気分転換の短編集   作:ふぁっと

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幼女と漢たち・れいさな編

 

 

 

 

幼女の声が聞こえた

 

ならば、赴くしかあるまい

 

 

例え、そこがどんな場所であれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 博麗神社―――

 

 ある日、そこから悲鳴があがった―――

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 

 人里離れた場所故に、朝早くの悲鳴にも関わらず周囲に影響はなかったのは幸いと言うべきか………否か。

 

「な、な、な………」

 

 悲鳴は神社の奥から聞こえてきた。そこにいたのは赤と白の巫女服に包む女性―――ではなく、

 

「なによこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 赤と白の巫女服に包まれた黒髪の少女もとい、幼女からであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――昔の服を取っておいて良かったわ」

 

 少女の名は“博麗霊夢”―――本来ならばこのような幼い少女ではなく、大人の女性であった。それなのに、何故か今日の朝目覚めれば体は縮んでいた。数年前に見送ったはずの、幼い自分に戻っていたのである。

 

「はぁ………お茶を入れるのも一苦労だわ」

 

 いくら珍事に溢れる幻想郷とはいえ、こういった不可思議な現象が起こせるの人物は数少ない。その上で自分の知り合いたちを思い浮かべていけば、真っ先に思い浮かぶ姿があった。

 

「どうせ、紫の仕業よね………いったい、何がしたいのかしら」

 

 お茶を飲みながらぶつぶつと文句を吐く。紫―――“八雲紫”と呼ばれる妖怪の賢者であり、非常識の塊でもある存在だ。お茶を入れるまでは誰もいないにも関わらず、紫の名を周囲に怒鳴り散らしていたのだ。その姿を思い出したのか、少々霊夢の顔は赤かった。

 

「………さ~ん」

「ん?」

 

 ついに元凶が現れたか、と期待に空を見上げればそこに浮かんでいたのは緑の物体。じっと目を凝らせば、それは霊夢の求めていた人物ではなかった。

 

「れいむさ~ん」

 

 ふらふらと普段とは違って危なっかしい飛び方で空を飛んでいるもう1人の巫女であった。

 

「早苗?」

 

 緑の長髪の青と白の巫女服に身を包んだ女性―――ではなく、霊夢と同じく幼くなった少女がそこにいた。彼女の名は“東風谷早苗”―――妖怪の山と呼ばれる場所にある守矢神社の巫女である。

 

「霊夢さーん! わた、私の! 私のぉぉ!!」

「ちょっと、落ち着きなさいよ!」

「ずびー!」

「ちょっ! 鼻水が! 泣かないの!」

 

 

 

 

 

―― 少々お待ちください ――

 

 

 

 

 

「―――で、落ち着いた?」

「はい………なんとか」

 

 早苗の涙やら鼻水やらで汚れた巫女服は脱いで着替えた霊夢と、その霊夢にお茶を貰ってなんとか落ち着いた早苗が縁側で一息ついていた。

 

「で、どうしたのよ?」

「どうしたも何も、朝起きたらこれですよ!」

「奇遇ね。私もそうよ」

 

 どうよっと自分の姿を相手に見せる。霊夢も早苗も元は大人の女性のはずなのだ。

 

「………なんで、霊夢さんも少女に?」

「それが分かったら苦労しないわよ」

 

 当初は紫が原因だと思っていたが、早苗まで起こったとなれば紫が犯人だとは霊夢も思いにくかった。あくまでも、ちょっとだけ黒から白に移動しただけであるが。

 

「そういえば、なんでうちに来たの?」

「それが………」

 

 朝になってこの姿を見て慌てていた早苗。何も考えずに諏訪子や神奈子たち2柱の神たちに助けを求めたところ、

 

「この姿で布教活動すれば………」

「………信者が集まる?」

 

 という話を早苗のいないところでやっていて、それを聞いてしまった。

 

「―――というわけでして」

「逃げてきたわけね」

「………はい」

 

 そこで気付いたのだが、どうも幼くなると同時に力の方も弱くなっているようである。

 

「あー」

 

