ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
イッセー「デューオ強すぎィ!……死んだーーっ!!」
ドライグ『何でドリームソード外したんだよ…………!』
イッセー「コイツ意外に早いんだよ!」
ウィザードラゴン『ならばサンダーソウルになって動き止めれば良かったろうに……』
ドライグ『もっと言うなら一周目でこれならデューオSPに何回ロックマン殺されるんだろうな……』
これは、『赤龍帝』兵藤一誠の奥底に眠る記憶ーーーー。
だが一誠、そしてドライグはそれを覚えていない。
これから、読者の皆様だけにお見せするーーーー兵藤一誠の禁手に至った切っ掛け。
是非見て欲しい………………。
~~~~~~~~~~~~
悪魔が住まう人間界の地下に存在する冥界。
そこに聳え立つ山の一角にて、修行に精を出す少年がいた。
『ゴォォォォォ!!!』
「おぉぉぉぉ!!」
《Explosion!》
威厳ある男性の渋い声が響くと、少年はその小さい体で猛獣の突進を受け止めた。
『ブモッ!?』
「ぐぬぬぬぬぬ………………そぉいっ!!」
自身より数倍の背丈を誇る猛獣を、少年は何と持ち上げて、床へと叩き付けた。
『グ、グゥ…………』
「はぁ、はぁ…………!や、やったぁ……!」
衝撃により気絶した猛獣を見て、少年は安堵の息を付くと、地面に寝そべった。
『お疲れさん、相棒』
すると、少年の左手から、先程と同じ男性の声が響いた。
「お、おう……!」
『だが、やはりまだ目覚めんか………』
「ご、ごめんな…………」
『いんや、気にすんなよ。ま、じっくり鍛えようや』
少年の名は兵藤一誠、男性の声は嘗て最強と謳われた二天龍が一体ーーーー『
「中々なれなーな、禁手」
『それもそうだし、何よりお前に宿る魔力も一向に目覚めんな』
ドライグの言う通り、イッセーの体の奥底には高い魔力が眠っているのだが、これが中々開化しないのだ。
「俺って才能ないのかな~…………」
『そんな事は…………ないぞ?』
「そこは強く否定してくれよ…」
「キュ~」
「ん?」
げんなりとするイッセーのお腹に、小さい兎のような動物がリンゴを持って乗ってきた。
「キュ!キュ~♪」
「くれんのか?」
『コイツの母ちゃんも食べろってさ』
チラッと横を見ると、この動物の母親らしき動物も唸りながら促していた。
「じゃ、いただきます!」
「キュ~!」
お言葉?に甘え、イッセーはリンゴを一口頬張った。
『しっかしお前も大分なつかれてるな』
兎はドライグの言う通り、胡座をかいたイッセーの膝の間で寛いでる。
「何でだろな?」
『さぁな。ま、動物は人の心に機敏と聞く…………お前の穏やかさに心を許してんだろうさ』
「ふーん…………」
仕舞いには寝てしまった兎を撫でながら、イッセーはリンゴをまたかじる。
「グルルルル…………」
「?どしたんだろ……」
すると突然、周りにいた動物が低く唸りだした。
イッセーの膝で寛いでいた兎も震えていた。
まるで何かを警戒してるかの様に。
『お前が、赤龍帝か』
「っ!?」
低い声がイッセーに向けて放たれ、イッセーは威圧感を感じつつも直ぐに立ち上がった。
そこにいたのは、白い体に何やら紫の宝石らしき物が埋め込まれた異形なナニかだった。
「お前……誰だ?」
『我が名は……ワイズマン。神が創りしこの世界を否定する者』
「……ワイズマン?」
『早速だが…お前の力、試させてもらうぞ』
「!!」
ワイズマンはそう言うと、胸から紫の魔力の塊を連続で放った。
イッセーはそれを避け、赤龍帝の籠手を展開する。
《Boost!》
「へっ!だったら存分に味わいなよっ!!」
イッセーは素早く踏み込むと、ワイズマンの胸目掛けて強化されたパンチを見舞う。が、
『……その程度か?』
「っ!うわっ!!」
ワイズマンにはまるでダメージが伝わっておらず、ワイズマンは腕を鋭い刃に変化させイッセーにカウンターアタックをけしかけるも、イッセーはこれをバックステップで回避。
『…どうした?何故禁手を使わない?』
「…………」
《Boost!》
ワイズマンの連続攻撃を避けつつ、イッセーは倍加を引き続き行う。
「…………お前なんかに使ったら、勿体ないからな!」
『フッ……。お前は"使わない"のでは無く、"使えない"…………そうではないのか?』
「っ」
