スーパーヒーロー作戦CS   作:ライフォギア

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第14話 ライジン

 バグラーと戦うゴーバスターズを見やりながら、エンターは片手を上げた。

 すると何処からともかく新たな兵士達が現れる。

 しかしそれは、バグラーではなかった。

 

 

「ッ!? 何だこいつら!」

 

 

 バグラーを順調に倒していたレッドバスターが敵の増援を見て声を上げた。

 

 

「ギジャ、ギジャ!」

 

 

 新たな兵士達は奇妙な声を上げている。

 全身は紫色で頭部に羽を持ち、顔は一眼の、悪魔か何かのような姿をしていた。

 少なくとも機械的な面は無く、ヴァグラスを思わせない姿だ。

 

 

「手を組んでいるのは貴方方だけではない……そういう事です」

 

 

 意味深な言葉を残し、エンターは姿を消した。

 追おうとするゴーバスターズだが、バグラーと紫色の兵士、そしてその後ろに控えるフォークロイドが進路を阻む。

 

 

「俺と戦ってけよゴーバスターズ。お前らを倒すのが俺の目的だからなァ!!」

 

 

 荒々しい言葉と共に、バグラーと紫色の兵士達を指揮するフォークロイド。

 バグラーは既に数が減っているが、紫色の兵士はまだ数が多い。

 とはいえ、力は強くないからゴーバスターズなら簡単に殲滅できる。

 問題はフォークロイド、そして5分後のメガゾード4体だ。

 

 普段ならこういう時、メガゾードとの戦いで決め技を持つ『ゴーバスターエース』のパイロットであるレッドバスターをメガゾード側に回す。

 しかし、敵メガゾードは4体。

 そうなると3人全員でメガゾードを相手にしなければ苦しいだろう。

 いや、タイプγがいる事を考えれば3人でも苦しい戦いになるかもしれない。

 

 とにかくメガゾードへ回る人員もいなければ、対抗手段もない。

 せめてシンフォギア装者と士が早く来てくれればいいのだが…。

 森下から通信が入る。

 

 

『装者2人と士さん、あと2分ほどで到着です!』

 

「2分か……それなら間に合うけど……!!」

 

 

 ブルーバスターは辺りの敵を持ち前の力で薙ぎ払いながら通信を聞いた。

 転送完了まで、残り時間あと3分。

 バスターマシンの出動から現着まではそう時間はかからない。

 だが、この敵の数と謎の敵まで現れたこの状況。

 そして4体のメガゾード。

 いくら増援が来ると言っても決して楽観視はできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

『魔的波動、半径1km以内』

 

 

 あけぼの町民が逃げ惑う中、ただ2人の男性だけは戦闘現場へ向かっていた。

 今のは大人びたサングラスをかけた男性が腰につける手の平サイズの機械、『ゴウリュウガン』が喋ったのだ。

 もう1人、少年っぽさが残る若々しい男性が腰につける手の平サイズの機械、『ゲキリュウケン』も同じく喋りだす。

 

 

『近いぞ、剣二!』

 

 

 剣二、そう呼ばれた男、『鳴神 剣二』は気合を入れて走り出した。

 突然走り出した剣二を追うように、もう1人『不動 銃四郎』も走り出す。

 

 

「おい待て剣二!」

 

「もたもたしてると置いてくぜ! おっさん!」

 

「おっさん言うな!!」

 

 

 暢気なやり取りをしつつ、2人の青年は現場へと着実に足を進めていた。

 

 

 

 

 

 2人が向かった先では、3色の戦士と紫色の兵士────『遣い魔』達、そして見慣れぬ機械兵士と1人だけデザインの違うフォークのような化物が小競り合っていた。

 

 剣二は状況を目を閉じて見開いて、目を擦って見開いてと、何度も凝視した。

 何をしても光景は変わらない。遣い魔はともかく、何だかジャマンガっぽくないのが沢山いる。

 

