ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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これでストックは消えたので、次回からはチマチマ更新になります


MAGIC7『友達、助けます!』

―――パシン!

 

 

……室内に、乾いたその音が響き渡った。

その音の源は俺であり、今、俺の頬は赤く染まっていた。

 

 

そう、俺は部長に本気の平手打ちをされた……部長の表情は、本気で怒っているようだった。

 

 

あの後、俺は一人でアーシアを助けに行こうとしたが、一日中俺を探し回っていたらしい木場に公園で発見され、そして近くに堕天使の死体があることに気付き、無理矢理に俺を部室まで連れてきた。

 

 

そして俺は部長に事の顛末を話し、アーシアを救いに行くということを伝えると、それを止められた。

それでも尚食い下がったら平手打ちを喰らった訳だ。

 

「何度言ったら分かってくれるの!?イッセー、あなたがしようとしていることはほとんど自殺行為よ!……この間に言ったはずよ、諦めなさいと…」

 

 

……部長が怒るのは分かる。

あんなに自分の眷属を大切にする部長だから・……だけどそれでも!

 

俺はアーシアのことを諦めることなんてことだけは出来ない!

アーシアの希望になるって誓ったから!

 

だから―――

 

「ごめんなさい、だけど俺はこれだけは譲るわけにはいきません」

 

俺は自分の意見を、考えを全て包み隠さずに言った。

 

「これは貴方だけの問題じゃないの!私や他の部員に被害が及ぶ可能性だってあるの!貴方の主は私よ!主として、眷属を危険に晒すことなんてできないわ!」

「……それは俺が、悪魔だから、なんですか?」

「……そうよ、悪魔になったからには、私たちのルールを守ってもらうわ」

 

部長は俺を睨みつけながらそう言ってくる。

……悪魔だから?だったら簡単だ。

 

「確かに皆に迷惑をかけたくありません……でも、俺をはぐれにしたら、迷惑は掛からない筈です」

「「「「ッ!!?」」」」

 

その場にいる全ての人が、俺の発言に目を見開いて驚いた。

そりゃそうだよな、自分からはぐれにしてくれなんて先ず言わないもんな。

 

「はぐれはどの勢力からも殺されるべき対象でしょう?…だったら、俺がはぐれになってアーシアを救えば誰の迷惑にもかかりません」

「ふざけないで!あなたは私の大切な眷属で下僕よ!イッセー、どうして分かってくれないの!?」

 

部長だって、譲れない部分があるはずだ。

 

眷属を守り、愛し、一緒に戦う……それが部長のだから。

 

確かにそれはすばらしいことだって分かる……状況が状況なら、俺だって部長のために一緒になって必死についていく。

 

 

でも……俺にだって譲れないものがある。

 

 

「アーシア・アルジェントは俺の友達です。だから部長……俺は友達を見捨てません。何があっても!」

 

 

俺はこれだけは絶対に、たとえ神様でも、魔王様でも譲るつもりはない!

俺はアーシアに友達だって豪語したからな……助けに行かなくて、友達を語れるかよ!

 

「イッセー、貴方は素晴らしい性質を持っている……だからこそ、貴方を失いたくないの!」

 

部長はいつになく悲しそうな目をする。

 

それは部長だけじゃない。

 

小猫ちゃんも不安そうな表情をしているし、木場だって心配そうな顔で俺を見ているし、朱乃さんも今日に至ってはいつものニコニコ顔じゃなくて真剣そのものだ。

 

 

……本当に、悪魔と思えないような良い人たちだよ。

だけど、俺は悪魔で、部長の眷属である以前に――――!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、赤龍帝で、魔法使いだ!!俺は絶望しかけてる人がいるなら、手を差し伸べる!それが誰であっても!!ましてや友達なら当然助けなきゃならない!!!これは理屈じゃない!俺が俺である為なんです!!!!だから………ごめんなさい!!」

《バインド・プリーズ》

「「「「ッ!?」」」」

 

俺は魔法で鎖を呼び出すと、部長達を縛る!

