スーパーヒーロー作戦CS   作:ライフォギア

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第12話 繋がりと協力と再会の兆しなの

 木崎の計らいではやての家には、彼女には秘密で常に護衛がつく事になった。

 護衛は時間で交代し、常に監視の目を光らせるとの事らしい。

 木崎曰く、「メデューサが直接狙ったとなると、注意深すぎるぐらいでいいだろう」との事だ。

 それを聞いた晴人はホッとしながら0課をあとにした。

 

 そして、0課にて出会った新たな刑事、後藤。

 まさか新人が『仮面ライダー』なんて夢にも思わなかった。

 聞いた話では2年ほど前に『グリード』なる敵と戦っていたらしい。

 と、なればサバトが起こるよりも前────即ち、先輩ライダーという事だ。

 

 何とも凄い人が来たものだなぁ。そんな事をぼんやりと考える。

 攻介を除いた他の仮面ライダーと出会う事は度々あれど、こうして戦闘以外で会う事は少ない。

 その驚きを忘れぬまま面影堂に帰宅した晴人。

 面影堂のドアを開けると、いつも通りの風景が────

 

 

「あ、お邪魔してます」

 

 

 広がっていなかった。

 確かにその場にいる面子全員に見覚えはある。

 魔法使いの助手として付いてくる元ゲート『奈良 瞬平』、ウィザードの指輪を作ってくれる面影堂の店主『輪島 繁』、それに凛子とコヨミと攻介。

 それから、今「お邪魔してます」と言ったなのは。

 他にもなぎさに、ほのかに、ひかり……

 

 

「……あれぇ!?」

 

 

 晴人は素っ頓狂な声を上げてしまった。

 どういうわけか昨日別れたはずの面々が全員集合していたのだ。

 驚いている様子の晴人に攻介が説明を始める。

 

 

「それがよぉ、ファントムはともかく別の敵も現れちまったろ? あのザケンナーとかっての。

 だから今日、もう一度集まってゆっくり話でもしないかって事になったんだよ」

 

 

 実は昨日、晴人と別れてからこんなやり取りがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 なのはを自宅まで連れて行こうとしたら、店の手伝いだからそちらに行くと言い、そこまで送っていったのだが。

 

 

「……って此処、さっきの喫茶店じゃねぇか!?」

 

 

 攻介が面食らったのも無理はない。

 何せなのはの手伝いに来た場所というのは、先程まで自分達がいた翠屋だったのだから。

 なぎさ達もこれには驚いている。

 ついでに4人の反応になのはも驚いている。

 

 

「えっ、翠屋にいたんですか!?」

 

「う、うん。ついさっきまで……」

 

 

 驚くなぎさを余所に、ほのかは片手を頬に当て、感心するように言った。

 

 

「偶然って凄いわねぇ……」

 

 

 その言葉に全員が頷いた。

 魔法使いとプリキュアが同じタイミングで魔法少女の店にいた。

 こう考えると凄い偶然だ。

 

 

「……ま、何にしてもだ! 無事送り届けることもできたな!」

 

 

 意気揚々な攻介。

 普段のノリがそんな感じなので、別に何が嬉しいわけでもないが。

 と、此処でほのかが口を開いた。

 

 

「あの、1つ提案したい事があるんですけど」

 

「ん? なんだよ」

 

 

 突然の言葉だった。

 別に此処まで問題は無かったし、特別提案して何かをするようなことは無かったはずだが。

 

 

「今度……できれば早いうちにまた会いませんか?」

 

「んん? そりゃいいけどよ……なんでまた?」

 

「そうだよほのか。何か理由でもあるの?」

 

 

 2人して首を傾げる攻介となぎさ。

 ひかりやなのはもキョトンとしている。

 そんな4人にほのかは何かを教えるように語り始めた。

 

「なのはさんが狙われているのは確かなわけですし、いくら魔法少女でも守るべきです。

 だから今後はきっと私達が協力する事もあると思うんですよ、だから……親睦会? みたいなのをどうかなって」

 

 

 ほのかの説明に全員が納得したように頷く。

 確かに最もな話だ。

 お互い事情を知ってしまった以上、放っておく事はできない。

 

 ドツクゾーン。ファントム。

 

 どちらも人間と敵対する存在。

 そして人々に脅威をもたらす存在を放っておける人物は此処にいない晴人も含めて、いなかった。

 

 ザケンナー出現の時に魔法使いが手を貸してくれれば?

