ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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リアス可愛いよリアス


MAGIC11『修行、始めます!』

おっす!おら悟k……イッセーだ!

 

 

この間、リアス部長と焼き鳥野郎改めライザーとの、婚約を懸けた『レーティングゲーム』が10日後に決まったその翌日。

 

 

俺達はその日まで自分達を鍛えようということになった。

 

 

ちなみに修行場所は人間界のある山奥で、そこにはグレモリー家の別荘があるらしく、更にそこはその場所のほとんどがグレモリー家の所有地らしい。

 

 

別荘だけじゃなく土地まで……どんだけ凄いんだ、部長の家は。

取り敢えず、今回の特訓は戦闘に慣れると言う至極シンプルなものだ。

 

何時も俺がやってるような自分の体を苛め抜くっつー方法はこの短期間じゃ無理だと言うわけで、ドライグが発案したのだ。

 

 

んでまぁ、今はその別荘まで徒歩で向かってる訳だ。

後は、ファントムが出ないことを祈るしかないよなぁ。

 

『まぁプラモンスター達やティアマットもいるから、大丈夫だろ』

 

それもそうだな。

いざって時は戻れば良いしな。

 

 

 

 

「ふぅ…意外ときついものだね、イッセー君」

「の割には涼しい顔だな」」

 

明らかに重いであろう大きなリュックサックを持つ木場は、爽やかな汗をかきながらそう言ってきた。

しっかしまぁ、汗一つでも絵になるな、イケメンってのは………。

 

「いや、騎士はこういう力仕事は苦手なんだ…」

「まぁ、お前線細いしな」

 

ある程度までは電車で向かい、そしてそこから徒歩で基礎体力をつくる鍛錬。

もうかれこれ二時間は経ってる。

 

 

ちなみに俺の荷物は小さいけど、何故か部長と朱乃さんとアーシアの荷物まで持たされてるから木場以上の積載だ。

小猫ちゃん?自分で持ってるよ。

 

……俺の二倍以上の。

にしても、小学生の時にやったかばん持ちを思い出すなぁ。

 

『そんなに友達いたっけか?相棒』

 

失敬な!

ちゃんといたぞ!!

 

『冗談だ』

 

まったく…!

それにしても、何で女性ってこんなに荷物が多いのかねぇ…?

まぁ、小猫ちゃんとアーシアは少ないけど、それでも俺よりは多いわな。

 

『女には色々あるのさ。それにお前は一々かばんに詰めなくてもコネクトで取り寄せれるからな』

 

ふ~ん…。

女心なんて、一生理解できない気がするよ。

 

『何だ?一生を童貞で過ごすのか?』

 

 

 

……そうなるかも。

 

『おいおい……。流石に童貞の赤龍帝なんてはずいぞ』

 

だって相手いないしさぁ………!

 

『ほんとお前は…』

 

?何で溜息吐いてんだよ。

 

『いんや…』

 

…気になるけど、まぁ良いか。

 

 

 

 

「もうそろそろ到着だからもうひと踏ん張り、頑張りなさい!」

「あらあら、うふふ。男の子の汗を見ると拭いたくなってきますわぁ」

「頑張ってくださ~い、皆さん!」

 

お、もう到着か。

俺は少しへばってる木場の背中を叩いた。

 

「うわっ!?」

「ほれ、もう少しだ!気合入れていこうぜ!」

「げ、元気だね……イッセー君」

「先輩、競争です……」

「上等!」

 

よし、木場は置いていこう!

 

「ちょ、ちょっと待ってよ…!」

 

おぉ、頑張れば走れんじゃん!

 

 

俺達は意気こんで、部長達の元に駆け足で向かうのだった。

 

 

 

 

因みに途中、小猫ちゃんが転びかけて受け止めた際、手が胸に触れちまったことは、完全な余談だ。

 

 

 

 

 

 

 

そして、俺達は合宿を行う別荘の前に着いたのだが――――

 

 

「ここは10日間、私たちが合宿を行う別荘よ」

「俺の知ってる別荘と違う!これ完全に城ですよ!!」

「大きいです~……」

 

そう突っ込んだ俺の視線の先には、本当に漫画とかに出てくる位、大きな屋敷のような建物があった。

これが別荘なら、部長の家はどれだけ凄いんだよ!?