 

「一体どうなってんだ!? 遣い魔はいるけどよ……」

 

 

 状況の飲み込めない剣二は、何か知らないかな、と、ちらりと銃四郎を見てみる。

 だが、銃四郎も同じく状況を飲み込めていない。

 銃四郎は戦いの様子を見て、折り畳み式の携帯のような物、『ショットフォン』を取り出して通信を始めた。

 

 

「……こちら不動、遣い魔を発見しましたが、見慣れない連中がいます」

 

 

 通信相手は彼等の本拠地、『S.H.O.T』。

 あけぼの署の地下にその本拠地を置く『対魔戦特別機動部隊』の事だ。

 そして彼等2人はそこの職員であり、『魔物』と戦っている。

 その通信にはS.H.O.T司令の『天地 裕也』が答えた。

 

 

『こちらでも確認している。3色の戦士、特命戦隊ゴーバスターズに協力するんだ』

 

 

 その言葉を聞いた銃四郎は首を傾げ、横で聞いていた剣二も割り込んできた。

 

 

「どういう事だよそれ!」

 

『詳しい事は後で説明する。ただちに魔物とヴァグラスを殲滅するんだ』

 

 

 ヴァグラス、2人も名前ぐらいは聞いた事はあった。

 最近世間を騒がせている怪物達の事であると。

 目の前にいる見慣れない機械連中がそうなのであろうか?

 疑問が拭えないが、銃四郎は渋々と「了解」と言い、通信を切った。

 

 

「行くぞ、剣二。町のみんなを守るんだ」

 

 

 サングラスを外す銃四郎。

 剣司ももやもやが晴れないが、今すべき事は理解していた。

 

 

「あーっ、くそ! 悪の組織は『ジャマンガ』だけで十分だぜ!」

 

 

 怒鳴るようなぼやく様な言い方をしつつ、剣二は腰のゲキリュウケンを手に取る。

 銃四郎も同じようにゴウリュウガンを手に取った。

 

 

「ゲキリュウケン!」

 

「ゴウリュウガン!」

 

 

 それぞれが手に持つものの名前を呼ぶと、ゲキリュウケンは青い大型の剣に、ゴウリュウガンは赤い巨大な銃へと変わった。

 

 

「リュウケンキー!」

 

 

 剣二は1本の鍵を取り出し、展開させる。

 そしてゲキリュウケンの柄を操作する。

 するとゲキリュウケンの中央、龍を思わせるレリーフを上に上がり、鍵穴が出現。

 その鍵穴に今取り出した鍵を差し込み、半回転させる。

 最後に、再び柄を操作してレリーフを下に下げた。

 

 

「発動!」

 

 

 ────チェンジ、リュウケンドー────

 

 

 先程まで話していたゲキリュウケンの声が、戦士の名を告げる。

 剣二はゲキリュウケンを天高く掲げた。

 

 

「撃龍変身!!」

 

 

 掲げられたゲキリュウケンの先端から青い龍が上空高く飛び出した。

 そしてそれは一気に降下し、剣二の胸に吸い込まれるように体内に入っていく。

 見る見るうちに剣二の体には鎧が装着されていった。

 ゲキリュウケンと同じような配色をしている、青い体を持った龍の戦士。

 鳴神剣二の戦士としての姿。

 

 

 

 『魔弾剣士 リュウケンドー』。

 

 

 

 銃四郎も剣司と同じく、1本の鍵を取り出し、展開させた。

 

 

「リュウガンキー!」

 

 

 そしてゴウリュウガンのグリップ、詳しく言えばマガジンを挿入する部分に鍵を差し込み、半回転。

 そして鍵を強く叩き、鍵を完全にゴウリュウガンに装填した。

 

 

「発動!」

 

 

 ────チェンジ、リュウガンオー────

 

 

「剛龍変身!」

 

 