 ファントム出現の時にプリキュアとシャイニールミナスが手を貸してくれれば?

 それは非常に心強いだろう。

 

 

「じゃあ場所は此処にしない!?」

 

「もうなぎさったら、翠屋のケーキを食べたいだけでしょ?」

 

 

 目を輝かせながら言うなぎさに苦笑しつつ、ほのかが言う。

 ほのかの言葉になぎさは苦笑いで目を逸らした

 ぶっちゃけその通りであるからだ。

 しかし、それには反対するには意外な人物が異議を申し立てた。

 

 

「そ、それはダメです!」

 

 

 なのはだった。

 

 

「どうして? なのはちゃんとしては此処の方が…」

 

 

 なぎさの言葉になのはは少々申し訳なさそうに答えた。

 

 

「その、家族にも私が魔法少女なのは秘密で……知られちゃったりするのは……

 それに、ゲートやファントムの事で心配かけたくないですし……」

 

 

 その後、なのははなぎさにもう一度頭を下げた。

 自分の我が儘でなぎさがケーキを食べれなくなると思うと心苦しかった。

 しかも自分の店のケーキを食べたいと言ってくれているのに。

 だが、そんななのはになぎさは優しく声をかけた。

 

 

「全然! そういう事なら仕方ないよ。私達だってプリキュアなの、みんなには秘密だもん」

 

 

 

 

 

 

 

 と、その後に攻介が「面影堂はどうだ!」と提案した。

 そして出来るだけ早い方がいいという事なので、翌日。

 なぎさやほのか、ひかり、なのははまだ小学生、中学生なので、土日の2日間が休み。

 そして昨日はその1日目、つまり土曜日だ。

 幸い、日曜日に部活も無いらしい。

 そういうわけで今日、面影堂に集まっているというわけなのだが。

 

 

「そういう事は先言えよ……」

 

「ワリィワリィ、すっかり忘れてた!」

 

 

 呆れる晴人の肩をバンバン叩きながら攻介が言う。

 底抜けに明るいのは欠点とは言わないが、もう少し申し訳なさそうにできないものか。

 

 

 

 

 

 そんなわけで面影堂にて、プリキュアと魔法使いによる親睦会が開かれた。

 どういうわけかケーキまで用意されている。

 翠屋のケーキが1ホール、瞬平が頼んだものらしい。

 

 

「だって、折角の親睦会ならこういうの必要じゃないですか!」

 

 

 元気一杯に言う瞬平。

 さらにその後、置いてあった紙袋を強引に晴人に渡してこう言った。

 

 

「晴人さんはコレ! ですよね!!」

 

 

 中身を空けると、プレーンシュガー。

 晴人が一番気に入っているドーナツだ。

 

 瞬平はおっちょこちょいな一面もある、というよりもそこばかり目立つが、たまにミラクルを起こす男だ。

 ついでにこういう時に場の盛り上げ役としては最適任者かもしれない。

 あと、ちょっとは気が回る。

 長らく一緒にいて慣れたというのもあるが、今の自分には必要な人間の1人なのだと晴人は思っている。

 

 

「いやぁ、普段も賑やかだが、こう女の子達がいると華やかさが増すね」

 

 

 おっとりと輪島が言う。

 

 元々この店は輪島1人の店だった。

 それがまず魔法使いとなった晴人、晴人が連れてきたコヨミが増えた。

 そしてゲートだった凛子と瞬平、合流した新たな魔法使いの攻介……。

 こんな風に増えて、今ではその6人が面影堂に顔を揃えるメンバーとなっていた。

 

 そこに女子がさらに4人。

 通算10人という結構な数に面影堂はなっていた。

 面影堂は骨董品店なので当然『売る』という仕事をしていて、そういう意味での賑やかさも店主としては欲しい。

 だが、こういう賑やかさも輪島は好きであった。

 

 

「さて、親睦会と言っても何しようか?」

 

