気分転換の短編集   作:ふぁっと

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幼女と漢たち・諏訪子編

 

 

 

 

 

必要なものは唯一つ

 

 

真心のみ

 

 

我らは紳士故に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここ幻想郷に新しく出来た山の上の神社―――守矢神社。

 

 そこに住む二柱の神たち。

 二人は時々だが、力比べと称して弾幕ごっこをするのが日課となりつつあった。互いに力は五分と五分。昨日勝ったからといって今日も勝つという訳ではない。

 そして今日も―――

 

 だが、

 

「くっ!」

 

 誰がどう見ても、遊びの弾幕ごっこではなく、ガチの喧嘩だった。

 最初の頃は彼女たちの他に巫女が一人いて、彼女が止める役となっていた。あいにくと今はいないが、最近はこれも二人の友情という曲解した認識をし、止めに入ることは少なくなっていた。

 

「諏訪子! いい加減にぶっ倒れな!」

 

 背中に巨大な御柱を背負う神―――“八坂 神奈子”。

 

「早苗には負けてもいいけど、神奈子には負けたくないね!」

 

 対するは小さな祟り神―――“洩矢 諏訪子”。

 二柱の神は自身たちが住まう神社の上で、激しい勝負を行っていた。止める役の巫女は少し離れた場所で神たちが織り成す喧嘩をBGMに洗濯をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――――――ん」

 

 

―――あぁ、そうか。今日は負けたのか。

 

 

 意識がゆっくりと浮上する。どうやら意識が途切れるまで行っていたようだ。

 すると、思い出すのは今朝の喧嘩の最後。横から飛んできた御柱の不意の一撃に倒れたのだ。

 

 

―――くそー、神奈子め。不意打ちとは卑怯なことを!。

 

 

 そこまで考えて、文句の一つでも言ってやろうと思った。

 一応、これでも神の一人なのだ。あれくらいの攻撃で死にはしないが、悔しいのは変わらない。言うつもりはないが、ぐちぐちと横で文句を言ってやろう。

 

 と、ここで動けないことに気付いた。

 

 

「……………へ?」

 

 

 どこかの山の中、地面にぶっ刺さった御柱。そして地面に立つように縛られている―――諏訪子の姿。

 

「ちょ! なにこれ!? 神奈子!? かーなーこー!!」

 

 大声を出すも、もう一人の神である神奈子はもちろん、巫女である早苗も現れない。それどころか、妖怪も何も現れない。

 

 代わりに―――

 

 

「お、お気づきになられたようだぞ」

「おぉ、神々しい身体じゃ」

「ありがたや、ありがたや」

「「「「ありがたや~、ありがたや~」」」」

 

 顔をすっぽりと隠した男たちが現れた。顔の部分には【罪】の一文字がかなり達筆な文字で書かれている。

 全員が全員、似たような格好で登場した。そのインパクトは推して知るべからず。

 

「な、なに!? あんたたちは! てか、下を隠しなさいよ!」

「おっと、これは失礼しました」

 

 男たちは顔を隠しているが、肝心の部分は隠していなかった。諏訪子に指摘され、そそくさと草木の向こうに姿を消す。

 

「一体何事………私、何されるの?」

 

 弾幕勝負に負けて気付いたら知らない場所。恐らく、妖怪の山のどこかだとは思うが、山のどこらへんだろうかが分からない。

 大声をあげたけれども誰も来ないことを見ると、山の反対側なのかもしれない。

 

「先ほどは失礼しました」

 

 肝心の部分をそこらの草花で隠して再び現れた罪袋を被った男たち。何故罪の一文字が書かれているのは分からないが、怪しい連中というのは拭えない事実だった。

 ちなみに、顔とアソコ以外は裸である。変態である。

 

「………あんたらは何? 人里の………人間、でいいの?」

「我々は………そうですね。罪袋とでも呼んでいただければ」

「つ、罪袋?」

 

 まんまである。

 

「ふぉおおおおおおおおおおおおおお!!」

「ケロ!?」

 

 諏訪子に話しかけてきた一人の罪袋が体を曲げて雄叫びをあげた。足はつま先立ちで、頭は地面に付くか否かのギリギリのところで保っている。よく倒れない。

 

