ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝   作:ふくちか

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曹操「俺は後三回の変身を残している……その意味が分かるな」
イッセー『漢服→下着→全裸か………』
曹操「光栄に思うが良い!俺の究極の変身を見られるのは、君が最初で最後だっ!!」下着含めてスタイリッシュ脱衣
イッセー「もしもし国際警察ですか」


MAGIC117『覚悟決めた吸血鬼』

 

『お、相棒。今度の数字も8だぞ』

 

お、さっきと一緒か。

……ちなみに教えとくと、今の俺は控え室で正座している。

 

原因は言うまでもなく、さっきの試合で失態を演じた事だ。

帰ってきたらリアスに頬を引っ張られてグレイフィアも交えての説教を食らっていた。

そんでしばらくはずっとこのままって訳だ。

 

『自業自得だ』

 

分かってるよ。でもあそこで童貞だとか言われたら、誰だってキレるだろ?

 

『それは貴様だけだ』

 

俺は信じないぞっ!!

それは兎も角、今回は俺は出られない……リアスはどのカードを切るんだ?

 

「部長、次は私が出よう」

 

どの眷属を出すか決めあぐねていると、ゼノヴィアがリアスにそう進言してきた。

 

「試合も中盤だし、そろそろゼノヴィアの新しい力出しても良いかもな」

「そうね、ゼノヴィアに任せましょうか。後は祐斗かロスヴァイセが適任かしら……」

『その人選はあれか。一人だと猪戦法して爆死するかもしれないという懸念か?』

『そう考えると妥当だよな』

 

少し黙ってろ仲良しドラゴンズ。

ゼノヴィアこう見えて繊細なんだから。

 

『『仲良くねえよテメェの目は節穴かクソ童貞!!』』

 

んだとコラァァァァッ!?

 

「イッセー、静かにしなさい。それとそこのドラゴン二匹も」

『『「アッハイ」』』

 

怒られた、お前らのせいだぞ。

 

『何言ってんだ。叫んだお前のせいだろ』

『いい加減童貞呼ばわりされるの慣れろよ。童貞』

 

だから俺はもう童貞じゃねぇっての!!

 

「あ、あのぉ~…僕が出てもよろしいでしょうか?」

「…ギャスパー?」

 

と、ここで恐る恐るギャスパーが手を挙げて試合出場に立候補した。

 

「祐斗先輩とロスヴァイセさんは僕と違って単独でも戦えますから、後に控えたほうが良いかなって……。それに」

「「それに?」」

 

ギャスパーは一呼吸おいて、力強く宣言した。

 

「ぼ、僕も、小猫ちゃんの仇を取りたいですぅ!」

 

……今の発言だって、此奴は相当の勇気を要したはずだ。

だけど臆さずこんな熱い事言うなんて……成長したじゃねぇか、ギャスパー!

 

「いい事言うじゃねーか、ギャスパー!リアス、ここはギャスパーの熱意を汲んであげても良いんじゃないか?」

「えぇ、勿論よ。ギャスパー、あなたの力でゼノヴィアをサポートしてあげて」

「は、はいっ!」

 

緊張しつつもギャスパーの目には強い光が宿っていた。

これなら心配はないな!

 

「よし、私の背中は任せたぞ。ギャスパー」

「はい!頑張りますぅ!」

 

今ここに、吸血鬼ハンターと男の娘ヴァンパイアのベストマッチ?なタッグが結成された。

 

『主人公が正座ってのはどうなんだろうか』

 

言うなよ、皆触れないでいたのに!

 

――――あ、そうだ。

 

「ギャスパー。ちょっと良いか?」

 

 

 

 

ーーーー

 

 

 

二人が降り立ったバトルフィールドは、岩があちこちに転がった荒れ地だった。

足場悪そうだな……。

 

二人の眼前にはひょろ長い体格の男と、不気味なデザインの杖を携えた小柄な美少女……ではなく、男の娘がいた。

まさかの男の娘対決か……。

 

『グレモリーチームは伝説の聖剣デュランダルを持つ騎士ゼノヴィア選手、一部で人気の僧侶な男の娘、ギャスパー選手です!』

「「「「うおおおおっ! ギャーくぅぅぅぅんっ!」」」」

 

おおっと、早速その一部のファンから声援が送られたぞ!