 

「ぐっ……イッセー!!」

 

窓から飛び出そうとする俺に、部長が声を掛けてきた。

 

「このままじゃ、手遅れになります。奴等は儀式がどうとか言ってました…奴等が希望を奪おうとする前に、止めなきゃならないんです!!」

 

部長が何かを言う前に、俺は飛び降りた!

 

 

「ドライグ!奴等の居場所は!?」

『あの寂れた教会だ。それにしても相棒、良くぞ言ったな。それでこそ、俺の知る兵藤一誠だ』

「へっ!」

《コネクト・プリーズ》

 

コネクトでバイクを呼び出すと、俺はあの教会まで向かった!

 

 

 

 

待ってろよ、アーシア!!

 

 

 

イッセーside out

 

 

 

木場side

 

外から聞こえてたバイクのエンジン音が遠ざかると同時に、僕達を縛っていた鎖も消えた。

どうやらイッセー君が遠ざかると自然に魔法も消えるみたいだね。

 

「イッセー…ッ!」

 

部長は窓からイッセー君を心配していた。

すると、朱乃さんが部長に近づき、何かを囁いた。

すると部長は、

 

 

「私と朱乃は大事な用事が出来たから、今から席を外すわ」

 

朱乃さんを伴って何処かに行こうとした。

だけど扉を開ける前に、

 

「祐斗、小猫。イッセーを宜しく頼むわ。それと―――――って、イッセーに伝えて頂戴」

「っ!部長」

「……頼んだわ」

 

それだけ言うと、部長は今度こそ部室を後にした。

………さてと、じゃあ行こうか?

 

「小猫ちゃん、準備は良い?」

「はい………後、先輩は少し殴ります」

 

………戻ったら大変だよ、イッセー君。

 

木場side out

 

 

 

 

リアスside

 

「それで部長…イッセー君を行かせても良かったのですか?」

 

私……リアス・グレモリーは、『女王』である朱乃を連れて、ある森に来ていた。

 

「結果オーライと言えば良いかしらね。これだとイッセーの本当の力を見ることができるからね」

「……変異の駒を4つも消費しましたからね」

 

 

朱乃の言うとおり、イッセーを悪魔にする時に信じられないような現象が目の前で起きた。

 

イッセーを転生させる際に変異の駒になった私の『兵士』の駒の4つ、更に残りの兵士の駒を全てつぎ込んで、漸くイッセーは悪魔になった。

 

単純計算で兵士30個分の価値。

彼の中に、一体なにがあるのか私は気になった。

 

「それと、単純に堕天使達を許せないと言うのがあるしね」

 

そうこうしていると、木々の上から黒い羽のようなものが落ちてくる。

私はそれが堕天使のものであるとすぐに気がついた。

 

「あらあら、うふふ・・・思ったより早い到着ですこと・・・」

「・・・貴様らか、ドーナシークを殺した悪魔の仲間は!」

 

良く見ると、そこには二人の堕天使がいた。

どちらとも性別は女。

 

「ええ、私の下僕が貴方達の仲間を切り裂いたらしいわね……でも彼は振りかかる火の粉を払ったまでよ?」

「黙れ!悪魔風情か!!どうせその下僕もドーナシークの油断をついたに決まってる!!」

「そうそう!えっ~と兵藤一誠だっけ?あんなチャラ男にドーナシークさんが普通に負けるわけないじゃん?見かけ倒しで、守る守る行って結局守れないし弱いし?挙句ただ自己満足に浸ってるだけの偽善者だもん!きゃははは!!!」

 

 

 

……この堕天使、今、なんて言ったのかしら

私の耳が正しければ、イッセーが見かけ倒し?チャラ男?弱い?……………偽善者?

 

その言葉が頭に広がった瞬間、私の怒りは頂点に達した。

 

「とにかく貴様らは死ね!悪魔が!!」

「そうよ!あたしとカラワーナの光の槍で死んじゃいな!!」

 

堕天使が、私と朱乃に光の槍を幾重にも打ち込んでくる。

 

 

 

 

そんな脆弱な力で、私を殺そうというのかしら?

