ハイスクールD×D wizard 希望の赤龍帝 作:ふくちか
『それでは両「
審判に促され、リアスとサイラオーグさんがそれぞれダイスが置かれた台の前に立った。
『第一試合を執り行います。出場させる選手をこれより決めるため、両者共にダイスを手に取ってください』
リアスがダイスを手に取った。
……見てるこっちも緊張するな。
『賭け事してる気分だな』
『丁か半か、だったか』
『シュート!』
審判の掛け声の元、二人がダイスを振った!
『何が出るかな何が出るかな』
『それはサイコロ任せだー』
よぉい!……って何で俺まで?
それは兎も角、台の上でダイスが止まったようだ。
その数字は――――
『リアス・グレモリー選手が出した目は2!対するサイラオーグ・バアル選手の目は1!合計は3です!この場合、両選手の兵士が大数の為、価値観が3の騎士か僧侶の一名となります!さぁ、両陣営の初陣を飾る眷属は誰なのかぁ!?』
3…………いきなり小さい数字だな。
序盤からどうなるかわかんねぇぞこりゃ!
『作戦タイムは5分間となります。その間に出場選手を選抜して下さい。尚、兵士のプロモーションはフィールド到着後、昇格可能となります。試合毎にプロモーションが解除されますので、その都度フィールドでプロモーションを行ってください』
5分か……長すぎず短すぎずだな。
作戦タイムと洒落混もうとした時、両チームの陣地が結界で覆われた。
「防音対策だよ。作戦が外に漏れない様にするためのものだね」
木場がそう言う。
「更に外部に口元を読心術で読まれないように、各選手の顔に特殊なマークがつくように加工されるんだ」
へぇ……あ、ホントだ。
作戦タイムの間までプロ戦仕様って訳か。
『貴様も加工してもらったらどうだ?主にモザイクで』
『人を放送禁止レベルの汚物だとでも言いたいのかこの野郎』
「うるせぇよ。……3と言う事は」
この場合、出す奴は決まってる様なもんだな。
「えぇ、最初は祐斗を出すわ。最も、向こうは読んでるでしょうけど」
やっぱり。
まぁ消去方だよな。
「アーシアとギャスパーは元々単独では出せないし、ゼノヴィアはテクニックでやられる可能性もあるしな」
「テクニックでくるなら、それ以上のパワーで押し返してみせよう。私の新しいデュランダルでな」
あぁ、修学旅行の時は無かったんだったな。
漸く教会から帰ってきたのか……それは兎も角。
「そう言うのは序盤で出すべきじゃないだろ。向こうに新しい手札晒す様なもんだし、何よりゴリ押し過ぎてもリアスの評価が下がる可能性だってある」
「イッセーの言うとおりよ。ここで評価を下げる訳には行かないから、となればここは手の内を見せても弱味にならない祐斗で行くべきなの」
まぁゼノヴィアの場合、ここぞの場面でパワーに頼る可能性もあるしな。
『即ち考え無しと言うわけか』
「む、イッセー。まるで私が何も考えてないと思っていないか?」
「よく分かったな」
「……そこは嘘でも否定してくれ」
ゼノヴィアが目に見えて落ち込んだ……後で励まさないと。
「読まれてても出ない事には変わりはないからね。行くよ」
木場は襟元を直して一歩前に出ていた。
「負けるんじゃねーぞ」
「勿論」
俺達がそう交わすと、アナウンスが告げられた。
『まもなく時間です。試合に出場する選手は専用の魔法陣の上に立ってください。その魔法陣から別空間に用意されたバトルフィールドへ転送されます。なお、フィールドに転送されるまでの間、両陣営の陣地は結界により不可視の状態になります』
あの魔方陣はその為のものか……転送まで姿を隠すのは、直前で選手を変えさせない為だな。
後はどんな選手が出てくるのか、観客の想像力を掻き立てて楽しませるのもあるのかも。
「では、行ってまいります」
耳にイヤホンマイクをつけた木場が魔法陣の上に立つ。
その瞬間、魔法陣が輝き、木場の姿が消えていった。
ーーーー
木場が転送された瞬間、幾つもの映像風景が現れ、フィールドも緑一面の平原へと変わった。
そして我らがイケメン王子はそこにいた――――相対するのは、青白い炎を纏った馬に乗る甲冑騎士。
『おおっと!第一試合の出場選手がバトルフィールドに登場です!フィールドは見渡す限りの広大な平原!この緑広がる原っぱが第一試合の舞台となります!そして両陣営から選ばれたのは――――グレモリー眷属の神速の貴公子!木場祐斗選手です!!リアス姫のナイトが、登場しましたァ!!』
「「「「「キャァァァァァァァッ!!木場きゅぅぅぅぅん!!!」」」」」
おおっと、いきなり女性陣の黄色い声援が上がったぞ!