ギャスパー、人気者だな!(白目)

 

『対するバアルチームは、両者共に断絶した御家の末裔と言うから驚きです!戦車のラードラ・ブネ選手、僧侶のミスティータ・サブノック選手はそれぞれ断絶した元七十二柱のブネ家とサブノック家の末裔です!アザゼル総督、バアルチームには複数の断絶した家の末裔が所属しておりますが……』

 

サイラオーグさんの眷属って、断絶した悪魔の末裔が多いな……。

そう思っていると、アザゼル先生から解説が。

 

『能力さえあれば、どんな身分の者でも引き入れる。それがサイラオーグ・バアルの考えですからな。おそらくそれに呼応して彼の元に集まったのでしょう。断絶した家の末裔は現悪魔政府から保護の対象にされていると同時に、一部の上役から厄介払いと蔑まれているからね。他の血と交じってまで生き残る家を無かった事にしたい純血重視の悪魔は上に行けば大勢いますからな』

『ハハハハ。えぇ、全くその通りです』

 

成程……そして鮮やかに先生の皮肉に笑って返す皇帝ベリアル。

これぞまさに王者の貫禄だな。

 

『そうだな。童貞だの独身だの言われてマジギレするどっかの馬鹿二人とは大違いだ』

『一体何兵藤一誠と何アザゼルなんだー』

 

んだとコラァァァァッ!!!

 

『んだとコラァァァァッ!!!』

『アザゼル総督?』

『大丈夫でしょう、何時もの事と魔王サーゼクス様からお達しが来ております』

『サーゼクスゥゥゥ!!』

 

実況席は今日も平和そうだなー。

そう思っていると、フィールドの二人が口を開いた。

 

『我が主サイラオーグ様は人間と交じってまで生き長らえた我らの一族を迎え入れてくれたのだ』

『サイラオーグ様の夢は僕達の夢でもある。この勝負、負けるわけにはいかない』

 

そう語る二人の目は熱い使命感に燃えていた。

 

 

……荒れそうだな、この試合。

 

『そうだな。時に相棒、今のお前はどんなに決め顔でカッコいい事言っても正座だからとんだマヌケにしか見えないから注意しとけ』

 

余計なお世話だ!!

サブノックってあれか、オルガ……いや止そう。違う奴出てきそう。

 

『止まるんじゃねぇぞ……』

 

ほらな!ってかさっさと試合に移れよ!!

 

『第四試合、開始してください!』

 

俺の願いが通じたのか、審判から開始が告げられ、両チームが素早く構える。

そしてゼノヴィアの手には以前までとは形状の異なるデュランダルが。

 

あれが新しいデュランダルか……どんな性能なんだろうか。

 

「ギャスパー、コウモリに変化して!ゼノヴィアはその後に攻撃!」

 

リアスが指示を出し、ギャスパーは無数のコウモリに変化してフィールド中に散らばり、ゼノヴィアは幾つものデュランダルの波動を放った。

 

バアル眷属はその攻撃を躱し、ミスティータが杖から炎を放つ。

 

『そっちの魔法使いさんには劣るけどっ!』

 

確かミスティータは魔力による攻撃を得意としていたっけ。

精度は見る限りコリアナさんとどっこいどっこいか?

 

『させませんよぉ!』

 

だがその攻撃は全て空中で停止した。

ギャスパーか。

 

そしてその瞬間にゼノヴィアの一撃が炎をかき消した!

 

『ラードラ!サイラオーグさまの指示が届いた!僕は準備する!』

『了解だ!』

 

ミスティータが後方に下がって全身にオーラを迸らせ、それを守る様に前に立つのはラードラ・ブネ。

 

『生きた壁か?』

 

ドラゴンが訝しげに呟くが、ラードラの体が異様に隆起した!

っ、これは………!

 

 

ゴァァァァァァッ!!!

 

 

俺が龍化した時と同じ感覚を感じた瞬間、ラードラの肉体は黒いドラゴンとなった!

あれは記録映像には無かった筈……って事は!

 

『ブネは悪魔でありながらドラゴンを司る一族だったな。しかも肉体をドラゴンに出来るのは一族でも限られた者にしかなれん筈……』

「この試合のために…っ!」

 

ドライグの解説にリアスは苦虫を嚙み潰したような顔になる。

 

『ドラゴン変化は情報にも無かった!サイラオーグめ…その眷属を鍛え上げて覚醒させたか!やってくれるぜ、大王家次期当主様よ!』

 

この試合までに時間はたっぷりあった筈…その時間を使って覚醒出来る様に鍛えたって訳だ!

切ってない手札があったのは向こうも同じか!

