラックが一旦そこから飛び退くと、それと入れ替わるようにジョーカーが走り込んでいく。

 サイ怪人まで後少しに迫った時、ジョーカーはマキシマムスロットの起動ボタンを強く叩いた。

 

 

 ――――JOKER! MAXIMUM DRIVE!――――

 

「『ライダーキック』……!」

 

 

 走った勢いのまま飛びあがり、右足を横薙ぎに振るってサイ怪人の角めがけてボレーキックを放つジョーカー。

 ジョーカーの必殺技はキック、あるいはパンチを強化する非常にシンプルなものだ。

 更に言えばフィリップと息を合わせる必要も無い為、技の名を口にする必要も無い。

 それでもそれを言うのは翔太郎の信条か、はたまたいつもの癖か。

 いずれにせよライダーキックはボレーキックという変則的な形ながらも放たれた。

 

 サイ怪人の角はライダーキックの威力に耐えられず、さながらボレーキックでシュートされたサッカーボールのように遠くへ飛んでいき、地面に落ちた。

 自慢の角をへし折られ、その痛みにサイ怪人は悶える。

 苦しむサイ怪人を余所にジョーカーとキュアブラックは一旦横に並び、明確なダメージを与えた事を確認した。

 が、ジョーカーはキュアブラックに苦言を呈した。

 

 

「お前……突進に気をつけろっつったろ?」

 

 

 受け止められたから良かったものの、もしも失敗していたらどうなっていたか。

 そう思っていたジョーカーだが、キュアブラックは明るく笑顔で元気に答えた。

 

 

「はい! だから相手を良く見て受け止めました!」

 

 

 あっけらかんと放たれた言葉に思わずジョーカーは言葉を失ってしまう。

 言葉から察するに、どうやらキュアブラックの中には最初から『受け止める』以外の選択肢が無かったらしい。

 ジョーカーは知らないが、キュアブラックは実はパワーファイターの部類だ。

 パンチもキックも一撃が重く、相手を受け止めて投げる事だって何度もしてきた。

 

 ジョーカーはプリキュアに対して『か弱い女の子が変身しているからライダーよりは力が低め』と思い込んでいた。

 以前に見たプリキュアである咲や舞があまり力技を使っていなかった事も起因しているだろう。

 だが今、それが非常に甘い認識であった事を思い知った。

 

 

(こいつぁ……下手な怪人よりもパワーが上かもな)

 

 

 どれだけ低く見積もっても最低でもジョーカーよりパワーはある。

 勿論、Wの半分の力であるジョーカーなのだからその辺りは仕方ない面もある。

 それでもジョーカーが戦慄しているのは下手をすればWを超えかねないと思ったからだ。

 戦いは力だけで決まるわけでは無いが、単純なパワーなら恐らくWも敵わない程の力を今しがた見せつけてくれた。

 敵でなくて良かったと心底思うと同時に、非常に頼もしく感じる。

 未だに鳩尾へのクリーンヒットと角が折られた事による痛みに悶えるサイ怪人。

 おしゃべりをしてこの好機を逃すわけにはいかない。

 

 

「……まっ、いいや。決めるぜ?」

 

 

 コクリと頷くキュアブラック。

 ジョーカーはマキシマムスロットからジョーカーメモリを一度引き抜き、再装填、再びマキシマムスロットのスイッチを押した。

 

 

 ――――JOKER! MAXIMUM DRIVE!――――

 

「『ライダーパンチ』……!」

 

 

 両手を顔の右側辺りに持っていき、強く力を籠めて拳を作る。

 右拳に輝く紫色の光が、マキシマムドライブによるエネルギーが右拳に集約されているのを示していた。

 キュアブラックも体全体に力を籠め、いつでも駆けだせるように構え、鋭い目で眼前のサイ怪人を睨んだ。

 そしてジョーカーとキュアブラックは同時に駆けた。

 いや、それは駆けたというよりも跳んだと表現するべきかもしれない。

 ほぼ真横へのジャンプは高速で走る姿と見紛うであろう。

 

 

「うぉらあぁぁぁぁ!!」

 

「やぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 ジョーカーとキュアブラックが右拳を突き出し、サイ怪人の頭を捉えた。

 ジョーカーの拳はサイ怪人の顔の左に、キュアブラックの拳は顔の右に。

 強烈な一撃。

 マキシマムドライブを発動しているジョーカーは元より、素の一撃でも全力で放てば恐るべき破壊力を秘めるキュアブラックのパンチも同時だ。

 どちらか一撃でも仕留められるほどの攻撃を食らったサイ怪人は殴られた勢いで吹き飛び、中空を舞いつつ爆発した。

 

 

「やったぁ!!」

 

 

 無邪気に喜ぶキュアブラックを見ると、心はまだ子供なのだとジョーカーは思う。

 その実力を見たからこそ余計に子供らしい一面がある事にホッとするジョーカーなのであった。

 

 

 

 

 

 一方でフォーゼとキュアホワイトはサソリトカゲスと対峙する。

 サソリトカゲスは甲殻類の特性によるものなのか装甲が硬い。

 

 