「おぉ! 昇天してるぞ!」

「名前を呼ばれたんだ! 昇天の一つや二つ、してもおかしくはない!!」

「さすがだ、あいつは格が違った!」

 

 他の罪袋たちも歓喜の声をあげながら、その罪袋を讃えるかのように拍手喝采をする。

 

「ふぇぇぇぇん! 早苗―! 早苗―!!」

 

 じたばたともがくが縄は一向に千切れはしない。神奈子とのバトルで力を使い果たしたのと、まだ体力が回復していないのが原因である。

 あと、この縄自体にも何かしらの作用はあるようだが、今の諏訪子は気付いていなかった。

 

「いかん! 幼女が泣き出した!」

「野郎ども! 奴をリンチじゃ!」

「第三条 幼女を泣かすことを禁ず! お前は俺を怒らせた!」

 

 歓喜の声をあげていた者たちは、諏訪子が泣き出すと一変して最初に声をかけてきた罪袋を殴り倒した。

 彼らには彼らのルールがあるようだが、それを他の者が理解するのは苦しいだろう。

 

 

「わ、我が生涯に一片の悔いはなし!」

 

 

 殴られている罪袋は恨みを吐くなどはせず、満足気に今の心境を語り―――逝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっとしたドタバタがあったものの、神たる諏訪子。心を落ち着かせて、罪袋とやらに事情を聞いた。

 それまでの間に罪袋が二人ほど昇天したが、気にしないことにした。

 

「では、これを………」

 

 と差し出された手紙を諏訪子の目の前に置く。

 彼らは必要以上、諏訪子に近づくことはしない。遠方から観察するように見てくるのだ。

 それを良しとするか悪しとするかは微妙なところであるが………。

 

「う~、えーと………」

 

 手紙の差出人は神奈子だった。

 かなりの長文であるが、要約するとこうである。

 

 

 

― 信仰増やしますので、一日幼女を観察させてください ―

 

― おk、把握 ―

 

 

 

「ふざけんなー! 神奈子は!? 神奈子はどこ!!?」

「神奈子様でしたら、夕方頃にお戻りになるかと思います」

「くぅ~! 覚えておきなさいよ! 神奈子!! ぜぇったい、この借りは返してやるわ!」

 

 今頃は家の居間でお菓子でも食べてるのだろう。そう思うと無性に許せなかった。

 

「おぉ………怒りに燃える幼女―――――萌え」

 

 罪袋の言葉はすべからず無視をした。

 

 

 

 

 

 

 

「―――で、私は何をしてればいいの?」

「いえ、貴女様がここにおられればそれだけでいいのです」

 

 神を―――実際に諏訪子は神なのだが―――を崇めるように座る罪袋たち。何か違うように感じるのは気のせいだと、諏訪子は自分に言い聞かせた。

 彼らの目的は幼女を観察することである。それが自分なのがとても気に食わないが、自分の体型は自分が良く知っている。さらに、縛られて半ば吊るされている身だ。どうにも出来ない。

 少なくとも体力が回復するまでは。また、長くても夕方には終わる。

 今朝の弾幕勝負で負けた罰ゲームとでも思えばやっていられるだろう、と自分を納得させた。

 

「じゃあ、私は縛られてなくてもいいんでしょ? 解いてよ」

「それは出来ませぬ」

 

 観察がメインならば、縛られている必要性は無い。嫌なことだが、過去に行ってきたことに比べればまだ些かマシな方である。

 どれくらいの時間を気絶していたのか知らないが、一日以上ということは無い。ならば、既に時刻は昼前かそれに近い時間。夕方頃の向かえを信じるならば、残りは五時間程度。

 

 

―――耐えられる。たぶん。

 

 

「別に逃げる気はないよー?」

 

 落ち着いたところで諏訪子を縛る縄。これが体力の回復を邪魔しているということに気づいた。これが無ければ体力は早く回復するだろう。どうにかして解いて欲しいのが諏訪子の心情。

 

「いえ、我らは貴女様に触れることは出来ませんので」

「何故!?」

 

 しかし、彼らには彼らの信条があるようで出来ないという。はた迷惑な信条というか、だがそれが無ければ自分は今頃何をされていたのか分からないのも事実。

 

「あーうー」

 

