まぁここまでの話は本編とミリ単位も関係無いんですよ。強いて言うならばサブタイトルの名前に関係があるくらいでしょうか。きっとここまで言うと明日投稿する話のサブタイトルを既に見抜いた方もいらっしゃるでしょう、それでは第8話スタートです
鈴仙・優曇華院・イナバSIDE
垣根は当麻から「一方通行」という能力名を聞いた途端顔色が変わったのよね…学園都市で何か「一方通行」に関わって酷い思いをしたのかな…。何にせよ今は垣根を落ち着かせないと…!かなり傷は治ってきているはずだけど、もし傷口が開いたら……
「垣根、もう一度よ。もう一度私の目を見て。良い?ジーッと見つめるのよ?」
「クソが…!誰なんだよお前は…!!俺が何をしたって言うんだ!クソ…!!」
ダメだ…もう周りの声なんて聞こえていないし何かの幻覚を見てる…
「垣根!どうしたんだよ!?まずは落ち着け、ここは診療所だ!」
見かねた当麻が垣根の側に駆け寄って声をかけてくれた
「当麻…!今の垣根は錯乱状態で幻覚まで見てるから危ないのよ!離れて!」
「確かに今の垣根は何かがおかしい…でも…!だからこそだろ!今垣根がこうやって苦しんで悩んでるって時に同じ学園都市に住んでたかもしれない人間同士が、いや友達同士が助け合えないってことが何よりおかしいんじゃないのか!?」
「……っ…」
何でそこまで躊躇い無く率先して誰かを助けようと行動できるのよ……人間なんて100年も生きられない弱い生き物なんだから無理せず逃げれば良いじゃない…。逃げる事は何も悪い事じゃないのに…
「鈴仙!俺にはこの現実をどうにか出来る力は無い!でもお前なら…!お前にはさっき垣根を落ち着かせたみたいに能力が(ちから)があるんだろ!?お前には垣根を楽にしてやる為の力も知識もあるんじゃないか!それを今使わなきゃいつ使うんだよ!」
「…あぁもう!耳元でうるさいわね!他の患者さんの迷惑も考えないよ!それに今垣根を落ち着かせる為の作戦を考えていたのよ!私はもう逃げたりはしない!!」
当麻の一言は私を奮い立たせるには十分過ぎた、とにかく今はつまらない過去の感傷に浸っている暇は無い。とにかく垣根を落ち着けないと…
「やりたくは無かったけど垣根の波長を後遺症が残らない程度でかなりゆるやかにするわ、半日は目を覚まさないと思うけど今の私にはこれくらいしか…とにかく当麻、垣根の身体を抑えて!」
「わ、分かった!任せろ!!」
こんな本気で能力を使う機会が訪れるとは思わなかったわね、でもそれが誰かを「狂わせる」のではなく「救う」ために使う事が出来て良かった
「歯をくいしばれよ、垣根!鈴仙の能力はちっとばっか響くぞ!」
そう言いつつ当麻は垣根を極力傷付けないように拘束していた
「……一瞬で良いわ、一瞬ですぐに意識が無くなって次に垣根が目を覚ました時にはきっと落ち着いているはず…。だからその時は垣根の悩みを聞かせて…」
私は未だに「クソ…!」「近寄るんじゃねぇ!」と幻覚を見ている垣根の両頬に手を置きかなり強引に私の瞳を見つめさせた。
だがその垣根の瞳は…光が一切灯っていなかった。何より驚かされたのは次の瞬間
「バァァァァァン!!!!」
垣根の背中から6枚の天使のような翼が出現し壁を一気に破壊してしまったことだった
「なっ…!?まさかまた御使堕し(エンゼルフォール)か!?でも鈴仙の中身は入れ替わっていないし…これは一体…」
「エンゼルフォールって何よ!?それに垣根はどうなってるの!?」
「……す…」
「へ…?垣根…?」
どうやら幻覚を見なくなったのかどうかは分からないけど落ち着いたみたいね…良かった…。私は目を閉じホッと一息をついた。だが
「鈴仙!!危ない!!」
私の目の前には天使のような羽根を私に向かって振り下ろしている垣根と、私の目の前に立ち右手を振りかざしている当麻の姿があった
藤原妹紅SIDE
私の予感が外れていれば良いが…何故かこういう状況下での私の勘だけは嫌味な程的中するから尚の事焦るんだよ…!
