とある幻想郷の幻想殺し   作:愛鈴@けねもこ推し

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第二ウェーブ

藤原妹紅SIDE

 

 

 

 

 

 

 

妹紅が文との会話を終え他の面子の姿を捉えたその時であった、少しばかり離れた先で仲間の一人が竪穴の中へと転落したのは。

 

 

私自身の感覚としてはすぐさま飛び出したつもりだった。

 

しかし実際には何秒か固まっていたらしい。

 

「いきなり何なンだよ!?不幸もあのレベルになると対応しきれねェっての!!」

 

「お、落ち着いてください妹紅さん!無闇に飛び込んだって彼は見つかりませんよ!!」

 

「離せ射命丸!大体テメェの速さなら追いつけただろうが!」

 

「えぇ可能でしたよ、貴女と同じく不意打ちで硬直する時間さえなければね!」

 

地底と地上を繋ぐ穴、間欠泉の竪穴へと落ち込んだ上条当麻へ誰しもが手を伸ばしたが届かなかった。

何せ唐突過ぎたのだ、前触れも無い上に当麻自身から飛び込んだと映る程の自然落下。その場にいた全員が反射神経には人並み以上の自信があったとは言え限界もある

 

「ってて・・・で、だ。どうする、うどんげ?早くしねぇと当麻の野郎が串刺しかそれ以上にグロテスクな末路を迎えちまうぞ」

 

「そうね、とりあえず助けに行くのは前提として私やアンタが今すぐ飛び込んでも意味がない。仮に当麻の落下速度に追い付いても位置が分からないんじゃ話にならないのよね」

 

「つまりドジのアイツを助け出すには全速力で落下しつつ更にアイツの正確な位置まで探らなきゃならねぇ───流石の俺も暗闇の中を岩片を回避しつつ当麻を探し当てる芸当は難しい」

 

「私は当麻を探り当てることは容易いけれどアンタの様に機動力は無いし索敵に意識を向けると他に注意が回らない・・・・・・はぁ、悲しいけれど結論は出たみたいね」

 

 

どうやらこの二人は特に焦る様子もなくまた当麻を助け出す算段もある程度は着いたらしい。

だが妹紅がその術を聞き出す間もなく二人は動き出す。

 

「おい、テメェら一体何を企んで───」

 

「「じゃ、妹紅・・・・・・商品と荷物はよろしくな(ね)」」

 

「・・・・・・・・・・・・ア?」

 

手早く必要最低限の荷物以外を起き去り垣根は鈴仙を抱えると白翼を展開し竪穴へと飛び込んだ。

 

───要は身軽になった上で抱えられた鈴仙が当麻の位置を探り当て機動力のある垣根がそれに追い付く作戦らしい。成程理に適っている、ある1点(・・・・)を除いては・・・・・・・・・

 

「吠、えてンじゃねェぞ三下ァ!!!勝手に早合点して二人で動きやがってよォ!挙句の果てに私は荷物抱えて来いってか!?どンだけ手間になるか分かってねェよなァァァァ!!」

 

妹紅、猛る。

 

あえて記すならば上条当麻が落下してから妹紅の咆哮が轟くまでは凡そ一分を切った程度。

その一分間に妹紅は仲間三人から置いてけぼりを食らいとても一人で抱え切れる訳もない荷物のプレゼント。

 

これは彼女じゃなくてもプッチン来ますよねぇ、とはもう一人残された射命丸文の弁。

 

「で、では私も上条さんを助け出すためにた、竪穴へ失礼しま〜す」

 

と、ここで文は抜け目無く竪穴へ向かうのだが・・・・・・既にスイッチが入った者がいる。

 

「今すぐ焦げ目がキツい感じの消し炭になるか荷物持ちを手伝うか好きに選べ───猶予はねェ」

 

「私個人としては火は中心部まで通っている方が安心して喉を通ると言いますか・・・アハハ・・・ハハ・・・でも消し炭は焦げ目しか無いのでキツいとかキツくないの問題じゃないですよね〜・・・・・・」

 

背後から首を締め上げられ掌には燻る炎、無論語るまでもなく締め上げる人物は妹紅、その餌食は文である。

 

「よし消し炭だな、お望み通り骨の芯まで炙って───」

「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!ま、待ってくださいタイムタイムターイム!!手伝わせていただきます荷物持ちを喜んで!!運ばせて頂きますから火は消してくださいっ!!」