流石イケメン王子、もげろ!!
『そして対するバアル眷属は―――――』
実況が紹介する前にバアル眷属のランスを持った甲冑騎士が馬を歩かせ、兜のマスクを上げた。
あの人は確か……サイラオーグさんの騎士。
『私は主君、サイラオーグ・バアル様に仕える騎士の一人、ベルーガ・フールカス!!』
フールカス……馬を司る悪魔だったっけ。
『僕はリアス・グレモリー様の騎士、木場祐斗です。どうぞ、よろしく』
『名高き聖魔剣の木場祐斗殿と戦う機会を主君からいただき、剣士冥利に尽きるばかり』
『こちらこそ、貴殿との一戦を楽しみだと思えます』
不敵に返すねぇ~!
『アザゼル総督、あの青白い炎に包まれた馬の事ですが』
『――――「
解説結構上手いな、あの人。
天職じゃね?
『第一試合、開始して下さい!』
お、始まるぞ!
開始の合図と共に、フールカスの馬が駆け出した!
「速いっ!」
何てスピードだ……こりゃ目が慣れない内は追うことも出来ねぇぞ!
だけど、うちの騎士様も負けてないぜ!
「――――っ!」
姿の消えたフールカスの一撃を、微動だにせず聖魔剣で全て受け流した!
木場は一息吐くと、直ぐ様同じスピードで動きだし、神速の世界に突入する!
ギィン!ギィィン!!
フィールドに響くのは得物がぶつかり合う音と火花だけ……激突の瞬間は見えても、他の動きだけは認識できない状態だ。
そして、両者が鍔迫り合いの状態で姿を見せた。
『我がアルトブラウの脚を持ってさえも互角が良いところとは……恐るべし、リアス姫のナイト!』
『そちらこそ、馬とのコンビネーションが抜群ですね。馬を斬ろうにもランスが届き、あなたを屠ろうにも馬がそれを許さない。……ならば、足場を奪うまで!』
木場のオーラが激しさを増すと、周囲の地面から聖魔剣が幾重にも生えてきた!
だがフールカスは動じる事なく、馬と共に宙高く飛び上がった!
『咲き誇れ!雷の聖魔剣よ!!』
だが木場も直ぐ様宙に聖魔剣を生成すると、そこから雷が降り注ぐ!
『甘い!』
っ、フールカスはランスを避雷針がわりに雷をやり過ごした!
そして直ぐ様馬の鬣から――――二本目のランスを取り出した!
『ほぉ、あの馬の鬣は、違う次元に繋がっているのか』
ってことは……まだランスはあるな。
『っし!』
俺が感心する傍ら、木場は無数の聖魔剣を虚空より咲かせ、豪雨の様にフールカス向けて撃ち放った!
『聖魔剣の雨霰と言うわけか!』
言葉では焦っている様だが、それをもランス二本で殆ど破壊していく!
だけどそれでも全ては破壊しきれなかった様で、フールカスの甲冑には幾重もの切り傷が生まれていた。
『素晴らしい技量だ。ならば……今度は此方から!』
『っ!』
フールカスが飛び出したと同時に――――馬とフールカスの姿が無数となった!
幻影か…………木場の顔が険しくなったと言うことは、本物と同じ気配って事か!
『ならば……っ!狂い咲け!!』
木場はマーキングしていた中空に聖魔剣を咲かせ、幻影を消し去っていく!
そしてその勢いのまま聖魔剣のファンネルと共に切り裂いて行くが――――
『てゃぁぁぁっ!!』
『っ!!』
背後から現れたフールカスの槍が木場を貫いた――――と思われたが、その場に崩れ落ちたのは聖魔剣!