 

「……あらあら、うふふ。怒らせる相手を間違ったようですわね」

 

朱乃が一歩、私から離れる……ええ、良く分かってるわね、朱乃。

 

「お前達が私の可愛い下僕を語るな」

 

……堕天使の光の槍が、私の魔力で完全に消滅した。

 

「な!?」

「う、うそ!!?」

 

 

 

堕天使の表情は青ざめていて、そして私は堕天使に

 

 

「……私の可愛いイッセーを馬鹿にしたわね。その報い、万死に値する……消し飛べ」

 

 

自分が持てる全ての魔力を放出した!

 

 

リアスside out

 

 

 

イッセーside

 

「ライダァーブレェイク!!!!」

 

教会に辿り着いた俺はバイクに乗ったまま、教会の門をぶち破った!

 

『Boost!』

『何年か前の仮面ライダーがやってたな、それ』

「おぉ!憎き愛しのォ!!イッセー君じゃぁ~ありませんk」

「邪魔だぁ!!」

「あじゃぱーーー!!!」

 

突然出てきやがった白髪の男―――多分フリードがなんか言ってたけど気にしてる暇なく跳ね飛ばした!!

直後、フリードは瓦礫の中に消えてった。

 

『流石相棒。その強引さ、嫌いじゃないわ!』

「ありがとよっ!!」

 

ドライグのキモい声援に多少戦慄しながらも、バイクを走らせて教会にあった階段を下っていく!

なんか森の方から雷やら爆発音が聞こえたぞ!?

 

『恐らくリアス・グレモリー達だな』

「部長達が!?何で……って!」

 

突如前方から飛ばされた光刃にバイクが倒される!

いってぇな、オイ!

 

「悪魔祓い……随分お出ましだな」

 

見ると、地下への入り口を大人数の悪魔祓いが塞いでいた!

上等だ……!

俺は赤龍帝の篭手を展開して殴りかかろうとすると、

 

 

 

「やらせないっ!」

「……えいっ!」

 

突如として疾風の如く、悪魔祓いが薙ぎ払われた!

何だ?って今の声は………

 

「木場、小猫ちゃん……!?」

 

何で二人がここに!?

そう思って口を開こうとすると、

 

「話は後だ、イッセー君。それより聞いてくれ。部長からの伝言だ」

「は?」

「部長は敵地において昇格条件に出した……つまり部長は悪魔のとっての敵陣―――つまり協会を敵地と認めた」

 

敵地と認めて、尚且つ昇格の許可を出した。

じゃあつまり……

 

「暴れてもOK、と言う意味です……」

 

小猫ちゃんがサムズアップで簡単に言ってくれた!

 

「じゃあ、それを伝える為に態々……?」

「当然だよ。それに、君には縛られたけど、僕等の仲間だからね」

「腹パン一発で勘弁してあげます……」

 

あの怪力で腹パン!?

俺死ぬって!どっかのホモ怪盗はライダーにされても異能生存体だから生きてたけど、俺血反吐吐くの確定だよ!!

 

「プレーンシュガーで、勘弁してくんない?」

「それで許してあげます……」

 

よっし!交渉成立!!

 

「……それより、速く行った方が良いんじゃない?」

 

と、密かに喜ぶ俺に木場が声を掛けてきた!

そうだった!だけど悪魔祓いや神父が……!

 

「イッセー君、ここは僕等に任せて」

「あのシスターさんを、助けてあげてください……魔法使いさん」

 

それ死亡フラグ、なんて茶化す暇はないな。

 

「頼むぜ……」

 

それだけ呟くと、俺は再びバイクで扉に向かってダイブした!

悪魔祓いや神父は―――

 

「イッセー君にはっ!」

「一歩も近づけません………っ!」

 

俺の頼れる仲間が受けてくれるからなっ!