 そういえば、と霊夢の早苗の言葉に頷いた。

 1人で怒鳴り散らしていた時に力も全力でぶつけていた。にも関わらず、周囲にはそれらしい被害はない。それだけ、霊夢の力が弱くなっている、ということだ。

 

「霊夢さん。これからどうするんですか?」

「とりあえずは待ちね。慌てたところで何かが変わる訳でもないし……………ん?」

 

 霊夢が再び虚空を見る。また幼くなった少女が来たのかと思ったが、

 

 

 

「………………………………ぉ~」

 

 

 

「どうしました?」

「何か聞こえない?」

 

 霊夢の耳に聞こえてきた誰かの声。早苗も同じく耳を傾けるが、聞こえてこない。

 

 

 

「……………………よぉ~」

 

 

 

「あ、私にも聞こえてきました」

「―――近づいてきてるわね」

 

 霊夢と早苗、2人にも聞こえるように声の主はだんだんと近づいてきていた。それは鳥居の向こうから―――正面側から聞こえてきた。

 2人は縁側から立つと、正面へと回った。何が来るかは分からないが、いつでも立ち向かえるようにと臨戦態勢である。

 

 

「……………よぉぉぉぉぉぉぉ」

「……………じょぉぉぉぉぉぉ」

 

 

 心なしか鳥居の向こうに砂煙が見え始めた。物凄いスピードを出しているようである。

 

「霊夢さん。私、なんだか嫌な予感がしてきました」

「早苗」

 

 ぽんっと早苗の肩を叩く霊夢。清々しい笑みを浮かべて早苗を見る。

 

「私もよ。物凄く、ここから離れたいわ」

 

 しかし、そうしている間に声の主はやってきてしまった。

 

「よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

「よぉぉぉぉぉぉぉぉぉじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉじょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 駆け足で階段を登りつめ、勢い余って空にまで跳んでしまった声の主―――その集団が、ついに姿を現した。

 

「幼女! 幼女! 幼女!?」

「幼女! 幼女! 幼女!」

「幼女!? 幼女! 幼女!! 幼女―!」

「「「よぉぉぉぉぉぉぉじょぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」

 

 彼らは少し前に殲滅したはずの集団であった。

 頭には“罪”と書かれた服を被り、それ以外は何も纏わないという男たちの集団。唯一、紳士の礼儀だとでも言うべきか、股間部分には草花がついていたが、十分に変態であった。

 

「に、逃げるわよ!」

「はい! って、うわぁ!? 囲まれた!?」

 

 いつの間にか、霊夢たちを囲むように変態たちの集団―――罪袋が展開していた。

 

「幼女―! 幼女―! 幼女―!」

 

 そのうちの1人の罪袋が息を荒くして霊夢たち2人に飛び掛かった。

 

「くっ!」

 

 咄嗟に霊夢が動いた。本能に従い、全力で反撃を行おうとした。が、

 

―――ぱすんっ

 

「え? 失敗!?」

 

 幼くなったことが原因で力の放出が上手くできなかったことが響いた。霊夢の反撃が失敗したのである。

 

「むっ。いかん、幼女の魅了魔法にかかったぞ!」

「エスナ(物理)!」

「おぷばっ!?」

 

 霊夢たちに触れる前に、他の罪袋たちが殴り飛ばすことでなんとか危機は去った。

 

「はっ! 俺は一体!?」

「危ないところだったな。お前は幼女の魅了魔法にかかっていたぞ」

「あぶねぇ………」

「さすが幼女! つおいよ幼女!」

 

 なんとか危機は去ったが、依然罪袋たちには囲まれたままであった。

 

「くっ………」

「あなたたち! 一体何の用ですか!?」

 

 早苗が意思を振り絞って強気に彼らに問うた。

 

「ふっ。愚問だな」

「用だと? そんなもの決まっている………」

 

 罪袋たちの空気が変わった。霊夢たちもお互いに体を寄せ合い、罪袋たちの動きを伺う。

 

「幼女あるところに我らあり!」

「幼女のところに来たのならば我らがするのは1つだけ!」

 

