ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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イッセー「そう言えばさ、ドライグ達って痛覚あるの?」
ドライグ『おう、そりゃあるぜ』
イッセー「魂だけなのに?」
ドライグ『…………考えても無駄だ、相棒』


MAGIC33『会談、始まります!』

うっす、イッセーだ。

今日は待ちに待った三大勢力のトップ会談が行われる日だ。

 

因みに場所は職員会議室だそうな。

そして周りには結界が張られており、蟻の子一匹抜け出せないし、入り込めない。

 

 

……まぁ、三竦みのトップが一挙に集まる訳だしな~。

こんなにも厳重になるわな。

 

 

「ーーーーさて、皆…行くわよ」

 

部長の一言で全員頷く。

 

『み、皆さんお気をつけてぇぇぇ!!』

 

うん、ギャスパーはお留守番だ。

一応神器の特訓は捗ってるけど、まだまだ未熟だからな。もしかしたら三竦みのトップ停めちまうかもしれないし。

 

「ギャスパー、一応俺のゲームとドーナツ置いてるから。暇になったらそれ食ったりしとけよ!」

「は、はぃぃぃ!!」

 

よし、大丈夫そうだな。

俺は頷くと、部長達の後に続いた。

 

 

「やっぱりイッセー君、面倒見が良いね」

「そうかぁ?」

 

……ま、出来れば抱えてる物を軽くしてやりたいしな。

 

『それが面倒見が良いって言うのさ』

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

コンコン、と部長が会議室の扉を叩く。

 

「失礼します」

 

そう一言告げて部長が扉を開けると、特別に用意させたらしい豪華絢爛なテーブル。そしてそれを囲む見知った人達が座っていた。

 

……中々緊張感あるねぇ。

っと、アーシアが不安そうに服の端を掴んできた。

 

『大丈夫』

 

その思いを込めて俺はアーシアの手を軽く握ってやる。

するとアーシアは落ち着いたのか、顔を綻ばせる。

 

『やっぱり全員真面目な服装だな』

 

そりゃ、こんな重要な会議にコスプレとか浴衣とかで来るわけないだろ…。

セラフォルー様もアザゼルもちゃんとした礼装だし。

 

 

そしてーーーーアザゼルの隣に座る銀髪の「白龍皇」。

こっち見てフッと笑いやがった。

 

『目ぇ付けられたな、相棒』

 

嬉しくねぇよ、見た感じ戦闘凶っぽいし。

おっ、グレイフィアさんは給仕係りなのね。

 

「私の妹と、その眷属だ」

 

サーゼクス様が他陣営のお偉方に紹介すると、部長も軽く会釈する。

 

「先日のコカビエルの件では、彼女達が活躍した」

「報告は受けてます。改めて礼を申し上げます」

 

ミカエルさんが部長に笑顔で礼を言い、それに対して部長も冷静に再度会釈する。

 

「イヤー悪かったな、俺んとこのコカビエルが迷惑掛けて」

 

うわぁ、なんつー態度だよ。

部長の口元ひくついてんぞ…………。

 

『独身だからマトモな謝り方知らないんだろ』

 

なるほど、一理あるな!

 

 

「その席に座りなさい」

 

サーゼクス様の指示を受けて、俺達はグレイフィアさんに促されて椅子に座る。

そこにはソーナ会長が座っていた。

 

俺達が着席したのを確認すると、サーゼクス様が口を開いた。

 

「全員揃った所で、会談の前提条件を一つ。ここにいる者達は、最重要禁則事項の『神の不在』を認知している」

 

って、アレ?会長もご存知なのかな?

 

『大方姉貴の魔王少女から聞いたんじゃね?驚いてないし』

 

……確かに。驚いてない。

グレイフィアさんも何時も通りって事は、多分前から知ってたんだろうな。

 

 

「では、それを認知しているとして、話を進める」

 

そしていよいよ、三大勢力の会談が始まった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

とは重々しく言ったけど、会談自体は順調な様だった。

 

「と言うように我々天使側はーーーー」

 

とミカエルさんが意見を述べれば、

 

「そうだな。その方が良いのかもしれない。このままでは確実に三大勢力とも滅びの道をーーーー」

 

サーゼクス様も肯定しつつ悪魔サイドの意見を述べる。

 

「ま、俺達堕天使は特に拘らないけどな」

 

たまにアザゼルが余計な一言を放ち場を凍り付かせたりしたけど、まぁ順調だ。

っつーかこの人はその状況を楽しんでるだけだな。

 

………………しかし暇だ。

何かする事は……………………

 

『相棒、ならしりとりでもしようぜ』

 

しりとりか……よし、ドラゴン!お前もやろうぜ。

 

『……別に構わんが。なら栗鼠』

 

リスか。

 

『……スルメイカ』

 

か、か……かき揚げ!