 ゴウリュウガンを上空に向け、一度引き金を引く。

 すると、銃口から銀色の龍が空高く昇っていき、勢いよく降下。

 銃四郎と一体化するように龍は銃四郎の胸に吸い込まれていく。

 そして、銃四郎もその姿を変えた。

 ややメカニカルな外見と、銃を持つ姿。

 

 

 

 『魔弾銃士 リュウガンオー』。

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!」

 

 

 勢いよく、青い戦士が跳び込んできた。

 辺りのバグラーと紫色の兵士達を切り裂いていく。

 戦いの最中に突然乱入した青い剣士。

 その光景はゴーバスターズに少し前の出会いを想起させ、レッドバスターはその時と同じ事を聞いた。

 

 

「お前は……?」

 

 

 だが、言葉の返答よりも前に、更なる乱入者が現れる。

 バグラーと紫色の兵士達を銃で次々と撃ちぬき、近づく敵は肘や足を使いつつ、銃を叩きつける攻撃などを繰り出し難なく倒していく赤い戦士。

 そして2人は揃って名乗りを上げた。

 

 

「リュウケンドー!」

 

「リュウガンオー!」

 

 

 それぞれの戦士としての名を名乗り、最後にそれぞれの剣と銃を構え、2人同時に叫んだ。

 

 

「「ライジン!!」」

 

 

 その2人は名乗りを上げた後、目の前の敵を斬り倒し、撃ち倒していく。

 何の苦も無くバグラーや紫色の兵士を倒すところを見ると、ゴーバスターズにも引けを取らない力だ。

 ゴーバスターズも戦闘を再開し、辺りの敵を蹴散らしていく。

 

 戦闘の最中、レッドバスターとリュウケンドーが背中合わせになった。

 

 

「リュウケンドー……だったな、何者なんだ?」

 

「俺? 俺はジャマンガと戦う魔弾剣士。

 えーっと、アンタらはゴーバスターズでいいんだよな?」

 

「ああ。ジャマンガって、この紫色か?」

 

「こいつらはジャマンガの遣い魔。まあ、雑魚ってやつだ」

 

 

 遣い魔は攻撃されると奇妙な呻き声と共に倒れ、消えていく。

 どういう存在なのかは分からないが、そこまでの脅威ではないらしい。

 と、なれば現状注意すべきはフォークロイドのみ。

 

 バグラーと遣い魔の混成戦闘員達と戦っていると、バイクの音が聞こえてきた。

 段々近づいているのが分かる。

 その場にいる全員がそれに気づき、振り向いた。

 

 

「誰だ!?」

 

 

 フォークロイドの声に、電子音声が答えた。

 

 

 ────ATTACK RIDE……BLAST!────

 

 

 バイクの音に振り向いた敵は全員撃たれ、戦闘員達は一撃で、フォークロイドもダメージを追っていた。

 バイク、マシンディケイダーの主であるディケイドがライドブッカーを銃の形に変形させ、カードの力で弾丸を強化し、撃ち放ったのだ。

 マシンディケイダーの後部座席には響も座っていた。

 

 さらに、バイクは1台ではなく2台だった。

 もう1台には翼が乗っている。

 マシンディケイダーをその場に止め、戦闘に参加するディケイド。

 辺りの敵を銃撃で一掃した後、ライドブッカーを剣の形に変え、手近い敵を切り裂いていく。

 響と翼もそれぞれ歌を歌い、シンフォギアを身に纏う。

 

 

「不動さん! なんか色々来たぜ!」

 

「ああ……彼らもゴーバスターズ、なのか?」

 

 

 リュウケンドーとリュウガンオーの驚く声に、ブルーバスターが戦いながらも答えた。

 

 

「いや。でも説明してる時間もないですし、とりあえず味方何で心配しないでくだ……さいッ!!」

 

 

 地面を一度強く殴るブルーバスター。

 すると、大きな振動が混成戦闘員達に伝わり、振動を感じた全員がその場に倒れてしまう。

 

