とある幻想郷の幻想殺し   作:愛鈴@けねもこ推し

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昨日投稿した話を読み返してみましたが自分でも自覚できる程中途半端な終わり方でしたね、すみません。とりあえず今日のお話では昨日の失敗を繰り返さないようにするので今回もよろしくお願いします


蘇る悪夢

 

 

垣根帝督SIDE

 

 

 

 

 

俺は今まさに人生の分岐点に立っている、それも選択肢を間違えると地獄行き確定の…。これは洒落にならない、どうにかしてこのマッドサイエンティストの人体実験から逃れなくては

 

 

「え、えっと…この請求書のように見える紙は何だ?書類チェックの手伝い位なら引き受けるぜ?」

 

「いえ、あなたに引き受けて欲しいのは書類のチェックではないわ。そこに示してある金額の支払いよ?」

 

不味いな、何とこのマッドサイエンティストは回り手など使わずにストレートにトドメを指しに来た。一応俺は

 

「……もし払えない…なんて言ったら…どうする気だ…?」

 

「そうねぇ…私としては不本意なのだけどこの間開発したばかりの薬の副作用を調べたいから治験に協力して貰うことになるわね」

 

オイ、ヤバイ…ヤバイぞこれは…!こいつとうとう普通に治験をさせろって言ってきたぞ…!これはどうやら本格的に逃亡を考えないとな…

 

「はぁ……その様子だととても治療費を払えそうにも無いわね、かと言って素直に実験させてくれそうも無いし…」

 

「ここに来た時の俺の状態を知ってるアンタなら言うまでも無いだろ!?俺は全身ボロボロの状態で財布なんか持ってなかったんだぞ!後、普通に実験って言いやがったな!?」

 

この時点で俺のストレス値はマックスになっていた、俺は未だにどこの生まれで過去も思い出せないがこんな謎の土地で医学の発展のために死ぬなんて御免被る

 

「でもまぁあなたには姫の相手をしてもらったり、うどんげの対人恐怖症緩和にも役立って貰った恩があるのよね。だから今回は特別に治験はナシにしてここの仕事を手伝うという約束で治療費はチャラにしてあげるわ」

 

「マジか!?それって表向きには公表できない闇の仕事じゃねぇよな!?」

 

「あなたはここを犯罪組織のアジトか何かと勘違いしていないかしら?あなたに頼みたい事はそんな事よりもっと簡単よ」

 

(何とか死は回避出来たな、てかうどんげはコミュ障だったのか?よくコミュ障なのにこんな人と関わるような仕事に就く気になったな)

などと俺は危機を回避した安心感からどうでもいい事を考えていた

 

「それであなたに頼みたい仕事と言うのは……私が開発した薬をうどんげと一緒に売って貰いたいの。あなたの治療費を全て完済出来る金額を稼ぐまで♪」

 

「何だ、そんな事ならお安い御用だぜ…って、はぁ!?無駄だとは思うが一応聞くぞ!?お前が販売している薬で1番高価な薬はいくらだ!」

 

「それはこれを見て貰えれば分かるわ」

 

そう言って永琳は俺に2枚目の紙を渡した、そこに書かれている金額はとてもじゃないが俺の治療費を即座に完済できる程では無かった

 

「……これを断ったら…?」

 

「安心しなさい、手術室は清潔な状態で維持・確保してあるわ」

 

もうそれは治験をするための設備じゃねぇよな…もう俺を解剖する気ですよねDr永琳……

 

「…分かった、俺だって死にたくはないからな。ただ1つだけ聞かせろ。何でうどんげと一緒なんだ?不満じゃねぇが利益や効率を考えるなら俺に顧客の居場所とそこへ向かう交通手段さえ教えれば理論上はうどんげ1人の時よりも利益は上がるはずだぜ?」

 

「あら、意外な質問ね。理由としては色々あるのだけどここ…幻想郷は色々と特殊なのよ。あなたがいた外界とはまったく異なる常識の通用しない世界…そんな所にここに来たばかりの外来人を放りだせる訳が無いでしょ?」

 

「そのここに来たばかりの俺に人体実験を行おうとしたあんたの台詞とは思えねぇな…まぁ良い。それで俺はいつから働けば良いんだ?まさか今日からとは言わねぇよな?」

 

さすがにそれは無い……と断言しきれないのがこの医者の恐ろしい所だ、感謝はしてるが警戒もしないとな…

 

「いくら私でもそこまで無茶は言わないわ、とりあえず今週はベッドの上で安静にしていなさい。そうすれば来週にはもう全力疾走だって可能なくらいの体力は戻っているはずよ」

 

「何て言うか……アンタって本当にすごい医者なんだな。確かに今の調子なら本当に来週には動けそうだ。ただ…これは俺の理不尽なワガママだって事は承知の上で聞くぜ、アンタでも俺の記憶を回復させることは不可能だったのか…?」

 

「…………その事に関しては本当に申し訳ないと思っているわ…ごめんなさい…」

 