 

『下痢』

『林檎飴』

 

メバル!

 

『ルビー』

『烏賊飯』

 

白滝!

 

『金木犀』

『イカスミパスタ』

 

何で飯縛りなんだよドライグ!……ん?

ふと手に重みを感じて見てみると、部長が俺の手を握っていた。

 

部長の手は、僅かに震えていた。ーーーー緊張してるのか?

ならば!

 

俺は無言で手を握り返す。

俺は何時でも部長の味方だからな!

 

『……俺らだけでやるか』

『そうだな……蛸』

『こ、こ、小岩井コーヒー』

『糸』

『トマトパスタ』

『……卵』

『ご飯ですよ』

『……飯縛りウザいわぁぁぁぁぁ!!!』

『良いじゃねーか別によぉぉぉぉぉ!!!』

 

だーうるせぇよぉぉぉぉぉ!!

 

「さて、リアス。そろそろ先日の事件について話してもらおうかな」

「はい、ルシファー様」

 

何て突っ込むと、部長と朱乃さん、そして会長が立ち上がってこないだのコカビエル戦の一部始終を話し始めた。

そしてそれを真剣に聞く三大勢力の方々。

 

 

「ーーーー以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔が関与した事件の報告です」

「ご苦労。座りたまえ」

 

全てを話し終えた部長達は、サーゼクス様の一言で漸く着席した。

お疲れ様です!

 

「ありがとう、リアスちゃん☆」

 

セラフォルー様、貴女は良い意味でも悪い意味でもムードメーカーですな。

 

「……さてアザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

サーゼクス様の問いに、全員の視線が独身総督に向けられた。

だがアザゼルは臆する事なく笑みを浮かべて淡々と語りだした。

 

「だからよぉ、奴の処理はうちんとこの白龍皇が行って、地獄の最下層(コキュートス)で永久冷凍の刑に処した……ってこないだの資料に書いただろ?それとおんなじだ」

 

だいぶザックリした説明だな。分かりやすいけど。

 

「説明としては最低の部類ですね。……ですが、貴方個人が我々といざこざを起こしたくない、それは事実でしょう?」

「あぁ、俺は戦争なんて興味ねーよ」

 

多分本当だろうな、コカビエルも神器がどうのこうのって言ってたし。

 

「ではアザゼル。何故ここ数十年神器の所有者をかき集めていたのだ?最初は戦力増強を図っていると踏んでいたが……」

 

へぇ、そんな事してたんだ。

 

『んな事する暇あるなら婚活すりゃ良いのにな』

『同意』

 

うんうん。

 

とここでアザゼルが机を叩いた。

 

「さっきから堪えてたが……もう限界だ!!おい赤龍帝!!」

 

な、何ざんしょ?

 

「さっきからお前ら地の文で独身独身と……!人の傷口抉るのも大概にしろよコラァ!!」

 

おぉ、まさか地の文に突っ込むとは。

 

『サスガアザゼルサンダナー』

「うがああああああ!!」

 

ってかこの場で突っ込まなくても…………サーゼクス様達もポカンとしてるし。

アザゼルはそれに気付いたのか、咳払いして着席した。

 

「ハァ、それは神器研究の為だよ。俺の信用は三竦みの中でも最低かよ」

「「「そうだな(ですね/ね☆)」」」

「チッ……わーったよ。ーーーーなら、和平を結ぼうや。元々お前らもそのつもりだったんだろ?」

 

ーーーーおぉ、まさかアザゼルからそんな事が飛び出るとは。

他の陣営の方々も驚きに包まれてる。

 

ーーーーと、ここでその沈黙を破った人?がいた。

ミカエルさんだ。

 

「貴方から和平と言う言葉が出るのは意外ですが……元より私はそのつもりでした。このまま三竦みの関係を保っても、今の世界の障害になってしまう。天使の長の私が言うのも何ですが……戦争の大本の神と魔王は、消滅したのですから」