「2人になったところでぇ……!!」

 

 

 サソリトカゲスは自身の鳴き声と共に駆け出す。

 その目立つハサミの見た目通り、サソリトカゲスの武器はハサミだ。

 当然接近しなければそれは使えないわけだが、それは即ち敵との近接挌闘戦を意味する。

 それを補うのが強靭な装甲。

 

 

「行くぜッ!!」

 

「はい!」

 

 

 白き2人は得物など持たずに素手で対応する。

 怪人のハサミは通常のハサミなど軽く凌駕する。

 鋼鉄だろうと両断できるであろうものであり、それを受けてもフォーゼが何とか無事だったのはフォーゼのスーツの性能と、サソリトカゲスの余裕と痛み付けたいという愉悦から来る油断によるものだ。

 油断が無くなった以上、素手で戦うのには危険が伴う。

 とはいえフォーゼは全身強靭なスーツだし、プリキュアも見た目以上に体全体が強化されているからちょっとやそっとではやられはしない。

 

 

「ぬっ、おらっ!!」

 

 

 ハサミの攻撃に気をつけつつ、フォーゼは攻撃を加えていく。

 左手のハサミをフォーゼは右手の腕で受け止め、左拳で数発。

 牽制程度の攻撃はサソリトカゲスにあまり意味を成さない。

 動きを止める程度はできても有効打では無いのだ。

 キュアホワイトも足技の攻撃でハサミの無い右側を攻めるが、防御行動すらとらずともサソリトカゲスは攻撃を弾き返してしまう。

 

 仮面ライダー部の面々はその光景を歯痒そうに見ていた。

 自分達にも出来る事があれば、せめてダイザーが動いてくれれば、と。

 それでも自分達に出来る事を。

 そう考えた賢吾は『アストロスイッチカバン』を取り出した。

 これはダイザーやフォーゼのバイク、『マシンマッシグラー』の遠隔操作、敵の分析など、賢吾が使うフォーゼのサポートツールだ。

 その名の通りアストロスイッチを持ち運ぶための物でもある。

 

 アストロスイッチカバンを開き、座り込む賢吾。

 ゾディアーツとの戦いの時は何度もこうしてフォーゼが戦うのを遠くで支援していた。

 懐かしさがこみ上げるが、今はそんな感傷に浸っている場合では無いと賢吾は思い出を一旦封殺し、サソリトカゲスに目を向けた。

 

 

(何処かに、弱点はある筈だ……)

 

 

 こいつには勝てないのではないか、強すぎる、弱点が無いのか。

 そう思いそうになった事は何度だってある。

 それでも彼等が卒業できたのはその危機を打ち破って来たからだ。

 あるいは弦太朗のハチャメチャ理論だったり、隼のダイザーによる援護だったり、新たな力によるものだったり、流星のお陰だったり、ライダー部の誰かが機転を利かせたり。

 

 方策は様々であったが対応できない敵はいなかった。

 何より今のフォーゼは文字通りベースである基本形態。

 各種力を使用していないのだから、焦るほどの事はまだ起こっていないのだ。

 それ故に賢吾は焦らず、冷静に相手を見て敵を分析する。

 硬い体は強力でも打ち破れない筈はない。

 賢吾の冷静な分析力と作戦もまた、今までの危機を脱してきた要因の1つなのだから。

 

 サソリトカゲスと取っ組み合う2人。

 キュアホワイトはキックでは埒が明かないと、攻撃方法を変えた。

 

 

「ふっ!!」

 

 

 息を吐くような声と共にキュアホワイトはサソリトカゲスの右腕を掴み、体を反転させて上空に跳んだ。

 キュアホワイトは中空で逆立ちをする姿勢となった。

 サソリトカゲスは右腕が上に強く引っ張られるのを感じた。

 

 

「やぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 キュアホワイトは地面に着地すると同時にサソリトカゲスの右腕を掴む腕を振り下ろした。

 当然、掴まれているサソリトカゲスは女子中学生が出すとは思えぬ強烈な力に引っ張られて、ぐるりと視界を回転させる。

 そして次の瞬間には凄まじい勢いで地面に背中から叩きつけられた。

 

 

「ガッ!?」

 

 

 キュアホワイトは腕を離して数回バク転を行ってサソリトカゲスから距離を取った。

 フォーゼもまた、それに合わせて一旦距離を取る事を選択し、後ろに飛び退いた。

 投げるのに成功したとはいえ起き上がり様に手痛い反撃を食らうかもしれないからだ。

 それにサソリトカゲスの装甲が硬いのは教えられずとも、何度か攻撃を加える中でキュアホワイトにも分かっていた。

 しかし、サソリトカゲスが見せた反応は予想外の物だった。

 

 

「ヌッ、ガアアッ……!!」

 

 

 サソリトカゲスは背中に手を回し、のた打ち回っていた。

 叩きつけられた衝撃による痛みだろうか。

 だが此処までランチャーやガトリングといった攻撃ですら痛む様子すら見せなかったサソリトカゲスにしては尋常では無い痛がり様だ。

 フォーゼとキュアホワイトは顔を見合わせて首を傾げる。

 一方で賢吾はハッと何かに気付いていた。

 