 とはいえ、現状維持というのは辛い。主に視界的な意味で。

 体力が回復しないことや男たちに観察されることなどは耐えられることだが、目の前にある視界レイプの対象物が問題である。

 今にも心が崩れ落ちそうなのだ。

 

「あ、後ろの御柱になら私に触れてることにならないわ!」

「ですが、結び目は貴女様の前でございます」

「あーうー」

 

 結び目が諏訪子側にある以上、背中の御柱側から解くことは出来ない。

 相手は全身裸の男たちである。下を隠せと言って、そこらの草花で隠す野郎たちだ。縄を切る道具もないだろうし、縄を引き千切れと言って出来るほどの強靭な体とは思えない。

 

 

―――この縄も特製っぽいし。ただの人間にはやっぱ無理かなー

 

 

 用心深いというか、周到というか。

 これは早苗も仲間にして、二人で神奈子を苛め倒そう。

 となると、やはり問題なのは縄である。別に気にしないからーとでも言おうとしたが、結び目は最悪なことに胸のところにある。

 これがお腹の上とか腰とか………。

 

 

―――嫌だなぁ。

 

 

 どこにあれど、嫌なモノはやはり嫌だった。

 罪を被りながら裸で蠢く変態たちである。さっさと目の前から消えて欲しいと思うほどの男たちである。触れて欲しくないと思うのは正常だ。

 なので、諏訪子は迎えの神奈子か自身の体力が戻るのを仕方なく待つことにした。

 

「幼女! 幼女!」

 

 

―――神奈子とバトったのが朝。ってことは、今は昼近くなのは確実。

 

 

「幼女! 幼女!」

「幼女! 幼女!」

 

 

―――………夕方って言ってもどれくらいになるかは分からないし、あの神奈子が素直にくるかも怪しい。

 

 

 神奈子とはそれなりに付き合いが長い。

 今迎えに来たらどうなるかってのは分かってるはずだ。かといって見捨てはしないと思うが………今は怒りと悔しさとその他もろもろで上手く頭が動かない。

 

「幼女! 幼女!」

「幼女! 幼女!」

「幼女! 幼女!」

 

 

―――ぐ………ということは、やはり自分の力だけが…………。

 

 

「幼女! 幼女!」

「幼女幼女うるさぁい! 余計なお世話だぁ!」

「「「「「ふぉおおおおおおおおおお!!」」」」」

 

 何が楽しいのか、彼らは一斉に諏訪子の周りを叫びながら回りだしたのだ。しかも、人が気にしていることを連呼しながら。

 最初は無視をしていたのだが、飽きることなく続く謎の踊りと叫び声についに痺れが切れた。

 それを指摘したものなら、再び最初に行われた昇天のポーズだ。醜い草花が諏訪子に向けられる。

 

「うぅ、何よ!? 幼女がそんなに悪いの!? 悪いかー!!」

「いえいえ、とんでもございません」

「けろ?」

「幼女、それこそ――」

「「「「神!」」」」

「至高の――」

「「「「宝!」」」」

「正しく――」

「「「「芸術!!」」」」

 

 どこで訓練されたのか知らないが、微塵も乱れない完璧な呼吸合わせだった。一々ポージングするのがいらっとくることだが。

 

「か、神? そりゃ、私は神だけどさ………」

「えぇ、素晴らしいではないですか! そのペタンコな胸も!」

「う゛っ!」

「その小さい背も!」

「ぐっ!?」

「幼さ残る顔立ちも!」

「かふっ!?」

 

 見事な三連パンチが諏訪子を貫いた。

 

「おや? どうされましたか?」

「ふ、ふん! どうもしないわよ! えぇ、どうもね!!」

「ふむ………では皆の者! 続けるぞ!」

「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

 再び彼らは回りだした。

 今まで散々回っていたというのに、彼らは衰えることなく回りだした。何が楽しいのか分からないが、男たちは回り続ける。

 諏訪子は再び始まった地獄絵図に、自分はこれから儀式の生け贄にされるのではないかと錯覚さえしてしまう。

 忘れかけていた遥か昔に行われた生贄たちの心境を思い出した瞬間だが、出来れば別のところで理解したいことだった。

 

「うー、早苗―助けてー」

 

 

 

 

 

 

―――それからしばらく。

 