 

うん、これは先日聞いたものだ。

アザゼルは噴き出したけど。

 

「変わったなミカエル!あれほど神様一筋だったのによ」

「…………確かに失った物は大きい。ですが、いないものを何時までも求める訳にはいきません。人々を導くのが、我らが使命。神の子らを見守り、先導していくのが一番大事な事だと、私達セラフのメンバーの意見です」

「オイオイ、今の発言は『堕ちる』ぜ?……ま、天界の『システム』はお前が受け継いでたっけ。良い世界になったもんだぜ」

 

ま、まるで意味が分からん。専門用語のバーゲンセールかよ…………。

そしてサーゼクス様と同意らしく、頷いた。

 

「我らも同じだ。魔王がなくとも種を存続する為、悪魔も先に進まねばならない。戦争は我らも望まないーーーー次の戦争をすれば、悪魔は滅ぶ」

「あぁ。次の戦争を起こせば、三竦みは今度こそ共倒れ。そして、人間界にも多大な影響を及ぼし、世界は終わる…………今は、ファントムなんて謎の勢力もあるしな」

 

ふざけていた様子のアザゼルも、そんな一面あったのかよ!と突っ込みたくなる程真剣な面持ちで語る。

 

「神がいなくても、世界は回る。ここに俺達が元気で集まってるのが、何よりの証拠さ」

「アザゼル、その台詞…………まるで“彼”を思い起こしますね」

「……それもそうだな。これは“奴”の口癖だったな」

 

……奴?誰の事だ?

 

「アザゼル、ミカエル。奴とはまさか…………」

「あぁ。ま、ここでは話すことじゃない」

「…………そう、だな」

 

……奴ってのが気になるけど、話は勢力云々ーーーー主にファントムとか日本神話とかーーーーに移っていった。

 

 

 

 

 

「っと、こんなところだろうか?」

 

サーゼクス様の一言で、お偉方は息を吐いていた。一通りの話は終わったみたいだな。

 

グレイフィアさんがお茶を入れている中、ミカエルさんが俺に視線を向けた。

 

「さて、話し合いもだいぶ良い方向へ片付いたので、そろそろ赤龍帝殿のお話を聞いても宜しいかな?」

 

その言葉に全員の視線が俺に集まる!

俺は一瞬アーシアの方を振り替える。

 

アーシアは、ニコリと微笑んで頷いてくれた。よしっ!

 

「……彼女を、アーシアをどうして追放したのですか?」

 

俺の質問に、全員が驚きの顔をした。

まぁ、何でこの会談で聞くんだ?って気持ちは分かるが、俺は堕天使以上に、許せない部分を天使側に感じてた。

 

だけど、ミカエルさんは真摯な態度で答えてくれた。

 

「それに関しては、申し訳ないとしか言えません。…………神が消滅した後、加護と慈悲と奇跡を司る『システム』だけが残りました。この『システム』は、神が行っていた奇跡等を起こすための物。神は『システム』を作り、これを用いて地上に奇跡をもたらして来ました。悪魔払い、十字架等の聖具へともたらす効果……これらも『システム』の力です」

 

なるほど。

 

「神がいなくなって、『システム』に不都合が起こった…………そうなんですか?」

 

俺の疑問にミカエルさんは頷いた。

 

「正直、『システム』を神以外が扱うのは困難を極めます。私を中心に『熾天使(セラフ)』全員で『システム』をどうにか動かせていますが…………神がご健在だった頃に比べると、神を信じる者達への加護も慈悲も行き届いきません……残念な事ですが、救済出来る者は限られてしまうのです」

『コカビエルも言っていたな』

 

確かに…………それでも良くやっているって。

 

「その為、『システム』に影響を及ぼす可能性の有るものを教会に関する物から遠ざける必要があったのです。影響を及ぼす物の例としましては、一分の神器ーーーーアーシア・アルジェントの持つ『聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)』も含まれます。そして、貴方の持つ『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』、白龍皇の持つ『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』も同等の物です」

「……『神滅具(ロンギヌス)』じゃないアーシアの神器が弾かれるのは、悪魔や堕天使も回復出来るから、ですか?」

 

ミカエルさんは再度頷いた。

 