なんか小さいログハウスを想像してた俺は間違ってない筈だ……!

 

しかも周りにプールとかも見えるし、今さらながらグレモリ―家の凄さを身に感じる。

だけど、ドライグは辺りの環境に関心していた。

 

『こいつは修行にもってこいの場所だな。結界で部外者は入れない様にしてあるし、人間界にこんな場所があったとはな』

 

すげーよな、ほんと。

冥界の山で山篭りしてた自分がなんか馬鹿らしくなってきた………アレ?目にゴミが…。

 

『どうどう』

 

馬か!

それは兎も角、部長に案内されて別荘の中に入っていく。

 

 

別荘の中は良く掃除されていて、埃一つなかった。

窓とか光ってるしな。

俺と木場は一つの部屋に案内されて、そこで修行できる格好になるように言われて着替えることにした。

 

つっても、学校のジャージだけどな。

 

「イッセー君、結構ガッシリしてるね」

「そうか?」

「うん。女の子に人気なのも頷けるよ」

「お前が言うと嫌味にしかきこえねぇよ」

 

なんて言いながら俺と木場は着替え、そしてそのまま部長が指定した別荘の中庭に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一レッスン、木場との剣術特訓。

 

 

「はぁ!」

「おっと!」

 

木場が俺へ真正面から正確な剣戟で切り込んでくる!

 

 

現在、俺と木場は部長に言われるがまま、互いに木刀を持って剣術の訓練をしていた!

俺は神器を使うことを禁止されている……理由は神器なしでどこまで戦えるということを理解する、らしい。

 

「ちぃ!」

 

俺は木場を左横に往なす!

すると木場は、すぐさま横一閃に木刀を放ってきた!

 

「甘いぜっ!」

「なっ!?」

 

俺はジャンプして、木場の木刀を踏み台にして、地面に着地した。

木場は一瞬呆気にとられていたが、好機と見たのか俺の背中に向かってきた!

 

そうはさせないぜ!

 

「ぬあっ!」

「っ!」

 

俺は木刀の刃を背中に回し、木場の木刀を受け止めた!

流石に木場はこれに驚きを隠せずにいるが、隙だらけだっ!

 

「油断大敵!」

「うわ!」

 

俺はターンして木刀を払い除け、木場の木刀を吹っ飛ばすと、逆手持ちにした木刀を木場の横っ腹に突きつけた!

 

「…僕の負けだ」

「……俺は剣術からっきしだけどな、お前の動きは教科書通り過ぎるんだ。それだと、太刀筋も読まれちまうし、フェイントにも引っ掛かる。後、戦いの最中は一々驚くな。戦闘中は何が起こるかわからないんだ。そんな様じゃあっという間に首が飛ぶぜ」

「…今のでからっきしなんだ」

「ほぼ我流だからな。お前のちゃんとした剣術に比べりゃ、俺のはチャンバラだよ」

「後、逆手持ちにもびっくりしたよ」

「だろ?」

 

 

 

 

第二レッスン、朱乃さんとの魔力訓練

 

「魔力と言うのは体から溢れるオーラを流れるように集めるのですわ。このようにして…」

 

と、朱乃さんはある程度の説明を済ませると、小さい魔力の光球を作り出した。

 

「ふわぁ…!」

「では、やってみて下さいな」

 

木場との訓練を終えた俺は、アーシアと共に朱乃さんに魔力の訓練をしてもらっている。

アーシアは朱乃さんの説明を熱心に聞いていた。

 

 

まぁ、魔力の制御は手に入れてから死に物狂いで練習したけどな。

 

 

「あらあら、イッセー君…中々上手ですわ。だけど、やはり禍々しいですわ…」

「な、何ででしょうね?」

 

 

…言える訳ないよな。俺の魔力の源がファントム、だなんて。

ファントムが持つ魔力はゲートの絶望などと言った負の感情が混ざり合ってる物らしいから、こんなに禍々しいんだと。(ドライグ談)

 

 

すると横にいるアーシアの手元には小さな緑の魔力を集中したものを出している!