痛いところを突かれ、イッセーは押し黙る。
それを見たワイズマンは嘆息すると、紫の魔方陣を周囲に展開した。
『そうか…………ならば、使わざるを得ない様にしてやろう』
「何を…………っ!?」
その瞬間、イッセーを襲ったのは、濃密な殺気。
まるでワイズマンに心臓を鷲掴みにされてる様な錯覚を感じ、イッセーは動けずにいた。
「グルルルルゥ!!」
「ギャウゥゥゥ!!」
しかしその隙に、周りにいた動物達から悲鳴が上がった。
ワイズマンの狙いは、この山に住まう動物達。
濃密な魔力弾を喰らい、動物達は次々と血塗れになって倒れていく。
イッセーが漸く動けた時には、既に数体もの動物が死んでいた。
「て、てめぇ!狙うなら俺にしろ!!」
『クックッ……どうした?早く禁手にならなければ、私はここの生物を殺し尽くすだけだ』
「っ…このやろぉ!!」
《Boost!》
何とかして止めようとするイッセーだったが、ワイズマンの攻撃に弾かれてしまう。
「ぐぁっ!…………あ、あぁ!」
辛くも立ち上がるイッセーの目の前には動物達の骸が。
『…………臆したか?』
「…!」
哀しむイッセーの前に、ワイズマンが立ち塞がる。
ワイズマンから放たれるプレッシャーに、イッセーは指一本動かせずにいた。
『相棒!動け!でなければ死ぬぞ!』
「っ…………うぁぁぁぁっ!!!」
ドライグの声に反応し、イッセーは弾かれるようにワイズマンから離れる。
だがその顔は恐怖に染まっていた。
「キュー!」
『…………?』
「っ…お前」
その時、イッセーとワイズマンの間にさっきの兎が立ち塞がった。
まるでイッセーを守らんとしている様だ。
「キュー!キュー!」
『邪魔だ…………』
「や、やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
ワイズマンを止めようと走るイッセーだったが、それよりも早く、魔力弾が兎に命中した。
「あ……あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その光景に絶叫しながら、イッセーは兎の元へと駆け寄る。
兎の体はボロボロで、その命は最早尽きかけていた。
「お、お前…………俺を守ろうとして…」
「き、キュー…………」
イッセーが震えながら抱き抱えると、兎は嬉しそうに一声鳴くと、そのままピクリとも動かなくなった。
「…………………………俺は」
俺は、弱いーーーー。
そう小さく呟くと、イッセーは体を震わせる。
『何で、何でこんな時に何も出来ないんだよ!!俺は、俺はーーっ!!』
「うぁぁぁぁーーっ!!!!!」
涙を流しながらイッセーは天高く吠えると、イッセーの体を赤いオーラが包み込んでいく。
そのオーラは、次々と鎧を形成していき、イッセーの体を覆っていく。
『まさか…………』
『相棒…!』
「うぁぁぁぁーーっ!!!!!」
自らに心を許した者達を守れずに、見殺しにした弱い自分への激しい怒りーーーーーーーーそれが強い切っ掛けとなり、赤龍帝の籠手は今、
《Welsh Dragon Balance Breaker!!》
絶対の境地ーーーー『
『相棒、お前……!』
「…………てめぇはもう、謝っても絶対許さねぇぞ……このクズ野郎!! 」
イッセーは先程と比べ物にならないスピードでワイズマンの懐に潜り込み、ストレートを放った。
『っ!』
ワイズマンは辛うじてそれを受け止めるが、イッセーはその間に限界まで倍加する。
《BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!》
「でやぁぁぁぁ!!」
『…………ぬぅ!』
全身に掛かる負担を無視して、イッセーはワイズマンに特攻を続ける。
怒り狂う今のイッセーに、負担など関係ない。
ただ、目の前の敵を潰す。それだけを考え、攻撃しているからだ。
『…………ハッハッハ!素晴らしい、素晴らしいぞ!!お前こそ、我が計画の要になりうる…!』
「ぐぅ…!訳わかんねぇ事ほざいてんなよ……っ!!?」
ワイズマンは笑いながらイッセーに向けて手を翳すと、突如イッセーの体を纏うオーラがワイズマンの胸のコアらしき物に吸い取られた。
それだけでない。イッセーの雀の涙程の魔力も、同じ様に吸収されていった。
「ぐっ、あぁ…………っ!力、が…!」
『コイツ……相棒の魔力を吸収してるのか!?』