「はい。信徒の中に『悪魔と堕天使を回復出来る神器』を持つ者がいれば、周囲の信仰に影響が出ます。……信者の信仰は我らの天界に住まう者の源。その為、『聖母の微笑み』は『システム』に影響を及ぼす禁止神器としています。それと、影響を及ぼす例にーーーー」

「神の不在を知る者……ですね?」

 

ミカエルさんの言葉を遮って続けたのは、ゼノヴィアだった。

 

「えぇ、その通りです、ゼノヴィア。貴女を失うのは此方としても痛手ですが、神の不在を知った者が本部に直結した場所に近づくと『システム』に大きな影響が出ます。ーーーー申し訳ありません。貴女とアーシア・アルジェントを異端とするしかなかった」

 

と、ミカエルさんはなんと頭を下げたーーーー謝ってる!

 

「頭を上げて下さい、ミカエル様。悪魔に転生した事は、私の日常に彩りを与えてくれています。こんなことを言ったり、他の信者に怒られるかもしれませんがーーーー私は、今こうして仲間達と、私の希望、兵藤一誠と過ごせる生活に満足しています」

 

…………何か、嬉しいけど恥ずかしいな。

でも、そんな風に感じてくれるとは、こっちも嬉しいよ。

アーシアも続けるように手を組んで口を開く。

 

「ミカエル様、私もです。今の生活がとても幸福なのです。大切な人達や、沢山のお友達が出来ましたから。それに、憧れのミカエル様に御会いできて、お話も出来たのですから光栄です!」

 

ミカエルさんはアーシアとゼノヴィアの言葉に安堵の表情を見せた。

 

「すみません。貴女達の寛大な心に感謝します。ーーーーデュランダルはゼノヴィアに一任します。サーゼクスの妹君な眷属ならば、下手な輩に使われるより安全でしょう」

 

よし、これで胸のつっかえは取れたぜ!

 

「ーーーーさてと、そろそろ俺達以外に、世界に影響を及ぼす奴等の意見を訊こうかねぇ。無敵のドラゴン様にな。まずはヴァーリ、お前は世界をどうしたい?」

 

む、この銀髪はヴァーリって言うのか。覚えておこう。

 

『お前のおつむだと歩いて3歩で忘れそうだな』

 

鶏か!!

 

「俺は強い奴と戦えればそれで構わないさ」

 

…………そんだけ?

マジな戦闘狂じゃねーか。

 

「何時も通りか。じゃ赤龍帝、お前は?」

 

…………そんなの、決まってる。

 

「俺は……皆の希望を守れれば、それで良いです。誰かが絶望してるなら、誰であっても手を差し伸べます」

「ふむ、他人のため…か。そんな事言う赤龍帝は初めてだな」

『その通りだ。だからこそ、俺はコイツに力を与える』

 

手の甲の宝玉が光り、そこからドライグの声が響く。

 

「成る程ねぇ」

『…………っと、相棒』

「どうした、ドライグ?」

『身を構えとけ』

「えっーーーー」

 

その瞬間、会議室は一瞬静寂に包まれた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

まさか、今のは…………

 

『オイオイ、眷属殆んど止まってんぞ』

 

え………………うわっ!

アーシア、朱乃さん、小猫ちゃん、会長も停止していた!

まさか、朱乃さんと会長まで停めちまうとは……!

 

逆にお偉方とヴァーリは普通に動いていた。

 

「眷属で動けるのは、私とイッセー、祐斗、ゼノヴィアだけの様ね」

 

俺は兎も角、木場は恐らく俺同様に禁手に至ってるからだろうけど、ゼノヴィアは…………っ!

 

『ほぅ、デュランダルを盾にしたのか』

「あぁ、時間停止の感覚は体で覚えていたからね」

 

脳筋じゃねーか、やってることが!

 

「もしかしてこれ…………」

「もしかしなくても、テロだな」

 

やっぱり…………!

窓の外を見てみると、校庭の上空に夥しい数の魔術師が攻撃してきた。

 

「所謂魔法使い……お前さんと違い向こうが一般的な奴等だ」

 

ですよね。指輪と喧しいベルトの魔法使いなんて俺だけで充分だよ。

 

「時間停止は……多分ギャスパーの力を利用させられたのか」

「察しが早いな、赤龍帝」

 

とは言うが、アイツやっぱり潜在能力の塊だな。

 

「許せないわ…………大事な会談の邪魔をするためだけに私の下僕を利用するなんてっ!!」

 

おおっ、部長が怒ってらっしゃる!