 

「あらあら、うふふ。アーシアちゃんは魔力の才能があるかもしれませんね」

「すげーよアーシア!俺の時より飲み込み早いよ!」

「ほ、本当ですか?嬉しいです~」

 

あぁ、照れてるアーシアも可愛いなぁ!

 

 

こうして、俺とアーシアは魔力の基礎を学んだのだった。

 

 

 

 

 

 

第三レッスン、小猫ちゃんとの組み手

 

 

「えい…!」

「おっと!」

 

朱乃さんのレッスンを終え、俺は小猫ちゃんとの組み手に興じていた。

アーシアは朱乃さんと一緒に神器の回復の波動を飛ばす練習中だ。

 

小猫ちゃんの重いパンチを受け止め、鋭いキックも足でガードするけど……重いなっ!

やっぱり、「戦車」の力は凄まじい!

 

「当たって、下さい!」

「だが、断るっ!」

 

確かに力強い――――だけど木場と同じように単純だし、それに木場と違い目で追える速度の攻撃だから、かわせないわけがない!

 

それに、俺もただで受け止めたらダメージはあるが……魔力でその部分を覆えば、威力を殺せる。

だからこそ、こうして受け止めれるわけだ。

 

「今度は、こっちからだ!」

「っ!」

 

俺は小猫ちゃんの目でギリギリ追える程度のスピードで掌低を放つ!

 

寸止めはしているが案の定、小猫ちゃんはガードが少し遅れてしまった。

 

「……今のを受けてたら、内臓にダメージが行き渡ってたよ」

「…参りました」

 

小猫ちゃんはペタンと座り、そう呟いた。

俺も同じ様に座って、小猫ちゃんに自分が感じた事を伝えた。

 

「小猫ちゃんは敵に攻撃するとき、何処を狙う?」

「…?」

「小猫ちゃんの攻撃を一通り見たけどね、君は取り敢えず殴ってる。そんな感じだった。でもホントは違うんだ」

「じゃあ、イッセー先輩は何処を攻撃してるんですか?」

「中心線さ」

「中心、線…」

 

小猫ちゃんは鸚鵡返しに呟いた。

 

「そう。打撃は中心線を狙って、的確に抉り込む様に打つ!……そうすれば、力も分散せずに、相手の一点に伝わるんだ」

「成る程…」

 

ま、全部ドライグから教わったんだけどね。

 

 

「今のを踏まえて、もう一回やろうか」

「はい…!」

 

そうすると、小猫ちゃんはさっきと違って力を集中させ、俺の中心線を狙うようになってきた!

 

「良いよ!その調子だ!」

「絶対に、一本は取りますっ!」

 

 

 

そうして、時間はあっという間に過ぎ、気づけば夜になっていた。

 

 

 

 

 

「美味しいわ、イッセー」

「マジですか!?良かったー…」

 

そして夜、俺達は晩御飯を食べていた。

メニューは合宿の定番、カレーライスだ。

 

「料理も出来るんだね、イッセー君」

「上手ですわ、イッセー君」

「意外…」

「美味しいです~!」

 

イヤー、気に入ってもらえて良かった…。

何せ、料理は殆どアーシアが作ってるからなぁ。

 

 

「…ドライグ、今日の特訓を見てどう思ったか、正直に言ってくれるかしら?」

『総合力なら、相棒が一番だな』

 

…確かに。

各分野でなら、剣術、体術、魔力の扱い、それだけなら劣るだろう。

 