 周囲の罪袋たち全員が一斉に頭を下げて土下座した。

 

「幼女を見にきたのだーーー!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」

「そして、祭り上げるのだーーーー!!」

「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」

 

 そのまま手を上に上げて下に降ろす、を繰り返した。まるで邪教の集団である。

 

(いや、あながち間違ってないかも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからというものの、罪袋たちは霊夢たちを遠巻きに見つめるだけで、特にこれといってはなかった。ある程度の距離には近寄りもせず、何も行わないで見る、だけ。

 

「ホントに見にきただけ?」

「なんですかねぇ」

 

 こそこそと霊夢と早苗は話し合う。時々数人の罪袋たちが草むらの向こうに消えたと思えば、少し経って出てきたりと。だが、霊夢たちを囲む人数に変動はなかった。

 最初こそ飛んで逃げようと思っていた2人。だが、今の彼女たちは力が弱くなっているのだ。普段みたいに高く飛ぶことはできない。

 となると、

 

「見られる、わよね?」

「ですね」

 

 低空しか飛べないとなると、下から覗かれた場合はバッチシとなる。

 

「私の場合ですけど、あまり長く飛ぶことはできませんでした」

「となると、低空かつ短時間の飛行となるのね」

 

 霊夢は今日はまだ飛んでいないから分からないが、早苗が飛んでいたところを見ると、かなり危なっかしい飛び方だった。それに速度も乏しいもの。もしかしたら、自分も同じかもしれない。

 

「―――この状態で空飛んで逃げられると思う?」

「下からバッチシ見られた後、簡単に包囲をされると思います」

 

 である。

 

「誰かが来るのを待ちましょうか」

 

 

 

―― 幼女待機中 ――

 

 

 

「うはwww幼女が俺のこと見てるwww」

「バカ、俺だよ! 俺のことに決まってるだろ!」

 

 

 

―― 幼女待機中 ――

 

 

 

「うっ、ふぅ………ちょっといってくるわ」

「幼女! 幼女! つるぺた幼女!」

「ちっぱい! ちっぱい!」

 

 

 

―― 幼女待機中 ――

 

 

 

「皆のものー! 我らの幼女たちに信仰をー!」

「「「幼女ぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」

 

 

 

―― 幼女待機中 ――

 

 

 

「巫女+幼女って素晴らしいと思わないか?」

「あぁ、見てみろよ。神々しいじゃないか」

「うっ、ふぅ………ダメだ。もう限界だ」

「俺もだ………あの2人の幼女は強すぎる!」

「あぁ、正に幼女の中の幼女だな。この素晴らしき幼女に、乾杯」

 

 

「うっがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

 

 いつも誰かしら来るというのに、今日に限っては友人の魔法使いも居候の鬼も元凶と思われる妖怪もやってこなかった。

 

「なんで誰もこないのよ!? 今日に限って誰もこないのよ!?」

「れ、霊夢さん! 落ち着いて! 冷静になってください!」

「あんたたちも! 邪魔なのよ!!」

 

 スペカを1枚引き抜いて、発動。しかし、力が抜ける音と共に煙が出るだけで不発に終わった。当然、相手にぶつかったとしても効果はない。

 

「幼女のかほりが! 幼女のかほりが俺を包むぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

 効果はないはずだが、煙がぶつかった罪袋の一部は痙攣しだしてのた打ち回った。と思ったら、草むらの向こうへと消えていった。

 

「ぬぐぐっ、あの位置にいれば俺にも………」

「くっ! 幼女の正面に回れば………おい、そこどけよ!」

「バカ! ここは特等席だ! 誰が譲るか!」

 

「霊夢さん………」

 

 沈黙を続ける霊夢に隣から早苗が声をかける。何をしたところで、例え攻撃が出来たとしても通じる相手ではないのだ。むしろ、それを喜びに変える変態なのである。

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉゆかりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

 

 

 ついにキレた霊夢が虚空に向かって助けを呼んだ。

 

「あらあら」

 

 朝にあれだけ叫んでも何の応答もしなかったというのに、ここに至ってようやく霊夢が求めていた声が聞こえた。

 