 ゴーバスターズにはそれぞれ『ワクチンプログラム』というものが投与されており、それにより人間以上の力を得ている。

 それをバスタースーツでさらに強化しているのだ。

 ヒロムはスピード、リュウジはパワー、ヨーコはジャンプと言った具合だ。

 故に、ブルーバスターのそれは通常のバスタースーツで出せるパワーを遥かに超えたパワーを持っている。

 

 戦闘員達も大分減り、フォークロイドもその状況を見かねてか、積極的に戦闘に参加してきた。

 ディケイドは敵を倒しながらレッドバスターに向かって叫ぶ。

 

 

「話は聞いてる、早く行け!」

 

 

 その言葉に頷いて、ゴーバスターズは3人とも戦線を離脱した。

 

 

「おいおい! どこ行くんだよ!」

 

 

 まるで逃げるかのようなゴーバスターズを見て呆気にとられるリュウケンドー。

 そんなリュウケンドーにディケイドが駆け寄る。

 また見た事のない戦士だ。

 見たところ、仮面ライダーっぽい気もするが、士の記憶にこんな姿のライダーはいない。

 勿論、士がまだ見た事も無い仮面ライダーという可能性はあるが。

 

 しかし、今は敵を倒す事が最優先。

 疑問は後回しにし、リュウケンドーの疑問にディケイドは答えた。

 

 

「あいつ等はこれから出てくるデカブツの相手だ」

 

「デカブツぅ?」

 

 

 何の事だか分からないリュウケンドーは怪訝そうな声を出す。

 転送完了のカウントが始まってから、すでに4分を過ぎ、5分に差し掛かろうとしていた。

 

 

 

 

 

 あけぼの町に3機の大型マシンがやって来た。

 町の外れにあるエネトロンタンクの周辺で3機は止まる。

 それぞれスポーツカー、トラック、ヘリコプターを巨大化させたようなフォルムをしている。

 

 ゴーバスターズの3人は特命部から出撃してきたバスターマシンにそれぞれ乗り込む。

 

 レッドバスターはスポーツカー、『CB-01 チーター』。

 

 ブルーバスターはトラック、『GT-02 ゴリラ』。

 

 イエローバスターはヘリコプター、『RH-03 ラビット』。

 

 3人はそれぞれの操縦桿を握る。

 バスターマシンにはそれぞれのバディロイド達がコックピットの一部となる事で搭乗している。

 

 

『ヒロム! そろそろ来るぜ!』

 

 

 CB-01の操縦桿になっているヒロムのチーター型バディロイド、ニック。

 バイクのハンドルのような顔がCB-01の操縦桿だ。

 

 

「ああ、分かってる!」

 

 

 そう言ってレッドバスターはコックピットを操作し始めた。

 するとCB-01はスポーツカーの姿から人型のロボットに凄まじい速さで変形を果たす。

 『ゴーバスターエース』が今のCB-01の名称だ。

 手にはバスターソードを持ち、臨戦態勢を整えている。

 

 

『でも、敵は4体だよ? どうしよう!?』

 

 

 焦るように言うのはGT-02の車のハンドルのような操縦桿、リュウジのゴリラ型バディロイド、ゴリサキ。

 彼は弱気な面があり心配性だ。

 そうでなくとも4体のメガゾードはゴーバスターズも初体験。

 不安がるのも無理はない。

 

 

「何言ってんのゴリサキ。やる事は変わんないよ」

 

 

 対してブルーバスターは落ち着いた様子で答え、コックピットを操作する。

 GT-02もCB-01と同じく変形を果たし、その名と同じゴリラのような姿になった。

 

 

『こっちは空から援護! 分かってるヨーコ?』

 

 

 やや毒づく様な言い方で喋るのはRH-03で自分の長い耳に相当する部分を操縦桿のレバーとしている、ウサギ型バディロイドのウサダだ。

 その言い方に少しムッとするイエローバスター。

 

