ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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ドライグ『俺のプログライズキーは出来ないのか?』
イッセー「この籠手がそうなんじゃねーの?」


MAGIC168『出揃った役者』

 

「…………ウィザード」

 

その場にいた誰かが呟いたその言葉に、誰も反応を示せずにいた。

が、当の俺自身も、まるで鏡を見ているかのような錯覚に陥っていた。

 

「……ふふふ、驚きましたか?」

「お前……一体何者なんだ?」

「…もう一人の貴方自身、と言えばどうします?」

 

質問に質問で返してきやがって…………だが、こいつは本当に一体誰なんだ?

 

さっきから感じていた既視感のような違和感は未だ拭えぬまま、俺は目の前の漆黒のウィザードを見据える。

 

『グハハハハハ! さっきから俺を差し置いて何をつまんねぇ話してんだ!? さっさと戦おうぜ!!』

 

だがそんな沈黙を破ったのは、目の前のウィザードが呼び出した謎のドラゴンだった。

 

『どういう事だ……おいヴリトラ!?』

『…ドライグ、貴様の疑問は最もだ。だが、この俺ですら予想しえなかったっ!』

 

未だに驚愕冷めやらぬ様子でドライグはヴリトラにそう呼び掛ける……って待て。

 

「確かグレンデルって、先生がこの間話してた滅びた邪龍……だよな?」

『あぁそうだ! 奴は俺の肉体があった頃に暴れまくっていた邪龍の筆頭格だっ!!』

『そして暴虐の果て、初代英雄ベオウルフによって完膚なきまでに滅ぼされたのだ……なのに何故存在している!?』

『あぁーん?』

 

グレンデルは声のした方――――俺と、人間サイズの黒い蛇になって匙の影から出ていたヴリトラ、そしてティアに目を向けた。

 

『はッはぁ!! こいつは面白れぇ。あの天龍ドライグに、ティアマットにヴリトラまでいやがる! だが何だ?随分とお粗末な格好だなオイ』

「二天龍は既に滅ぼされ、神器に封印されていますよ」

 

興味深そうにこっちを見ていたグレンデルに、ウィザードがそう答える。

するとグレンデルは哄笑を上げた。

 

『グハハハハハッ!! んだよ、おめぇらもやられたのか! ざまぁねぇ!! ざまぁねぇな!!! なーにが天龍だ!! けど……目覚めの体操代わりには丁度いい相手だッ!!』

『言われてるぞお前』

『クッソムカつく』

 

おいおい、おちゃらけてる場合じゃないだろ!!

 

このドラゴン、相当ヤバいレベルのオーラを振りかざしてる…………生半可な力じゃ通用しそうにないっ!!

 

「ティア、行けるか?」

「あぁ、どうやら……久しぶりに本来の力を出さなければならんらしい」

 

そう言うとティアは巨大なドラゴンの姿を取り、グレンデルを睨み付ける。

 

『おっほ!! まずはテメェが遊んでくれんのか、ティアマット!!』

『あぁ、楽しませてやるさ……滅びるまでなっ!!』

 

そう言うや否や、ティアは一瞬でグレンデルに肉薄すると、魔法を纏った拳を叩きつけた!

 

『グッ……何てなッ!!』

『ッ!!』

 

グレンデルはにんまりと笑うと、お返しとばかりにティアの肩口に噛みついた!

 

『ッ……離せ変態!!』

『グハハァ! んなつれねぇ事言うなよぉ!!』

『私に噛みついて良いのはイッセーだけだッ!』

 

ティアは強引に振りほどくと、グレンデルと距離を取る。

 

「大丈夫か、ティア!?」

『問題ない……が、私一人では骨が折れそうなのは確実らしい』

「分かった…先輩、行けますか?」

「問題ありません。……それに」

 

会長はそう言うと、アーシアに振り向く。

 

「アーシアさん、準備は出来ましたか?」

「はい、何時でも出来ます!」

「え、何を……?」

 

疑問に思う俺を余所に、アーシアは力強い呪文を唱え始める。

すると前方に、金色の魔方陣が出現した!

 

「一体何を…」

「もしもの事を見越して、アーシアさんに呼び出すように予め手配をしておいたのですよ」

「呼び出す?……ラッセー、ですか?」

「ドラゴンなのは正解です――――ですが、それはティアマットさんと同じ、龍王の位置に君臨する黄金の龍王」

『……まさか』

「――――我が呼び声に応えたまえ、黄金の王よ。地を這い、我が褒美を受けよ」

 

アーシアが紡ぐ呪文を受けて、一層金色の魔方陣が光を高める!

 

『まさか、英雄o』

『黙ってろ馬鹿猿!!』

『猿ってなんだせめて蜥蜴にしろ!!』

『それもどうなんだ…』

「龍門……しかも、この光はまさか!」

 

この光は一度見た事があるぞッ!

 

「お出でください! 『黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)』ファーブニルさん!!」

 

アーシアが呪文を唱え終わった瞬間、呼び声に応じた巨躯のドラゴンが姿を現した!