 

 晴人の言葉に、なぎさ達が変身の時に使っていた道具を取り出した。

 その様子に他の面々は首を傾げる。

 

 

「えっと、まずは……この前説明しきれなかった事を、説明しようかなって思ってます」

 

 

 ほのかの言葉と同時に、なぎさ、ほのか、ひかりが手に持つ道具がポン!と小さな煙を上げた。

 煙が収まると、道具はぬいぐるみのような物になった。

 それだけなら手品か何かで済んだであろうが、驚くべき事に、そのぬいぐるみは動いていた。

 

 

「美味しそうなケーキポポ!」

 

 

 ひかりの持っていた道具が変わった黄緑と白のぬいぐるみ、ポルンが喋った。

 

 

「うおあぁぁぁ!!? ぬいぐるみが喋ったぁぁぁ!!?」

 

 

 大袈裟に驚く攻介に、なぎさの持つぬいぐるみが抗議をする。

 

 

「ぬいぐるみじゃないメポ!」

 

 

 少し怒りながら言うなぎさのぬいぐるみ、メップル。

 それとは対照的に落ち着いて、おしとやかな様子のほのかのぬいぐるみ、ミップルが付け足すように言う。

 

 

「私達は、『光の園』の住人ミポ」

 

 

 さて、なぎさ達が説明し忘れていた事。

 この珍妙摩訶不思議以外の何者でもないぬいぐるみ達の事だ。

 

 メップル達は光の園からやって来た妖精で、なぎさ達をプリキュアに変身させる能力を持っている。

 昨日にも説明したハーティエルンは光の園の王女、クイーンを復活させるのに必要な存在達。

 なぎさ達は自分達が中学2年から今に至るまでに経験したドツクゾーンとの戦いと、光の園の事を出来る限りみんなに話した。

 

 その説明を聞き、納得しつつ晴人は腕を組んだ。

 

 

「成程……随分な戦いに巻き込まれているみたいだね」

 

「っつか晴人、1年前からって事は嬢ちゃん達、俺達よりも先輩じゃねぇか……?」

 

「……確かに。……そういえば2人とも、中学2年から1年って事は今は中3だよな? 勉強とか大丈夫なの?」

 

 

 攻介の言葉に晴人は苦笑いで返しつつ、なぎさとほのかに聞いた。

 中学3年と言えば受験生だ。

 世の中の殆どの中学生が高校に行く事に必死な時期ではなかろうか。

 なぎさは「うっ」と顔を歪め、ほのかは普段通りの態度で「はい」と言ってのけた。

 

 

「勉強しなきゃなぁ……」

 

「それもそうだけど、なぎさも私も進路を絞り切らなきゃ」

 

「分かってるよー……だから今度オープンキャンパス行くんじゃない」

 

 

 なぎさが今後の勉強の事を考え憂鬱そうな表情になる。

 学校と戦いの二足の草鞋も大変だろうにと、晴人は同情した。

 

 ひかりは違うそうだが、なぎさとほのかは1年前から戦っているらしい。

 対して、1年前と言えばまだサバトも起こっていなければ、攻介もビーストドライバーを見つけてはいない。

 つまり2人ともファントムの存在すら知らない状態の頃の話だ。

 年齢的には明らかに晴人達の方が上なのに戦闘経験は上で進路について話している中学3年生2人を見やる。

 何とも不思議な感覚であった。

 

 と、そこで『先輩』という言葉が晴人の中で引っかかった。

 

 

「……あ、先輩で思い出した。0課の人、俺達の先輩みたいだな」

 

 

 晴人の言葉に一瞬攻介は止まったが、すぐに何の事か思い出した。

 

 

「あ? ……あー、例の仮面ライダーってやつ?