「ふふふ、はぁい♪ ずいぶんと可愛らしくなったのね。昔を思い出すわ」

「ゆかりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

 空中に浮かんだ亀裂に腰かけるように現れたのは、フリルの付いた白いドレスを纏う美女。紫の日傘を差してにっこりと霊夢に微笑んだ。

 彼女の名は“八雲紫”―――幻想郷の創設者にして妖怪の賢者と謳われる者である。

 

「誰かさんが泣き叫んでるかと思えば「泣いてないわよ!」………あなたたち、まだ残ってたのね?」

「ふむ………幼女力、たったの5か。BBAめ」

 

 その時、早苗は空気が凍るのを確かに感じた。

 

「……………」

「BBAよ。我らは幼女をこの目で見、感じ、愛することを最上としている」

「BBAはお断り」

「ご退場を願いまする」

 

 その時、霊夢は何かがキレる音を聞いた。

 

「ふ、ふふふ………いいわ。前回みたいに生きて返そうとは思わないことですわ」

「ふっ。前回は不意を付いた攻撃に敗北を刻んだ。が、我らはBBAに」

 

 紫がスッと指をすべらすと、1人の罪袋が足下に出来たスキマによって言葉を残して異界へと送られた。

 

「「「ど、同士―――――っ!!」」」

 

 

 

 

 

 

「むっ。ここはいったい………」

「ここは、僕の世界さ」

 

 辺り一面何も無い世界にいた罪袋。今立っている場所も地面ではないので、上下感覚が狂いそうになる世界。そこに横から現れた者がいた。

 

「り、霖之助さん………何故ここに?」

 

 そう。彼らに武器や情報などを提供してくれていた古道具屋の店主―――“森近霖之助”がいたのだ。

 彼の視線の先にいるのは罪袋ただ1人―――

 

 のちに彼は語る。あれは、獲物を見つけた狩人の目だった、と。

 

「……………」

「な、何だ!? 何故近寄ってくる!?」

 

 1歩。また1歩と近づく度に、霖之助の服が1枚、また1枚と脱げていく。

 

「さぁ、恐がらないで」

「や、やめろ! 俺に近づくなーーーーー!!」

 

 逃げているはずなのに罪袋と霖之助の距離は縮まる一方であった。

 

「さぁ! イこうか!」

 

 

――断罪「黒き御柱」

 

 

 そして、ついにその距離が零になった。

 

 

 

 

 

 

「アッーーーーーーーーー!!!」

 

 スキマから漏れる悲鳴が他の罪袋たちを恐怖に陥れる。顔は袋で覆われているので分からないが、皆が皆。恐怖で歪ませていることだろう。

 

「な、なんて恐ろしい真似を………」

「それはそれは………なんて残酷な最期なのでしょうか。ですが、容赦はしませんわ」

 

 パチンッと罪袋たちに終幕を告げる音がなった。彼らの足下に、無情にもスキマが現れる。

 

「幼女ーーーーー!!」

 

 スキマに落とされる寸前に飛び上がって霊夢たちに飛び掛った者たちがいた。が、スキマはどこにでも出現させることが出来る。当然、空中にも可能である。

 

「幼」

 

 飛び上がった者たちも全てが等しく飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

「おや、君たちも混ざりたいのかい?」

 

 彼の足下には1番最初に放り込まれた罪袋が力なく横たわっていた。近くに散らばっている草花が、まるで今の彼を表しているようであった。

 

「り、霖之助さん! 止めるんだ!」

「こ、こういうのは両者の合意があって………」

「ここに来た時点で合意はあるものと聞いているよ。さぁ、イこうか! 共に!」

 

 

――狂符「魅惑の漢祭」

 

 

 罪袋たちの言葉も虚しく、霖之助は非情に無情に罪袋たちに襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

「「「アッーーーーーー!!」」」

 

 スキマの世界からは罪袋たちの悲鳴が度々上がった。それは止むことなく、いつまでも続く。

 