アザゼルは一息吐くと、窓に手を向けた。

 

 

すると、外の上空に無数の光の槍が現れ、アザゼルが手を下ろした瞬間に魔術師達に降り注いだ!

 

『ほぉ、独身の癖に中々強いな』

 

うん、独身だけど流石は総督名乗ってるだけあるな!

 

「独身独身うるせーぞ!!童貞赤龍帝!!」

「童貞で何が悪い!!」

 

言い合う俺達を嗜める様に、サーゼクス様が近づく。

 

「兎に角、今はテロリストの活動拠点となっている旧校舎からギャスパー君を取り返すのが目的だ」

 

まぁ、お偉方は下調べとかで動けそうにないしな。

主に誰がこのテロの糸を引いたのか、それを調べなきゃだしな。

 

「お兄様、私が行きますわ。ギャスパーは私の下僕です。私が責任を持って奪い返します」

「言うと思っていたよ。だが旧校舎までどう行く?魔術師が沢山いる以上、通常の転移も阻まれる」

「部室に、未使用の『戦車』を保管していますわ」

「…成る程、キャスリングか」

 

キャスリングって確か…………『王』と『戦車』の位置を瞬間的に入れ換えるんだっけか?

レーティングゲームの特殊技の一つだったと思うけど。

 

 

確かにこれなら相手の隙も付けるし、一々外に出て袋叩きに合わずに済む。

流石部長!

 

「よし、それで行こう。だが一人で行くのは無謀だ。グレイフィア、キャスリングを私の魔力方式で複数人転移可能に出来るか?」

「そうですね、ここでは簡易的な術式しか展開できませんが……お嬢様ともう一方なら転移可能かと」

「なら、俺が行きます!」

 

世話係りを任されたんだ、ほっとく訳にはいかねぇ!!

 

「おい赤龍帝」

「兵藤一誠で良いぜ」

「なら兵藤一誠、これ持ってけ」

 

アザゼルが此方に何かを投げて寄越したので受け取ってみると…………腕輪?

 

「ソイツは神器をある程度抑える力を持つ腕輪だ。あのハーフヴァンパイアに嵌めてやれ。そうすりゃ制御できるだろうさ」

「ほーっ、流石は独身」

「茶化してないでさっさと行け!っとヴァーリ、お前は外で派手に暴れろ。敵の目を引くんだ」

「……了解」

 

そう言うと、ヴァーリの背中に光の翼が現出する。

あれが、ヴァーリの神器か……。

 

「ーーーー禁手(バランス・ブレイク)

《Vanishing Dragon Balance Breaker!!!》

 

女性とも取れる中性的な音声が響いた後、ヴァーリの身体を白いオーラが覆った!

光が止み、見るとそこには白い輝きを放つ全身鎧に包まれたヴァーリがいた。

 

…………何か、向こうの方がカッコ良くね?

 

『バカ言うな!赤龍帝の鎧も負けてねーよ!!』

 

でもあんな翼あるしさ…………。

何て呟いてると、ヴァーリは外に飛び出し、魔術師相手に無双していた!

 

…………なんつー規模の強さだよ。俺以上じゃん!

 

「そう言えばアザゼル」

「ん?」

「神器を集めて、何をするつもりだったんだ?」

「……備えていたのさ。とあるテロ集団に対抗する為にな」

「…テロ集団?」

 

……サーゼクス様も知らないのか?一体何なんだよ、そのテロ集団は?

 

禍の団(カオス・ブリゲード)だ。ま、俺もつい最近知ったんだけどな」

「……カオス、ブリゲード?」

 

良くは分からんが、とんでもない集まりなのは分かるぜ。

 

「以前からうちの副総督のシェムハザが不審な集団に目ぇ付けてたのさ。他にも、禁手に至った人間達や神滅具持ちも複数存在してる」

「成る程……その首謀者は?」

「それはーーーー」

 

 

 

 

 

『貴方達が知る必要はありません。何故なら、ここで死ぬのですから』

 

 

カッ!とアザゼルの声を遮るように聞こえた声と、部屋に魔方陣が浮かび上がった!

