ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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この辺までは原作とあまり変わらないぜ☆



MAGIC119『消耗戦』

 

女王対決の後、再びダイスが振るわれた。

リアスが6、サイラオーグさんが6――――合計値は12!

 

ここでマックスか!

 

『出ました!!ついにこの数字が出ました!この数字が意味することはサイラオーグ選手が出場できるということです!!』

『おおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

実況の声に観客が大いに沸くと同時に、サイラオーグさんが上着を脱ぎ捨てた。

 

……とうとう出るか。

そう思った俺へ、サイラオーグさんは視線を向ける。

 

「イッセー君」

 

木場が俺の肩に手を置いた。

 

「僕とゼノヴィアとロスヴァイセさんで、サイラオーグさんと戦う」

 

そう語る木場の視線は真っ直ぐだった。

 

「…本気か」

「うん。君と部長のために、出来るだけ彼を消耗させる。これが僕達の役割だと思う」

 

ここまで言うのなら、止めるのも野暮ってもんだな。

 

「なら頼んだぜ」

「あぁ。…それで良いですか、部長」

 

木場がリアスの方へ眼を向けると、リアスは瞑目していた。

 

「…御免なさい。主である私が力不足なばかりに」

「これが今の僕達に出来る事ですから。あなたの為なら、命だって掛けられます。ゼノヴィア、ロスヴァイセさん、付き合ってくれますか?」

 

木場の問いに、二人は力強く頷いた。

 

「勿論だとも。イッセーと部長が後ろに控えている…こんなに勇気づけられる事はない」

「役目がハッキリしている分、分かりやすくて良いですね。――――出来るだけ長く粘って、相手を疲弊させましょう」

 

三者三様、覚悟は固まっているようだ。

 

「後は頼んだよ、イッセー君」

「出来るだけ応えるよ」

 

俺がそう返した時、三人はバトルフィールドへと転送されていった。

 

 

 

ーーーー

 

 

三人が到着したのは湖の湖畔だった。

そしてその目線の先には、腕組をして待っていたサイラオーグさん。

 

『リアスの案か』

 

どうやらこっちの思惑は察していたらしい。

木場達は何も言わなかったが、サイラオーグさんは笑みを浮かべた。

 

『そうか。リアスは一皮むけたようだな』

『相棒だって一皮剥けたぜ』

 

やかましいわ!

 

『お前達では俺には勝てん。良いんだな?』

『ただで死ぬつもりはありません。――――最高の状態で貴方を主と赤龍帝へと送り届ける!』

 

木場の覚悟の程に、サイラオーグさんは打ち震えてた。

 

『…いい台詞だ。お前達は何処まで俺を高まらせてくれるッ!』

『第六試合、開始してください!』

 

審判からの合図。

そして、サイラオーグさんの四肢に変な紋様が浮かび上がった。

 

『これは俺の体を縛り、負荷を与える枷だ。――――これを外させてもらう。お前達の覚悟に、全力で応えるっ!!』

 

淡い光がサイラオーグさんから漏れると、紋様が消えていった。

次の瞬間、サイラオーグさんを中心に周囲が弾けた!

 

 

ドンッ!!

 

 

風圧が巻き起こり、サイラオーグさんの足元は大きく抉れ、クレーターを形成した!

そのサイラオーグさんの体は白い光に包まれていた。

 

あれは、闘気か?

 

『まさか可視化するほどの濃密な質量とはな……』

『と言う事は、サイラオーグ選手は気を扱えるのですか?』

 

実況の疑問を、先生は否定した。

 

『いや、サイラオーグは仙術等は習得していない』

『はい、彼は仙術は一切習得してはいません。あれは、体術を鍛えぬいた先に目覚めた闘気です。純粋なパワーを求め続けた彼の肉体に宿ったのは、魔力ではなく生命の根本とも言うべき力です。彼の有り余る活力と生命力が噴出して、可視化したと言うべきでしょう』

 

純粋なパワーの波動……あそこに至るまで、あの人はどれだけ心血を注いだんだろうか。

 

『そう簡単に至れる訳ではない。文字通り己を極限まで鍛えぬいたのだろう。それにしても、あそこまで直接戦闘に特化した闘気を見たのは初めてだ。戸愚呂弟と良い勝負出来るんじゃないか?』

 

それは、どうなんだろうか…?