「さ、次はどなた?」

「怯むな! 同士たちよ! BBAなど我らの敵ではアッーーー!!」

「「「同士ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」」」

「次は、あなたかしら?」

「い、いくぞ! 幼女を我らの手で守るのだ、アッーーー!!」

「まけるアッーーーー!!」

 

 もう飽きてきたのか、一斉に罪袋たちをスキマの中へと強制的に送りこむと、悲鳴が聞こえないようにスキマの入り口を全て塞いだ。

 今頃向こうの世界では見たくもない光景が広がっていることだろう。

 

「はい。これにて解決」

「………助かったわ。紫」

「ありがとうございます」

 

 でも、来てくれるならばもうちょっと早く来てもいいじゃない、と非難めいた目でみることは忘れなかった。

 

「ふふふ、これで貸しが1つですわね?」

「ぐっ」

 

 悔しいことではあるが、霊夢たちは紫に1つの貸しを作ったことになる。それが、霊夢は恐かったが仕方が無い。

 

「というか、そもそもあんたが原因じゃないの?」

「その姿のこと? 私が? 違うわよ」

「え?」

「むしろ逆に迷惑してるわ。博麗の巫女の力が弱くなってるからなのか、結界の方も不安定になったのよ?」

 

 紫がまだ寝ていた時、結界の揺らぎを感じた彼女の式が紫をたたき起こしたのである。ある程度の結界の綻びならば彼女の式が自立的に修正できるが、結界全体の揺らぎともなると彼女の式では力が足りなかったのだ。

 

「結界が………」

「今は私がなんとかしてるわよ」

 

 どうやらそちらの問題は解決したようで、原因となったのを探りにきたようである。その時にたまたま霊夢が叫び、こうして博麗神社を訪れることになった、という訳だった。

 

「あれ? じゃあ結局、私たちのこの姿はどうすれば………」

「原因は分からないけど、戻すだけならば簡単よ?」

「じゃあ、すぐに戻して!」

「え? 嫌よ」

「「え?」」

 

 霊夢はもちろん、早苗もこれでやっと元の姿に戻れると思った。が、当の紫からの返答はNOであった。

 

「せっかく可愛かった昔の姿に戻ったんですもの。私への報酬に今日はその姿よ」

「ちょっ!?」

「あ、でも貴女は戻してもいいわよ?」

 

 ポンッと紫が手を振れば、早苗は元の姿に戻った。手足も長くなり、胸も膨らみ、いつもの姿に戻った。

 

「良かった。これで諏訪子様たちを拒否でき………」

「……………」

 

 幼い少女だった早苗は体に合わせた服を着ていた。当然、幼い少女用の服だ。それが、突然体が大きくなったのだ。分かるだろうか。

 

「…………………」

 

 幼い少女の時に着ていた服では当然今の早苗の体は入らない。結果、どうなったかと言えば、

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 千切れて破れたのだ。幸いというべきか、そこにいたのは女性だけであったのは救いだろう。

 慌てて自分の胸を隠すように早苗は縮こまり、傍の霊夢に向かって涙目で何かを訴える。

 

「ほ、ほら。私の服貸してあげるから泣かないの」

「うっ、うぅっ! 霊夢さんっ!!」

「紫。早苗を私の家まで運んであげ………って、直接早苗の家まで送っt」

「あら、残念。彼女はもう神社の中よ」

 

 一歩遅かったようだ。隣にいたはずの早苗の姿はなく、博麗神社の中から霊夢を呼ぶ声が聞こえた。神社のどこに移動させられたのかは分からないが、着替えがない以上動くことはしないのだろう。

 

「どうせ頼んだってやってくれないんでしょ?」

「えぇ、その通り♪」

 

 貸しが1つある手前、強く言い出せない霊夢。まぁ早苗に服を貸せばそれでいいか、と大した問題ではないと納得した。

 それよりも、今日一日はこの姿でからかわれるのだろうと思うと、霊夢は頭が痛かった。

 

「はぁ」

 

 霊夢はため息を1つ、今日一日の我慢だと諦めて受け入れた。

 

 

 

 




霖之助の部分がやりたかった。満足した!

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