 

「ドラゴンか……新しいデュランダルの力を試すには申し分なしだ!」

 

勇ましく言うと、デュランダルの刀身を覆っていた鞘らしき物がスライドしていく。

そしてスライドにより露出した部分から大質量の聖なるオーラが溢れていく!

 

『ほぉ、以前よりオーラが安定しているな。あの鞘のお陰か』

 

確かに。以前までと違って周囲にも被害が起きていない。

それでいて以前より力強いオーラだ!

 

『…新しい聖剣か?何にせよ、攻めるのみっ!!』

 

ラードラは新しいデュランダルを見ても臆さず、ゼノヴィアへと迫る!

 

「真正面からか。そういうのは嫌いじゃないっ!!」

 

ゼノヴィアは不敵に笑うと、デュランダルの切っ先をラードラへと向ける。

ラードラは気にせず突っ込もうとするが、ミスティータは何かを察したのかラードラを止めようとした。

 

『っ、止せラードラ!』

『もう遅いっ!!』

 

デュランダルからブゥゥゥン……!と周囲の空気を震わせる音が轟いたかと思うと、刀身から莫大なオーラが放たれた!

それを見たラードラは咄嗟にそれを回避!

 

目標を失った砲撃は近くの岩場に命中すると、けたたましい轟音を響かせ、その辺一帯を更地へと変えた……!

 

『何つう一撃だ……』

 

これにはドライグも言葉を失っていた。

そしてそれはラードラも同様であった。

 

『凄まじい一撃であった……!』

『ラードラッ!!』

 

ラードラが驚嘆していると、ミスティータがラードラの名を呼んだ。

 

『どうしたのだミスティー……ッ!!!』

 

振り返ったラードラの体躯に、聖なるオーラの刀身が食い込んだ!

肉体を焦がすほどの痛みに耐えているラードラの眼前には、ゼノヴィアが。

 

『あまり論理的ではないが、個人的には悪くない作戦だ』

 

 

……あの一撃をブラフにしたのか。

それでいてゼノヴィアはまだ息が切れていない。

 

「あのデュランダルは、教会の錬金術師がエクスカリバーと同化させたの」

 

新デュランダルの力に驚いていると、リアスから耳を疑うような発言が飛び出た。

 

「エクスカリバーと、同化…!?」

「簡単に言うと、教会が保管していたエクスカリバーを鞘の形で被せたのよ。エクスカリバーの力でデュランダルを制御しつつ、覆っているデュランダルとエクスカリバーの力を同時に高める事で破壊力を上げてるのよ」

『共鳴させて相乗効果を齎すって事か』

 

ドライグの言葉に、リアスは頷いた。

 

「そういやディオドラん時にもアスカロンと共鳴してたっけ。それと同じって事?」

「えぇ。それも新しいデュランダルが生まれた切っ掛けだそうよ」

 

リアスの説明に納得して、視線を映像へと戻す。

 

ゼノヴィアは息を吐くと、未だラードラの体に食い込んでいるオーラを強く光らせた!

 

『――――弾けろッ!!』

『――――ッ!!!!!』

 

刹那、聖なるオーラが大爆発を起こし、ラードラとゼノヴィアは光の奔流に飲み込まれた!

やがて煙が晴れると、少し黒くなったゼノヴィアと、大きく息を荒げるラードラが。

 

『うん?今ので倒したと思ったのだが……』

 

疑問気になるゼノヴィアの異変に、ギャスパーが気付いた。

 

『ゼノヴィア先輩!その体の紋様はっ』

『ん?……これはっ』

『…ギリギリ間に合ったみたいだね』

 

そう語るのは、こちらもなぜかフラフラになっているミスティータ。

彼の言葉をいまいち呑み込めないでいたゼノヴィアだったが、変化はすぐに起きた。

 

『…デュランダルが、反応しない?』

 

 

――――何?

 

どういう事だよ!?

 

『あの感じ、相当精神力を使っているようだが……まさか、神器か?』

 

神器って……あの子は悪魔だろ?

人間の血でも引いてなきゃ……引いて…………まさかっ!

 

『僕は実は人間の血も引いていてね……。神器の名は異能の棺(トリック・バニッシュ)……ふふ、僕も最近になって使えるようになった呪い系の神器だよ………』

 

異能の棺……どんな力なんだ?