 

「っ!グレイフィア、リアスとイッセー君を飛ばせ!」

「はっ!」

 

オイオイ何がどうなってーーーー

 

 

 

口を開くより早くに、俺達は旧校舎に転送させられた。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「よりにもよって君が来るとはな、カテレア」

「お久し振りですね、サーゼクス殿」

 

イッセーとリアスが転移した後、部室に現れた招かざる客は、旧魔王ーーーーカテレア・レヴィアタン。

 

「今この時を持って伝えましょう。我ら旧魔王派の者達は禍の団に協力することに決めました」

 

ここに来て、旧魔王派が敵に寝返ったと言う事実に、衝撃を隠せない木場達。

 

「カテレア、それは言葉通りと受け取って良いのだな?」

「その通りです、サーゼクス。今回の攻撃は我々が受け持っております。そして我らはこの世界を滅ぼし、再構築するのです!理念、法、『システム』も含めてね」

 

カテレアが自信満々に切った所で、

 

 

 

 

 

「ぐっ、クックック……」

 

アザゼルだけは笑っていた。

可笑しいと言わんばかりに。

 

「何が可笑しいのです、アザゼル」

 

カテレアは怒りを隠さずにアザゼルに問いかける。

 

「オイオイ、今時世界の変革って…………TVの中の悪役だけだと思ってたぜ?そう言うの、直ぐに死ぬ奴程ほざくんだよなぁ」

「アザゼル……貴方は何処まで人を愚弄する!!」

 

激昂したカテレアは魔力をたぎらせる。

 

「……サーゼクス、ミカエル。手ぇ出すなよ」

「…………カテレア、降るつもりはないのだな?」

「ええ、サーゼクス。貴方は良い魔王でした……が、最高の魔王ではない。だから、私達ら新しい魔王を目指します」

「そうか、残念だ」

 

ドッ!!

 

サーゼクスがそう呟いた瞬間に、アザゼルは校舎の窓際を吹き飛ばした。

 

「へいカテレア。俺といっちょハルマゲドンでも洒落こもうか?」

「望む所よ!堕ちた天使の総督!!」

 

言うと同時に、カテレアとアザゼルは空に飛び立ち、光と魔の攻防を繰り広げた。

 

「木場祐斗君。私とミカエルは結界を強化し続ける。だから悪いのだが、外の魔術師達を始末してくれないだろうか?」

「ーーーーはい、勿論です!」

「私も行こう。私も、リアス・グレモリーの『騎士』だからな」

 

木場とゼノヴィアは互いに頷くと、校庭に向かっていった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

「背後からコンニチワ!ってな!」

「ぐああ!!」

「チィッ、悪魔風情が…………!」

「これ以上ギャスパーには指一本触れさせないわ!」

「ぎゃあああ!!」

 

転移したらやっぱりそこは敵陣のど真ん中でした!っと。

まぁそんな事はもうどうでも良かったので、俺は魔術師をぶん殴り、部長は滅びの魔力を無数の針にして飛ばしたりして、悪魔無双を行っていた!

 

「部長!イッセー先輩!」

 

おお、ギャスパー発見!

椅子にくくりつけられてるだけっぽいな、良かった!

 

「僕、僕は……もう嫌です。僕を…………僕を、殺してくださっ」

「バカ言うなって!」

「ぐほっ!」

 

俺はギャスパーに襲いかかる女魔術師を肘鉄でブッ飛ばす!

 

「そうよギャスパー。私は貴方を決して見捨てないわ。貴方を転生させた時、言ったわよね?生まれ変わった以上は、私の為に生き、そして自分が満足できる生き方も見付けなさい……って」

 

でも、部長の言葉はギャスパーには届かず、首を横に振る。

 

「……見つけられなかった。迷惑かけてまで僕は…生きる価値なんて……」

「おいギャー助!良く聞け!」

 

ドォンッ!

 

目の前の魔術師をドラゴンショットで沈黙させた俺は、ギャスパーに言い放つ!

 

「人間にしたってそうだけどな、俺達は生きてる以上誰かに迷惑かけちまう物だ!でもな、死んじまったらその迷惑かけた分恩返しも出来ねぇ!でも今お前は生きてるだろ!?じゃあこの先、もしかしたら部長達に恩返し出来るだろ!?前にも言ったろ…………もうちょい前向きに、バカになれって」

「そうよ!ギャスパー、私達にいっぱい迷惑を掛けてちょうだい。私は何度も何度も叱ってあげる!慰めてあげる!ーーーー私は、決して貴方を放さないわ!!」

 

さぁ、ギャスパー!