 木崎からも聞かされたけど、 俺もその仮面ライダーってやつなのか?」

 

 

 晴人が仮面ライダーの名を知ったのは攻介と知り合う以前だ。

 その時の事を話してはいない。

 別に何があるわけでもなく、単に話す理由がなかったからだ。

 どうやら後藤と会った時に晴人に対しての質問と全く同じ質問をされたらしく、その時木崎が仮面ライダーとは何なのかを攻介に説明したとの事だ。

 

 

「か、仮面ライダー!?」

 

 

 その言葉に過剰反応し、大声を上げたのはなぎさだった。

 突然の声に驚き、全員がなぎさに注目する。

 だが視線をお構いなしに、なぎさは興奮気味に続ける。

 

 

「あの都市伝説の仮面ライダーですか!?」

 

「と、都市伝説?」

 

 

 勢いに押されながらも晴人は疑問を呈する。

 仮面ライダーが都市伝説という話は、晴人には馴染みがなかったのだ。

 なぎさが興奮そのままに仮面ライダーの都市伝説について語り始めた。

 

 何でも、時折その名前が挙がるぐらいには生徒の間では有名な話らしい。

 人知れず悪と戦う正義の戦士の存在。

 それが仮面ライダーであると。

 小学生から高校生にかけてまではそういう話はよく広まるし、話題にもなる。

 現役中学生のなぎさが知らないはずもなかった。

 もっとも、殆ど友人の受け売りであったが。

 

 

「晴人さんと攻介さんも仮面ライダーなんですよね!?」

 

「そうなる……のかな?」

 

 

 なぎさはまだ詰め寄ってくる。

 さすがに力任せに退けるわけにもいかないので、両手を上げて晴人は降参するようなポーズをとっている。

 仮面ライダーという名が付けられる条件を晴人も攻介も満たしてはいるが、実感が無かった。

 仮面ライダーというものを意識した事があまりないからだろう。

 

 

「凄いじゃないですか晴人さん! 都市伝説の仲間入りですよ!!」

 

 

 なぎさと同じくらい興奮気味の瞬平。

 都市伝説の仲間入り。

 何らかの都市伝説や噂ぐらいこの場にいる全員が聞いた事がある。

 だが、それそのものになるなんて事は世界中でも本当に一握りしか経験しないだろう。

 だからこそ余計に晴人にも攻介にも実感が無かった。

 と、此処で凛子がある事に気付く。

 

 

「そう言えば、仮面ライダーは都市伝説になってるのに、プリキュアとか魔法少女は聞かないわね」

 

 

 その言葉になぎさ達3人となのはは難しそうな顔をした。

 まずプリキュアだが、説明が難しいのだ。

 

 

「えーっと……何だかよく分からないんですけど、あいつらが現れると周りが変なんですよ」

 

 

 と言ったのはなぎさだ。

 その言葉にほのかが続ける。

 

 

「周りの人は私達の事が見えてないみたいで、特殊な空間みたいな……

 仮面ライダーの晴人さんと攻介さん、魔法少女のなのはさんは例外だったみたいだけど……」

 

 

 晴人はザケンナーに取りつかれたアルゴスとの戦いの時を思い出す。

 思い返してみれば、何やら重苦しい雰囲気があったような気がしない事も無い。

 それにあれだけ派手に戦ったのに誰も来なかったというのも気になるところだ。

 いくら丘の上とはいえ、誰か気づきそうなものだが。

 

 一方のなのははまた別の理由で難しい顔をしていた。

 そんななのはに晴人が顔を向ける。

 

 

「なのはちゃんは?」

 

「……えっとぉ、私の場合は魔法でお仕事をしてる人達がいて、その人達が色々と……

 あと、普通の人が出入りできない『結界』を張ったりとか」

 

 

 これまたそれなりにトンデモだった。

 なのはは自分がお世話になった『時空管理局』という組織について少しだけ話した。

 勿論、魔法に関係のない人にはその存在は基本的に内緒なので『そういう組織がある』という事だけだが。

 尤も、この中に魔法と関係のない人がいるかと言われれば、それはNOだが。

 とはいえ、その時空管理局との約束なので守らなければならないのも事実。

 なのはの独断でどうこうできる秘密でもないのだ。

 

 さて、なのはが一しきり話し終わると、なぎさが突然バッと手を上げた。

 

 

「すみません! そのぉ……」

 

 

 そしてやや申し訳なさそうに、照れながら言った。

 

 

「ケーキ、食べません?」

 

 

 全員が肩をガクッと落とす。

 勢いよく言うから何かと思ったら食い意地を出しただけだったようだ。

 そんななぎさに全員苦笑い。

 ほのかもいつものように言う。

 