まさか、聖なる力に対してのカウンターとか……。

 

『いや。あれは所有者の体力や精神力を極限まで擦り減らす事で特定の相手の能力を一定時間完全に封じる神器。つまりあの僧侶の小僧は自分の持てる力と引き換えにゼノヴィアの聖剣の力を封じたんだろう』

 

……って事は。

 

『くっ、イッセーから借りていたアスカロンもダメか……!』

 

聖剣を扱う力を封じられたって事か!

 

『ラードラがリタイヤする寸前で間に合って良かった……。ま、本当なら聖剣を封じた余波で、彼女に聖なるオーラでダメージを与えようとも思ってたんだけど、彼女の聖剣使いとしての才能は想像以上に濃かったようだ……。でも、これで彼女は戦えない…』

 

不味いぞ…ミスティータは実質戦闘不能でラードラも満身創痍だけどまだリタイヤまではいっていない。

対してこっちは戦う術を封じられたゼノヴィアにサポート向けのギャスパー……二対一だが、ほぼ同じ土俵だ!

 

『……ぬぉぉぉぉっ!!』

 

ラードラは持てる力を全て振り絞るように二人に殴りかかった!

 

『ッ転移!』

 

ギャスパーはラードラの視界を蝙蝠で覆うと、二人揃って何とか別の岩陰に転移した。

 

『今はこの判断で正解だろう』

『すまない、助かったよギャスパー。これでは私は役立たずだな』

『そ、そんな事ないです!ゼノヴィア先輩の方が僕よりもずっと部長のお役に立ちますよ!』

 

ギャスパーはゼノヴィアを励まし、腰に着けていたポシェットから小瓶、チョーク等の道具を取り出した。

 

『僕、この手の呪いを解く方法をいくつか知ってます!』

 

そう言うと手元に小さな魔方陣を展開させ、ゼノヴィアの体に当てる。

どうやらゼノヴィアにかかった神器の呪いを調べているようだ。

 

その間にもラードラは周囲を隈なく探している……ドラゴン相応の巨体も相まって、ジャックと豆の木状態だな。

 

『アークとキバだな!』

 

仮面ライダー未視聴の人分かんねぇだろそれ。

 

「ギャスパー、ゼノヴィアの呪いは解けそう?」

『はい、手持ちの道具で何とかなりそうです』

 

ギャスパーはゼノヴィアを中心にチョークで魔法陣を描く。

 

見慣れない紋様を描き、最後に俺の血が入った小瓶を持った。

ギャスパー強化用アイテムとして予め持たせておいたやつだ。

 

『今描いた魔法陣にこのイッセー先輩の血を馴染ませる事で、呪いは解けると思います。ただ、解呪出来るまで少し時間が掛かりそうですけど…』

『待て、ギャスパー。その血を使えばお前は……』

 

あれを使ってしまえばギャスパーはパワーアップは出来ない。

もう一つはあるにはあるが、あれは直接的なパワーアップではないし、渡してある血は一つだけだ。

 

困惑するゼノヴィアにギャスパーは満面の笑みを見せた。

 

『ゼノヴィア先輩、僕、役目を見つけました。今の僕にしか出来ないことを』

 

ギャスパーは魔法陣に俺の血を振り掛けると、描かれた紋様が淡く輝く。

それを見届けた後、ギャスパーは岩陰から飛び出していった!

 

 

アイツ、まさか……!

 

『ぼ、僕が時間を稼ぎます!呪いが解けたら、そのままデュランダルをチャージしてください!』

「無謀よ!ギャスパー!隠れなさい!」

 

リアスがそう指示するが、ギャスパーは逃げる素振りを見せなかった。

 

『ダメですぅ!ぼ、僕が時間を稼がないとダメなんですっ!部長が勝つにはゼノヴィア先輩の力が必要なんですっ!!』

 

ギャスパーは目の前のラードラとミスティータを見据える。

 

『見つけたぞ、ヴァンパイアめ。あの剣士は隠したようだが、貴様がここにいるということは近くにいるのだろう?火炎を撒き散らせば出てくるだろうか。……いや、いっそ周囲の風景ごと焼き払ってしまおうか…。それぐらいの力ならば残っているぞ』

『あ、暴れさせませんっ!!』

『……震えているが、その勇気に、敬意を払わねばならんな。勇気が無ければドラゴンの前に立つことすらできない』

 

ラードラは口腔から火炎を放つ!

ギャスパーは片手で拳を握ると、防御魔方陣でそれを防いだ!

 

『ぐぅぅぅぅぅぅっ………!!!』

『…ぬぅ!』

 

先程のダメージがまだ残っているラードラは攻撃を中断した。

対するギャスパーは、殆どダメージを負ってはいなかった!