 

「弦太朗! 『カメラスイッチ』でそいつを撮れ!!」

 

「んぁ? お、おう!」

 

 

 賢吾の指示に戸惑いつつも従うフォーゼ。

 フォーゼは一番左側にある四角のソケットに装填されている『レーダースイッチ』を引き抜き、新たに『6番』、カメラスイッチを装填し、起動させた。

 

 

 ――――CAMERA!――――

 

 ――――CAMERA ON――――

 

 

 フォーゼの左腕に大きなビデオカメラ、カメラモジュールが装備され、それを痛みに苦しんでいるサソリトカゲスに向けた。

 カメラスイッチは『撮る』というカメラらしい機能は勿論の事、それによる敵の分析を可能にするスイッチだ。

 カメラモジュールに映し出されたデータはアストロスイッチカバンに転送され、賢吾は急ぎそれで解析を始めた。

 

 

「……やはりそうだ。弦太朗、そいつは背中の装甲が薄いぞ!

 その子の投げで大きなダメージを受けているのもその為だ!」

 

 

 賢吾は解析された結果をフォーゼ達に伝えた。

 実際、その通りでサソリトカゲスは投げられる時点まで一度たりとも背を向けたり、背中に攻撃を受けたりしていない。

 例えランチャーやガトリングを受けようとも回避運動を取らず、正面からの防御に徹した。

 それは強靭な装甲を盾に使っての強引な攻めであると同時に、背中の弱点を隠すための戦法でもあったのだ。

 フォーゼはカメラスイッチをオフにし、賢吾に親指を立ててサムズアップをした。

 

 

「サンキュー賢吾!」

 

 

 賢吾は共に戦ってきたフォーゼやメテオにとって最高の参謀だ。

 各種スイッチの能力を完璧に把握し、冷静な状況分析ができる。

 何よりも弦太朗と流星にとっては信頼できる友人であるという事も大きい。

 そうこうしている内にサソリトカゲスは再び立ち上がった。

 先程の話はサソリトカゲスにも当然筒抜けだ。

 

 

(俺の弱点が分かったところで、後ろを取らせなければいい)

 

 

 至極簡単な事だ、とサソリトカゲスは笑う。

 彼は自分の力に絶対的な自信を持つと同時に自分の弱点を理解している。

 だからこそ正面から押し切る戦法を選択していた。

 背後にさえ気をつけ続ければ負けは無い。

 

 

「ソォォォリィィィィ……!!」

 

 

 力強く呻くサソリトカゲス。

 背後にさえ気をつければ負けないという考えはあながち間違いでは無い。

 フォーゼに奥の手が幾つか残っているのも事実ではあるが、現状、正面からの攻撃は全て受け切っているというのもまた事実。

 それでいてどうやって背後を取るかがフォーゼ達にとっても課題だ。

 サソリトカゲスの武器はその装甲と鋭利なハサミ。

 それに対抗する為にフォーゼは自分の姿を変える事にした。

 

 

「こいつでいくぜ!」

 

 

 フォーゼは丸型ソケットからロケットスイッチを引き抜き、新たに金色のスイッチを装填した。

 

 

 ――――ELEK!――――

 

 

 エレキ、即ち電気の力を秘めたスイッチ。

 フォーゼはそのスイッチのレバーを前に倒す事で起動させた。

 

 

 ――――ELEK ON――――

 

 

 スイッチの起動と共にフォーゼの周りを電気が取り囲む。

 更にフォーゼドライバーからエレキスイッチ起動による音楽が流れ、フォーゼの姿が変わっていく。

 全身は金色に、両肩には雷太鼓のような物が巻かれ、右手にはロッド型の武器、『ビリーザロッド』を携える。

 フォーゼが『ステイツチェンジ』をした姿の1つ、電気の力を使う『エレキステイツ』だ。

 

 エレキステイツはどちらかと言えばパワー型に属する。

 重厚且つ鈍重な完全パワータイプの『マグネットステイツ』という姿もあるのだが、あちらでは小回りが利かなさすぎて、不利になる可能性も否めない。

 それに相手のハサミに対抗してのビリーザロッドという得物を持つ事でサソリトカゲスに対抗しようという事なのだ。

 フォーゼはビリーザロッドの柄尻から伸びるプラグを鍔部分の3つのコンセントの内、左側に差し込んだ。

 ビリーザロッドは3つのコンセントにプラグを差し替える事で多種多様な能力を発揮する武器だ。

 左側のコンセントはロッドに電気を這わせて攻撃の際に電撃の力が加わるというものだ。

 

 

「行くぜ!!」

 

 

 ビリーザロッドは名の通り棒であり、打撃武器だ。

 サソリトカゲスにビリーザロッドが炸裂する度に電気が迸る。

 パワーも上がった事で先程よりはダメージが通っているようで、サソリトカゲスは怯みを見せている。

 しかしそれでも正面からの攻撃では明確な決定打を与えられない。

 

 

「ソォリイィィィ!!」

 

「ぬおらぁ!!」

 

 