 

「もう、なぎさったら」

 

 

 しかしこの言葉がきっかけとなり、親睦会は親睦会らしく、楽しい談笑タイムへ突入した。

 

 その後、晴人の魔法でいちいち騒いだり、レイジングハートとメップル達がちょっと張り合ったり、騒がしくも楽しい親睦会で会った事は、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 面影堂で楽しい親睦会が開かれている頃、ヨーロッパの某国。

 人里離れた古い遺跡。

 旅人のような風貌の青年、『火野 映司』はその遺跡に来ていた。

 

 彼は失われた自分の相棒を取り戻すための旅の最中だ。

 映司の相棒、それは1枚のメダルだった。

 ただのメダルではない、そのメダルには『意思』が宿っていた。

 それが『アンク』である。

 彼は『仮面ライダーオーズ』であり、かつてグリードと戦った戦士だ。

 その戦いの時に失った相棒を蘇らせるために映司は、『鴻上ファウンデーション』の研究を手伝いながら世界各国を回っているのだ。

 

 

「うーん、特にヒントはなかったか……」

 

 

 遺跡を軽く調べ終わったが、特に利益になるような情報は無かった。

 いつもこれの繰り返しだ。

 だが、彼の心に焦りは無かった。

 かつて、ある戦いの時に『未来からやって来た』アンクに会った事がある。

 

 つまり、今のまま努力を重ねれば『いつかの未来』でアンクに会えるであろう事を意味していた。

 ならば、今自分がやる事は焦るよりも、確実にアンクを蘇らせる方法を見つける事。

 何処かには必ずその方法があり、だから未来にアンクは存在しているのだから。

 

 映司は1つの缶を取り出した。

 缶ジュースのようなもののプルトップを開けると、その缶は途端に変形しだした。

 そしてそれは、バッタのような形になる。

 

 これは『カンドロイド』。

 バッタの他にも幾つか種類があり、それぞれ色んな機能を備えた鴻上ファウンデーションの発明だ。

 この『バッタカン』は通信の機能がある。

 

 

「鴻上さん、この遺跡も特に有益なものはありませんでした」

 

 

 自分の上司とも言える人物である『鴻上 光生』に連絡を取る。

 すると、すぐに応答があった。

 

 

「そうかね、それは残念だよ……」

 

 

 通信越しだというのにかなり大袈裟な落ち込み方をしているのが分かる言い方だった。通信越しの声だけでそこまで感情が分かるとは大したものである。

 鴻上という人物はそういう人間だ。

 感情を表す時、いちいち大袈裟な、ちょっと変わった人。

 

 

「だがしかしッ! 終わったわけではないよ?

 メダルに関しての情報はまだまだ存在するだろうからねッ!!」

 

 今度は突然、やたらハイテンションな声だった。

 映司がグリードと戦っていた頃、様々な面でサポートをしてくれていたの鴻上だ。

 ただし、彼は自分の『欲望』に非常に忠実な人間であり、時として厄介な事をしでかす時もあったのだが。

 

 とにもかくにも、そういうわけで鴻上のこういうテンションには映司は慣れているので平然と、普通に応対をした。

 

 

「ええ、必ず見つけますよ。俺の目的の為にも」

 

 

 その言葉を聞いて、より一層声の大きさとテンションが増す鴻上。

 

 

「素晴らしいッ!! その欲望こそ、君の活動の原動力だね」

 

 

 彼は自分の欲望に忠実であると同時に、欲望に忠実な人間が好きなのだ。

 欲望そのものを愛している人間と言っていいかもしれない。

 

 鴻上はテンションを一旦落ち着け、とは言っても常人のそれよりやや人を食ったような言い方ではあったが、映司に別の話題を振った。

 

 

「ところで火野君。実は、後藤君がバースに復帰したのだよ」

 

「後藤さんがですか? 何で急に」

 

 