 

『…どういう事だ。確かに先のダメージが残っているとはいえ、貴様に悲鳴を上げさせるのに申し分はないはずだが……』

 

ギャスパーの耐久力に疑問を抱いているラードラの目の前で、ギャスパーの拳から赤い光が漏れだした。

 

『ぼ、僕は、一人で戦っている訳じゃありませんっ!』

 

ギャスパーの覚悟に応えるように、アイツの拳の光が強くなった!

そしてギャスパーは拳を突き出した!

 

すると――――拳から赤い炎が放たれ、ラードラの肉体を焦がした!

 

『ぬああああああっ!!!』

 

あまり大きな規模ではないが、手負いのラードラにとっては傷口に塩を塗るのと同じで、ドラゴンの口腔から悲鳴が漏れ出た!

 

『どういう、事だっ……!?』

 

息を荒げるラードラの目の前で、ギャスパーは拳を解いた。

 

 

その手の中には、俺の指輪が掲げられていた。

 

 

『赤龍帝の、指輪…!?』

 

 

そう、俺は試合前に俺がギャスパーに貸した物だ。

きっかけは、アイツが俺の血を取り込んだ事――――俺の血には、少なからずドラゴンの魔力も含んでいたようで、ギャスパーはこの眷属の中で唯一、俺の指輪の力を引き出せる素質を、この試合までの特訓で開花させたのだ。

 

あのフレイムドラゴンが齎す力は炎の力、そして炎に対する耐性だ。

そしてその炎は、ドラゴンのものであれば更にその力を殺がせる!

 

だが俺が扱うものに比べれば付け焼刃同然……本来なら俺の血を服用する事で使用するのが前提だったんだが。

だからこそ、何時までも足止め出来る訳じゃない!

 

だがギャスパーは構わず、ラードラの腕にしがみ付いた!

 

『……っ、離せっ!デュランダル使いは早急に倒さねばならぬ!呪いの効果は有限だからな!確かに手負いではあるが、貴様を倒すのは訳ないのだぞっ!!』

 

ラードラが空いている手でギャスパーを掴み――――その手に力を込めた。

 

……メキメキと骨の軋む嫌な音が響き渡るのと同時に、ギャスパーの口から悲鳴が漏れた。

 

『うわぁぁああああああああああっ!』

「……もうやめて!」

 

アーシアは見ていられないと顔を手で覆い、絶叫した。

 

ラードラは握りつぶしたギャスパーを地面に捨てる。

 

血塗れでボロボロ、呼吸も大きく乱れており、何時リタイヤしたって不思議じゃない。

 

 

だけどそれでも――――

 

 

 

 

『…ぼ、僕は男の子だから……守らなきゃ…ゼノヴィア先輩を…。部長の役に、たたなきゃ……っ!』

 

ギャスパーは這い蹲ってラードラへしがみ付いた。

 

『…邪魔だ』

 

ラードラに蹴られて、ギャスパーは地面を転がる。

…が、フラフラの足でも、立ち上がった。

 

『…恐れない、逃げない、投げ出さない……僕は、男なんだ…………っ!』

 

 

 

能力を使いフラフラになったミスティータがギャスパーを杖で横殴りにした。

 

『……諦めろ。君では我々には勝てない』

 

ギャスパーに、無情な一言がかかる。

だが、ギャスパーは尚も踏ん張る。

 

『今は力がなくても……!守りたいから………イッセー先輩だって、どんな時だって諦めない、だから……ゼノヴィア先輩は、僕が、守る…………』

 

フラフラのギャスパーを、ラードラが踏みつける。

 

足を上げると、ギャスパーの状態は尚も酷い事になっていた。

 

 

「……リアス」

 

他の眷属すら見ていられないとする中、リアスだけが目の前のギャスパーを見つめていた。

 

「ここで私が目を逸らせば、私はあの子を信じていない事になるから。……どれだけの状態になっても、私はあの子の王だから、目を逸らす事はしないわ」

『…そうだな。それが今のお前が取るべき行動だ』

 

ドライグの声音も何時になく真剣だ。

 

『僕は……まだ………………!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――――フン』

 

目の前のギャスパーを見て、ドラゴンが息を吐いた瞬間だった。

ギャスパーの体から黒い靄のようなものが発せられ、ギャスパーの瞳が赤く輝きを放った!