「それが……どうした、ぁ!」
《Boost!》
足で踏ん張りながら残り少ない魔力を増やすも、ワイズマンはそれを嘲笑うかの様に吸収していく。
「く、そったれぇ…………!!」
《Balance Over》
だが既に限界を迎えていた為に、鎧が解除されてしまった。
それと同時に、イッセーも崩れ落ちる。
『相棒!!くそっ、やはりまだ体が耐えきれんのか…!?』
「うぅ…………っ!」
『………………フム、まだ力が不足しているな。少年よ』
「なん……っ!」
ワイズマンはイッセーの頭に手を翳し、魔方陣を展開すると、イッセーはその場から姿が消えた。
『私との関わりの記憶……全て封じさせてもらうぞ。だが漸く…………』
漸く見つけた……………………終末の依り代が。
そう狂喜を滲ませたワイズマンの呟きを聞いたものは、誰一人としていなかった。
『お前はもう、修羅の道しか歩めん…………だが、それがお前を強くする』
~~~~~~~~~~~~
「………………………………ん?」
次にイッセーが目を覚ましたのは、近所の公園だった。
「あれ?俺、一体…………」
「イッセー!」
「…おっちゃん?」
何をしていたか頭を唸らせていると、叔父の茂がイッセーに駆け寄ってきた。
「どしたの?」
「大変なんだ!お前の両親が、父さんと母さんが……!」
「…え?」
茂から事の顛末を聞いたイッセーは、近くの病院へと走り出した。
「父さん!母さん!」
イッセーが病室に飛び込むと、そこには呼吸器を付け、包帯が幾重にも巻かれた両親ーーーー晴人と暦の姿が。
「…イッセー、か?」
「父さん!!しっかりしてよ、父さん!母さん!」
「もう……イッセー、ここは、病院よ…静かに、しなきゃ…………!」
「!母さん!!」
暦の言葉が途切れ、イッセーは叫びながら両親の手を握った。
「良いか…………イッセー…」
「父さん……!」
すると、イッセーの想いが伝わったのか、晴人が僅かに目を開いた。
「お前は……俺達の希望だ。だから、悲しそうな顔をするな………お前は…………皆の、き、ぼ…………」
「先生!患者両名、心拍数が!!」
看護婦達の慌ただしい声をバックに、イッセーは朝まで両親の手を握り続けた。
その翌日、イッセーの両親は眠る様にして息を引き取ったーーーー。
~~~~~~~~~~~~
あれから三日後ーーーー。
イッセーは両親の葬式が終えると、会場を抜け出し、近所の公園のベンチに座っていた。
「…………なぁドライグ」
『…ん?』
イッセーは穏やかな声でドライグに語りかけた。
「俺さ、もっと強くなるよ。今以上に、もっと」
『…………そうか』
「もう、こんな想いを、味わいたくないからさ」
『……そうか』
ドライグは静かにそれを聞き入れる。
『……なぁ相棒』
「ん?」
『………………泣いても、良いんだぞ』
ドライグの言葉通り、イッセーはこの三日間、全く泣くことはなかった。
ただ黙々と、葬儀の準備を手伝っていた。
ドライグには分かっていた、イッセーの胸中が。
だからこそ、泣いてほしかった。
気に入った相棒だからこそ、悲しみを押し止めて欲しくなかった。
だが、イッセーはそれに対して、笑った。
「何いってんだよ?もう四年生だぜ?俺。泣いたら、天国の父さんと母さんに笑われちゃうよ。…………だから、泣かない」
『……………………』
イッセーはドーナツの紙袋を取り出すと、中のプレーンシュガーを一口頬張った。
「…………なぁ、ドライグ」
『ん?』
「何時もさ、これ甘いのにさ………………」
『……』
「何でさ、こんなにしょっぱいんだろう…………………………っ!」
『そのしょっぱさを忘れるな………………もう、そんな味のドーナツなんて食いたくないだろ?』
「うん…………うん……………っ!!」
『でも…………今は、今はーーーーーーーー思いっきり泣け』
「う、うぅ……………………グスッ…………うぁぁぁぁーーっ!!!!!」
ドライグの見守る中、この日イッセーは大粒の涙を流した。
この日限り、イッセーはもう、泣くことは無くなった。
強くなる為に、もう大切な人達を失わない為にーーーーーーーー
「よしっ!行くぜドライグ!」
『応っ!!』
兵藤一誠は、今日も鍛え続ける。
…………とまぁ、以上になります。
多分読んでて、「あれ?イッセーってサ○ヤ人?」と思うかもしれませんが、それは心の中に仕舞っていてくださいな。
それでは