『一分野で勝ったとしても、全体の平均値の合計は相棒がダントツだ。勿論、お前らに非がある訳ではない』

「…確かに。勢いだらけだけど、力量なら普通に押されてたよ」

「…あの修行中に先輩に手傷を負わせたのは一度だけでした」

「魔力の総合合戦なら、間違いなくイッセー君に分がありますわ」

「魔力の扱いが上手でした!」

 

皆は俺と一緒に修行したことに対する感想をそれぞれ言う。

確かにそうだったな。

 

「とにかく、イッセーは眷属の中では頭一つ飛びぬけているわ。戦闘センスはもちろん、自分を追い込めるほどの覚悟と根性、そして神器を使った戦術…正直、イッセーは『王』が一番、向いていると思うわ」

「…そんなことないっすよ」

『あぁ。それに相棒も元から強かった訳ではない』

 

ドライグの言葉に全員が耳を傾けた。

 

『相棒のこの強さは、全て努力によって裏付された物。お前達と違って、相棒は最初、何の才能も、そして魔力も持っていなかった。それに比べれば、お前達は恵まれた方さ。後は、残りの特訓しだいだ』

「――――強いといっても、胡坐を掻いてたら、直ぐに錆びます。だから、みんなより強い分、俺に出来る事があるならなんでもしますよ!打倒ライザーに向けて!」

 

……そうだ、今はこれを胸に動けば良い。

10日なんて、あっという間だからな。

 

 

「それもそうね、ならまずはお風呂にでも入って今日の体の汚れでも落としましょうか」

 

 

 

部長は話題を転換してくれた。

すると、何故か俺の方を見ながら、部長が悪そうな顔をしている……何か嫌な予感が。

 

「イッセー、一緒にはいる?ここは露天風呂だから、それに日本には裸のお付き合いって言葉があるのでしょう?」

 

はい、的中ぅぅぅぅ!!!!

 

「何処で聞いたんですか日本の悪しき風習を!そ、そもそも男女で一緒のお風呂なんか皆、嫌に決まってるでしょう!?」

「…だそうだけど、皆はどう?」

 

どうって!

もう入る前提っすか!?

 

 

 

「わ、私は大丈夫です///!」

 

アーシア、嬉しいけど少しは嫌がって!

お兄さん嬉しいけど複雑だよ!

 

「あらあら、でしたらイッセー君のお背中を流させてもらいますわ」

 

朱乃さんも乗らないで!

目が本気と書いてマジだこのお姉様!

 

「……タオルを巻いてだったら、別に構わないです…///」

 

小猫ちゃん、君もか!!

それはそれで俺のリビドーが暴走するよ!タオル越しが一番やばいんだよ!

 

 

ええい、こうなったら!!

 

「木場!男二人でどっぷり浸かるぞ!!」

「ちょ、ちょっと!」

 

木場の首根っこを引っつかんで俺は風呂場に向かった!

あんな空気に耐えれるか!!

 

『ヘタレ』

 

ほっとけ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うぁぁ………!

 

たすけてぇ………!

 

嫌だ、もう……!

 

 

――――また、この地獄だ。

 

俺はとある海岸沿いの崖にいた。

そこには俺以外にたくさんの人が――――いた。

 

 

だが、紫の皹が入ったかと思うと、その人達は、ファントムへと変貌していた。

 

 

今、今助ける…っ!

だから、絶望に負けるな!!!

 

 

 

 

『お前はまだ足掻くのか?』

 

うるせぇ…

 

 

『誰からも本心から賞賛されない、日の光が当たることもない。そんな戦いに意味などあるのか?』

 

黙れ……!

 

 

『結局、お前は誰も救えない。誰も、守れないまま…朽ちていく』

 

 

ダマレェェェェ!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!?」

 

俺は寝汗とともに目を覚ました。

……また、あの夢かっ。

 

『相棒…』

 

……なぁドライグ。

やっぱり、忘れられないわ。俺。

 

後悔してても、前に進めないのにさ…!

