ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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多分、主人公?が出ます。多分

イッセー「ラヴィニアさんってあんなにおっぱいデカいんだな」
ヴァーリ「如何に君でも彼女に手を出したら許さないぞ」
イッセー「出さねーよ!人の彼女に!」
ヴァーリ「や、彼女では…ない。うん、ない」
曹操「リア充死ね!!!」

D×D番外編は実は読んでないのでラヴィニアさんはヴァーリの嫁にします。
ゴメンなさい、鳶尾君


MAGIC147『牽制と復活』

 

冥府――――冥界の最下層に位置する死者の魂が選定される場所に俺ことアザゼルは数人のメンバーと共に赴いていた。

 

入って直ぐに死神共が群がり、敵意を隠さない眼差しを向けてくる。

 

まぁそうなるよな、何せ事前連絡なしでの訪問だ。

向こうからしてみれば襲撃に近い来訪になる訳だしな……っと、俺がなぜここに来たかと言えば、今回の騒動に一枚噛んでやがるハーデスに一言物申す為と、好き勝手指せないためだ。

 

悪魔と堕天使への嫌がらせに関しちゃどんな勢力よりも執念深いあの骸骨オヤジの事だ、今の冥界に絶妙なタイミングで横やりを入れてくるのはほぼ確実だ。

 

それを防ぐ、牽制の意味も込めての電撃訪問と相成った訳さ。

 

ハーデス神殿を歩いて暫くして、一際大きい祭壇にたどり着いた。

……お出ましだな。

 

到着して直ぐに、祭儀場の奥から嫌なオーラを纏った骸骨オヤジ――――ハーデスが死神を複数引き連れて登場なさった。

……こないだの最上級死神のプルートがいないのが気になるな。

 

まぁ今はプルートの事は置いておこう。

 

「お久しぶりです。冥界の魔王ルシファー、サーゼクスに御座います。冥府神、ハーデス様。急な来訪、申し訳御座いません」

 

ハーデスを確認するやいなや、俺の同行者の一人――――サーゼクスが一歩前に出てハーデスに挨拶をする。

 

…あの疑似空間から帰還した俺は、今回の一件を全て包み隠さず話した。

許してもらおうとも思っていなかったし、許される立場でもなかった。だが俺はそれでもサーゼクスに一言「済まなかった」と謝罪した。

 

此奴は俺からの情報を顔色一つ変えずにただ黙って聞いていた。俺を一切咎める事すらしなかったのだ。

……リアスや、そのリアスが愛しているイッセーをあんな目に遭わせちまった手前、俺はお前に殴られても良い覚悟だったよ。

 

 

俺はそれだけの事を犯したんだ――――。

 

サーゼクスは進撃する魔獣の群れと各地で暴れ出した旧魔王派の対応、民衆の保護優先を配下に伝達し終えた後で、俺にこう言ってきた。

 

「冥府に行く。アザゼルも同伴してほしい」ってな。

この混乱に乗じてハーデスが何か仕出かすのではないか、そうサーゼクスも勘ぐっていたらしい。

 

言っても聞かないであろうハーデスを相手にどう出るか……その答えが魔王自らの訪問だった。

 

ハーデスは眼球のない眼孔の奥を不気味に輝かせて、笑みを漏らす。

 

《貴殿等が直接ここに来ようとは……ファファファ、これはまた虚を突かれたものだ》

 

その割には余裕なこって……とは言え、此奴の実力は本物だ。

いざ俺達と戦う事になっても勝てる、そう踏んでいるんだろう。

 

ミカエルもこちらに顔を出したいと言っていたが、流石に天使長が地獄の底まで来るってのは体裁的に如何なものかと思って制させてもらった。

 

ハーデスの視線が俺達の後方にいる者に向けられた。

 

《そちらの天使もどきは?尋常ならざる波動を感じてならぬが》

 

後方にいるのは、神父服に身を包んだブロンドにグリーンの瞳が特徴の青年。――――だがその背には、十枚にも及ぶ純白の翼が生えていた。

 

青年は視線に気づき、会釈した。

 

「あ、これはどうも。『御遣い』のジョーカー、デュリオ・ジェズアルドです。今日はルシファー様とアザゼル様の護衛でして。まー、多分いらないとは思いますけどもね。「いちおう」とミカエル様に命じられたものですから。天使のお仕事っすお仕事」

 

……噂には聞いていたが、かなり軽い調子だな。多分イッセーとはすぐに仲良くなれるタイプだ。

変わり者のジョーカー……神滅具『煌天雷獄』の所有者にして、空を支配する『御遣い』。

 