 

 

 

 

木場や小猫ちゃんの思いを胸に、俺は教会の地下に辿り着いた!!

 

 

 

そして――見つけた!!

 

 

祭壇の上で、キリストのように十字架に体を磔にされているアーシアを!

そして、その傍にいる………堕天使、レイナーレをッ!!

 

 

 

「アーシアぁ!!」

 

俺は力の限りアーシアに向かって叫んだ!

すると、目の前に神父達が立ち塞がった!

 

「はっ、随分な歓迎だな」

 

だけど儀式……アーシアを拘束…、何でアーシアを拘束する必要がある?

そもそも何の儀式だ?

ここに来るまでにずっと疑問に感じていたことだ。

 

 

 

アーシアの力は、回復―――種族を問わない程の力………ッ!!

 

 

そこまで辿り着いた俺は、猛烈に嫌な予感がした。

そうか、アイツは、レイナーレの本当の目的は!!

 

と、後ろの扉から木場と小猫ちゃんがやって来た!

 

「イッセー君、これは…」

「木場、小猫ちゃん!神父の相手を頼むっ!!」

「先輩っ!?」

「イッセー君っ!?」

 

神父達を任せて、俺はレイナーレに向かって駆け出した!!

 

『Boost!』

 

何度目かも覚えてない倍増を行う!

確かに制限が掛かってるけど関係ない!!

 

 

俺は祭壇を登る階段の途中でもう一度アーシアの名を叫んだ!!

 

「アーシアぁぁ!!!」

「……イッセー、さん?」

 

…さっきまで目を瞑っていたアーシアが俺の存在に気付く。

 

「・・・ほんっと!ヒトをいらつかせるのが得意なガキね!!」

 

だけど、俺の前にあの堕天使が舞い降りた。

 

両手に光の槍、そして俺を囲む多くの神父。

 

「あともう少し何だから、邪魔しないでもらうわ!」

「……後もう少し?だったら尚更邪魔してやる!アーシアは返してもらうぜ!!」

 

堕天使レイナーレを含む神父共は俺に向かって光の剣やら槍を振るって来るが、俺はそれを全て避けつつ、拳でいなしながら戦闘を続ける。

 

その戦いに少なからず、敵も動揺を隠せていなかった。

 

「ッ!なんで……何で私の槍が当たらないの!?」

「そんなちんけな攻撃で、俺を倒せるわけねーだろうがぁ!!!」

 

俺は堕天使の槍を篭手で打ち砕き、そしてそのまま懐に拳のを放った。

レイナーレはそれでその場に蹲りそうになるが、翼を織りなして後方に飛び、体勢を整えた。

 

 

「が………ッ!?…相変わらずの馬鹿力ね。まるで最近悪魔に転生したばかりの人間とは思えないわ。………でも残念」

 

 

 

……すると、レイナーレは突如、翼を織りなして空を舞う。

 

 

傷だらけのレイナーレは、アーシアが磔にされている祭壇の傍に降りて……そして彼女の手にそっと触れる。

 

 

―――それは次の瞬間だった。

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

アーシアの悲鳴が聞こえた。

何かを失いそうなことに恐怖するようなアーシアの悲痛な悲鳴。

 

そうしている時だった。

 

 

アーシアの胸に・・・あの優しい緑の光が灯ってる?

俺はさっき感じた嫌な予感を思い出した。

 

 

――――予感的中かよ!!

 

『ふざけるなよ、レイナーレェェェェッ!!!!」

『Explosion!』

 

俺は力を解放し周りで行く手を遮る神父たちを魔力弾で蹴散らし、祭壇の頂上に到着する。

そしてその勢いで祭壇を壊す!!

 

じゃないと、アーシアが死んでしまう!!