 

分かりゃ良い、分かればな。そんな言葉と共に解放されたと文が胸をなで下ろしたのも束の間、すぐさま新たな重量が文の身体にのしかかる。

 

「ぐえっ・・・・・・な、何ですかこの重さ・・・何が入ってるんですか・・・」

 

「知るかよ、それはガキ共二人の私物だからな。念の為言っとくが記事のネタになる物は入ってねェ筈だ、第一人間のガキでもそれを背負って永遠亭からここまで戦闘をこなしつつ歩いてこれた。妖怪のお前が白旗あげる事じゃねェだろ」

 

「どんだけ馬鹿力なんですかあの二人は・・・・・・いやいや、十分に重たいですよ・・・・・・よっと」

 

背中に背負う形で荷物を背負った文はその重量に顔を顰めながらも立ち上がる。

 

(まず眼前の問題は片付いた、当麻の方もあの二人なら何とかするだろ・・・やり口が気に食わねェ以上後でお返しはさせてもらうけどなァ・・・)

 

(だがそれ以上に気に食わねェのは当麻の転落だ・・・さっきのは本当に単なる不幸で片付けて済む話か?それにアイツは転落する直前に妙な素振りがあった───)

 

「それにしても彼・・・上条さんですが何かあったんですかね?単に足を滑らせた事故と決めつけるには些か難があるように思えますし」

 

「あァ・・・初めは悪霊辺りに唆されたのかとも考えたがどォやら違う」

 

特段妹紅は視力に自信がある訳では無い、彼女の視力は低下しないだけであって人並程度。

だが今回は確信していた。

 

「はっきりと見たわけじゃねェがアイツは自分の意思で飛び降りたよォに見えた」

 

「飛び降りた・・・もしくは何かを掴もうと踏み出した足が空を切った───止めましょう、推察で記事を捏造するのは私の十八番ですが今回ばかりは推察で片付けるには惜しい一件です」

 

「・・・・・・突っ込まねェからな、それは当麻の担当だ」

 

とは言え文もまた妹紅と同じような光景が写ったらしい。どちらにせよ真実は確かめてみない事には判明しないのだが。

 

 

そうして身軽な彼女達は体重の半分は優にあるだろう荷物を抱えて竪穴の淵へ立つ。

 

間を置いて文が「エレベーターを使うというのは・・・」と半ば諦めながら提案するが勿論妹紅が却下。

ですよね・・・とでも言いたげにため息を吐いた文と対して真顔の妹紅がふわりと浮かび上がった。

 

「・・・どォやら地底での商売もすんなり片付きそォもねェな、やれやれ───鬼が出るか蛇が出るか。片っ端から焼けば火傷用の塗り薬はバカ売れになるってか?」

 

「私としてはすんなり片付かない方がネタにはなりますし阿漕な商売はまぁ・・・・・・私だって保身は大事ですからね、えぇ」

 

普段の文ならば先程の妹紅の呟きを見逃す筈が無い。「これは永遠亭の闇を暴くスクープですね!!」などと宣った次の瞬間には消えているだろう。

しかし彼女がそうしなかったのは荷物を背負った上で妹紅が逃げ切れる相手では無いから。何より・・・・・・

 

「その行燈代わりの炎、私に向けないでくださいね・・・!」

 

文の明日は如何に・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

垣根帝督SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ、うどんげ!背中くらいは見えたか!?」

 

「駄目ね、辺りで当麻に近い波長がない・・・!」

 

「考えたくはねぇが最悪の結末の可能性はねぇだろうな・・・!!」

 

「・・・無いわよ、絶対に。その前に私が絶対に見つけだすからッ!」

 

ギリギリの所で突き出た岩片を尽く回避しながらも彼に追い付こうとする速度は全く緩めない。落下速度に加え未元物質により自由落下の速度を操る術も既に垣根帝督は手中に収めていた。

 

(落ち着け・・・こんな時に焦っても事態が好転する訳じゃねぇんだ。何より当麻が転落してからすぐに俺達は飛び出した上に加速してるんなら間に合わない筈がない・・・!)