《……噂に聞く天界の切り札か。その身に宿す神滅具は世界の天候を自在に操り、支配できると聞く……。ファファファ、ミカエルめ、まさかジョーカーを切るとは》

 

それだけの存在なんだよ、お前は。

一応、表には俺が連れて来た刃狗も待機させているがな。

 

《ファファファ、蝙蝠と烏の首領、それに神滅具が二つ……この老骨を相手にするには些か苛めが過ぎるのではなかろうか?》

 

どの口がほざきやがる、これだけ用意しても退けそうな実力持ってる癖によ。

…って、表に待機している刃狗も補足されてるのか。

 

《茶を飲みながらその方らと話すのも吝かではないのだが……敢えて尋ねよう。何用か?》

 

…んの野郎は、何処まで人の神経逆撫ですりゃ気が済むんだ…!

だがサーゼクスはあくまで自然に、質問に答える。

 

「先日、冥界の悪魔側にあるグラシャラボラス領で事件がありました。中級悪魔、及び上級悪魔試験を執り行うセンター会場付近に存在する某ホテルにて、我が妹とその眷属、ここにいるアザゼル総督が『禍の団』の襲撃を受けたのです」

《あぁ、それか。報告は受けているが》

「そこで総督方は死神からも襲われたと聞き及んでおります」

《何でも貴殿の妹君がアザゼル殿と結託して、かのウロボロス――――オーフィスと密談をしていると耳にしてな、調査を頼んだのだよ。折角、どの勢力も協力態勢を敷こうとしている最中、そのような危険極まりない裏切り行為があっては全勢力の足並みが乱れると言うものだからなぁ。それが和平を誰よりも謳うアザゼル総督自らとなればことも大きくなるであろう?敬愛する総督の是非が知りたくなってなぁ。配下の者に調査を頼んだのだよ。仮にそのような行為があった場合、最低限の警告をするように命じただけの事》

 

ハーデスは会話の端々にワザとらしい敬意を払ってそう宣った。

 

……腸が煮えくり返りそうな物言いだな。

正直、この野郎ののど元に光の槍を突き立ててやりたいぐらいだ。

 

プルートが冗談半分でほざいてたことをそのまんま言いやがってよ!

あんな殺意と嫌がらせに満ちた最低限の警告があってたまるかよ!

 

ハーデスは肉のない顎を摩りながら続ける。

 

《だが、それはどうやら私の早とちりだったようだ。もしそちらに被害が出てしまっていたのなら、非礼を詫びよう。食材も望むのであればなんなりと言うが良い。私の命以外ならば、大概のものは叶えてやらんでもないが》

 

……上から目線でのこの物言いと態度、この野郎ワザとやってるのか?

 

とは言え怒りのボルテージが上がっている俺は、すぐ横で俺と同じぐらい怒っているサーゼクスを見やる。

 

「そうですか。早とちり……成程。良くない噂を小耳に挟んだもので、それの確認をしたく参った部分もございます」

 

…本題に入る気か。

 

「ハーデス様、貴方が『禍の団』と裏で繋がっていると言う報告を受けております。英雄派、旧魔王派どもに貴方が手を貸している……と。かのサマエルを使用したと言うではありませんか。もしこれが本当だとしたら、重大な裏切り行為です。立場は違えど、あれを表に出さない事だけは各勢力で合意だった筈です。私としてもあなたの潔白を疑うつもりはないのですが、一応の確認としてサマエルの封印状態を見せてはいただけないでしょうか?」

 

ハーデスの野郎がサマエルを使用したかどうかは封印されている術式の経過具合、そしてあの時イッセーが与えた攻撃の痕が残っているかで判別出来る。

 

白ならば大昔に施された封印術式で、サマエルも無傷。黒ならば、最近施された封印術式で、イッセーの攻撃痕も僅かだろうが残っている筈だ。

 

それさえ確認できれば、この野郎を糾弾できる口実が得られる。

 

だがハーデスはこの質問に対し嘆息した。

 

《下らんな。私は忙しいのでな。そのような疑惑を持たれている暇などない》

 

この野郎、自分に都合の悪い事はガン無視かよ!

 

小学生か!!