 ハサミをビリーザロッドで受け止める。

 サソリトカゲスは蠍とトカゲの特性を持った怪人であり、通常のショッカー怪人が1種類の動植物の特性しか持たないのに対し、サソリトカゲスのようなゲルショッカー怪人は2種類の特性を持つ。

 つまり、あらゆる面でショッカー怪人を超えるのがゲルショッカー怪人なのだ。

 故にパワーもあるサソリトカゲスはビリーザロッドとハサミで打ち合おうとも物ともしない。

 しかし、フォーゼには圧倒的に優勢であると言える事が1つある。

 

 

「やぁぁぁぁ!!」

 

「グアッ!?」

 

 

 ハサミの無い右側から脇腹目掛けて助走をつけたキュアホワイトの蹴りが直撃。

 勢いをつけた一撃は如何な装甲を持つサソリトカゲスでも一瞬の怯みを見せる。

 そこにフォーゼはビリーザロッドを何度も叩きつけ、ラッシュをかけた。

 フォーゼが優勢な大きな理由、それはフォーゼが1人では無いという事である。

 相手が2つの特性を持つのなら、こちらは2人の戦士というわけだ。

 

 

「おぉらぁ!!」

 

 

 ビリーザロッドで打ち上げるように下から殴りつけ、サソリトカゲスを斜め上方に吹き飛ばす。

 ダメージが入ったかは今までの防御能力からして怪しい所だが、手応えはあった。

 空を舞ったサソリトカゲスは地面に自由落下した後も勢いが止まらずに地面を転がった。

 

 

「おっしゃ……ん?」

 

 

 フォーゼの持っているスイッチの1つ、最初にフォーゼドライバーに装填されていたレーダースイッチから着信音が鳴りだした。

 これは誰かからの通信を意味している。

 フォーゼはカメラスイッチを引き抜いてレーダースイッチを装填、レーダーモジュールを起動した。

 

 

 ――――RADAR!――――

 

 ――――RADAR ON――――

 

 

 左腕に出現したレーダーモジュールの画面を見ると、賢吾の顔が映し出されている。

 すぐに近くにいる筈の賢吾がアストロスイッチカバンから通信を行っているのだ。

 

 

「どうした賢吾?」

 

『アイツを倒す作戦だ。あの白い女の子にも来てもらってくれ』

 

「お? おう。おーい、ホワイト!」

 

「えっ?」

 

「ちょっとちょっと」

 

 

 くいくいと手招きしてキュアホワイトを近くに呼ぶフォーゼ。

 キュアホワイトは首を傾げながらもサソリトカゲスの立ち上がらぬうちに急いでフォーゼの元に駆け寄った。

 レーダーモジュールを通してフォーゼとキュアホワイトに作戦を伝える賢吾。

 その作戦の内容にフォーゼは頷き、キュアホワイトは少し驚いた表情を見せた。

 

 

『……以上だ。いけるか?』

 

「おう! 俺はいけるぜ!」

 

 

 即答するフォーゼ。

 しかしキュアホワイトは少し戸惑いながらフォーゼと画面の賢吾を何度も交互に見ていた。

 

 

「私も、いいですけど……ほ、ホントに大丈夫なんですか?」

 

 

 キュアホワイトは別に賢吾の作戦を疑っているわけでは無い。

 ただ、作戦の最中にする自分のある行動に不安を持っているのだ。

 それは下手をすると、意図せずしてフォーゼを攻撃する事になりかねないもの。

 だけど、それにもフォーゼは明るく即答した。

 

 

「大丈夫だって、信用してくれ!」

 

 

 更にフォーゼはキュアホワイトを安心させるために続けた。

 

 

「俺はダチを信じる! お前も俺を信じくれ!」

 

 

 出会って数分と経たない相手に此処まで信用を置く彼の姿。

 愚直とも言える信頼と自信だが、不思議とそれは本当に大丈夫な気にさせてくれた。

 そうこう話している内にサソリトカゲスは起き上がる。

 2人はサソリトカゲスに向き直った。

 最早迷っている暇もない。

 

 

「んじゃ、行くぜ!」

 

「は、はい!」

 

 

 2人は同時に高く跳び上がる。

 さらにフォーゼは三角のソケットからガトリングスイッチを引き抜き、再びドリルスイッチを装填、発動した。

 

 

 ――――DRILL――――

 

 ――――DRILL ON――――

 

 

 左足にドリルモジュールが装着される。

 続いてフォーゼは変身時に使用したレバーを再び引いた。

 

 

 ――――ELEK DRILL――――

 

 ――――LIMIT BREAK!――――

 

 

 フォーゼはスイッチの力を極限まで引き出す『リミットブレイク』を発動したのだ。

 オンになっているスイッチの力で必殺の一撃を放つ、それがリミットブレイクである。

 エレキスイッチの力で全身に電気を身に纏い、ドリルモジュールはリミットブレイクにより強化される。

 

 しかし、このままではこれから発動しようとしている必殺技は発動できない。

 フォーゼがベースステイツで放つロケットとドリルを使う必殺技、『ライダーロケットドリルキック』はロケットを強力な推進力としてドリルモジュールでキックを放つという技。