 

「もう、分かってるよ!」

 

 

 その言葉通り、RH-03は変形せずに空中で旋回している。

 RH-03は他の2機とは違い、空を飛ぶことが特徴。

 勿論その2機と同じように変形する事もでき、その際の姿はウサギ型のロボットだ。

 ただし、ウサギの形へと変形すると当然飛行能力は失われる。

 空中から攻撃できるというのは1つの利点だ。

 その為、今回は変形しないという選択をしている。

 

 3機が配置につき、臨戦態勢を整え終わりしばらくすると、上空の風景が歪みだした。

 それと同時に司令室の仲村からの通信が入った。

 

 

『3、2、1、来ます!』

 

 

 仲村のカウントが終わると同時に、上空の歪みから巨大な人型ロボットが地上に落ちる。

 4機は全て綺麗に着地し、ゆっくりと姿勢を直し、バスターマシンを見据えた。

 レッドバスターは敵メガゾード4機をモニターで確認し、静かに呟く。

 

 

「メタロイドのデータは……βにインストールされてるみたいだな」

 

 

 巨大な両腕が特徴的なやや丸いフォルムのタイプβ。

 その右腕は通常とは違い、巨大フォークになっている。

 メタロイドが現れるとそのデータを基にメガゾードも亜空間で改造され、それが送り込まれる。

 

 今回の素体はタイプβであるようで、『フォークゾード』とでも呼べばいいのだろうか。

 タイプα2機とタイプγ1機は素体状態のままだ。

 

 

「βとγが厄介だね。αを先に潰して、物量を減らそう」

 

 

 ブルーバスターの提案に全員が頷いた。

 タイプαは『バグゾード』という量産型メガゾードを射出してくる時がある。

 戦力そのものはそう強くもないが、物量差がただでさえある中でそれは厄介だ。

 しかもタイプαは2機。

 単純に考えれば普段のバグゾードの2倍の数が飛んでくる恐れがある。

 強敵は後回しにし、物量を減らすというのは当然の考えだ。

 

 

「ヨーコはβとγの攪乱。俺とリュウさんでαをやる」

 

 

 2人がレッドバスターの指示に「了解!」と強く返事をする。

 目の前のメガゾードは既に迫ってこようとしていた。

 ゴーバスターズの後ろにはエネトロンタンク。

 これだけは守り抜かなければならない。

 

 

「いくぞ!!」

 

 

 レッドバスターの一声で、3機のバスターマシンもメガゾードに果敢に立ち向かっていくのだった。

 

 

 

 

 

 一方、フォークロイドとバグラー、遣い魔を相手にするディケイド、リュウケンドー、リュウガンオー、響、翼。

 ディケイドとリュウケンドーがフォークロイドを相手にし、残る3人が戦闘員を引き受けるという状態になっている。

 

 決して苦戦しているわけではないし、まして押されているわけでもない。

 だが、戦闘員を相手にするリュウガンオーには1つ不安要素があった。

 

 

「あいつ等、何してんだ……」

 

 

 辺りの敵を蹴散らしながらリュウガンオーが呟く。

 視線の先には響と翼。

 翼は敵を着実に切り裂いているが、響はまるで素人のような動きで逃げ回るばかりだ。

 

 さらに気にかかるのが、翼がそんな響を全く気にしていない事。

 巻き込もうが何だろうが、お構いなしに見えたのだ。

 2人を見て、リュウガンオーの銃、ゴウリュウガンも冷静に言う。

 

 

『シンクロ率10%以下、喧嘩をしている時のゲキリュウケンと鳴神剣二以上に相性が悪い』

 

「そりゃまた相当だな……」

 

 

 剣二とゲキリュウケンは『喧嘩するほど仲が良い』を地で行っていると言っても過言ではない。

 だからこそ、戦いを続けていられるのだ。

 喧嘩する事はあれど、必ず和解して終わるのが剣二とゲキリュウケンだ。

 