 

「間に合えぇぇ!!!」

 

俺は倍増した全ての力を拳に込めてアーシアのいる祭壇を拳で完全に破壊し、そして祭壇から落ちるアーシアを抱きとめた。

 

「い、イッセーさん…?来てくれたんですか?」

「当たり前だろ!?大丈夫だ、こいつなんかに、お前の優しい力は渡さない!」

 

……こいつらの目的は、アーシアの神器。

 

 

神器はいわば魂、心臓と同じようなものなんだ。

 

つまり堕天使レイナーレの目的は、アーシアの中に存在している悪魔でも関係なく傷を癒してしまう神器を抜き取り、自分のものとする。

 

どういう原理かは分からないけど、そんな事はどうでも良い。

 

 

―――神器を抜き取られた人間がどうなるか、こいつは分かってる筈だ!?

 

俺はその事実を理解すると、目の前の堕天使に更に殺意が芽生えた。

 

 

「・・・褒めてあげるわ。あの人数の敵を相手に、よくもまあここまで来てアーシアを手に取れたわね―――でも残念ながら手遅れよ」

「何ほざいてんだ!?アーシアはもうこの腕の中にいる!」

 

俺はアーシアを庇う様に強く抱きしめて、拳を握った。

アーシアを取り戻した今、こんな下級堕天使を倒すことは造作もない。

俺はアーシアから離れ、最後の決戦に身を投じようとした―――その時だった。

 

「い、いやぁ!!イッセーさん、イッセーさんッ!?」

「…なんで、何でだよ!?」

 

アーシアの胸から、淡い緑の光が抜け落ちるように離れた。

そしてその光は……静かにレイナーレの元に行く。

 

「ふふふ……あははははははは!!!これよ!!これぞ、私が長年求めてきた力!至高の存在になるための、最高の力!!」

「やらせるかァァ!」

 

俺はアーシアを置き、レイナーレがあの神器を自分の中に取り込む前に倒そうとする。

まだいける!届け、届いてくれ!!

今届かなきゃアーシアを救えないんだよ!!

 

 

「邪魔よ!」

 

光の槍を俺に向かって放つが!

 

「プロモーション、『戦車』!!」

 

『戦車』の特性で攻撃力を上げ籠手で打ち消す!!

 

「まだよ!!」

 

堕天使は、俺に何度も槍を放つ!

 

こうしている間にも、アーシアは傷つく。

神器が持ち主を離れるのは、魂が離れるのと同義だ!

 

だから放っておいたらアーシアは死んでしまう……だから俺がこいつを!

 

 

神器がレイナーレの中に入ってしまう前に、こいつをぶっ飛ばす!

 

「アーシアの力を、返しやがれぇぇぇ!!!」

 

俺の拳は……そのまま一直線にレイナーレの頬を貫いた。

 

「ぐはぁっ!!」

 

レイナーレはその衝撃に耐えきれずに、祭壇の壊れた十字架に激突する。

そして俺は、その場に浮遊している緑の光を手に取ろうとした。

 

「―――ふふふ……残念でした!!」

 

 

指先が触れた瞬間、アーシアの淡い光が、消えた。

俺は一瞬呼吸が止まった。

 

「あはははははは!!すごいわ!!致命傷の傷がみるみる治る!!これが聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)の力!!」

「…アー、シア?」

 

俺は耳障りな笑い声を無視し、おぼつかない足取りでアーシアの元まで歩いて行く。

アーシアは、息絶え絶えとしていた。

 

「イッセー、さん…また、怪我してますよ?」

 

 

アーシアは俺の頬の傷に手をかざす……でも何もおきない。

結局、俺は―――!!

 

「―――あ、あ、あぁぁぁぁ!!!!!!」

 

俺は頭を掻きむしり、己の不甲斐無さを嘆く。

 

 

俺は助けれなかった…!

護るって、言ったのに!!!

希望になるって誓ったのに!!