 

『僕が、僕が………守ってみせる…………!!』

 

 

ギャスパーから発せられる黒い霧は、四足歩行のドラゴンの形となった。

 

 

「あれは……!」

 

この中でそれを実際に見たことがあるリアスは、声を低くした。

霧のドラゴンが天に向かい力強く吠えると、異変は起きた。

 

『こ、これは、停止の邪眼!?』

『馬鹿な!?その様な状態で、我々の動きを止めたと言うのか……!?』

 

土壇場で発動したのか!

ラードラとミスティータは何とか足掻こうとするが、停止の力が強く、抜け出せないでいる!

 

その状態の二人をドラゴンは睥睨すると、目を怪しく光らせた!

 

『あっ……!!』

『これは……!』

 

足掻いていた二人の四肢が、徐々に凍り付いていく!

停止の力に加えて突然の氷結に、二人は一転して窮地に追い込まれていた。

 

『くっ、不味いぞ…このままでは、聖剣使いの呪いが解かれて――――』

 

 

 

 

『あぁ、まさに今がその時だ』

 

短くそう告げて岩陰から出てきたのは、ゼノヴィアだった。

手に持つデュランダルからは先程以上に危険なオーラが迸っており、近づくだけで消滅させられそうな程だ。

 

ゆっくりと歩み寄るゼノヴィアの目からは、涙が溢れていた。

 

『済まなかった。私の覚悟が未熟だったばかりに、不甲斐ないばかりに、あんな戒めにかかってしまった』

 

ゼノヴィアの歩みと時を同じくして、デュランダルの鞘がスライドしていく。

 

『仲間の為に、主の為に持つべきだった死ぬ覚悟をギャスパーよりも足りなかった。自分があまりに情けない……!私は自分が許せなくて仕方がないんだ!!』

 

溢れ出る聖なるオーラは、ゼノヴィア自身をも包み込んでいく!

 

『お前の思いへの答えはただ一つ……こいつ等を完全に吹き飛ばそうっ!!…それが、お前の覚悟への、私なりの答えだっ!!!!』

 

 

 

グオオオオオオオオオンッ!!!!!!!!

 

 

ゼノヴィアの言葉に応えるかのように、ドラゴンはフィールド全体を揺るがすほどの咆哮を上げる!

そしてデュランダルへ、赤、青、緑、黄と、四つの光が吸い寄せられていく!

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!!!!!!!

 

 

するとゼノヴィアを中心に地震が起こり、デュランダルの刀身を爆炎、氷、雷が包み込んだ!

ゼノヴィアは目を見開くと、ミスティータとラードラ目掛けて振り下ろした!

 

 

「龍牙、絶唱破ッ!!!!!!」

 

 

 

ドォォォォォォォォオオオォッ!!!!!!

 

 

聖なるオーラと四大元素の反発により起きた大爆発がミスティータとラードラを襲い、二人はリタイヤの光に包まれた。

 

『サイラオーグ・バアル選手の戦車一名、僧侶一名、リタイヤです!』

 

そうアナウンスが告げると、ギャスパーは糸が切れたように倒れた。

ゼノヴィアはデュランダルを仕舞うと、ギャスパーを抱き起した。

 

『終わったぞ。…お前が、二人を倒したんだっ』

『僕……お役に、立てたんですね………勝てたん、ですね………』

『あぁ、あぁ……!』

 

ゼノヴィアの言い聞かせるような言葉に、ギャスパーは静かに笑った。

そのまま気を失ったらしいギャスパーは、リタイヤの光に包まれた。

 

 

 

……ギャスパー、お前の覚悟、受け取ったぞ。

 

『…フン。不条理な行動ばかりだな、人間も悪魔も』

 

…ありがとな、ドラゴン。

 

『何の事だ』

 

あの霧のドラゴン、お前だろ?

あの時、ギャスパーとゼノヴィアに力を貸してくれたじゃないか。

 

『……あの小僧と小娘が勝手に使っただけだ。あの吸血鬼に俺の魔力が蓄積しているなら、起きても不思議ではあるまい』

『なら、そういう事にしてやろうぜ。相棒』

 

…そうだな。

 

 

『生暖かい目で見るな鬱陶しい!!!』

 

 

 




やっぱこの回のギャスパーの男気はカットできないねぇ

曹操「ひゃーっはっはっは!兵藤一誠?どうしてここにいる?君は死んだんだぞ?ダメじゃないか!死んだ奴が出てきちゃ!死んでなきゃあああ!!!!」
イッセー「全部台無しにしてくれたなこの野郎!」

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