 だが、目の前の2人はそうは見えない。

 喧嘩どころか口論すら起きていない。

 なのにこの合わなさは、最早本当に仲間同士なのかと疑うぐらいだ。

 

 

「ハァ、俺がしっかりしないとな……!」

 

 

 響と翼の素性をリュウガンオーは知らない。

 だが、どう見ても学生で、明らかに自分よりも年下なのはわかった。

 年長者として最大限フォローしてやるのが務めだろうとリュウガンオーは悟った。

 そしてついでに、心の中で否定する。

 

 

(だが、年上なだけで『おっさん』ではない!)

 

 

 剣二からの『おっさん』呼びを意外に気にしている銃四郎であった。

 

 

 

 

 

 一方のディケイドとリュウケンドー。

 相手にしているフォークロイドのフォークは鋭く、それでいてパワーもある。

 しかしリュウケンドーは怯む事無くゲキリュウケンを振るう。

 

 

「ったくマジでデカイのが現れやがって!」

 

 

 先程、戦っている最中に大きな地響きがしたので振り返ってみれば、巨大ロボが4体。

 さらにゴーバスターズのものと思わしき3機もだ。

 あんなものや目の前の怪人があけぼの町で暴れられては堪ったものではない。

 

 怒りをフォークロイドにぶつけていくリュウケンドー。

 さらにリュウケンドーが攻撃を弾かれた隙は全てディケイドが埋めている。

 ライドブッカーを剣に変形させ、リュウケンドーに合わせて斬りかかっているのだ。

 

 

「チィ……オォラ!!」

 

 

 フォークロイドが2対1という不利な状況に苛立ったのか、右手のフォークで大振りの一撃を見舞おうとした。

 攻撃を受け止め続けている2人にはフォークロイドがパワー系である事は既に分かっている。

 だからまともに受ける気など全くなかった。

 

 ディケイドはフォークロイドのフォークの間にライドブッカーの刃を滑り込ませ、その攻撃を受け止め、振り下ろす事でフォークを地面に固定した。

 何とか動こうとするフォークロイドだが、ライドブッカーとディケイドの力で地面に固定され、動けない。

 

 

「やれ!」

 

 

 ディケイドの声にリュウケンドーは返事をするよりも早く、ゲキリュウケンを何度も振るって動けないフォークロイドを斬りつけた。

 そして最後に一撃、下から斬り上げる。

 それに合わせてディケイドもフォークの固定を解除し、フォークロイドは後方に吹き飛んでいき、地面を転がった。

 

 

「なかなかやるじゃねぇか!」

 

 

 リュウケンドーがディケイドの胸を拳で2回ほど叩きながら意気揚々と言った。

 ディケイドは当然だ、とでも言いたげに鼻を鳴らして答え、叩いてくる腕を振り払う。

 

 

「貴様等ァ! 何を勝ち誇っている!!」

 

 

 だが、フォークロイドは未だ健在だ。

 すぐさま起き上がり、そのフォークを地面に叩きつけた。

 物に八つ当たりするような行動だった。

 だからディケイドもリュウケンドーも取り立ててその行動を気にしていなかったのだが。

 何とフォークを刺した個所から2人がいる位置までの地面が真っ二つに割れたのだ。

 

 

「うおぉ!!?」

 

 

 突然の地割れにリュウケンドーがバランスを崩すものの、何とか左に避ける事が出来た。

 隣にいるディケイドも右に転がって地割れに飲み込まれずに済んだ。

 

 

「馬鹿力だな……」

 

 

 そう言いつつ、ディケイドはライドブッカーを元の状態に戻し、カードを1枚取り出す。

 カードには紫色の鬼のような面が描かれている。

 それを今までのカードと同じ要領でディケイドライバーを操作し、装填した。

 

 

 ────KAMEN RIDE……HIBIKI!────

 

 

 その音声の直後、ディケイドの体は紫色の炎に包まれた。

 