 

 

『あの地獄を、簡単には忘れられんさ』

 

…かもな。

水でも、飲もう…。

 

 

 

 

キッチンで水を飲んだ俺は、そのままテラスに向かった。

何だか、眠れる気分じゃなかったんだ……。

 

 

 

すると俺は部長を発見した。

部長はテラスの方のベンチで座りながら本を読んでいるようだった。

 

俺は部長の元に近寄っていくと、部長は俺のことに気がついたのか、本を閉じて出迎えてくれた。

 

「あら、イッセーまだ起きていたの?」

「部長?」

 

部長は眼鏡をかけて、寝巻らしき赤いネグリジェを着ており、幾つも重ねられている本を横にして椅子に座っている。

 

 

 

 

 

「あ、これのことかしら?」

 

すると部長は俺の視線に気がついたのか、眼鏡を指差して説明してくれた。

 

「何かに集中したい時にこれを掛けると集中できるの…単なる願掛けね。人間界にいるのが長いから、人間の風習になれたのかしら」

 

部長は苦笑いをしながらそう言うと、俺の視線は部長の手元の本に行く。

 

レーティングゲームに関しての資料…?

 

「部長、これは…」

「正直、こんなものを読んでも気休めにしかならないんだけどね…」

 

 

部長は本のカバーを指でなぞりながら、自信なさげにそう呟く。

 

「部長は、ゲームに勝つ自信がないんですか?」

「………正直、勝てるかどうかと言われれば、難しいわね」

 

…らしくもない、弱々しい声だった。

 

部長のいつもの威風堂々としたものじゃない―――もっと不安で、そんな気持ちに押し負けそうな声だ。

 

 

 

「普通の悪魔なら、資料を呼んである程度は対策を練れるかも知れない。でも相手はフェニックス…そう、不死鳥なのよ」

「死なない、鳥…」

「ええ。あなたも知っている通り、不死鳥とは聖獣として有名だわ。どんな傷でもその涙は癒し、殺しても死なない永遠の鳥、不死鳥……そしてその能力と悪魔のフェニックス家は同じ力を有している」

 

部長は本の一冊を積み上げられている本の上に更に重ねる。

 

「つまりライザ―は死なないのよ。攻撃してもすぐ再生する。彼のレーティングゲームの戦績は10戦2敗…その2敗は懇意にしている家への配慮だから実質無敗。既に公式でタイトルを取る候補として挙げられているわ」

「不死鳥の王。そんなの反則級に無敵ですね」

「ええ。正にその通りよ。フェニックス家はレーティングゲームが始まって一番、悪魔の中で台頭してきた一族…」「死なないから、負けない…単純だけど、分かり易い強さですね」

 

 

俺は嘆息する。

 

たとえ、あいつに力がなくても不死鳥の性質からあいつは負けることがない。

そんな相手に、まだ学生の部長にこの賭けをしろって言うのはやっぱりあまりにも仕組まれているな。

 

 

初めから部長が婚約を嫌がるのは分かっていて、それで最後は勝てるはずのないレーティングゲームで決めさせる。

 

これじゃあ…

 

「ハメ手―――チェスで言うスウィンドルね。初めからライザ―が勝つように仕組まれている」

 

…やっぱりな。

それでも部長は、戦おうとしている。

 

 

何でだ?

負けることが分かっているなんて、そんなのは言い訳だ。

 

でも部長はそんな勝負でも諦めようとしない。

 

「部長は、どうしてこの縁談を破棄したいんですか?焼き鳥野郎の問題はともかくとして…」

 

自由じゃない恋愛なんてしたくはないなんてことは分かってる。

 

ライザーの性質を垣間見て、あんな野郎とくっつこうなんて気持ち、普通は持つなんてありえない。

だけど悪魔の発展的な意味だけで言えば、フェニックスとグレモリーの婚姻は間違ってはいない…はずだ。

 

互いに強力な力を持つ家系、その二つの家から生まれる新たな命のポテンシャルは計り知れない。

そして、その命は、悪魔の未来の為に………重要な礎。

 