 

だがスキルアップした未元物質を用いて尚仲間一人救えない。鈴仙を抱き抱えていなければ彼は怒りのまま周囲に当たり散らしているのだろう

 

「・・・大丈夫、もし最悪の事態を迎えていたなら。私やアンタが血の匂いに気付かない訳がない、私だって索敵に神経を注いでもその位なら見逃さないわ」

 

「安心させるならもっと明るい話でさせろっての、血の匂いとか言われてもよ・・・!」

 

確かに、これまでかなりの速度で進んじゃいるが人の血の匂いは一切無かった。仮に当麻が岩片や岩壁に叩きつけられてたってなら大量出血で一般人でも顔を歪める匂いが広がるしな

 

今は当麻が死んでいない事さえ分かればそれで良い

無事なら文句なしだが生きてさえいれば・・・必ず助け出す。

そう自分の怒りに言い聞かせる事で形ばかりの冷静さを彼は維持していた。

 

だがそんな彼の怒りに油が再び注がれるのにはそれ程時を要する事は無かった。

 

それは『小』から成る『大』

 

狭く荒々しい岩肌を諸共せず(ひし)めきあう

 

個々であれば超能力者(LEVEL5)たる垣根帝督の敵ではない

 

小規模の群れであれば月の軍隊上がりの鈴仙の敵ではない

 

故に『小』

 

がしかし・・・悪条件が重なり合った時、自然界では格下が格上を凌駕する事態が起こる。

 

その数ざっと見積もって200匹、凡そそれだけの数の中小の妖怪や亡霊が互いを押し退けながら二人の進路を塞いでいた

 

「冗談じゃねぇぞ・・・!この手のアクシデントは当麻(アイツ)の担当だろうが・・・!」

 

「何十・・・いや何百・・・何で・・・!?何でこのタイミングでぶつかるのよ!!こんなの明らかに仕組まれたとしか思えない!」

 

「・・・うどんげ、考えるのは後だ。仕組まれたかどうかは今は問題じゃねぇ、お前も考えろ・・・今の最善策ってやつをよ」

 

とは言え既に答えは暗に示されている。幾ら何でもこの数を潜り抜けるなど不可能。

 

二人の間で言葉無くプランが選択される。その証拠に垣根は鈴仙から手を離した。

 

「───あの厄介なブン屋の気配はまだ感じない、それにここで起こった事が地上に漏れる可能性は低いわね。大体ここまで来れば正当防衛は十分に成立する」

 

「まぁ警戒するとすれば・・・あれだ、何とかの巫女サマと幻想郷を管理してる大妖怪サマが無差別の虐殺だ何だと騒ぎ立てる場合な訳だが・・・」

 

垣根帝督の初撃、先端が鋭利に変化した白翼が群れに突き刺さる。急所などお構い無しに突き刺さるそれは無差別に妖怪の身体を抉り、屠り続ける

 

「んな事知らねぇよ、こちとら既に怒りが臨界点通り越してんだッ!!てめぇら一匹残らず血肉に変えてやるから辞世の句でも詠んでやがれ!!」

 

垣根とは違い対する鈴仙の初撃は些か派手さに欠ける物があった。

何故ならば彼女は弾幕を展開する訳でも無ければ獲物である拳銃を抜く訳でもない、彼女の手の中には一振のコンバットナイフ。刃渡りこそ長いが200を相手取るには少々・・・いやかなり無理があるだろう

 

「・・・そこの馬鹿の臨界点はかなり低いから兎も角、私は比較的に怒らない。他の仲間三人の臨界点が大概に低いからね───」

 

だが次の瞬間、垣根の初撃をすり抜け鈴仙へ襲い掛かった亡霊の身体が霧散する

 

鈴仙の初撃が亡霊の首筋を捕らえ、撥ねた。

垣根程の派手さこそ無いが音もなく的確に亡霊を屠る彼女の姿には垣根にはない別の迫力がある

 

「でも私にだって怒りの臨界点は在るしそれを上回った時は抑え込んだりはしない。・・・・・・亡霊への干渉や攻撃はまだ垣根には教えてなかったわね」

 

「垣根、妖怪の方はアンタに任せるわ」

 

「了解、どうせ物理攻撃が通用しねぇならうどんげに任せるしかねぇと考えてた所だ」

 

「すぐに片付けて捜索を再開するわよ・・・!」

 

 

垣根・鈴仙組交戦(エンゲージ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上条当麻SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間の誰よりもいち早く竪穴に飛び込んだ・・・もとい落下した彼は自然落下に身を任せたまま何度も同じ光景を思い返していた。