 罪袋たちの奇怪な踊りを無視しつつ、どうにかして現状を打破できないかと思案を続けていた。

 というか、思案していないと頭がおかしくなりそうだからだ。

 

「幼女! 幼女!」

 

 

―――やっぱ、この縄が邪魔だなぁ。

 

 

 特製と思われる縄には、やはり呪術的な仕組みが施されていた。これが諏訪子の体力を奪うまではいかないが、回復を遅くしていた。

 

「ねぇー、この縄って誰が持ってきたの?」

「幼女! よう……はっ、神奈子様がその縄で縛っておけ、と」

「やっぱりあいつか………」

 

 一瞬、麓の巫女や白黒の魔女などが思い浮かんだが、やはりこの縄も神奈子特製のものだった。

 ふつふつと湧き上がる怒り。早いところ回復して引き千切らないと、諏訪子は自分の精神がもたないことを自覚していた。

 引き千切るのは無理。無理ならばもう諦めて、別な方法を探す。

 

「ん………しょっ」

 

 足だけでも地面につけば、今までとは違い大幅に回復力が上がる。それらも考えられているようで、諏訪子の足は地面に付いていない。

 縄で縛られているとはいえ、人の体というものは筋肉の収縮や呼吸などで意外となんとかなるものである。また諏訪子の身は神である。その気になれば御身を透明にし、縄をすり抜けることも―――普段ならば出来るのだが、縄の所為かそれも出来ない。

 仕方無しに体をくねらせながら、ずりずりと下へと体を捩じらせることを選択した。

 

「ん………」

 

 右へ左へ、腕と腰と全身を使ってずりずりと下へと体をずらす。どうにかして、片足だけだが地面に触れた。

 それだけで力の回復速度が格段に上がるのが分かった。

 

「ふぅ……片足だけでもつけば、後は時間か…………ん?」

 

 気付けば、変態の名を冠する罪袋たちがいつの間にか踊りを止めて目の前に集まって自分を凝視していた。

 

「………なに?」

「ぐふっ!」

「お、おい!? 死ぬな! 死ぬにはまだ早いぞ!」

「だが、それも分かる………。これは、これは強すぎる!」

 

 一人は倒れ、一人は狂喜の声をあげ、また一人は動くことも忘れて凝視する。

 何かと思えば、

 

「はっ!? み、見るな!!」

「「「無理です」」」

「~~~~~~っ!!」

 

 縄で縛られている中、無理矢理体をずらしたのだ。服がめくれても仕方が無い。

 結果、諏訪子はお腹とスカートの下を少しだけ目の前の男達に見せてしまった。羞恥よりも先に、何故そんなことにも気づかなかったのかと悔しさが先に表れた。

 

「皆の者! 良く覚えておくのじゃ! 心のアルバムに保存しておくのじゃ!」

「するな!」

「答えは得た………幼女こそが、神」

「違―――くはないけど、何か違う!」

「おぉ、我等が神は寛大じゃ。このような御褒美をくれるとは………」

「やっとらん! あぁもう!!」

 

 何を言っても無駄、というのは随分前に悟っていたことだ。

 諏訪子は再び踊り出した罪袋たちから意識を外すと、体力が戻った時にどうやって裁いてやろうかと考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~………」

 

 再び迎える窮地。

 朝も昼も食べてなく、また飲み物も何も無い。さすがに腹は空腹を訴え、喉も渇いている。

 かといって、縛られている状態。自分で何かを飲んだり食べたりは無理。となると、食べさせてもらうしかないが………。

 

「……………………」

 

 目の前で踊る罪袋たちを見て、嘆息する。

 

 

 絶対に嫌だ、と。

 

 

 というよりも、そもそも食べ物はあるのだろうか。目の前の変態たちも飲まず食わずで踊っているのだ。少なくとも、諏訪子が気付いた時からは誰一人として何も口にしていない。

 というより、目の前の男たちは本当に人間かどうかが怪しくなってきた。

 

「まぁいいわ。あと少し、あと少し耐えれば………」

 

 

 後もう少し、あともうすこし。

 

 

「幼女! 幼女!」

「幼女の怒りじゃ~w」

「幼女、テラカワユスwww」

 

 

 アトスコシ………。

 

 

