ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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お久しぶりで御座います!




MAGIC178『呪われし血族』

 

リゼヴィムと出会って暫く後、俺達はギャスパーのお父さんが幽閉されているという地下室まで足を運んでいた。

 

リアスとギャスパーはヴァレリーが面会したいとの事で王の部屋に連れていかれ、先生は護衛の吼介を伴ってマリウスの息が掛かった上役の吸血鬼らしき者についていった。――――前者はヴァレリーの話し相手、後者は先生の神器の知識について聴きたいためだろう。

 

……俺達は待機させられていたが、漸く面会許可が下りたので、会いに行くことにしたって訳だ。

 

石造りの城内を、明かりを持ったメイドさんに案内されて、地下へと進んでいく。

 

「ここがヴラディ家当主様がおられる客室に御座います」

『囚人室の間違いじゃないのか』

 

お前それ絶対発声すんなよ……内心でドラゴンに突っ込みながら施錠された扉を開き、中へと入っていく。

 

中は思ったより快適そうな空間で、その中にあるソファに、金髪の若い男性が腰かけていた。

 

――――間違いない、ギャスパーの親父さんだ。どこか面影がある。

 

朱乃さんが一歩出たのを確認して、俺も前に出る。

 

「初めまして、私達はリアス・グレモリー様の眷属悪魔です。私はリアス・グレモリー様の『女王』、姫島朱乃と申します。この度はご挨拶だけでもと思いまして、この場に馳せ参じさせていただきました」

「…赤龍帝眷属の『王』、兵藤一誠です。急な来訪で申し訳ありませんが、私もリアス・グレモリー様の『兵士』であります故、こうしてこの場に来訪させていただきました」

 

……駄目だな、こういう挨拶慣れてねぇや。変なとことか、無かったよな?

 

『大丈夫だ、問題ない』

『ありそうな返答すんな!』

 

けどギャスパーの親父さんは特に不快な様子も見せず、挨拶を聞いて頷くと、ソファに座る事を促してくれた。

 

「どうぞ、お座りください。――――アレ、いえ、ギャスパーについて、話をしに来たのですね?」

 

どうやら用件は直ぐに理解してくれたらしいが…………実の息子を、アレ呼ばわりか。

義憤に駆られそうな感情をどうにか押し殺し、『女王』の朱乃さんと『王』の俺はソファに腰掛け、後の皆はその後ろに控える。

 

「直ぐにリアス様とは話をしましてね、お互いにアレの情報を交換し合いました。今後、アレの処遇を巡ってグレモリーとヴラディでどうしたらいいのか話し合いを進める中で、私がこの城に召喚されまして……情けない話ですが、ツェペシュ王が退かれるなど、創造もしていなかったものでしてね。私が幽閉された事で、マリウス殿下が我が息子にリアス様をこの城に連れてくるよう命じたようです」

 

話の内容の割には、親父さんの口調は特に荒くもなく、落ち着いている様子だ。まるでこの状況を受け入れているかのように。

 

「…アレ、ですか」

「アレは、ギャスパーは悪魔としては機能しているのですね。リアス様からそれを聞き、正直驚きました」

「…ギャスパー君のお母様はやはり……」

「えぇ、すでに亡くなっております。アレを生んだ直後にね」

 

朱乃さんの質問に、親父さんは首を縦に振ってそう言った。

 

「…難産、だったのでしょうか?」

 

俺の問いに、親父さんは初めて表情を変化させる。…まるで話すべきか迷うかのように。

 

暫しの沈黙、そしてヴラディ家当主は重く息を吐くと、事実を吐き出した。

 

「……いえ、ショック死です」

 

……ショック死?

 

この場にいる全員が訝しげに感じる中で、親父さんは恐ろしげに話しを続ける。

 

「彼女の腹から産まれたのは……禍々しいオーラの包まれた、何か別のモノでした」

「何か?」

 

朱乃さんの問いは、当主の言葉の真意を掴み切れずに発せられたものだろう。

だけどそれは俺達も同じだ……俺達の知るギャスパーではなく、この人は俺達が知らないギャスパーを見ているって事になる。

 

一体何を見たって言うんだ……そう思う俺の前で、親父さんは絞り出すように口にしていく。

 

「……生まれた時、アレは――――人の形をしていなかったのです。黒く蠢く不気味な物体が腹から出てきた。形容しがたい何かが母体から生まれ出た。人でもなく、だが吸血鬼ですらない、怪物とも呼べぬモノが自分に宿っていた」

「そのショックで、亡くなったと……?」

「…はい。あれの母親はそれを目の当たりにして精神に異常をきたし、そのまま死に至ったのです」

 

怪物ですらない、何か……明らかに俺達の知るギャスパーとはかけ離れ過ぎたその話を、俺達は理解するのに時間が掛かった。

 

『化け物の出産話とはな。まぁ相棒も当事者っちゃ当事者だからな』

 

俺の場合はちょっと違くないか?……だけど最近担って覚醒し始めたギャスパーの力は、話にも出ていた闇の能力だ。

 