『弾けろっ!』
そして別の場所に転移した木場が拳を握ると、聖魔剣の破片が爆発した!
それを受けてフールカスの幻影が消え去っていく!
『ほぉ、その様な妙技もあるのか。まるで奇術士の様だ』
フールカスが後方から歩み寄ってくる……幻影が消えてる所を見るに、自分から消したのか。
『僕の友人の、受け売りですよ。何もないと思わせてアッと言わせる、とね』
『ホッホッ。赤龍帝殿の事か』
木場は息を吐くと、不敵に笑った。
『僕は貴方よりも強い。この勝負、何れは僕が貴方の動きを捉える。だけど、その為にはスタミナをかなり使ってしまう』
『自信満々の様ですな。確かに貴殿の才能は私とアルトブラウを上回る。だが、ただではやられませんぞ!後続の為、貴殿の手足を一本でも切り落とし、体力を奪う!』
その宣言を受けて、木場は聖魔剣を消した。
――――アイツ、ここで使うのか。
『そう、だからこそ、貴方が怖い。覚悟を決めた使い手ほど怖いものはありません。僕は今、貴方にもう一つの可能性を見せます』
そして木場は手元に一本の
『
木場の体を聖なるオーラが包んでいく。
すると、地面から聖剣が無数に生えてきて、同時に甲冑の姿をした異形の存在が創りだされていく。
それらは手元に生えた聖剣を手に取ると、木場の周囲に群がる。
ドラゴンの兜を被る甲冑騎士の中央に立つ木場は、まるで騎士団を仕切る団長の様で。
それを見てフールカスは驚愕に包まれていた。
『……っ!ば、バカな!
確かに、アイツの禁手は本来なら双覇の聖魔剣だ。
でもそれは、あくまで「
そしてあれは木場が後天的に得た力の昇華。
『…………まさか、「
合点が行ったかの様に唸るフールカスに、木場は肯定の意を示した。
『……名は「
そう、あれはコカビエル事件の折りに木場が同胞達の魂から受け取った事で発言した力。
だからこそアイツは聖剣と魔剣を同時に創り出せる。
切っ掛けは京都で戦った同じ神器を持つルーラー……もとい、ジャンヌの亜種禁手を見たことだった。
そこからは聖剣だけで俺との修行に望んだ…………何回か殺しかけたけど。
だけどあの状態では聖魔剣を発現させる事は出来ず、その逆もまた然り。
とは言えこの辺は修行すればどうとでもなると言うのが見解だ。
『これに至るために聖剣一本で赤龍帝に挑んだよ……まるで魔王にヒノキの棒一本で挑まされる勇者の心境だったし、何度も三途の川だって見たよ……だけど、僕は至れた』
お前が殺すつもりで来いって言ったからじゃねーかよ!
『本来の「聖剣創造」の禁手は聖剣を持った甲冑騎士を創り出す『
余計な発言するなよこの独身!!
『んだとこの野郎!!独身で何が悪いんじゃァ!!!』
独身総督の突っ込みが飛ぶ中、木場は龍騎士団を従えてフールカスの前に立つ。
まだあの状態では聖魔剣程の攻撃力はないけど、騎士団と言う形で指揮している分、手数が増す。
あれが同時に仕掛けるとあっちゃあ…………
『行きます、フールカス殿!!』
木場が騎士団と共に駆け出した!
高速の剣擊がフールカスに襲いかかる!
『くっ、まだここで負ける訳には行かんのだ!!』
フールカスも力強く叫び、前に飛び出した!
と同時に複数の幻影を作り出した!
木場の騎士団とフールカスの幻影がぶつかる!
ギィィィィィンッ!!!!
フィールド内に響く、鈍い金属音。
そしてお互いの幻影と騎士団は音もなく消え去る。
無音が暫く場を支配していたその時、フールカスが光に包まれていた。
見れば、フールカスの甲冑が片口から腹部にかけて砕けて、傷口からは聖剣のダメージによる煙をあげている。
つまり――――
『……見事なり、木場祐斗殿』
フールカスは最後に木場を称えると、フィールドから消えていった。
『サイラオーグ・バアル選手の騎士一名、リタイヤです!!』
先ずは、俺達の一勝を手にした。
木場は二つの禁手を使えるそれ即ち――――極手が二つあると言うことだ