 

「おお!? 今度は何だよ!」

 

 

 地割れを挟んで向こう岸にいるリュウケンドーは隣で戦う戦士が突如炎に包まれるのに驚いたようだ。

 紫の炎をその中にいるディケイドが払いのける。

 しかしその姿は既にディケイドではなく、紫色の鬼そのものだった。

 

 

「何だアレ!? 火炎武装かなんかか!?」

 

『しかし、原型が残っていないが』

 

 

 リュウケンドーは手に持つゲキリュウケンと顔を見合わせ、驚愕した。

 ゲキリュウケンも機械ながら、驚きを隠せないでいるようだ。

 

 リュウケンドーもその身に炎を纏い、『ファイヤーリュウケンドー』になる事は出来る。

 他にも『アクアリュウケンドー』という姿もあるが、いずれにしてもリュウケンドーとしての面影はちゃんと残している。

 

 だが、ディケイドが変身したその姿は原型などまるで留めておらず、完全に別人だった。

 その姿は『仮面ライダー響鬼』。

 ディケイドは他の世界の、全く別のライダーに姿を変える『カメンライド』を使う事ができる。

 ディケイド本人である証拠に、ベルトだけはディケイドライバーのままだ。

 

 

「どいつもこいつも、似たような反応をするな……」

 

 

 両手を二度叩きながらぼやくディケイド。

 

 ディケイドはこの1ヶ月の間にノイズ討伐の際に他のライダーの姿になった事がある。

 いつぞや、ノイズ発生の際に高いビルに取り残された人を救助する為、『クウガ』の青い姿、『ドラゴンフォーム』に変身した時だ。

 クウガのドラゴンフォームは凄まじい跳躍能力を持っており、無事、その人は保護された。

 

 その時、ディケイドの面影など欠片もない姿にゴーバスターズや響も今のリュウケンドーと似たような反応をしていた。

 口には出していないが翼も驚いたような表情をしていたし、モニター越しの二課や特命部の面々も驚きの声を上げていたらしい。

 

 

「よ、呼ばれましたか!? 私?」

 

「……お前とは関係ない」

 

 

 一方、ディケイドが響鬼に変身した時の電子音声を聞いて、戦闘員から逃げ回る響が逃げるのを続行しつつ、反応を示した。

 実はカメンライド自体はこの世界ではあまりしておらず、クウガ以外にはなっていない。

 その為、この響鬼の姿は響や翼にとって見るのは初めてなのだ。

 翼やリュウガンオーもリュウケンドー同様、やや驚きを隠せていない。

 

 間抜けな質問をする響に呆れつつ、ディケイド響鬼はさらにカードを取り出し、ベルトを操作し、装填した。

 

 

 ────ATTACK RIDE……ONGEKIBOU REKKA……!────

 

 

 カードを発動させた後、自分の腰の後ろに手を回す。

 すると両手に2本の棒、先端には鬼の顔が象られた石がはめ込まれている。

 太鼓のバチのようなそれは『音撃棒 烈火』。

 仮面ライダー響鬼の武器だ。

 ディケイド響鬼はそれを構え、音撃棒の先端にある石に力を込める。

 すると、先端の石から炎が現れる。

 

 

「ハッ!!」

 

 

 そして太鼓を叩くように音撃棒を振るうと、炎は音撃棒を離れ、フォークロイドに飛んでいった。

 音撃棒から離れた炎は弾丸と化し、フォークロイドを直撃する。

 それを何度も繰り返し、炎の弾丸をディケイド響鬼は当て続ける。

 

 

「グォ! アチィなこの野郎ォ……!!」

 

 

 凄まじい熱気を浴び続けるフォークロイドはその威力も相まって苦しんでいた。

 その隙を見計らい、ディケイド響鬼は炎の弾丸を連射しながら一気に詰め寄った。

 

 

「鉄は熱いうちに叩け……ってなッ!!」

 