自責の念に囚われている……その時、アーシアの冷たい手が俺の頬を包んだ。

 

「イッセーさんの、せいじゃないです…」

 

アーシアは精一杯の笑みを見せながら、そう呟く。

俺はアーシアをもっと安全な場所に置くため、アーシアを抱き上げてそのまま祭壇を駆け降りた。

恐らくはレイナーレだろうな・・・堕天使が俺へ光の槍を撃ちこんでくるが、俺はそのまま走り去る。

 

 

 

「イッセー君!!君はその子を連れて早く上へ!」

「……ここは私たちが食い止めます、イッセー先輩ッ!」

 

……二人は俺がアーシアを救えたと思っているんだろう。

アーシアを安全なところに連れて行かせようと、道を作った。

 

「………頼む!」

 

 

俺はそう言うしか・・・なかった。

俺は、教会の聖堂の椅子の上に、アーシアを寝かしている。

 

 

「アーシア、今助けてやるからな……!」

《リカバリー・プリーズ》

 

俺はアーシアに指輪をつけて、回復の魔法を発動させる。

が、アーシアの顔色は一向に良くならなかった。

 

『相棒…………』

 

分かってる、分かってるよドライグ!!

神器を抜かれた者は、アーシアは、もう助からないって………っ!!

 

 

「アーシア!お前にはまだまだ教えたいことがあるんだよ!なのに何でお前が諦めてんだよ!」

 

嘘つきだな、俺。

自分だって察してるのに、気休めの言葉しかいえないなんてさ。

弱い、俺は弱い。

 

「私は………少しの間でも、友達が出来て、幸せ……でした」

 

 

―――頭の中に、アーシアと過ごした時間が次々に映し出される。

本当に少しの時間だけ・・・だからこそ、こんな別れはあんまりだ!!

 

「何言ってんだ!少しの間だじゃない!ずっとだ!アーシアと俺は!」

 

もう自分自身何言ってるのか分からない。

涙が止まらない、目の前で苦しんでる女の子一人も救えない。

 

「また遊びに行くんだよ!次はさ、カラオケとかボーリングとか!俺のダチも呼ぶからさ!スケベだけど良い奴等なんだ!絶対にアーシアと仲良くなれるからさ!!だからさ!!!」

 

こんなところで消えて良い命じゃない!

 

 

「なぁ、神様!!少しくらい助けてやってくれよぉ!!!こんなに良い子なのにさ!!」

 

俺は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらいるか分からない神様に祈った。

 

「私のために…泣いて、くれる……。祈って、くれる…」

 

アーシアは、俺の頬を優しく撫でた。

ぐちゃぐちゃになった俺の顔を見て微笑んだ。

 

「こんなにも、良い人が…、私の友達なんですね。もしイッセーさんと、一緒の国に生まれて……一緒の学校に通えたら…」

「通おうぜ!毎日俺達と一緒に登校してさ、ごはん食べて、一緒に帰って!!俺のおっちゃんも良い人だから、絶対アーシアを歓迎してくれるさ!!」

 

俺は、俺はッ!!!

 

「イッセー、さん―――ありがとう……泣いてくれて…」

「アー、シア?」

 

俺はアーシアの声音がどんどん小さくなっていることに気がついた。

 

「助けてくれて・・・ありが、とう・・・」

「違う!俺は助けれてなんてない!!君の希望になるって約束したのに、結局何も出来なかった!!」

 

俺は泣きながらそう言っても、アーシアは…首を弱々しく横に振る。

 

「いいえ……救われ、ました…今もこうやって、私の傍にいてくれる、イッセー、さん」

 

 

アーシアの俺の頬を触る手が、離れた。

その落ちそうになる手を、俺は強く握り締める。

それしか、出来ないなんてさっ……!

