ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
イッセー「俺は?」
ドライグ『アニメやったんだし良いだろ』
試験日当日。俺達は兵藤家の地下にある転移魔方陣に集結していた。
服装に関しては何時もと同じ、駒王学園の制服だ。
何しろこれがユニフォームみたいなもんだからな、俺達グレモリー眷属の。
『高校試験の時の様だな』
それは俺も思った。
因みに試験会場である昇格試験センターに行くのは今回試験を受ける俺達3人と、マネージャーのレイヴェルだ。
他の皆は近くのホテルで待機する予定だそうで。
「ん、あれ…………そういやギャスパーは?」
周りを一瞥すると、ギャスパーだけいない事に気付いた。
「あぁ、アイツなら一足早くここで転移して、冥界にあるグリゴリの神器研究機関に行ったよ」
「一人でですか?」
先生は「あぁ」と頷いた。
「バアル戦が終わって直ぐにな、アイツ、泣きながら俺の所に来たんだよ。先輩達の様に強くなりたい――――ってな」
ギャスパー……。
「引きこもりの上に臆病だったアイツが、それだけの決心をして一人でグリゴリの門を叩いたんだ。生半可な決断じゃない。今頃、研究員指導の元で、自分の神器と向き合ってる筈だ。それと、あの試合で見せた、お前のエレメントも御せる様にってな」
『基礎だけでなく、自分の能力と向き合うほど切羽詰まってるって事か』
……ギャスパー。お前がそう決めたんなら、俺は何も言わない。
だから、必ず何かを掴んでこい。
「オーフィス達は?」
「俺達と一緒だ。流石に会場まで行ったら俺の首が飛ぶ」
だけどホテルはOKなのか……それも微妙なラインだな。
「それと、お前らの試験が終わり次第、一度サーゼクスの元に出向く。良い機会だからな。オーフィスもお前が行くのなら付いていくと言っている。だから、お前達も試験が終わったらサーゼクスの所に行くぞ」
「マジっすか」
そこまで考えてたのか。
『ここで魔王と出会わせる事には大きな意味があると言うことか』
「ああ。少しでも良い方向に向かわせたいからな。無理だと思われていた話し合いが可能かもしれない。これだけでも大きな一歩だ。オーフィスは何を考えているのかは分からんが、だからこそ、話し合いで戦いを避けられる可能性があると俺は見ている。うまくいけば『禍の団』を瓦解させ、分散できるだろう。そうすれば各個撃破も可能になる。それにオーフィスの『蛇』を失えば、奴らの打倒も早まるだろうさ。この案件を申し出てきたヴァーリには感謝したいところだ」
ヴァーリ様々だな。
「今度お礼言っとかなきゃな」
「礼って……お前、相当オーフィスに入れ込んでんだな」
「そりゃそうでしょ。オーフィスは俺の友達ですし」
そう当たり前の様に言い切った俺を、先生はポカンとした顔で見詰めた。
だけど、次の瞬間には糸が切れた様に笑った。
「……ハハッ!まさかテロリストの親玉相手にそう言うとはな」
「だって、前に一度助けてくれたし」
俺が覇龍を使い暴走した時も、アイツは俺を助けてくれた。
だから信じられる、それだけだ。
『もしかすれば、オーフィスを驚異から守ろうとしたのやもしれん』
『……驚異?曹操の事か?』
『ソイツもだろうが……他にも何者かがオーフィスを狙っている可能性も懸念するべきだ。何せ無限の体現者だ、その力を欲する奴は多いし、そういう奴等は綠でもない連中ばかりだからな』
そうか…………。
『ま、今そんな事を考えたって仕方ない。試験に集中しろい』
お前が言い出したんだろうが!
「じゃ、行ってくるよ」
「イッセー様」
「ん?」
魔方陣の上に乗ろうとした時、グレイフィアに呼び止められた。
何だと思い振り替えると――――ちゅっ、と湿り気を帯びた音が響いた。
「は……」
「――――御武運を。イッセー」
「……おう!」
グレイフィアからの激励ももらい、俺達は試験会場へと転移していった。
ーーーー
……光が止むと、そこは知らない光景だった。
ここが試験会場か?
「ようこそお出でくださいました。リアス・グレモリー様の御眷属の方々ですね?話は伺っております。一応の確認を出来るものをご呈示ください」
スタッフの人達に言われ、俺達はグレモリーの紋様が入った印と推薦状を見せた。
確認が取れたことで、中へ案内された。
「ここはグラシャラボラス領にある昇格試験センターなんだよ」
「へぇ」
そう言えば試験会場の事全く聞いてなかったな。
……と、そんなこんなで連れてこられたのは、受付みたいな場所だった。
…………思ってたより少ないんだな。
「正面の受付が中級悪魔試験の窓口で、向こうの端にあります窓口が上級悪魔試験の受付になります」
俺は向こうか、そう思いつつ振り向くと…………全然受験者がいなかった。
「え、上級って俺だけなのか?」
「そりゃあ、今の冥界じゃ昇格試験は少ない方だよ。イッセー君が受ける上級悪魔試験となると5、6人いたら多い方じゃないかな」
マジかよ…………って、そうなったら益々俺達は特例なんだなと実感させられるぜ。
でも冷静に考えたら今の冥界は戦とかないからな。
稼業の契約でデカいのを取るか、レーティングゲームで活躍しない限りはそうそうないか。
にしたって少なすぎるけどな!
「そうだ、イッセー君」
「んあ?」
木場は真剣な面持ちで、俺の横に立っていた。
「君に出会えて良かった。君に出会わなければ、僕は今ここには立っていなかっただろうから」
「……大袈裟すぎるだろ。お前ぐらいなら、俺と出会わなくても余裕でここに立てたって」
「大袈裟じゃないさ」
木場はきっぱりと言い放った。
「僕はここまで君の生き様、戦いを見てきたからこそ、今ここに立っていると断言できる。僕にないものを、君は沢山見せてくれた。それを知らなかったら、僕はここにはいないよ」
……ったく、キモいこと言いやがって。
「…………そんだけ言うんだ。試験落ちたら殴るからな」
「ハハ、肝に命じておくよ」
木場はそう笑うと、俺に手を差し出してきた。
俺は頬を掻きながら、それに応じる。
「健闘を祈ってるよ」
「お前もな」
そう語る俺達の握手に、朱乃さんの手が重ねられた。
「うふふ、熱い友情ですわね。――――皆で必ず、合格しましょう」
「「はい!」」
ここまで来たんだ、目標は全員合格だ!
「皆さん、書類を取ってきましたわ!あちらのスペースで記入しましょう!」
レイヴェル先導の元、俺達は受付用の書類に諸々記入する事に。
父さん、母さん。
上級悪魔試験、始まりました!
早く来週になれ!!