 後藤は確かに仮面ライダーバースとして戦っていた。

 だが、バースシステム自体は鴻上ファウンデーションの物。

 戦いが終わった後は、自らの夢である『世界の平和を守る』を実行する為に警視庁の刑事として頑張っているはずだ。

 一度だけ復帰した事もあったが、それも一時的なもの。

 その時にバースへの変身に使う『バースドライバー』も返却したのを映司も知っていた。

 

 

「それがね、怪人やノイズの出現が日本で多発しているんだよ。

 ……此処だけの話、世界各国の仮面ライダー達が戦っている現場も以前より多く目撃されるようになっている」

 

 

 沈黙する映司。

 その沈黙を受け取った鴻上は、通信の向こうでニヤリと笑った。

 

 

「火野君、君は今、帰国する事を考えたね?」

 

 

 映司は「お見通しですか」と苦笑した。

 本当に、鴻上という男は欲望に目ざとい。

 今、映司は「人を助けたい」と思った。

 それもまた1つの欲望である。

 

 

「素晴らしいッ!! そうやって欲望を表に出す事は大切な事だ」

 

 

 そんな鴻上に映司は1つ、質問をした。

 

 

「あの、怪人やノイズが現れてるのって日本だけなんですか?」

 

 

 この問いにはある疑問があった。

 日本は確かに、どういうわけか怪人が現れやすい場所だった。

 

 それには理由がある。

 怪人にも種族や属する組織があるのだが、それが大体日本に存在している。

 となれば、自ずと怪人達はその周辺に多くなるのは道理。

 だが、他の国々で怪人が確認される事も一定数あるのだ。

 

 

「フム、いい質問だ。実はヨーロッパでも、度々怪人が確認されている」

 

 

 その言葉を聞いて映司は即座に言った。

 

 

「じゃあ、それの調査を少ししてもいいですか?」

 

 

 鴻上はその言葉に、先程までのテンションとは違う冷静な声で話す。

 

 

「確かに怪人に暴れられて人が減れば、欲望もそれだけ減ってしまう。それは私としても避けたい」

 

 

 鴻上という人物はとことん欲望中心だ。

 だが、その根底には『欲望によって世界を救う』という彼独自の理念から来るものである。

 それも自分が世界を支配するという考えはなく、単に人類の未来のために。

 そんな鴻上だからこそ、映司と敵対する事も無かったのだろう。

 

 

「最近はインターポールも動いているらしいからね、まずはフランスに行くといい」

 

 

 インターポールとは、簡潔に言えば国際的な警察の事で、本部はフランスにある。

 勿論、基本は人間の相手をするのだが、怪人を追っている事も少なくない。

 ただインターポールの人間に会ってもまさか「自分は仮面ライダーです」と名乗るわけにもいかない。

 だが、情報は多く集まる可能性がある。

 一言鴻上にお礼を言った後、通信を切った。

 そして、おもむろに自分のズボンのポケットに手を突っ込んだ。

 

 

 ──────アンク、ちょっとごめんな、寄り道してくよ。

 

 

 ポケットの中の2つに割れた赤いメダルに心の中で詫びた後、映司は遺跡をあとにした。

 

 

 

 

 

 一方その頃、時空管理局。

 時空管理局とは大まかに言うと、あらゆる世界のあらゆる問題を解決する警察のような組織。

 魔法関係、とりわけ危険物である『ロストロギア』に関しては特に厳しく扱う。

 魔法が存在しない世界は時空管理局にとって『管理外』だ。

 しかし、そんな世界で魔法を悪用するものがいないかを確認するのも時空管理局の務めである。

 

 さて、14歳ながら重要な役職である執務官となっている『クロノ・ハラオウン』は休憩室で座りながら書類を睨み付けていた。

 机を挟んで座っている『フェイト・テスタロッサ』がそんなクロノを心配そうに見つめる。

 

 

「クロノ、どうしたの?」

 

「ん? ああ、いや、少しな」

 

「もしかして、裁判関係で……?」

 

 

 フェイトの言う『裁判』とはフェイトとその遣い魔、狼の耳と尻尾がついている女性、『アルフ』の裁判だ。

 彼女達は1ヶ月ほど前にある『事件』を起こした。

 首謀者であるフェイトの母親、『プレシア・テスタロッサ』。

 彼女は恐るべき力を持つ『ロストロギア』、『ジュエルシード』で引き起こした次元震の虚数空間に巻き込まれ既に行方不明────事実上の『死亡』扱いである。

 そしてこの事件は、なのはが魔法少女になるきっかけともなった事件である。

 