とにかくは永琳だ、あの医者なら錯乱状態の患者を落ち着かせる位訳は無いだろう。問題は今どこにいるかだ。
「くそ…!どこに行ったんだあの医者は!今は非常事態なんだぞ!」
永遠亭の病室と診察室を覗いたが永琳の姿は無かった、そうなると残りの可能性としては輝夜達が暮らす住居として使っている所にいるということになる
(出来るだけ早く見つけないと…!もし垣根が暴れ出したりしたらあの2人じゃ少しと言うかかなり不安だからな…)
「永琳!いるか!?実は垣根が錯乱状態になって鈴仙と当麻が対応してるんだ!早く来てくれ!」
私は手当たり次第に部屋の扉を開けていった、するとそこにいたのは……
「あら、妹紅じゃない。随分と慌てているみたいだけど……垣根がどうかしたの?」
テレビに向かいゲームを楽しんでいる永遠のお姫様こと、蓬莱山輝夜だった
「…え、永琳はどうした?今どこにいるんだ…?」
「永琳なら今人里に買い物に行っているわよ、何でもイナバが垣根に付きっきりだから代わりに買い物に行くって言っていたわ。それで永琳がどうしたの?」
「…お、終わった…完璧に終わった…。よりにもよって今いるのがお前なのか、輝夜…」
「何だか私では不満足だ、って言いたげね。また弾幕ごっこでもして惨敗したいの?」
「…違う、今はそんな時間はない…。実は…」
私は垣根が急に錯乱状態になったことを輝夜に話した
「へぇ…注射や苦い薬を平気そうに乗り越えてきた垣根の様子とは思えないわね。それで永琳を探していたの」
「あぁ…だがこの調子だと私が人里に探しに行った方が早いかもしれないな…」
「何言ってるのよ、わざわざ永琳を待たなくても幻想郷で揉めた時はこれでしょ?」
そして輝夜は数枚のスペルカードを取り出していた。
「あのなぁ!今回は相手が病人なんだぞ!?いくら死なないように加減したとしても危ないだろ!お前には常識が無いのか!?」
「だって……このゲームにはもう飽きたし、永琳を待つにしても迎えに行くとしても時間がかかる以上得策とは言えないじゃない。それに…」
「それに…?何だ?」
「垣根は普通の人間とは明らかに違うのよ、だから簡単には死ぬ事は無いわ。それに今を楽しまなければ意味が無いじゃない。千年でも万年でも、今の一瞬に敵う物は無いの」
「……何訳の分からない屁理屈を言ってるんだお前はあぁぁ!!それに垣根が普通の人間とは明らかに違うっていうのはどういう意味だ!」
私は慧音から身体に恐怖と言う形で覚えさせられた秘伝の頭突きを輝夜に食らわせた。ちなみに私がこの奥義を会得するハメになったきっかけは慧音の世界史の授業中に爆睡していたからだというのは誰にも言うつもりはない
「いったぁぁぁぁい!!!!!死なないけど痛いじゃない!何て事するのよ!?」
「その台詞をそっくりそのままお前に返す!それで…結局どういう意味なんだ?」
「本当に痛い…まだ痛むじゃない…。と言うか妹紅は気がつかなかったのね。意外だわ、まぁ私も具体的にどうと分かった訳じゃないけど垣根は多分何らかの能力を……」
その時だった
「バァァァァァン!!!!」
「何だ今の音は!?」
「そんなこと私が知る訳無いじゃない!…でも診療所の方から聞こえたわね…」
どうやら私の勘は最悪の形で的中したらしい、それもどう転がっても永琳からの2回目の説教は免れないというこれまた最悪のオマケ付きで、だ
「……一応だけど聞いておくわ、妹紅はまだ永琳を迎えにいくつもり?」
「…分かり切った事を聞くなんて随分と皮肉なんだな」
「一応聞いただけよ、さぁ帰ってきた永琳が心臓発作を起こさないようにするためにも、これ以上永遠亭を破壊させないよう阻止しましょう」
私と輝夜は大急ぎで垣根の病室へと向かった
上条当麻SIDE
…まさに間一髪だった、あとコンマ何秒かでも飛び出すのが遅れていれば鈴仙は垣根の天使のような翼に切り裂かれてズタズタになっていただろうな…。実際垣根の翼が出現した時の衝撃だけで部屋自体がボロボロになっていた
だが結果としては誰一人として切り裂かれるどころか傷付いてもいなかった
それは勿論当麻の幻想殺しが垣根の羽根を打ち消したからだ
(俺の右手で打ち消せたってことは…あれも異能の力なんだよな…。だとしたらあれは魔術か…?能力じゃ無いって決めつけられる証拠があるわけでも無いけどあんな天使のような翼が生える能力なんて…)
俺がそんな事を考えている時にでも垣根は容赦なく攻撃を仕掛けてきた
「ちょっと当麻!ぼさっとしてないで避けないと危ないじゃない!!」
鈴仙はとっさに俺を引っ張りつつ身を投げ出すような形で回避を成功させた
「うおっ!?悪いな、鈴仙!でもちょっと考えてた事があって…」
「考え事は結構だけど……垣根はそんな暇を与える気は無いみたいね…!」
今度は、垣根は背中から生えた翼を俺と鈴仙に叩きつけるようにして攻撃してきた。言う分には避けやすい単調な攻撃のようにも聞こえるが、余裕で成人男性1人をすっぽりと覆い隠せてしまう位の大きさの翼が襲ってくるのだから実際は風圧もすごいし何より叩き潰されたら一撃でミンチになってしまう
「下がってろ、鈴仙!うぉぉぉぉぉ!!」
俺は鈴仙を襲った最初の一撃を打ち消した時のように再び右手を突きだして襲いかかる翼を打ち消した
「その右手…一体どうなってるの…!?」
「考えるのは後だ!垣根を正気に戻したすぐにでも教えるよ!!」
「それもそうよね、でもこれ位の攻撃なら私でも回避は出来そうだから次からは自分の身を守る事に徹して貰って構わないわ」
(本当ならここは俺が鈴仙を守るべきだ…でも垣根の翼は1度の攻撃で1枚しか使ってない…。それが他の翼を使わないのか使えないのかは分からないけど…2人で固まって同時に潰される位なら…!)