「幼女! 幼女!」

「ハァハァ、ょぅι゛ょとチュッチュしたいおwwwww」

「変態ばっかだな……バロスwww」

「幼女! 幼女!」

「今俺の頭の中で諏訪子様が(放送禁止用語)して(放送禁止用語)してる………ふぉ、ふぉおおおおおおおおおおおお!!」

「幼女! 幼女!」

「幼女! 幼女!」

「幼女! 幼女!」

 

 

 

 

「もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 

 

「「「「「おぉ!?」」」」」

 

 諏訪子は今ある力を集結させて、自身のスペルカードにもなってる鉄の輪を顕現させる。スペルカードルールからは外れてしまうが、もう考えないことにした。

 鉄の輪で縄を千切ると、固まってる積袋たちを静かに睨む。

 

「はぁ、はぁ………」

 

 全力を振り絞っての行使。体を動かすのも億劫で、今すぐ寝てしまいたい欲求があるが意識の力でそれらを追い出す。

 

「あんたたち………」

 

 大地の上に立ったことで回復速度は格段に上がった。もう少しすれば、再び力を奮うことも可能になるだろう。

 

「覚悟は、出来てるんでしょうね!」

 

 堪忍袋というのがあったのなら、諏訪子は今千切れる寸前であった。

 

「諏訪子様!」

「なに!? 言い訳は聞かないわよ!」

「こちらをお使いになってください」

 

 そう言って差し出されたのは、どこに持っていたのか不明な鞭と蝋燭だった。

 ふと視線を上へずらせば、別の罪袋が何か服のようなものを差し出してきた。

 

「あと、出来ればこちらにお着替えになられて欲しいです」

 

 魔法の森近くにあるとある店で売っていたという外の服だそうだ。だが、あいにくとサイズが合わなかった。

 

「この大きさは幼女神には無理ぽ☆」

「残念です」

「無念なり」

 

 

「――――――ふふ」

 

 

 そこで、ぷつんっと何かが切れた音がした。

 そう呟いたのは、どの罪袋だったのか。

 

「そう………だったら、望み通りに使ってあげるわぁぁぁ!!」

「エクスタシィィィィィィィィィ!!」

「この、変態どもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「ブラボォォォォォォォォッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後。

 

「神奈子ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「げっ!? 諏訪子!」

 

 スパンッと襖を開ければ案の定、そこには神奈子が正にお菓子を食べようとしていたところだった。

 

「あんたね! よくも私を売ってくれたね! あんな変態のところに!」

「し、仕方ないだろ? あいつらが求めてるのは幼女だったんだから! 幻想郷で一番の幼女は? でトップに出てくるのがあんたなんだし!」

「な!? そんなわけないでしょ! 幻想郷には幼女はいっぱいいるわよ! って、ちがーう!」

 

 はぁはぁと顔を沈めて息を整える。帽子によって顔が隠れているのが、更に恐怖を煽る。

 ふと、諏訪子が手に持っている物体が目に入った。

 

「す、諏訪子?」

「ふ、ふふふ。神奈子にも同じ目にあってもらうわよ」

「へ?」

「あいつらに聞いたところ、神奈子みたいな熟女が好きって奴もいるんだってね~?」

「ちょ、ちょっと待て! 私はj「シャラップ!」」

 

 神奈子の言い訳など聞かないとばかりに口を閉じさせる。

 

「私だけあんな……! あんたにも同じ目には合ってもらうわよ!」

「待て待て待て! いったい、何をされたんだ!? というか、なんだそれは!?」

 

 そして、諏訪子の手には赤く染まった鞭が握られていた。どうみても塗ったとかそういった感じの代物ではない。

 

「何もされてないわよ! 安心しなさい!! こいつは戦利品よ!!」

「何もかも安心できるかー!!」

 

 守矢の神社では、今日も神々が仲良さげに弾幕を広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日談。

 

 その後、妖怪の山ではこの一件を境に罪袋の根絶やしが決行された。

 鴉天狗により多くの少女たちが集い、彼等を撃退するのに尽力を尽くしたと言う。

 

 しかし、彼らの一人が残した言葉が彼女達は気がかりだった。

 

 

 

「そこに萌えがある限り、我らに滅びは無い」

 

 

 

Fin

 

 

 


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