 

グレンデルと同じぐらいの大きさを持った、けど翼を持たない四足歩行のタイプのドラゴン!

全身から力強いオーラを放つファーブニルの角には……何やら布みたいなのが括られていた。

 

『驚いたぞアーシア嬢。何時の間にファーブニルと契約を?』

「アザゼル先生は前線を引かれましたからね。その折に龍王との契約を解除したそうです。ただ、貴重な戦力になりうる龍王をそのまま野に放すのもなんだと言う事で、アーシアさんとの契約を促したそうです」

『確かにアーシア嬢はドラゴンテイマーの素養は見られたが……まさかファーブニルを使い魔にするとはな!』

 

そう言えば先生は魔物使いとしての才能を見ていたし、それに回復しているときに敵に狙われても良い様に壁役になる魔物を用意しても良いとは言ってたけど……それが龍王かよ!?

 

「リアスから聞いていた通り、契約を結べたようですね。龍神オーフィスの加護を得られたのも納得できます」

「加護って……先生が言ってたやつですか?」

 

道理で最近、アーシアとオーフィスが何か話し合っていたのを頻繁に見かけたわけだ。

 

「えぇ。アーシアさんのオーラにオーフィスの神通力らしきものが付与され始めたようです。調べてみたところ、直接の能力向上はないものの、ご利益によって運勢やドラゴンとの相性が底上げされていたそうです」

「…確かに、何かよく見たら、オーフィスっぽいオーラを感じる」

 

薄っすらとだけど……多分あの次元の狭間で組手していてオーフィスのオーラを間近で見ていたから見えるってぐらいのもんだけどね。

 

『恐らくだが、オーフィスも無自覚の内に送っていたんだろう。色々と世話もしていたぐらいだし、その感謝の気持ちってとこだろう』

「同様に、紫藤イリナさんも加護を受けているそうですよ」

「運勢がバッチリ上がったわ! この間もショッピングセンターのくじ引きで二等当てたの!」

 

何そのすっげー微妙な加護。それは嬉しいのか?

 

「…そう言えば、俺に加護はないの?」

『お前の場合は憑かれてるって言った方が正しいんじゃねぇかな』

『だな』

『…恐らく、どの神々でも祓えないだろうな』

 

神様まで匙投げるレベルなの!?

 

「…とまぁ、オーフィスの仲介もあり、ファーブニルはアーシアさんと契約を結びました」

『ちょっと待て』

 

と、ここでティアが待ったをかけた。

 

「どうしました?」

『ファーブニルは世界中の秘宝をコレクションするのが趣味ってぐらいのドラゴンだ。契約する以上、代価を払わなければならん筈だ……払えたのか?』

「えぇ……しかし、その代償は大きかったようです」

「代価って、何を支払ったんですか?」

 

俺が聞くと、何故か会長は口ごもってしまった。

 

「…それは……私の口からはとても……」

「教えてくださいよ、先輩! 大事な家族のアーシアは、一体何を犠牲にしてファーブニルとの契約を得たんですか!? ま、まさか生命力とか……!?」

 

だとしたら俺はファーブニルを絶対に許す訳にはいかねぇ!!

アーシアは俺の大事な家族なんだ、その家族に何か負担を強いるような事があるなら、俺はそれを助けてあげたい!

 

 

約束したからな――――俺はアーシアの最後の希望になるって!

 

 

すると、ソーナ先輩は恥ずかしそうに小さく呟いた。

 

「そのぅ………ツ……です」

「え?」

 

聞こえないっすよ、ソーナ先輩!!

そう思った瞬間、アーシアの口からその代価が告げられた。

 

「――――パンツです!!」

 

 

…………………………………

 

 

「はぁ?」

 

ぱ、パンツ?

 

『……お前ら、あれを見ろ』

 

と、ここでドラゴンが何かに気付いたらしく、俺達に語りかけてきた。

 

「あ、あれって?」

『このドラゴンの角に括られた布だ……』

 

角…………って。

 

「『パンツじゃねーか!!!』」

 

俺とドライグのツッコミが綺麗に重なったのも無理はない、その布は何と――――パンツだったからだ!

 

そう、女物のパンツだ!!

 

するとファーブニルは、その重い口を開いた。

 

 

 

『――――お宝、おパンティー、いただきました。俺様、おパンティー、嬉しい』

 

……………

 

「おパンティー」

『おパンティー』

『…おパンティー』

 

 

――――ただの変態じゃねーか!!!!

 

あのドラゴン、あんな重々しい見た目しててパンツを代価に要求したってのか!?

うちのドライグだってあそこまで酷くはねーぞ!?

 

「おいドライグ、どういうこった!? このドラゴン、お前以上の変態だぞ!!」

『………』

「ドライグ!?」

 

返事がないぞ!! どうした!?

