ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
ドライグ『ひぃっ!!』
ドラゴン『貴様は怯えなくとも良いだろう』
さて、兎にも角にも中間テストを控える中で俺は昇格試験の勉強も並行してやっているが……如何せん覚える事が多すぎる。
『まぁ根っこの方は馬鹿じゃねぇから何とかなるだろ』
けどなドライグ。
戦術面はまぁ何とかするとして、勉強に関してはマジで大変なんだよ。
しかも悪魔の事なんて一年も経ってないからあんまり覚えてられないし……このままじゃ俺の頭パンクするよ。
『なら断れば良かったろうに』
……確かに、もう一年待ってから地道に昇格していっても良いかとも思ったけど、魔王様達が推薦してくれたんだぜ?
それを無下に断るってのも何だか悪いだろ?
…それに、昇格すればそれだけ俺の活動や発言権だって大きいものになる。
そう考えたら、悪い話じゃないと思ってさ。
『駒さえ持てれば眷属だって増やせるしな』
そうそう、何も悪い話じゃないんだよ……まぁ、勉強は苦手だけど。
「あれ、兵藤」
「んぁ?…よぉ、匙」
と色々話してると、偶然匙と出くわした。
ーーーー
まぁ立ち話もなんだと言う事で、俺は生徒会室にお邪魔させてもらった。
「そういや昇格の話聞いたぜ。おめでとう」
「サンキュー。…まぁ、まだ実感湧かないけどな」
俺はそう言うが、匙は「いやいや」と首を横に振る。
「俺は妥当だと思うぜ。お前、かなりの死線を潜り抜けてるじゃん。神様との戦いや京都での戦いにも参加したけどさ、あれは何回死んだって可笑しくないじゃん」
「生き残っちゃったけどな。死んでたら楽だって何回思った事か」
「でもお前はちゃんと生きてる。それが証明だろ?」
…そりゃそうか。
「一本取られたな。あんがと、匙」
「おう。そう言えばお前だけなんだな、飛び級で上級試験受けるのって」
「あぁ。何故か俺だけ特例らしい」
木場と朱乃さんも上級悪魔名乗っていい実力だと思うんだけどな。
「あーあ。俺も速く昇格したいぜ。ま、当面は強くならなきゃな」
「問題ないだろ。龍王のヴリトラだって付いてんだからよ」
「いや、シトリーのメンバー全員で強くなりたいんだ。最近会長はグリゴリに相談してんだ」
「グリとゴリに?」
「あぁ。人口神器についてさ」
確か先生も使ってるやつか。
「あぁ。俺達シトリー眷属はさ、アザゼル先生の実験によく付き合ってるんだ。一つの成果として、今度シトリー眷属の非神器所有者に人口神器を取り付けてみようって話になったんだ」
「へー、いい話じゃん」
「けど人工物なわけだから、出力も安定しないし、回数制限もあるから、まだまだ改良の余地があるんだ。けど強くなれるのは確かだし、やっておいて損は無しだ。それに人口神器の研究が進めば近い将来、悪魔の戦力になるかもしれないだろ?」
「確かに、一理あるな」
俺が頷くと、匙は楽しそうに語る。
「俺が貰う訳じゃないけど、結構いろんな種類があるんだ。パワー、サポートとかタイプ別もあれば系統も属性系、カウンター系、結界系とか、種類も豊富なんだぜ。俺達みたいにモンスターと契約、封印したタイプもあるんだってさ」
「封印と契約ってどっちもカード系のヒーローでありそうだな」
「俺もそう思った!」
じゃあ先生が使ってるのは契約系なのか。
『あぁ。ファーブニルとの契約で体を成してる訳だからな』
俺もちっとは神器について研究してみようかな。
覚えてて損はないだろうし。
「あー、兵藤君だ」
と、ここでお下げの少女――――シトリー眷属の『僧侶』草下さんがやって来た。
後ろには他の眷属メンバーも勢ぞろいだった。
「昇格推薦おめでとー!」
「サンキュー。ま、やれる所まで頑張るよ」
礼を返していると、一年の『兵士』仁村さんが匙に何やら言っていた。
「元士郎先輩。会長が例の資料を取りに行けと仰っていましたよ」
「おう、了解」
そこへ更に二年のもう一人の『僧侶』花戒さんが匙に用件を告げた。
「元ちゃん、私の用件も会長からの用事なの」
「マジか、ブッキングしちまってるな……。取り合えず、近い所から行くか。じゃーな兵藤」
「おう、頑張れよ」
匙は手を上げて応えると、花戒さんと仁村さんを連れて行った。
そーいやあの二人の女の子、匙を巡っての恋のライバルだって聞いたな。
アイツも罪な男だねぇ。
『『お前/貴様が言うなよ』』
ハモるほどかよ!?……まぁ、否定はしないけど。
と、ここで俺にそれを教えてくれた『戦車』の由良がサイン色紙を差し出してきた。
「兵藤、いきなりで申し訳ないが、サインをくれないかい?」
「俺ので良いの?」
「勿論。この間のバアル戦、記録映像で見て感動したよ。最高の殴り合いだった」
「うんうん。それにあの鎧姿、とっても綺麗だったわ」
どうにも由良は俺のファンらしい。
何でも泥臭い男が好みなんだとか……俺、そんなに泥臭いかな?