「分かった、鈴仙…でも死ぬなよ!」
「そういう台詞は自分で自分の身を満足に守れるようになってから言いなさい!」
正直鈴仙の事が心配にならないと言えば嘘になるけど…鈴仙のあの言葉は自分の実力を過信したものでも無く垣根を侮っている訳でもなくちゃんとした根拠があるからだと俺は信じていた。
「……ころ…す…お前が…どうして…でも俺を殺すって言うんなら…その前に俺がお前を殺す…!!」
「どうしてそんな事言うんだよ、垣根!ここにいる俺も鈴仙も誰誰一人としてお前の命を狙ってなんかいないだろ!?いい加減目を覚ませ、この大バカ野郎!!」
とにかくまずはあの翼をどうにかしない事には落ち着いて説得も出来ない
(俺がさっき鈴仙を守るために垣根の翼に触れた時…結局羽根は再生したけどその再生には1分程の時間がかかった…。もし6つの翼全てを打ち消せばもっと再生のための時間がかかるんじゃないか?)
俺は真正面から垣根にぶつかった、もっと安全で効率的な作戦があったのかもしれないけど…今はそんな事を悠長に考える時間も無いし何より垣根には真正面からぶつかって目を覚まさせてやらないと…!以前に出会った「根性!」が口癖のLEVEL5のアイツの考え方が移ったのかもな!
「いつまでもそんな幻想ばっか見てないで早くこっちに戻ってこい!こうなったからには永琳さんの説教をお前にも受けて貰うからな!!」
「クソが…!ちょこまかと動いてんじゃねぇ!!」
俺の右上から翼が突き刺すように高速で襲いかかってくる、でもそれまでを馬鹿正直に受け止める気はない。
「これでも触れるだけで相手を殺せる能力者と殴り合ってないんだよ、俺は!!」
俺はその襲いかかってきた翼を身を屈めるようにして回避した
(よし!垣根が扱える翼は1度の攻撃で1つだから2撃目は無い!!)
だが…翼での攻撃を回避された垣根は不気味にも笑っていた
「…っ…!そんな風に笑ってられるのも今の内だ!さぁ歯をくいしばれ垣根!!」
俺が勝ちを確信して拳を握って腕を振り上げた時…鈴仙の声が聞こえた
「当麻、避けて!!2撃目が来る!!」
(2撃目…!?そんな…まさかここまできて2枚目を扱えるようになったって言うのか!?そんなのアリかよ…!)
確かに鈴仙が言った通りに2つ目の垣根の翼が俺に向かって襲いかかってきていた
(回避も防御も間に合わない!俺は死ぬのか……)
「まずはお前からだ…地獄に堕ちて俺を襲った事を後悔しやがれ!!」
腕を振り上げた状態の俺はどうする事も出来ず反射的に目を瞑っていた
だが俺を襲ったのは身体を貫かれる痛みでも吹っ飛ばされて全身の骨が砕ける痛みでも無く………誰かに突き飛ばされて尻餅をついた時の軽い痛みだった
「…?一体何が…?……っ!!何でなんだよ…何でお前が俺を庇うんだよ…何でなんだよ!!妹紅!!」
俺の目の前には胸を翼に貫かれて口から血を噴き出しつつも立ったままで俺を庇おうとしてくれている藤原妹紅の悲惨な姿があった
非常に今更な事でこれを読んでいてくださる方の多くが気付いていらっしゃることかと思いますがこの作品は東方二次創作のネタを多く含んでいます。輝夜が引きこもりだったりニートだったり鈴仙が永琳の治験に無理やり協力させられていたりと…露骨に私がにわか勢であることを露見させるような内容ばかり書いていたような…。最近は謝ってばかりなような気がしますが改めて謝罪します。本当に申し訳ありませんでした