俺はこの時の永琳の顔を一生忘れないと思う、何故ならその顔には後悔や怒り、無念さなどの様々な感情が表れていたからだ。命の恩人に対してその技術にいちゃもんを付けるのだから嫌味の1つでも言われると思ったんだが…

 

「いや、俺こそ悪かったな…アンタ程の医者でも不可能はある。それは誰の責任でもねぇよ。むしろ考えもせずに聞いた俺が悪い、すまなかった」

 

俺は素直に謝った、無論本心からだ。俺が今こうして悪態をつけるのもうどんげと楽しく話せるのも輝夜の訳の分からない月の話とやらを聞けるのも全て永琳の腕があったから…なんだからな

 

「とにかく私からの話は以上よ、今日はもう休みなさい」

 

それだけを告げると永琳は部屋から出て行ってしまった

 

(クソッ……うどんげを口説いてたあのツンツン頭の男を俺が三下呼ばわりする資格なんて無いじゃねぇか…。恩人にいちゃもんを付ける俺が1番の三下だっての……)

俺は明日にでも永琳にもう一度謝罪することを胸に誓って目を閉じた

 

 

 

 

 

~永遠亭・診察室~

 

 

そこには椅子に腰かけ、額に手を置いている永琳がいた

(…私は医者として最低の分類ね…人と人とを天秤にかけ、結局彼の脳の記憶を司る部分を治療しない事を選んだのだから…)

彼には今でも申し訳ない気持ちで一杯だった。私は彼を治療する技術が無かった訳でもない、治療するための設備が整っていなかった訳でもない…ただ単に治療しなかったのだ。それでも今は後悔している暇などはない、幻想郷で起こる戦争さえ片付けばすぐに彼を治療する事も可能なのだから…

 

 

「……ちゃんと貴女の言いつけを守ったわよ、紫。そろそろ出てきなさい」

 

私は何も存在していないはずの空間に声をかけた

 

すると何も存在していなかったはずの空間から━━━スキマが開いた

 

「言いつけとは酷い言い方ね、藤原妹紅にしてもそうだけど…私には悪意は無いのよ?幻想郷にとってベストな結果をもたらす方法を私は選び実行しているだけですわ。それは無論貴女のお姫様も含まれているのよ?」

 

「そうね……それが輝夜も含め…幻想郷に住まう全ての者の為に本当になるなら、ね…」

 

「医者として患者を治療を行えなかった事がそこまで不満かしら?貴女がそこまで熱血漢だとは思いませんでしたわ」

 

「別にそこまでは言っていないわ、ただ本当に彼の記憶を回復させないまま…幻想郷の為にと利用するしか犠牲を最小限に抑える方法が無いのか疑問に思ったのよ」

 

彼がこれから自身の身に降りかかる不条理を聞けば間違い無く激怒するだろう。それは彼で無くとも人であれば当然の反応のはず…そう、あの上条当麻と言う少年も同じはずだ

 

「…今はこれ以上話し合っても平行線にしかならないわね、とにかく垣根帝督を鈴仙・優曇華院・イナバと組ませて貰った事には感謝しているわ。それじゃあ次はなるべく良い報告が出来るように善処するわね」

 

全てを言い終える前にスキマは閉じていて紫は姿を消していた

 

私はこれ以上どれだけの人を己の未熟さのせいで傷付ければ気が済むのか…答えなどいくら考えても浮かぶはずは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤原妹紅SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後も他愛ない雑談が続いたがとうとう話す事が無くなってしまった。そこで私は

 

「そうだ、当麻は学園都市の出身なんだろ?それならあの垣根ってやつに学園都市に関する話をすれば何か思い出す可能性もあるんじゃないか?」

 

別に確証があった訳じゃないが、このまま無駄に過ごすくらいなら行動した方がマシだろう

 

「そうね…もし垣根が学園都市に住んでいたのなら、話を聞いて何らかの刺激を受けると…もしかしたら…!」

 

「そ、そうなのか?じゃあ早く垣根の病室に行ってみようぜ!」

 

反対意見が出る訳もなく私達は垣根の病室へと向かった

 

「垣根~、悪いがまた来たぞ~。俺は上条当麻、よろしくな」

 

「当麻、ここは病室だぞ。また部屋の後片付けがしたいのか?」

 

「うっ…すみません…」

 

いや、私に謝られてもな……謝るなら垣根に謝るべきじゃないのか?そんな事をふと思っていると鈴仙は垣根をベッドから引きずり出している所だった

 

「ほら、お客さんが来たから起きなさい!いつまで寝てるつもりなのよ!」

 

「……うっせぇな…永琳からもう今日は休めって言われたんだ…。寝かせろ…」

 

どうやら今の垣根は虫の居所が悪いらしいな、私は当麻に引き返そうと促そうとした時だった

 

「……垣根、私の目をまっすぐ見なさい」

 

何と鈴仙が垣根の両頬に手を添え顔を近付けている所だった。

 

「っ!?まさかの!?ここで熱いキスを交わす気か!?」

 

既に当麻は顔が赤くなっている、だからどれだけお前は初心なんだ?