それは兎も角、サイラオーグさんのプレッシャーに、三人は表情を険しくさせた。

 

『一切、油断はしない!貴様達は取られる覚悟でここに立つ戦士だ。生半可ではない覚悟――――俺もまた取られる事を覚悟して戦うッ!!!』

 

そう啖呵を切ると、サイラオーグさんの姿が消えた!

開幕でこのスピードか!

 

『させません!』

 

ロスヴァイセさんが縦横無尽に魔方陣を展開させ、魔法のフルバーストを何時でも撃てる体勢を作った。

 

『…ロスヴァイセさん、そっちです!』

 

サイラオーグさんの動きをとらえた木場が、その方向に聖魔剣の切っ先を向けた!

そこへロスヴァイセさんのフルバーストが鋭く放たれた!

 

その先に現れたサイラオーグさんへ大質量の属性魔法攻撃が襲い掛かる!

 

『――――フンッ!』

 

 

バンッ!!

 

空を殴りつけた音と共にサイラオーグさんが向かってきていた無数の魔法攻撃を文字通り拳一つで打ち返した!

魔法すら軽々と弾きやがった!

 

サイラオーグさんは魔法と聖なる波動の雨霰を掻い潜り、ロスヴァイセさんに一気に肉薄した!

 

『逃げ――――』

 

木場がそう言うよりも早く、サイラオーグさんの拳がロスヴァイセさんを捉えた!

直撃の瞬間、その辺一帯の空気が振動したのが分かるほどの一発だった。

 

ヴァルキリーの鎧が無残にも散っていく!

ロスヴァイセさんは苦悶の表情と共に湖の遥か先へ吹っ飛ばされていく!

 

体が湖に着水した瞬間、リタイヤの光に包まれていった。

 

『――――まずは一人』

『ぉぉぉおっ!!!』

 

ロスヴァイセさんが消えていく中、ゼノヴィアがサイラオーグさんに真正面から斬りかかる!

だがその刀身が届く寸前、サイラオーグさんの姿が消えた。

 

音もなく背後に現れたサイラオーグさんの蹴りがゼノヴィアに放たれるが、直前でゼノヴィアのいた位置に聖魔剣が現れた。

 

ガシャァン!!!

 

その蹴りは聖魔剣を簡単に砕き、前方の湖を真っ二つに割った!

 

『相手の動きが、速すぎるッ!』

 

ゼノヴィアが驚愕する中、サイラオーグさんは笑みすら浮かべていた。

 

『まずは魔法の使い手から撃破したが…さて、剣士が二人。しかも聖剣の使い手だ』

 

不敵に笑うサイラオーグさんを目の前に、ゼノヴィアと木場は全身からオーラを迸らせる!

 

『木場!此奴はヤバいッ!全力中の全力でなければ勝てないっ!!』

『分かっているよゼノヴィア!この際後先考えるのは無しだ!余力を残す、なんて事を考えていればやられる…それだけの相手だ!!』

 

二人の緊迫ぶりに、サイラオーグさんは満足げな笑みを浮かべる。

 

『それで良い!持てる全てを賭けて、俺の拳を止めて見せろッ!!』

 

 

ダンッ!!

 

その場から勢いよく飛び出し、闘気を纏わせた拳で木場に殴りかかった!

木場は前方に聖魔剣の壁を幾重にも作り出すが――――

 

バリンッ!!

 

呆気なく拳の一撃で破壊されていく!

 

『柔いな。これでは俺の一撃を止められはせん』

『…ッ!』

 

木場は素早く後退すると、サイラオーグさんが駆け出す寸前で拳を形作った!

 

『――――弾けろ!!』

 

刹那、聖魔剣だった無数の破片が爆発を起こした!

だがすぐさま木場は手元に聖魔剣を作ると、煙の中から現れたサイラオーグさんと高速戦闘を演じた!