 が、エレキスイッチが装填されている為にロケットが使えないエレキステイツではその強力な推進力が得られない。

 故に何らかの方法で勢いをつける必要がある。

 

 

「ホワイト! 頼むぜ!!」

 

「はい!」

 

 

 だからこそのキュアホワイトだ。

 キュアホワイトはフォーゼの左腕を掴み、横に何回か回転した後、フォーゼをサソリトカゲスに向かって全力で放り投げた。

 サソリトカゲスにも放ったキュアホワイトの強烈な投げ。

 勢いをつける為にフォーゼが選んだ方法。

 かつて隼のパワーダイザーでやってもらった事とほぼ同じ、『自分を投げてもらう』という方法で勢いを得たのだ。

 

 とはいえキュアホワイトの投げは自分の数倍以上ある巨体をも易々と放り投げる程の力。

 下手をすればフォーゼを投げ飛ばしかねないものである。

 だが、それでもフォーゼはキュアホワイトを信用し、キュアホワイトはフォーゼを信用してこの作戦を決行した。

 フォーゼもそうだが、この作戦を考えた賢吾もいきなり現れたキュアホワイトを全面的に信用するという、大胆な決断であると言える。

 

 キュアホワイトの投げで得られた推進力は自由落下のそれよりもずっと早い。

 一瞬にして地上に叩きつけられてしまいそうなほどの勢いだ。

 それでもフォーゼは勢いをそのままに、左足を突き出して必殺の名を高らかに宣言した。

 

 

「『ライダー電光ドリルキィィィィックッ!!』」

 

 

 稲妻という光を纏い、ドリルによる通常の蹴りよりも強力な一撃。

 キュアホワイトの投げで加速されたそれはサソリトカゲスを容赦なく襲う。

 が、サソリトカゲスはそれを間一髪でかわした。

 やや掠ったドリルが破裂音と摩擦音を合わせたような音を出して火花を散らせる。

 ドリルはサソリトカゲスから見て後方の地面に突き刺さるが、回転の勢いは止まず、フォーゼはそのままグルグルと回転し続けるが、すぐさまドリルスイッチをオフにして無理矢理回転を止めた。

 

 

「もういっちょぉ!!」

 

 

 フォーゼは回転の勢いを残したまま、ビリーザロッドを突き出した。

 回転で勢いがついた突きは強烈な一撃となる。

 加えてライダー電光ドリルキックの数瞬後なのでサソリトカゲスの背後を取る事に成功している。

 この一撃が決まれば大ダメージを与えられる。

 

 しかし――――。

 

 

「ッ!?」

 

「ソォォリィィィィ……残念だったな、仮面ライダー!」

 

 

 それを感じ取っていたサソリトカゲスは必死の勢いで背後を振り向き、両腕を交差させてビリーザロッドの一撃を防いで見せた。

 笑うサソリトカゲス。

 必殺である攻撃を避け、二段構えの攻撃も受け切ったが故のしてやったりとでも言いたげな笑い声。

 だがそれに対し、フォーゼもまた、仮面の中でニヤリと笑った。

 

 

「いんや、こいつでいいのさ!」

 

「なぁにを……ッ!!?」

 

 

 フォーゼの言葉の直後、サソリトカゲスの背中に強烈な痛みが走ると共に、前に仰け反った。

 サソリトカゲスは仮面ライダーの敵組織、ゲルショッカーの怪人であり、現在は大ショッカーの怪人である。

 サソリトカゲスだけに言える事では無いが仮面ライダーへの敵対心は並々ならぬものがある。

 だが、だからというべきか、プリキュアが目に入っていなかった。

 

 それがサソリトカゲスの油断に繋がった。

 

 背中にめり込むのはキュアホワイトの右足による飛び蹴り。

 フォーゼを投げた後、自由落下の勢いを利用してキュアホワイトも攻撃の準備をしていたのだ。

 そう、元から賢吾の考えた作戦は三段構え。

 最初に正面切っての必殺の一撃、2発目に弱点である背中への重い一撃。

 2発目のフォーゼの一撃を防ぐとしたら、装甲を利用する事となるだろう。

 そうなれば確実にフォーゼの方を向くであろう事を想定し、挟み撃ちによる背後からの一撃。

 どれが当たっても明確な一撃を与える事が可能な三段構えだったのだ。

 

 

「こいつで最後だ!」

 

 

 フォーゼはフォーゼドライバーからエレキスイッチを引き抜き、ビリーザロッドの柄にスイッチを装填した。

 

 

 ――――LIMIT BREAK!――――

 

 

 警告音に近い音と共に、再び必殺の一撃を宣言する電子音声。

 ビリーザロッドが通常よりも多くの電気を帯び始める。

 フォーゼは素早くサソリトカゲスの背後に回り、同時にキュアホワイトはサソリトカゲスの背中を踏み台に大きくジャンプしてその場を離脱した。

 そしてフォーゼは放つ一撃の名を全力で叫んだ。

 

 

「『ライダー100億ボルトブレェェェェイクッ!!』」

 

 