 

『…こいつ、ショックで呆けてるぞ』

「マジでか!?」

 

ドライグも知らなかったのか!?……って事は何か、アザゼル先生も自分のパンツを与えていたのか!?

 

「…いえ、アザゼル先生は恐らく、ちゃんとした宝物を与えていたと思います」

 

ですよね!見たところ男物のパンツには興味を示さなそうだし!!

 

「ファーブニルさん! 私達と一緒に戦ってくれますかっ!!」

 

恥ずかしさを堪え乍ら、アーシアはパンツ龍王にそう訊く。

 

『――――良いよ』

「本当ですかっ!?」

『でも、働くのにはそれ相応の報酬、付き物。――――お宝、ちょーだい』

 

……こいつはっ。

 

『…酷過ぎて鼻水出て来た』

『傷は深いな……お前の事だから、多分そう堪えてはいないだろうが』

 

いや、ホントだよ!俺も何なら鼻水出してぇよ!!

 

「――――け、契約の対価ですもんね。わ、分かりました!」

 

アーシアは恥辱に耐えながら、肩にかけていたポシェットから――――水色の可愛らしいパンツを取り出した。

 

「あ、あれはアーシアのお気に入りの水色パンツ!」

「アーシアさん、それを上げちゃうの!?」

 

ゼノヴィアとイリナから告げられた事実に、俺は戦慄する。

 

「アーシアぁ!!こんなドライグすら霞むド変態ドラゴンにお気に入りのパンツを上げる必要なんてないぞぉ!!! おいパンツ野郎!! 何で代価にパンツを求めやがったァ!!?」

『おパンティー、お宝。俺様、たくさんの財宝と、明日のおパンティー、求める』

 

臆面もなく言い切りやがった! 後オーズの名台詞?をそんな変態発現の為に変換するんじゃない!!

 

風評被害も甚だしいからな!!

 

「なぁ、ヴリトラ……ファーブニルって、あんなんだったのか?」

『知らん』

 

うわ、匙の質問を則スルーしたよ。やっぱヴリトラにとっても悪夢に等しいんだな、この光景は。

 

「て、ティアは……」

『……』

 

ティアもフリーズしてるーーー!

やっぱファーブニルを知ってる人達は皆こうなっちゃうの!?

 

「待て! アーシアが差し出す事はない! 私のをやろう!!」

 

そうアーシアを庇うように進言したゼノヴィアを、イリナが制止する。

 

「何を言ってるのゼノヴィア! その戦闘服って下にパンツ穿いてないじゃないの!!」

「『穿いてないだとぉ!!!?』」

『ハモるなこんな事で復活するなこの同レベルの変態共がァ!!』

 

驚愕の新事実! 教会は何て変態戦闘服を開発してんだ!?

 

『俺様、金髪美少女のおパンティーが良い。パンツシスターのお宝、欲しい』

「うちのアーシアはパンツシスターじゃねぇっつの!!」

 

思わず俺はファーブニルの鱗を殴る! けど全く堪えちゃいねぇ!!

 

「――――あげます!!」

 

アーシアは顔をこれ以上ないぐらい真っ赤に染め上げつつも、変態の鼻角に水色のパンツを引っかけた!

 

その瞬間だった――――黄金の龍王は鼻の穴を思いっきり広げて、一気に酸素を吸い込み始めたのは。

 

「…まさか、いきなり力を?」

 

解放するのか……そう思っていた俺達の眼前。

 

『アーシアたんのおパンティー、くんかくんか』

 

 

こいつは思いっきり、恥じらうことなく、パンツの匂いを嗅ぎ始めやがった――――

 

 

「いい加減にしろやこの変態野郎がぁぁぁぁっ!!!!」

 

俺はもう一度殴る!それなりに力を込めて!!

 

『いい加減にしろファーブニルッ!!!』

 

そうだドライグ、お前からも言ってやれ!!

 

『俺だってそう言う事を一度はしてみたいんだぞぉォォォォォオ!!!!!』

 

Disappearッ!!!!!!

 

「もうお嫁に行けません!!」

 

恥ずかしさが許容量を超えたのか、アーシアは膝を追って泣き崩れる!

 

「アーシア心配するな!! 俺が絶対に責任を持ってやるから、安心しろぉッ!!!」

「うぅ、イッセーさん……はいっ! 不束者ですが、宜しくお願いしますッ!!」

「おうさ! こんなくそったれな運命があってたまるかよ!!」

 

神様、あんた残酷すぎるぞ!!

 

『随分ひっどい寸劇を見させられたが……どうやらやっと暴れられるみたいだなァ!!』

「あぁ…こっちもこの怒りをたっぷりと発散させてもらうぜッ!!!!」

 

お前を屍に戻さねぇとなぁ!!

 

 

 

 

「アーシアが安心してお嫁に行けねぇんだよぉ―――!!!!」

 

 

いざ、邪龍退治の始まりじゃぁぁぁぁアッ!!!

 

 




果たしてFate世界のジークフリートがこのファーブニルを見たらなんて思うのやら……

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