 

『フンッ!!!』

『ッ!』

 

木場は拳を受ける寸前で転移、代わりにサイラオーグさんの一撃を受けたのは聖魔剣だった。

その最中に、

 

『デュランダルッ!!!』

 

ゼノヴィアがチャージしたデュランダルの波動を放つ!!

 

 

 

『――――良い塩梅だ。だが、落とせるほどではないな』

 

首を鳴らしながら現れたのは、無傷のサイラオーグさんだった。

ゼノヴィアはその姿を見て、今度こそ体を震わせた。

 

『――――真正面からデュランダルの一撃を受けて無傷とは……正真正銘のバケモノか』

 

何とかそう口にしたものの、やはりまだ衝撃は大きいようだ。

 

『…ゼノヴィア、コンビネーションで行こう』

 

木場はゼノヴィアにそう告げる。

それを受けて立ち直ったゼノヴィアは立ち上がり、二人揃えて剣を放った!

 

聖魔剣、新デュランダル、二振りの高速の剣劇をサイラオーグさんは最小の動きで避けていく。

木場は距離をとると、聖魔剣を聖剣へと変えた。

 

『行けっ!』

 

そう声を上げると、出現した龍騎士団は高速で向かっていく!

 

『新しい禁手かっ!是非もない!!』

 

サイラオーグさんは嬉々としてそう言うと、高速の剣劇をカワシツツ、騎士団を的確に屠っていく!

その様は凄まじく、まるで騎士団が紙くずのようにも見えた。

 

『うむ、数も多く、速さも申し分なし!だが、俺が相手では――――』

 

儚い金属音とともに、最後の甲冑騎士が破壊された。

 

 

『硬さが足りんな』

 

木場はサイラオーグさんの洗練された、いや、常軌を逸した体術に流石に戦慄していた。

…あの禁手に至るまで、木場はかなりの時間を修行にあてた。

 

だけどそれでも、あの男に届かないのか……。

 

『才気ある動きだ。可能性に満ち満ちた攻撃を肌で感じる――――だが、この場では俺の方が上だ』

 

 

ドッ! ゴッ!

 

二人の攻撃を防ぎ切ったサイラオーグさんの掌底がゼノヴィアの腹部に、回し蹴りが木場の脇腹に入った。

 

『ガハッ!』

 

その場で血を吐いて地面に転がる木場とゼノヴィア。

 

『力の権化だな。その一点に関しては、奴は鬼神とも言える』

 

ドライグですらそう評するほどだ。

 

 

木場は小さく笑みを浮かべると、立ち上がった。

 

『…体は、まだ動く。まだ、戦える……まだ、相手を削れる………!』

 

聖魔剣を作り出す木場に触発されてか、ゼノヴィアもまた立ち上がった。

 

『…まだ、フィナーレには早いと言う事だな』

『さぁ削ろう、ゼノヴィア。少しでも部長、イッセー君の為に、剣を振るおう』

 

剣を構える二人に、サイラオーグさんは心から嬉しそうに笑った。

 

『まだ楽しませてくれるか……!』

『あぁ、楽しませるさ……』

 

ゼノヴィアがそう言う中、彼女の背後から――――リタイヤしたはずのロスヴァイセさんが出現した!

その手には、透明な刀身が特徴の剣が握られていた。

 

『油断しましたね!近距離からの魔法フルバーストならどうです!?』

 

サイラオーグさんに肉薄すると、いきなりフルバーストをぶっぱした!

けたたましい炸裂音を轟かせると、サイラオーグさんの体から煙が上がる。

 

 

その体は――-仰け反っていた!

 

『…成程。先程倒されたヴァルキリーは、エクスカリバーか』

「え、そうなの?!」

 

合点がいった様子のドライグに、リアスは頷いた。

 

「えぇ。最初に倒されたロスヴァイセは、デュランダルの鞘にしていたエクスカリバーの一振り、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)が作り出した偽物よ。そして今出てきたのは、所持者の姿を透明にする透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)本物のロスヴァイセよ。所有者が承諾すれば、因子を持たない者でも短時間なら恩恵を受けれるのよ」

 

そう言う事か……だから最初の撃破の時点でアナウンスがされなかった訳だ!