 

「初めて、だったんです…あんな本音…言ったの…それ、を…何も言わず、自分のことみたいに、聞いてくれて…私は、救われたんです……!」

「アーシア……」

「主よ……あなたは、最後に……私に、とても大切な思い出を、くれたのです、ね?」

「……違うよ、アーシア…!」

 

自分の言っている言葉すら理解できなかった。

アーシアの頬に俺の涙が・・・零れ落ちる。

 

「嬉しいです、イッセー、さん。こんなわたしを、大切に想ってくれて…」

「当たり前だろっ!…こんなとか、言うなよ!アーシアは、俺の大切な友達だから!!!」

「……ありがと、イッセー、さん。それだけで私は、幸せ…なんで、す」

 

 

アーシアの力が抜ける。

目を瞑る…まるで安らかって位に、穏やかに。

 

「おねがい、します・・・もう、泣かないで・・・イッセーさんは、笑顔でいて・・・」

「無理だよ、そんなのッ!君を助けれないで、笑えるわけないだろ!?」

「だめ、です…そしたら、私…未練でお化けに、なっちゃいま、す…よ?」

 

冗談めかすアーシアの体は、確実に冷たくなっていた。

くそったれぇ!!

 

「イッセー、さん…もし私が生まれ、変わったら…その時、もし近くに貴方がいたら…」

「あぁ…あぁ!!」

「きっと、とても、幸せなんで、しょう…」

 

声が気薄になる。

 

 

「あは…ダメ、そんな夢物語…絶対に、無理…ですよね…」

「無理じゃない!夢物語じゃない!!」

 

もう俺に出来ることは嘘で励ますことだけだ。

でも、それでもアーシアが笑顔でいてくれるなら…!

 

「あぁ!約束する!俺がきっと、君を幸せにする!だから死ぬな!!」

 

 

こんな言葉、気休めの嘘だ。

でもアーシアはそんな嘘でも、笑顔を咲かせた。

 

 

「ありがとう、ございます……!」

 

 

次第にアーシアの声が、小さくなっていく。

そして、アーシアの鼓動が、止まった。

 

 

「アーシアぁぁぁぁ!!!!!」

 

俺は慟哭した。自分の無力さを嘆いた。

何が魔法使いだ、何が赤龍帝だ!!

 

 

死にゆく女の子一人救えないで、何が希望の魔法使いだ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら。もしかしてアーシア、死んじゃったんだ?」

 

 

 

すると、声が聞こえた。

あの耳障りな声が。

 

「あらあら、殺気立ってるわねぇ。見てよ、この傷。ここに来る間に君のところのナイト君にやられたのよ」

 

俺は力なく、そいつ―――レイナーレに振り向いた。

 

「でもアーシアの素晴らしい治癒の力があれば瞬間で治るわ…本当に素晴らしい力……!」

 

その光悦な表情すら、今の俺の神経を逆撫でする。

………結局、俺は甘かったんだな。

 

 

 

 

こんな糞野郎の命を摘み取るのを躊躇してたなんてよぉ!!!!

 

 

 

 

そのせいで、俺の甘さで、アーシアが………!

 

『ドライグ、アレは使えるか』

『あぁ。思い切りかましてやれ。俺自身、奴が憎たらしくてどうにかなっちまいそうだ。俺の分まで、頼むぞ』

『……おう』

 

赤龍帝の籠手の宝玉が、俺の思いに答えるように強く輝いた。

 

『Over Explosion!!』

 

 

 

俺は、解放されていた力を、更に倍増させ、”解放”した。

途端、俺の魔力は膨れ上がった。

 

 

 

「ッ!何よ……この、魔力!?貴様、何者なの!?」

 

俺の魔力を感じ取ったのか、レイナーレは顔に恐怖を貼り付け、こちらに光の槍を放った。

が、俺を覆う魔力に触れた途端、それは霧散した。

 

 

「何!?なぜ貫けないの!?」

『堕天使レイナーレよ』

「っ!誰!?」

 

ドライグの声に過剰な反応を見せながら、あたりを見渡すレイナーレ。

 

 

『お前は、選択を誤った』

 

 

 

 

その言葉が終わった瞬間、俺は地面を蹴っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回、D×Dウィザード

 

イッセー「立て…!」

 

リアス「貴方の傲慢が導いた結果よ」

 

レイナーレ「お願い、私を助けて…!」

 

MAGIC6 『俺、ブチ切れます』

 

ドライグ『これが終わればフェニックス編!』

イッセー「次回もショータイムだ!」

 

 

 

 

 

 

 


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