 フェイトやアルフはプレシアに利用されていただけとはいえ、罪を犯したのは事実。

 故にこうしてなのはとそう変わらない年齢ながらも裁判にかけられている。

 そしてそれの弁護側にクロノは回っている。

 裁判は何度かに分けて行われ、今の所無罪に向けて順調だ。

 そしてそれは今も変わっていない。

 

 クロノが見ていた資料は裁判とは関係のないものだった。

 フェイトの言葉を否定し、クロノは口を開く。

 

 

「実は、海鳴市でなのは以外の魔力反応が検知された」

 

 

 クロノの言葉はフェイトとアルフを驚かせた。

 かつてフェイトとアルフはなのは、そして時空管理局と戦いを繰り広げた。

 だがそれ以来、海鳴市にはなのは以外の魔法使いはいないはずだ。

 

 

「アタシ達みたいに誰か地球に来たってのかい?」

 

「いや、そんな形跡はない」

 

 

 アルフの質問にクロノはすぐに答えた。

 だがその答えは余計に疑問を生んだ。

 何故なら地球には魔法文明は『存在しない』。

 少なくともフェイトとアルフはそうだと聞かされている。

 

 

「どうして? 地球に魔法は無いんでしょ?」

 

 

 フェイトのそれは正しい質問で、正しい認識だ。

 時空管理局の大部分もそういう風に認識している。

 だが今のクロノは、その認識に若干の語弊がある事も知っていた。

 正確に言えば、クロノ自身も今知ったというべきだが。

 

 

「どうやら地球には、魔法文明が『あった』らしい」

 

 

 そう、実は地球にはかつて魔法が栄えた時期があった。

 それが衰退し、完全に途絶えた為に今は『魔法文明が無い』という事になっている。

 しかしどういうわけか、当時の地球の魔法に関しての資料が殆ど無いのだ。

 何千年前の魔法資料でもある筈の時空管理局にすら。

 だから地球をただの管理外世界と思っている人間が時空管理局の大部分。

 それどころか、地球に行った事のあるクロノですら先程まではそうであった。

 今、手に持っている資料を見るまでは。

 

 

「時空管理局にはありとあらゆる、滅びたものも含めた魔法文明の記録が残されている。

 でも、地球の魔法文明に関しての資料は極端に少ない。何せ纏めてもこれぐらいだからな……」

 

 

 手に持っている資料をヒラヒラとフェイトとアルフに見せる。

 紙はA4の紙が5枚程度。

 勿論1枚1枚ビッシリと書かれているが、魔法に関しては他の追随を許さない筈の時空管理局の資料にしては明らかに少なすぎた。

 

 今回は前回の『プレシア・テスタロッサ事件』と関わりの深い海鳴市で魔力反応が確認されたという事で、クロノは情報が何かないか探した。

『無限書庫』と呼ばれる膨大な資料の中を探してもらうように友人に頼みもした。

 だがその結果見つかったのが、たった5枚の紙に纏まってしまうような資料。

 この情報の少なさにはさすがのクロノも首を捻った。

 どういう事だ、と。

 

 

「海鳴市以外でも、魔力反応が確認される事は時々あったんだ。

 それも確認した事のないタイプが複数……」

 

 

 資料を再び睨みながら、地球にいるなのはの事を考えながら、クロノは呟いた。

 

 

「また何か起こる前兆じゃなきゃいいが……」

 

 

 その予感が既に当たっている事を、クロノはまだ知らない。




────次回予告────
「ひかりがルミナスになった時も驚いたけど、魔法使いさんと魔法少女だもんねぇ」
「そうね。でもなぎさ、私達だけじゃないみたいよ。そういう出会いをしているの」
「どこもかしこも出会いと戦いって……ありえなーい!!」

「「スーパーヒーロー作戦CS、『摩擦と溝』!」」

「でもほのか、何だか険悪ムードみたいだよ……?」
「私達だって最初はそうだったじゃない。きっと大丈夫よ」

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