「それから暫くして、出産に立ち会った産婆を含めた複数の従者達も、数日の内に次々と変死しました」

「呪殺……生まれたばかりの赤子が、呪いを発していたと言うのですか?」

 

俺の問いに、親父さんは重々しく頷く。

 

「無意識のうちに振りまいていた呪いだと認識しております。生まれて数時間たった後に、闇は通常の赤ん坊の姿に変化しました。ですが、もうその時既にアレの母親はショック死した後でした」

『…あの小僧の母親が精神に異常をきたしたのも、恐らくは呪いも影響しているのだろう。母体である母親は直接アイツと繋がっていた。故に呪いを濃く受けやすい状態でもあった所に、形容しがたいナニカが生まれ出た。理解出来ないモノが生まれた事による衝撃の大きさが、精神の許容量を遥かに超えた……と言った所か』

 

……ギャスパーがそこまでの存在だって言うのか?

 

「それをギャスパー君本人はご存じなのでしょうか?」

 

朱乃さんの問いに、親父さんは首を横に振る。

 

「いえ、知らせてはいません。何が切っ掛けで真の姿に戻るか分からなかったものですから。いたずらに刺激したくはなかったのです。……事情を知らない近縁者が時間停止の神器を気味悪がっておりましたが、私ども真相を知る者にとっては、時間を停止させる力以上に、アレの正体の方がよほど畏怖すべきものでした」

 

親父さんは口元を手で覆って、重々しく言葉を発する。

 

「…グレモリーの皆さん、そして赤龍帝殿。我々はあれを吸血鬼としても人間としても認識出来ないのです……。異形の存在としか、認識できないのです。アレをハーフとして一応の扱いをさせましたが……それが正しかったのかさえ、分からないのです。そして、正体が分からないまま、私達はアレを外部に出してしまった……」

 

……確かに、親父さんの気持ちも分からなくもない。生まれ出た自分の息子が正体の分からないナニカであるのなら、アレ呼ばわりしてしまうのかもしれない。

 

 

――――でも。

 

「俺達はギャスパーの昔がどうだったのか分からないです。でも、今のギャスパーは悪魔で、俺の後輩で、俺達の仲間です。例え常軌を逸した存在だとしても、その事実は揺るぎありません」

「……ギャーくんは、私の大事なお友達です。初めて出来た、同い年のお友達なんです」

 

小猫ちゃんも一歩出て、凛とした態度でそう言い切った。

それを聞いた当主は、俺達に一言訊いてくる。

 

「…あなた方は、アレの正体をご覧になられたのでしょう?」

「はい。その上での発言です」

 

俺がそう言うと、親父さんは苦笑いを見せる。

 

「…やはり、グレモリー眷属なのですな。リアス様も、同じ事を仰っておりました」

『人間でもなく、吸血鬼でもないと言うのなら、ギャスパーは悪魔です。何せ、私がこの手で悪魔に転生させたのですから。正体が何であれ、紛れもなく、あの子はグレモリー眷属の悪魔ですわ』

 

リアスはヴラディ家当主を前に、毅然とした態度で告げたと言う。

 

――――ギャスパー、お前も、俺達も、主にめっちゃ恵まれてるな。

 

 

当主は小さく笑みを創りながら、ポツリと呟いた。

 

「……我々には理解しがたい感情ですが、成程。あの力を見た上でそう仰るのなら、アレは少なくともあなた方に救われたと思って良いのでしょうな」

 

親父さんとの会話はその後暫し続いたけど、ギャスパーの正体が掴めそうな情報は特に得る事は出来なかった。

 

――――明確だったのは、ヴラディ家はギャスパーの存在を歓迎していないって事だ。

 

恐らくリアスとの会談もグレモリー側にあいつを正式に預ける体で話が進んでいたんだろう。

もうこの地に、ギャスパーの居場所はない……って事だ。

 

『まぁ元々迫害されていたぐらいだ。純血と混血をヒス気味に分けて生活してるこの地じゃ、居場所なんてあってなかっただろうぜ』

 

それは分かってるけど……実の親子だぜ?もうちょっと情の一つでもあっていいと思うよ。……俺とは生まれた環境が違い過ぎるから、言っても無駄だろうけどさ。

 

会談を終えて地下室を出ると、待機していたメイドさんが会釈して、

 

「兵藤一誠様、塔城小猫様、ヴァレリー殿下がお呼びで御座います」

 

……どうやら今度はギャスパーの恩人からのお誘いだ。

 

「イッセー、白音、気を付けなさいな」

「おう」

「…はい」

 

まぁギャスパーの恩人だ、そこまで手荒な事はしないだろう。……精神が汚染されてても、そう言う荒っぽい事とは無縁みたいだし。

 

 

――――何も起こらない事を願うしかないか。

 

 

 




相変わらずのゆっくり進行ですが許してちょんまげ


ぐだ男デレシリーズも書きたい女性鯖が多くおります。

良さんとか、シャルロットとか、ジャンヌとか……

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