 

 

追いかけようとする俺を、サーゼクスが手で制した。

 

「…分かりました。では、こうしましょう。貴方に疑惑の目が向けられているのは事実。そこで、冥界での魔獣騒動が収まるまで、私達と共にこの祭儀場にいてもらいたいのです」

 

サーゼクスが出した案は、この場にハーデスを繋ぎ止める事。

此奴が冥界の危機に横やりを入れないよう、自らが監視をすると言うのだ。

 

それを聞いたハーデスは、歩みを止めて此方を振り返る。

 

《面白い事を口にするな、若造。そうだな……ならこれはどうだろう。――――おぬしが真の姿を見せると言うのであれば、考えてやらんでもないが》

 

 

――――っ。

 

まさかそれを言うか、このくそ野郎は。

 

ハーデスは眼光を光らせて続ける。

 

《噂ではあるが聞いておる。サーゼクスと言う悪魔が何故『ルシファー』を冠するに至ったか。…それは『悪魔』と言う存在を逸しているが故だ、とな》

 

………一瞬の静寂、そしてそれを裂くようにサーゼクスは頷いた。

 

「――――良いでしょう。それで貴方がここに留まってくださるのならば安いものだ。ただし、身辺の者達は離れさせた方が良い。――――確実に消滅するので」

《ほう、それは面白い。私の周囲には上級、最上級死神も列しているのだが……それでもお主の元には偽りがないと思えてならぬ》

 

サーゼクスはハーデスの周囲を守護する死神達の敵意を意に返さず、上着を脱ぎ捨てる。

そのまま俺とデュリオに、後方に下がるよう視線を配らせてきた。

 

……本気でやるつもりか、サーゼクス。

 

見守る俺とデュリオの前でサーゼクスは魔力を高め始める。

滅びの魔力がサーゼクスから発生して、紅く紅く体を染め上げていく。

 

刹那――――この神殿全体が振動し始めていた。

 

…サーゼクスの魔力を受けて神殿が震え出したのだろう。かなり頑強に作られているであろうこの神殿が悲鳴を上げ始めた証拠だった。

祭儀場の至る所、壁にも床にも天井にも激しく皹が走る。

 

……いや、この振動は神殿全体じゃない――――この辺一帯の地域丸ごと、サーゼクスの魔力で震えている……!

 

やがてサーゼクスの魔力の余波が周囲を消し飛ばし、体が完全に包まれると――――莫大な魔力がこの場内全体を包み込んだ!

 

 

…………神殿の振動が止み、静寂が訪れた祭儀場。

 

 

その中央に現れたのは、人型に浮かび上がる滅びのオーラだった。

 

『この状態になると、私の意志に関係なく滅びの魔力が周囲に広がっていく。特定の結界か、フィールドを用意しなければ全てのものを無に帰してしまう。……この神殿が強固で幸いでした。どうやら、ここはまだ持つ様だ』

 

滅びの化身……口調はサーゼクスのもの。

 

これが…サーゼクスの真の正体か。

 

とんでもねぇ質量の消滅魔力が人型に圧縮された姿とでも言えばいいのか……だがそれにしたって、肌に感じるこのオーラの性質は……!

 

この魔力の質量からしても……前魔王ルシファーの十倍に至るんじゃないのか!?

 

 

――――以前、グレモリー家で厄介になった時、サーゼクスの父、グレモリー現当主が俺に語った事がある。

 

「自分の息子は、悪魔とカテゴライズして良いのか分からない」――――と。

 

グレモリー卿、貴方の仰った意味が良く分かったぜ。

前魔王政府との戦いでサーゼクスが前魔王に血筋を相手にエースとして活躍したと言う理由も頷ける。

 

サーゼクスとアジュカ、二名のバカげた力量の――――『超越者』

 

……超越者と呼んでいい悪魔はもう一人だけ存在する。

 

それに、悪魔だけじゃない。

嘗ては天界にも、超越者と呼んでいい奴がいた。

 

まぁ、この二人は姿を晦ませて久しいんだが。

今この情勢で出てこれたら厄介極まりないだろう。

 

「……ハハハ、いやーこりゃ護衛はいらないかな」

 

俺の隣でデュリオが苦笑い気味にボヤいていた。

まぁ、こんなの見せられたらそう感じても仕方ないわな。

 

『これでご満足いただけただろうか、ハーデス殿』

 

サーゼクスの言葉にハーデスは不敵な笑みを漏らす。

 

《ファファファ、バケモノめが。成程、前ルシファーを遥かに超越した存在だ。魔王と言うカテゴリーすら逸脱するものだ。いや、悪魔であるのかすら疑わしい程の力を感じる。――――お主は何なのだ?》

『私が知りたいぐらいですよ。突然変異なのは確かですが。――――どちらにせよ、今の私ならあなたを消滅させれます』

《ファファファ、冗談には聞こえない、か。この場で争えば確実に冥府が消し去るな》

 