 実際に100億ボルトが流れているかは不明だが、何れにせよ生半可では無い電気が流れるビリーザロッドをサソリトカゲスの背中に斬り付けた。

 ビリーザロッドは先程も言ったように打撃用の武器だが、この技の時は斬り付けて攻撃をするのだ。

 

 

「ガァァァァァ!?」

 

 

 サソリトカゲスはその強力な一撃に悶え、火花を散らして爆散した。

 恨み節すら吐けなかったのは、ライダー100億ボルトブレイクの前にキュアホワイトの一撃を弱点に食らっていた事もあるのだろう。

 兎にも角にもフォーゼとキュアホワイトは見事にサソリトカゲスを倒したのだ。

 2人は互いに喜びを分かち合った。

 

 

「やったな!」

 

「はい!」

 

 

 2人のハイタッチが小気味の良い音を出した。

 

 

 

 

 

 サイ怪人とサソリトカゲスは2人の仮面ライダーとふたりはプリキュアのチームモノクロによって撃破された。

 生徒達は避難し、オープンキャンパスも滅茶苦茶になってしまったが、被害者が出た様子は今の所は無い。敵が仮面ライダーに狙いを絞っていたからだろうか。

 

 ロストドライバーを閉じて変身を解く翔太郎、フォーゼドライバーの4つの赤いスイッチを全て押し上げて変身を解く弦太朗。

 プリキュアの2人は正体を明かす事に少し戸惑いを持ったが、既に晴人やなのはに知られている事を思えば今更仮面ライダーに知られても大丈夫だろうと思い、その場で変身を解いた。

 見守っていた仮面ライダー部も加え、この戦場で事情を知る者達は再び一箇所に集まった。

 戦い終わって大きく伸びをする弦太朗に賢吾が労いの言葉をかけた。

 

 

「よくやったな、弦太朗」

 

「おうよ、お前の作戦のお陰だぜ」

 

 

 そう言った後、弦太朗はほのかの方に明朗快活な笑顔を向けた。

 

 

「お前もありがとな、ホワイト……って本名じゃねぇよな」

 

「はい。私、雪城ほのかって言います」

 

 

 ペコリと丁寧にお辞儀をするほのか。

 同じように翔太郎となぎさも似たようなやり取りをしていた。

 

 

「君もブラックちゃん、じゃねぇんだよな。名前は?」

 

「美墨なぎさです! 宜しくお願いします!」

 

 

 基本的に細かい事を気にしない弦太朗と既にプリキュアが何かを知っている翔太郎は、平然とした顔でなぎさとほのかの2人と話している。

 それとは対照的にライダー部の面々はなぎさとほのかに興味深そうな、正体不明の存在を見る時に向ける好意でも敵意でもない視線を向けていた。

 

 

「ところでカワイコちゃん達、何者?」

 

 

 チャラ男なJKがなぎさとほのかを交互に指差しながら言った。

 カワイコちゃんと言われてなぎさは少し照れていたが、そう言った言葉をひらりとかわすほのかは冷静に答えようとするが、そこに翔太郎が口をはさんだ。

 

 

「プリキュア。伝説の戦士らしいぜ?」

 

 

 意外な人物からの意外な言葉に全員の視線が翔太郎に向く。

 仮面ライダー部からは「知り合いなのか?」という視線が。

 なぎさとほのかからは「プリキュアの事を知っているんですか?」という視線が。

 先程もそうだが、翔太郎だけはプリキュアについて知っている風だった。

 なぎさもほのかも翔太郎と会った事は無いし、今までで一緒に戦った仮面ライダーと言えばウィザードとビーストだけの筈。

 疑問に思ったほのかは翔太郎に後に回していた疑問を尋ねるが、帰ってきた答えは2人にとっては驚きのものだった。

 

 

「何処でプリキュアの事を知ったんですか?」

 

「もう1組、ふたりはプリキュアって名乗ってた2人に助けられた事がある」

 

「「……えええぇぇぇぇぇ!!?」」

 

 

 言われた事実を認識するのに時間がかかり、しばしの間の後、驚愕から叫んでしまった2人。

 彼女達にはシャイニールミナスというプリキュアとは別の仲間が1人いる。

 最近では魔法使いの仮面ライダーが2人と魔法少女が1人、知り合いになったばかりだ。

 それだけでも随分と驚きなのに今度はまさかの同業者がいるという発言。

 翔太郎は2人の様子を見て2組のプリキュアは知り合いでない事を確信した。

 仮面ライダー同士は知り合っている事が多いのを考えると少々意外だったのだが。

 と、此処で沈黙を守っていた賢吾が口を開いた。

 

 

「……何にせよお互いの情報交換、説明が必要だ」

 

 

 なぎさとほのか含めて全員がそれに頷き、一度仮面ライダー部の部室に戻る事となった。

 

 

 

 

 

 部室に戻ってお互いが説明したのは以下の通りだ。

 プリキュアは晴人達に説明したのと同じ。

 翔太郎も自分がW兼ジョーカー、ついでに探偵である事、

 仮面ライダー部はフォーゼの事と今まで天高を守ってきた存在であるという事。

 弦太朗はフォーゼの事よりもむしろ髪型に驚かれたが、明るく助けてくれた彼に偏見を持つ事なく、なぎさとほのかは改めて『友情のシルシ』を交わした。

 