 

 接近し、音撃棒をバチに、フォークロイドの胴体を太鼓として思い切り叩く。

 響鬼はパワフルな戦士で、ディケイドはその力をも完全に模倣する事が出来る。

 その腕力から繰り出される音撃棒の一撃はフォークロイドに確実にダメージを与えた。

 さらに、太鼓を何度も叩くように、ディケイド響鬼は音撃棒でフォークロイドを叩き続ける。

 そして最後に一撃、両方のバチで同時に、力を込めた強烈な一撃を叩きこんだ。

 

 

「ハアッ!!」

 

 

 攻撃を喰らったフォークロイドは吹き飛ぶ事は無かった。

 しかし、人間で言えば鳩尾に一撃を喰らった時のように体をくの字に曲げて苦しんでいる。

 幾度もの音撃棒による胴体へのダメージが蓄積しているのだろう。

 

 

「決めるぞ」

 

 

 ディケイド響鬼は元のディケイドの姿に戻り、後ろで呆然と今の戦いを見ていたリュウケンドーを見やる。

 

 

「お、おう! こっちも行くぜゲキリュウケン!」

 

 

 その声に戸惑いつつも、リュウケンドーは腰の『マダンキーホルダー』から1本の鍵を取り出した。

 

 

「『ファイナルキー』!」

 

 

 ファイナルキー。

 その名の通り、リュウケンドーが必殺の一撃を繰り出す時の鍵だ。

 リュウケンドーは変身の時と同じようにゲキリュウケンを操作し、鍵を発動させた。

 

 

「発動!」

 

 

 ────ファイナルブレイク────

 

 

 ゲキリュウケンが必殺の名前を告げる。

 同時に、ゲキリュウケンの刀身に青い輝きが発生し、力を帯びていく。

 

 ディケイドはその様子を見た後、フォークロイドに一度蹴りを入れ、吹き飛ばして距離を置いた。

 そしてライドブッカーからディケイドの紋章が描かれた黄色のカード、『ファイナルアタックライド』のカードを取り出し、ベルトを操作し、そのカードを発動した。

 

 

 ────FINAL ATTACK RIDE……DE・DE・DE・DECADE!────

 

 

 変身の時とは違うスクラッチ調の音声が鳴り響く。

 音声の後、先程の黄色のカードが10枚、ディケイドとフォークロイドの間に出現する。

 人間大に巨大化したようなカードの形をしたエネルギーがディケイドとフォークロイドの間を一直線に繋いだのだ。

 ディケイドはライドブッカーを再び剣の形に変え、構える。

 

 そして2人の戦士は同時にフォークロイドめがけて突進した。

 ディケイドはカード型エネルギーを次々と通り抜け、リュウケンドーはゲキリュウケンを振るって。

 ダメージを受け、尚且つ吹き飛ばされて起き上がる途中のフォークロイドは身動きが取れない。

 

 

「ゲキリュウケン! 魔弾斬り!!」

 

「ハァァァァッ!!」

 

 

 リュウケンドーが技の名前を宣言し、ディケイドは気合を入れるように雄叫びを上げる。

 そしてリュウケンドーはフォークロイドの左側を、ディケイドが右側をすれ違いざまに、己の剣で切り裂いた。

 

 

「グアァァァァァッ……!!」

 

 

 断末魔を上げながら、フォークロイドは倒れ、爆散。

 ディケイドはライドブッカーの刀身を撫でる。

 リュウケンドーはゲキリュウケンを再び構え直し、弔うような一言をフォークロイドに贈った。

 

 

「闇に抱かれて、眠れ……!」




────次回予告────
ジャマンガとは違う変な奴らが現れた!?
おまけにデカイ敵まで出てきちまった。
俺にも不動さんにもわけわかんねぇ。
でも、あけぼの町を守るのは変わんないぜ!
次回も、スーパーヒーロー作戦CSで突っ走れ!

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