 

 

だけど部長は自分の意志を通す。

例え仕込まれた勝てない戦いだろうと。

 

 

「私はリアス・グレモリー―――でもね、誰も私を”リアス”とは見てくれないの…」

 

…部長は淡々と話し始めた

 

 

「どこまで行っても、どこに言っても私は”グレモリー”としてみられるわ。名家のご令嬢、グレモリー家の次期当主。もちろん、自分がグレモリーということは誇りよ。でも、せめて自分を愛してくれる人には、”リアス”と見られたい………接してほしい。それだけよ」

「……」

 

 

 

 

何が、何がらしくないだ…。

俺は数分前の自分を殴りたくなった。

 

 

部長はただ、誰よりも当たり前の幸せを望んでいるだけなんだ。

一人の女の子として、好きな人に愛されたい、好きな人を愛したい、恋したい。

家とかそんなもの関係なく、年相応の恋をして、結婚したい。

 

 

この人は……そんな当たり前の心を持った人なんだ。

 

 

「神クラスの一撃なら、一瞬で体の全てを滅ぼすことは可能とは思うけどね。それがフェニックスの対策…。でも残念ながら私にはそんなものはない……」

 

…ドライグの言うとおりだ。

アイツを、ライザーを屈服させるには、アイツの心をへし折るしかない。

 

部長は立ち上がって空を見る。

その瞳は、悲しそうに揺れていた……。

 

「私の小さな夢よ。誰か好きな人と結婚する。笑顔で毎日を過ごして、他愛のない話をして、キスをして、子供を作って―――だけど、それすらかなわないかもしれない…戦うからには勝つつもり。でももし無理な時は私は…」

 

部長がその言葉を言おうとした時、俺は部長の手をギュッと握った。

何でこんなことをしたのかは分からない。でも、体が急に動いたんだ。

 

 

「俺が、部長……貴女を自由にします」

 

 

俺は部長にそう断言した。

こうして、自分の胸の内を語ってくれた部長を見捨てたら、俺は男じゃない!

 

 

「俺には部長のお家事情も、悪魔の事情もあまり良く分かんないです。でも、俺にとって、部長は部長です!俺は部長の事、部長として好きです!」

「イッセー…」

 

部長は目尻に涙を溜めて、俺を見詰めてくる。

 

……そうだよ。部長に、女の子に涙なんて似合わない!

 

 

「だから、そんな悲しそうに泣かないで下さい。……それでも、涙が零れるなら、俺がその涙を宝石に変えます!部長を笑顔にします!こんな事言っても、何の励ましにもならないですけど、俺が貴女の最後の希望になります…!俺が貴女を守ります!」

 

何時もならこんな歯が浮く様な台詞は言わないけど、何故かこの時はすらっと言えたんだ。

 

それを聞いてくれた部長は笑顔になった。

 

「イッセーがアーシアに好かれる理由、分かった気がするわ…そんなこと、真正面から言われたら……」

 

部長はそう言うと、本を持ってその場に立ち上がる。

 

「イッセー…ありがとう。貴方の言葉で、私は戦えるわ。…もし、私が絶望しそうになったら、その時は――――」

「必ず助けます。それが、俺の使命ですから!」

「…おやすみなさい、イッセー」

「はい」

 

そして部長はその場から居なくなる。

 

部長は最後に笑顔を見せてくれた…。

俺に出来るのは、あの笑顔を守ること。

 

 

『ドライグ、久々に龍化――――やるわ』

『あい分かった!』

 

 

 

 

 

 

 

 

次回D×Dウィザード

 

イッセー「ショータイムだ!」

 

木場「これが、赤龍帝の力…!」

 

ドライグ『準備は万端だ、相棒!』

 

MAGIC12 『俺達、戦います!』

 

イッセー「さぁ、お楽しみはこれからだぁ…!!」

 

 

 




ファントムの魔力設定はオリジナルです

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