 

「…何だよ、うどんげにしちゃ珍しく大胆じゃねえか…。ただ大胆なのと痴女は全然違うぜ…お前はもっと自分を大事にしろよ」

 

「痴女とは失礼ね、謝罪は後から聞くとして良いから私の目を見なさい」

 

あぁなるほど…そういうことか。確かに大胆…いやこの場では強引と言う表現の方が適切なのか?

 

「……チッ、めんどくせぇ…。何がしたいかは知らねぇがさっさと終わらせろよ」

 

そして垣根が鈴仙の目を見つめると……

 

「なっ…鈴仙の目が赤くなった…!?」

 

「大丈夫だ、当麻…あれは鈴仙の能力で「狂気を操る程度の能力」だよ。詳しく話すと面倒だから手短に話すが鈴仙は今垣根の感情の波長を操っていてその振幅を落ち着かせているんだ」

 

「鈴仙はすごいな…俺も気を付けないと…」

 

大丈夫だよ、鈴仙が当麻の感情の波長を操っても右手が身体と繋がっている限りは打ち消されるからな…っと、もう終わったみたいだな

 

「垣根、ちょっとは落ち着いた?」

 

「あ、あぁ…悪かったな、何かカリカリしてたみたいで…」

 

「良かった…そうそう、そこにいる2人が話したい事があるみたいだからちょっと話してみたら?ちなみに彼…上条当麻って言うんだけど当麻は学園都市に住んでいたのよ?」

 

正確には話があるのは当麻だけだが今話の腰を折る訳にはいかない、私は余計なことは喋らないようにしつつ必要な事だけを話す事にした

 

「へぇ…お前、学園都市に住んでるのか。調度いい、俺も学園都市がどんな所か気になってたんだ。教えてくれよ」

 

「あぁ、良いぜ!それと俺は普通に呼び捨てにしてくれ」

 

「分かった、当麻。それで学園都市ってのはやっぱり学校が集まった都市なのか?」

 

「そうだな、でもただの学校が集まってるんじゃないんだぜ?実は……」

 

当麻はおおよそ私達に話した事と同じ内容の事を話し始めた

 

「妹紅、私にはよく分からないけどあれが男同士の友情ってものなの?」

 

「さぁ……私はあまり人の事をよく知らないからな…。でも仲が良いのは事実だぞ、だってあんなに楽しそうに会話をしているじゃないか」

 

やはり当麻も自分と似たような境遇の人がいると安心したのだろう、それは恐らく垣根も同じはずだ

 

ただ……不測の事態と言うものはあまりに突然に訪れるものだった

 

「それでさ、学園都市には7人しか存在しないLEVEL5っていうすごいやつらがいるんだよ。俺その第7位と第3位…それと第1位にあったことがあるんだけど皆規格外な能力を持ってるんだ」

 

「へぇ…序列があるのか…。ちなみに第1位ってどんなやつなんだ?規格外の中でもずば抜けた頂点なんだろ?きっと俺には想像もつかない能力を持ってるんだろうな…」

 

「…………アイツは……」

 

「ん…?当麻…?」

 

「いや…何でも無いんだ。えっと…第1位の話だったか?確か能力名は

 

 

 

「一方通行(アクセラレータ)」

 

あらゆる物のベクトル(向き)を操れるビックリ人間なんだぜ?」

 

 

 

 

当麻が一方通行という名前を口にした時に異変は起こった

 

「アク……セ…ラレー…タ…!?」

突如として垣根の顔色が変わった

 

「お、おい垣根…大丈夫か…?」

 

「垣根、どうしたの?気分が悪くなったの?」

すぐさま鈴仙が側に寄って背中を擦った

 

「ハァ…ハァ…!クッソ…!!何だよ…!何なんだよ急に…!!」

垣根は急に呼吸が荒くなり頭を抑え込んだ

 

「…鈴仙、私は永琳を呼んでくる。それまでもう一度垣根の波長を落ち着かせてくれ」

これは明らかに何かがおかしい、もし何かが起こっているとすれば永琳を呼ぶのが一番妥当だろう

 

「分かった…ゴメン、当麻は少し離れて!今の垣根は錯乱状態に近いから暴れるかもしれない!」

 

「…悪い……何も出来なくて…」

 

それは仕方ないぞ、当麻…これはどう考えても永琳や鈴仙のような医学に詳しい者が対応するべきだ。

 

 

(それに…妙に嫌な予感がするんだ…)

 

 

 

私は焦る気持ちを抑え永琳の元へと急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分今回は前回よりはマシな出来上がりのはず……なんです…。正直小説を書く事をナメてましたね…。前にも書いたような気がしますがここまで難しいとは…。鎌池先生やインターネット上に小説をアップしていらっしゃる方々の才能を思い知らされました。
これからも禁書を知らない人には禁書の面白さを、東方を知らない人にはけねもこの素晴らしさ…ではなく東方の面白さを知って頂けるような小説を書けるよう努力してきます

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