『大体殴り合ってるし、間違いではないだろう』
まぁ、それもそうか。
けどこう言うファンがいるのは嬉しいもんだ。
由良は美少女だから猶更だぜ。
因みに今褒めてくれたのは『騎士』の巡さん。
彼女はギャスパー派なんだとか……思いっきり児ポ案件な気がするのは、この際置いておこう。
「あら兵藤君、来ていたのね」
ふと見知った気配がしたので振り返ると、そこにはソーナ会長がいた。
「あ、お邪魔してます」
「えぇ」
相変わらずクールだな。
『不愛想と言うのではないのか』
コラ、失礼な事言うな!
聞こえてないから良いけども。
「お客さんが来ているけれど、皆に用事を頼みます。椿姫が部活等で苦戦しているそうです」
「「「はい!」」」
おぉ、元気な返事。
まるで軍隊みたいだな。
「じゃーね、兵藤君」
「おー、頑張ってな」
皆速足に生徒会室を後にしていく――――つまり今この場にいるのは俺と会長だけになる。
シーンと静まり返る中、会長は自分の席で書類に手を付け始めた。
「えーと……じゃぁ、俺もこの辺で……」
「兵藤君」
場違いだろうと思い退室しようとしたが、会長に呼び止められる。
「…リアスの想いに、応えたそうですね」
まさか会長から聞いてくるとは。
「え、えぇ。…もしかして、リアスから?」
「えぇ、貴方かがグレイフィア様と恋人になってからは、俄然燃えていました。まぁ最近はよく惚気話を聞かされますが」
「……なんか、すんません」
まるで俺が悪いみたいな錯覚に陥り、自然と謝ってしまう。
けど会長は特に意に返さず、俺に視線を送ってきた。
「…あなたは、私が出来そうになかった事を全て叶えるのね」
「…と言うと?」
「婚約――――ライザー・フェニックスの件、木場祐斗君の件、ギャスパー君の件、小猫さんの件、朱乃の件……リアスが抱えていたものを貴方が全て軽くしたの。……私は、貴方よりも長くリアスの傍にいました」
……確か、二人は幼い頃からの付き合いだって聞いたな。
「ですが、私には何も出来なかった。『上級悪魔だから』『悪魔の仕来りだから』と、概念に捕らわれ、それらの壁を私は越えられなかった。……でも貴方は、それらを意に返さず解決していった。私はそれがたまらなく嬉しかったし――――」
『妬みもした、か?』
ドライグにそう言われるが、会長は否定する事無く「えぇ」と言い切った。
「でもだからこそ、お礼が言いたいのです。……リアスを救ってくれて、ありがとう」
「…いえ。でも、彼女を救ったのは俺だけじゃないです。会長だってそうです」
「…私が?」
会長は呆気に取られた様子だった。
「だって俺がリアスに関わるよりも前に、会長はずっとリアスの傍にいた。例えその立場から救えなかったとしても、会長の存在は、リアスの確かな希望になってたはずです。会長は、リアスの心の救いになってたんです。……じゃなきゃ、あんなに威風堂々と出来ないでしょ?リアスにとって会長は、心の拠り所の一つ――希望なんですよ」
「――――ッ」
俺の言葉に、会長は暫く沈黙した…………が、やがてフッと表情を崩した。
「ありがとう、兵藤君。希望の魔法使いである君にそう言ってもらえると、嬉しいわ。…そうだ、プライベートの時はイッセー君で良いかしら?」
「は、はい。どうぞ好きにお呼びください!」
「…リアスの事、よろしくお願いしますね?」
「…勿論っす!」
俺の返事に、会長は満足そうに頷いてくれた。
「代わりと言ってはなんだけど、私の事もソーナで良いわ」
「えーっと、ソーナ先輩?」
「ふふっ、呼び方は君に任せるわ。それにしても切り替えが早いわね」
あ、ちょっと可愛いって思った。
普段がクールなだけに、ギャップが凄まじい……匙が惚れるのも分かるな。
「公私を分ける男性は素敵ですよ?」
「そんなもんですか?」
「そうです……私も彼氏作ろうかしら」
おー、これは新鮮なお言葉。
「あ、じゃあ匙とかは?」
「サジは…そうね、弟って所かしら。それに彼を慕う眷属の子も多いから、手なんて出せないわ」
『あー、こりゃ脈ないな』
…匙、道のりは長く険しいけど、頑張れ。
「あ、それと昇格の推薦、おめでとう。私からもお祝いを言わせてもらうわ」
「ありがとうございます!頑張ってみます!」
「えぇ」
会長からも激励とお祝いの言葉をもらったぜ!
「イッセー君!私からもおめでとう☆」
「は……って、セラフォルー様?!」
「お姉様!?」
最後にはまさかの魔王様が登場したのであった。
イッセー「カシラ死なないよな?」
ドライグ『何言ってんだお前。死すって出てないから生き残るだろうよ』
ドラゴン『某プロトゼロはそれで死んだしな』
イッセー/ドライグ『「…チェイスゥゥゥゥゥゥ!!!!」』