あのリタイヤの光は多分、ロスヴァイセさんの魔法って事だ!

 

良い連携プレー…いや、超キョウリョクプレーだな!

 

 

サイラオーグさんは体の表面から血を流しつつ、体勢を立て直した。

 

『…アナウンスがないので怪しくは感じていた。リタイヤするかどうかのギリギリの状態で、湖の底で気絶していたと思っていたのだが……見事だ、お前達』

 

サイラオーグさんは木場達の連携をほめた。

だけどその眼光は一層鋭さを増した。

 

右の拳を握り締めると、ゆっくりと引いていく。

すると全身を覆ってた闘気が拳に集中していき、一気に右腕が盛り上がる!

 

『敬意を払うと共に、これを送りたい』

『『『――――ッ!』』』

 

何かヤバいものを感じたのか、三人はその場から距離をとった。

 

『ゼノヴィア、本当の正念場だ!例の作戦で――――』

 

そう木場が叫んだと同時に、サイラオーグさんの拳が放たれた。

 

 

ドォォォオオオオオオオオォォォォンッ!!!!!!!

 

 

映像が激しく揺れ――――気付けばサイラオーグさんの前方が大きく抉れていた!

まるで地割れでも起きたような、そんな抉れ方だ。

 

『リアス・グレモリー選手の戦車一名、リタイヤ』

 

今の一撃で、ロスヴァイセさんがやられたか!

 

あまりの拳圧によって生まれた煙を払うと、サイラオーグさんは同じ構えをとる。

 

『…こいつは掠っただけでも致命傷となる。生半可な攻撃では止められんぞ!』

 

闘気を纏った右ストレートが振り抜かれた!

と同時に、木場とゼノヴィアが斬りかかった――――サイラオーグさんの、右腕に!

 

木場の聖魔剣の刀身は、サイラオーグさんに届く事無く闘気により砕かれる。

が、そこへ空かさずゼノヴィアのデュランダルが振るわれる――――だが闘気に阻まれ深くまで斬り込めてはいなかった!

 

歯噛みするゼノヴィアだが、デュランダルの柄を――――木場も握りしめた!

瞬間、デュランダルが莫大な閃光とオーラを解き放ち、サイラオーグさんの右腕を切断した!

 

斬り落とされた右腕は消滅せずに、闘気を纏ったままその場に健在だった。

 

『奴の生命力がデュランダルのオーラに勝っていたというのか…!?』

 

ドライグも思わずそう唸った。

 

『…見事だ、右腕はくれてやろう。元よりその覚悟だったからな。これで俺は否応なくフェニックスの涙を使わねばならない――――万全の態勢で決戦に臨みたいからな』

 

サイラオーグさんはそれだけ言うと、ゼノヴィアを蹴り上げ、宙に浮いた体に左拳と蹴りの連打を浴びせた!

 

地面に叩きつけられたゼノヴィアの目は…光が消えていた。

意識を持っていかれたか……!

 

木場は距離を取ろうとするが、そうはさせまいとサイラオーグさんの左拳が顔面を捉えた!

 

『――ッ!!』

 

悲鳴すら上げれずにバウンドした木場の体に、サイラオーグさんの正拳が突き刺さった。

その余波は木場の体を通り抜け、後方の湖の湖面すら震わせた。

 

崩れ落ちていく中、木場はボロボロの状態ながら――――笑っていた。

 

 

『これで、僕達の役目は……果たせた………。後は、僕の主と、僕達の希望が、貴方を屠る………』

 

それだけを言い残し、木場とゼノヴィアは静かに消えていった。

 

『見事、そう言う他はない。お前達と戦えた事、感謝する』

 

 

 

 

『リアス・グレモリー選手の騎士二名、リタイヤです』

 

 

 

 




曹操「次回、兵藤一誠死す!」
イッセー「いきなり出たと思ったらウソ予告言うなや!!」
ヴァーリ「次回、激震のハザード。お楽しみにズルルッ」
イッセー「ラーメン食いながら言うな!!!」

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