 さて、当然の事ながらプリキュアの説明をするという事は妖精の存在は避けては通れないわけで。

 なぎさとほのかはメップルとミップルを机の上に出してやった。

 弦太朗とユウキは大げさな身振り手振りで喋って歩くぬいぐるみのような2匹に驚いて見せた。

 

 

「「妖精キターァァァァ!!?」」

 

 

 わざとらしく見えるかもしれないが、割と本気で驚いているのだ。

 賢吾は対照的に冷静だが、顔は何となく変な表情をしている。

 怪訝そうとか興味深そうとかではなく、ただ単純に「何だコレ」とでも言いたげな顔だ。

 隼は驚きのあまりJKに抱きつき、自分よりも長身の男を引きはがそうとJKは必死だ。

 

 

「うおわぁぁぁ!?」

 

「ちょ、先輩離れて離れて!?」

 

 

 女性陣もまた驚きつつも反応は様々だった。

 

 

「Oops! 可愛いじゃない」

 

「く、苦しいメポ!」

 

 

 正体不明の生物であるメップルを抱きかかえて愛で始める美羽。

 

 

「妖精、おまじない……うふふ……」

 

「ミ、ミポ~……」

 

 

 ミップルを抱きかかえ、何やら恐ろしげな雰囲気で呟いてミップルに謎の恐怖を与える友子。

 

 

「可愛い……」

 

「蘭……?」

 

 

 ボーッと見つめて最初に発した言葉がそれという、ある意味一番女性らしい反応を示した蘭と、驚きながらも蘭の様子にも気を配るハル。

 些細な事から大きな事まで、ハルは何度も蘭に助けられている。

 お礼にあんな感じのぬいぐるみでも送ろうかな、とふと考えるハルだった。

 

 

「やっぱしいるんだな、ああいうの」

 

 

 フラッピとチョッピで耐性のあった翔太郎は特に驚く事も無く、ライダー部とメップルとミップルの戯れを眺めていた。

 しかしまあ、いくらガイアメモリ犯罪に慣れているとはいえ、妖精という存在まで許容できるほどになってしまって大丈夫なのだろうかと翔太郎は思う。

 

 さて、それは置いておくにして、まだ全ての説明が終わったわけでは無い。

 元々翔太郎が言う予定だったのは何故、翔太郎が此処に来たかだ。

 それに気付いた賢吾は一旦みんなをメップルとミップルから離れるように指示した。

 

 

「みんな、まだ話は終わっていないんだ。いい加減にしておこう」

 

「えぇ~、可愛いのに」

 

 

 仮面ライダー部では隼と同じく一番年上な美羽がちょっとだけ駄々をこねるが、しぶしぶと言った感じでメップルを離してやった。

 話せる雰囲気を作ってくれた賢吾に軽く礼を述べた後、翔太郎は自分が仮面ライダー部と接触を図った理由を語り出した。

 

 

「前にも言ったが大ショッカーの狙いは仮面ライダー。

 だったらこっちも結託していた方がいいって考えたわけだ」

 

 

 それに、と間を置いて翔太郎は続ける。

 

 

「士……ディケイドからある組織に誘われてる。ゴーバスターズも参加してるっていう組織だ」

 

 

 その話に手を軽く挙げて口をはさむ賢吾。

 

 

「信用できるんですか?」

 

 

 失礼な物言いかもしれないが賢吾が慎重になるのは当然だ。

 ゴーバスターズがヴァグラスと戦う正義の戦士である事は世界的な事実ではある。

 だが、ディケイドというライダーの事は全く知らないし、急に「世界を守る組織に来ないか?」何て勧誘はあまりにも怪しすぎる。

 

 それに一度、非常に手の込んだ方法で同じような誘いをかけ、仮面ライダー部を利用した敵がいた。

 まだ天高在学時の『宇宙鉄人』との戦いの時だ。

 相手に騙され、まんまと敵の手伝いをしてしまった事もあるが故の疑いだ。

 しかし翔太郎はそれを否定した。

 

 

「いや、大丈夫だ」

 

「何故ですか?」

 

「ディケイドと俺は一緒に戦った仲だ。それに……俺の『探偵の勘』だ」

 

 

 カッコつけて言う翔太郎にどう反応していいか困った賢吾。

 傍から聞けば、特に後者は信頼する理由にはならない。

 だが翔太郎をよく知る人物が聞けば、「なら大丈夫かもしれない」と思うのだ。

 翔太郎の『探偵の勘』は意外と正確に当たる。

 気に入らねぇから怪しい、と目星をつけた人間が本当に犯人だった事なんてザラな辺りからもそれが窺える。

 とはいえこれで相手を納得させるのには無理があるのは翔太郎にも分かっていた。

 それについて翔太郎は後に回す事にした。

 

 

「ま、それはいい。とにかく俺はその組織に参加しようがしまいが、他のライダーと協力するべきだと考えてんだ」

 

 