あぁ、今のサーゼクスの姿を見せられたら、俺も冗談には聞こえないぜ。

この姿であれば、ハーデスに余裕で対抗できる。嬉しい誤算だ。

 

 

サーゼクスを見据えるハーデスの元に、物陰から死神が現れ、何かを耳打ちした。

 

何かの報告を受けたハーデスは祭壇に設置されている載火台の炎に手を向けると、その場に映像が映し出された。

 

そこではとある連中が死神の大群相手に大暴れしている光景が映っていた。

 

『おらおらおら!俺っちの如意棒に何処まで耐えられるんでぃ、死神さんよぉ!!』

 

如意棒を振り回すカカロット……もとい美猴の姿が。

 

その横では巨大なゴーレム、ゴクマゴクが剛腕を振るい死神を一斉に吹き飛ばしていく。

対魔獣用の機関銃が火を噴き、その合間を縫うように黒歌とルフェイの合体魔法攻撃が更に吹き飛ばしていく。

 

その付近ではアーサーが聖王剣を振るい、百単位の死神を一人で屠っていき、神速のスピードでフェンリルが死神を切り刻み、淡い光を放つドラゴンの鎧を纏ったカイトの光の一撃が、死神を塵も残さず消し飛ばした。

 

 

――――ヴァーリチームだ。

来るだろうとは思ってはいた、やられっぱなしのチームじゃないのは分かり切っていたからな。

仕返しをするなら曹操の一派化、旧魔王派、もしくはハーデスだ。

 

にしても最高なタイミングで仕掛けてくれやがって、最高じゃねーか馬鹿野郎!!

 

《…貴様の仕業か。烏の首領よ》

 

ハーデスの声音が最高に不機嫌になっていた。

 

……くく、それだよそれ。

俺が見たかったのは。

 

俺はこらえきれずに、嫌みに満ちた笑みを作ってこう言ってやるのさ。

 

「しーらね」

《……ッ!!》

 

それを聞いたハーデスはオーラが激情の色となった。

 

おーおー、随分ご立腹な様子で。万全のアイツら舐めてると痛い目見るって漸く実感してくれたなぁ。

 

骸骨神よ、ヴァーリチームは今まで各勢力の追撃部隊を全て退けた化け物揃いなんだからよ。

 

「死神を総動員しなきゃ白龍皇の一派は仕留めきれないでしょうな。それは貴方がここで指揮でもしなきゃ駄目でしょ」

 

これでハーデスが冥界に対して横やりを入れられなくなったのは確定だ。

冥府でヴァーリチームが暴れて、終いにゃサーゼクスまで本気になっているんだ、冥府への嫌がらせどころじゃないぜ。

 

ハーデスからしたら事前に打ち合わせしたんじゃないかって気分だよな。

 

『えぇ、ですから貴方はここに留まってもらうしかないのですよ』

 

迫力と緊張に満ちた空間で、サーゼクスは指を一本立てた。

 

『一つだけ。これは魔王としてではなく、一個人としてです。ですが、あえて言わせていただこう』

 

滅びの化身は憎悪に満ちた眼孔で冥府の神を鋭く睨み付ける。

 

『冥府の神ハーデスよ。我が妹リアスと我が義弟兵藤一誠に向けた悪意、万死に値する。この場で立ち会う状況となった時は覚悟していただこう。――――私は一切の手加減も躊躇もせず、貴殿をこの世から滅ぼし尽くす』

 

 

ハーデスがただ一つのミスをしたとすれば――――この男を激怒させた事だ。

いや、二つか。

 

「骸骨神様よ。俺も一応キレてるって事、忘れんじゃねーぞ?まぁ極めて個人的な恨みなんだけどよ、それでも一言物申させてもらう……俺の教え子共を、泣かせんじゃねぇよ……ッ!!」

 

光の槍をハーデスの眼前に突き付けて、そう言ってやる。

 

ま、これでハーデスの件はクリアした。

リアス達、後は任せるぜ?

 

 

それとイッセー、そろそろ帰ってこないと、主人公の座奪われちまうぜ?

 

 

 

 

 

 

「へっくしょん!!」

「イッセー、風邪?」

「いや、誰か噂してんのかねぇ……」

『お前忘れられてるんじゃないのか?』

「変な事言うな!!……腹減ったけど、漸く俺のショータイムだぜ!」

 

 

そして、かの希望が帰還するときは、近い――――

 

 

 




そろそろこの章も終わりですねぇ

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