俺達のご主人様にここまで言わせてんだ、お前はどう答える!?

 

「ぶ、部長……僕は、僕はっ!!」

 

泣き出すギャスパー……だけど、それが悲しさから来るものじゃない。

 

 

 

ーーーー嬉しさからくる物だ。

 

 

 

 

「ギャスパー」

 

俺はギャスパーに近付きながら、手刀で右腕を切り裂く!イテェ!

 

「恐れるな、逃げるな、泣き出すなっ!これがグレモリー眷属男子メンバーのモットーだぜ!!これはその門出祝いだ!!飲め、ギャスパー!!」

 

ギャスパーは強い眼差しで頷くと、右腕から流れ出る俺の血を舐めとる!

すると、この室内の空気が一変した…………って、ギャスパーいないじゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

チチチチッ!!

 

 

ギャスパーが消えたと同時に、室内からコウモリの鳴き声が聞こえたかと思うと、天井から無数の赤い瞳をしたコウモリが襲いかかる!

 

「変化したのか!?吸血鬼め!」

「おのれ!」

 

毒づきながらコウモリに向けて攻撃するが、何かに引っ張られて大きく体勢を崩した!

あれはーーーー影から手が伸びてる!?

 

影から出てる手は、彼女達を影の中へ引っ張ろうとしていた!

 

「ならばっ、くらえぇ!」

 

魔術を叩き込むが、そりゃ悪手だな。

向こうは影だから効果はなく、ただ霧散するだけ。

 

そしてその隙にコウモリは魔術師達の各部位を噛んだ。

 

「血を吸うつもりか!?」

「いや、私達の魔力も吸いだしている!」

 

魔力も吸血するのかーーーーとんでもないサラブレッドだな!

 

「くっ、ならばこうするだけよ!」

 

魔術師達は攻撃の標準を俺達に向けて放つーーーーが、それらは空中で全て停止した!

 

『無駄ですよ!貴女達の動き、攻撃は全部僕が見ています!』

 

コウモリの視線から神器を発動してるのか!

 

『そして貴女達も停めます!』

 

カッ!と赤い瞳が輝くと、この部屋に残った魔術師達の時間が全て停止した!

 

『今です!イッセー先輩!!』

「任せとけ!」

《Explosion!》

 

停まってるから聞こえてないだろうが…………聞け!龍の咆哮を!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーー龍牙雷光(ドラゴニック・プラズマ)ァッ!!!」

 

 

 

強化された腕から放つ高速拳で、停まった魔術師達を一網打尽だ!

 

 

 

 

 

 

 

魔術師達を縛り上げた俺達は、冥界にある役所へと送り届けた。

 

「イッセー先輩、腕は大丈夫ですか?」

「ん?おぉ、ドライグとのイメージ空間での修業に比べたら、屁でもないさ!」

 

うん、ドライグとの特訓なんて何度死にかけたか…………。

 

「……よし、全員彼方へ転送したわ!さて、イッセー、ギャスパー!魔王様の元へ帰るわよ!」

『はい!!』

 

元気良く返事を返し、急いで駆け出した!

 

 

 

 

 

『なぁドライグ』

『ん?』

『連中をさ、纏め上げる程の力を持ってないと、こんなテロ集団なんて出来ないよな?一体誰なんだろうな』

『力を持った奴…………まさか』

 

 

 

俺は走りながら、脳裏にある少女の姿が映った。

 

 

 

 

 

 

『………………我、イッセーといると、楽しい』

 

 

 

 

いや、まっさかね……。

その考えを消して玄関を出た時だった。

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォンッ!!

 

 

うおっ、ケタロスか!?

俺達の前に何かが落下してきたんだ!

 

 

 

煙が晴れると、そこにはーーーー

 

 

 

「……チッ。この状況で反旗か、ヴァーリ」

 

多少の傷を負った堕天使総督と、

 

 

 

 

 

「そうだよ、アザゼル」

 

 

俺のライバルーーーー白龍皇、ヴァーリがいた。

傍らに、露出の激しい服を着たお姉さんを侍らせて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、ヴァーリと決闘!


《決闘!ズバッと超剣豪!》

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