 翔太郎も風都を離れる決心がついたわけではない。

 だが、仮面ライダー共通の敵が現れた以上、繋がりを深くしておくべきだと考えた。

 それにメテオがいる事を理由にインターポールが襲われたという話も竜から聞いている。

 と、なれば、仮面ライダー部も狙われる可能性はゼロでは無い。

 関係者も込みで一致団結する必要があった。

 

 

「俺が此処に来た理由はお前達と協力を取り付ける事と、此処までの情報の共有ってトコだな」

 

 

 翔太郎はチラリとなぎさとほのかの方を見た後、自分が知り合った咲と舞というプリキュアについても話し始めた。

 

 

「それに、俺が会ったプリキュアもダークフォールって敵と戦ってた。

 それにこの子達も……。大ショッカーといい、色々と起こりすぎてる」

 

 

 翔太郎は最後に纏めを口にした。

 

 

「つまり、これから来るかもしれねぇ脅威への対抗。それが必要だと思ってんだ」

 

 

 静まり返る一同。

 戦いがどれほど過酷かはこの場にいる全員が知っている。

 仮面ライダー部もなぎさもほのかも1年以上戦い続けてきた。

 それでも戦いは終わらず、あまつさえ新たな脅威の出現。

 これからの戦いを考えれば静まり返るのも当然だ。

 だが、それでも全員、その目は強く光っていた。

 

 

「おっしゃ! だったら頑張んねぇと!!」

 

 

 右拳を左手の平に打ち付けて、弦太朗は笑って言ってのけた。

 例えどんなに厳しくても苦しくても持ち前の明るさでみんなを引っ張っていけるのが弦太朗という人間だ。

 そして仮面ライダー部もニッと笑って全員、十人十色の反応を見せた。

 その反応に共通しているのは、肯定の動作という点だろうか。

 

 

(これがお前の守りたいダチって奴か……)

 

 

 翔太郎もそれに釣られて笑みを浮かべ、その様子を見ていた。

 以前に弦太朗と会った時、彼は「ダチを傷つける奴は許せねぇっス!」と言っていた。

 その時の事を思い出していたのだ。

 もっと言うと弦太朗はどんな人間ともダチになろうとする。

 それと翔太郎と話した時の発言を照らし合わせると、それは「人々を守りたい」というのとほぼ同義だ。

 弦太朗もまた、正真正銘の仮面ライダーという事だろう。

 

 仮面ライダーに関しての話ばかりで内容をイマイチ理解しきれていないなぎさとほのか。

 だが世界に何か脅威が迫り、自分達と同じように戦っている人達がいる事だけは分かった。

 そんな2人もこれからの戦いに決意を新たにするが、そこでふと、なぎさがハッと何かを思い出した。

 

 

「あっ!!」

 

「どうした?」

 

 

 聞いてきた翔太郎の方を向いてなぎさは思い出した事を話し始めた。

 

 

「私達も知ってるんです、仮面ライダー! 晴人さんと攻介さんって言うんですけど……」

 

 

 はて、と翔太郎は考える。

 翔太郎の知っているライダーの変身者にその名は無い。

 

 

「えっと……魔法使いなんですけど」

 

「魔法使い!?」

 

 

 なぎさの言葉に驚く翔太郎。

 今まで色んな仮面ライダーを見てきているのだから何を今更、という感じもするかもしれないが、実際に魔法使いがいると聞いたら驚くのは当たり前だ。

 しかし尚の事分からなくなってしまった。

 魔法使いの仮面ライダーなんて翔太郎の記憶には無い。

 が、魔法使いという言葉に食いついたのは弦太朗だった。

 

 

「魔法使い……あっ! もしかして、ウィザードとかって……」

 

「はい、その人です!」

 

 

 なぎさが肯定して弦太朗は納得したように頷くが、翔太郎の疑問は拭えない。

 更に言えば仮面ライダー部も首を傾げていた。

 

 

「弦ちゃん弦ちゃん、ウィザードって誰?」

 

「おう。宇宙鉄人の時に助けてくれた仮面ライダーだ」

 

 

 宇宙鉄人との戦いの時、幹部級の黄道12星座のゾディアーツ、『ホロスコープス』のコピー体が12体総出で向かって来た事があった。

 フォーゼとメテオは立ち向かうが苦戦、そんな時に颯爽と現れたのがウィザードだった。

 

 翔太郎は溜息をついた。

 弦太朗と初めて会った時も『リーゼント』というインパクトが凄まじかったが、今度は『魔法使い』という中々のトンデモ。

 自分も探偵だが、後輩のキャラクターの濃さには頭を抱えるばかりだった。

 

 

「リーゼントの次は魔法使いかよ……」




――――次回予告――――
「新しい敵に新しい戦い……もー! いい加減にしてよー!!」
「本当ねぇ。そう言えばなぎさ。晴人さんも大変みたいよ」
「こ、今度は一体何が起こるのよ!?」
「「……ヴォルケンリッター?」」

「「スーパーヒーロー作戦CS、『誕生日の奇跡なの』!」」

「どこもかしこも事件だらけ! 一体どうなっちゃってるの!?」
「でも、きっと大丈夫よ。みんなと私達なら」

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