 

その光景とは滑落する寸前、自身の瞳に焼き付けた光景。

 

言うまでもないが彼には決して自殺願望などがあった訳ではない。足元を見失い滑落する程度には彼を盲目にする事情があったのだ。

上条当麻は再び記憶を思い返す。彼が落下に至るまでの過去に遡って──

 

 

俺の頭を小突いた瞬間幻想殺しの音が響いた。鈴仙や垣根に聞いてみたが二人は何も知らないらしい。

そしてもう一度竪穴の方へ向き直った瞬間だった、俺は竪穴の中に飛び込んだ・・・・・・いや違うな。数m先に浮かぶ人物に手を伸ばしたんだ。でも届かなかった、後一歩、後一歩という所で地面が消えた。後は自然落下に任せて今に至る。

 

 

 

───俺が見た人物は見間違いか?

 

そんな訳がない。俺があの『声』を、あの『顔』を忘れたり勘違いする訳がない。

 

 

 

「み、さか妹・・・!お前は俺に何を伝えようとしたんだ・・・!!」

 

竪穴の側にいた俺に何かを語りかけてきた女の子を俺は確かに知っている。

 

ただ彼がミサカ妹と呼ぶ妹達(Sister's)に話かけられただけならこうも驚きはしない。

問題は妹達が居る筈のない幻想郷で出会ったという事実。何より・・・・・・・・・上条当麻が出会った個体は身体のあちこちが『破裂』したかのようにボロボロだった。

 

まさか、と俺はフラッシュバックを起こしたように頭の中の記憶を再生する。

考えたくもないがあそこまで身体が壊れたミサカ妹が生きているとは考えにくい、となれば学園都市ならいざ知らずここは幻想郷───幽霊という方がまだ説明はつく。

 

更に付け加えれば上条当麻は幽霊として現れた妹達の検体番号にも心当たりがあった。

ミサカ10031号、一方通行に血流を逆流させられ内部から『破裂』して絶命した少女。

 

もし彼女が10031号だとすれば上条当麻を恨んでいるかもしれない。あと少し早く上条当麻が実験を止めていれば彼女は助かったかもしれないのだから。

 

ともすれば彼女の声が風で掻き消された事は柄にもなく上条当麻にとっては幸運だっただろうか?

 

 

・・・・・・・・・否、断じて否。

 

 

(・・・違う、仮にあの時ミサカ妹から罵倒を浴びせられたって俺は向き合うべきだった)

 

(だからミサカ妹・・・次に会った時はちゃんと話そう、何より俺もお前に・・・妹達に伝えなきゃいけない事があるんだからな)

 

「ミサカ妹が幻想郷に居るなら、俺から会いに行くよ。長々と待たせる気はないからさ・・・待っててくれ。」

 

暗闇の中、最早うっすらとしか光の差し込まない竪穴で上条当麻は上に向かって手を伸ばす。

 

会えるだろうか、もう一度。

何より彼女は幽霊・・・霊感のない自分で会えるのか?そんな内から沸いた疑問を彼がかき消そうと頭を降った瞬間だった。

 

うっすらと現れる半透明の少女───もう当麻は驚かない。

 

 

『本当にアナタは優しいのですね、とミサカは呆れがちに・・・アナタに別れを告げます』

 

『ですがミサカはずっと待っています、アナタから会いに来てくれる───その日まで』

 

やっぱり、と上条当麻は確信する。

彼女はミサカ10031号、傷付いた彼女の身体が当麻の確信が誤ちでないことを示していた。

 

別れを告げゆっくりと消える10031号に当麻は・・・

 

「・・・・・・あぁ、必ずだ。約束するよ」

 

静かに別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

垣根帝督SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちくしょう、コイツらキリがねぇ!無限湧きかっての!

いや別に無限湧きだろうが在庫が切れるまでぶっ殺し続ける余裕くらいはあるけどな

 

「問題はこうしてる間にも当麻を見失ってるってこった!どうするうどんげ、連中の大軍に風穴空けて突っ切るか!?」

 

「これだけの数を引き連れて、当麻のいる場所や地底に向かう気?洒落にならないわよ・・・!私だって突っ切りたいのは山々だけどねッ!」

 

戦況だけを見れば彼等は決して押されてはいない、寧ろこの戦力差で互角にやりあっているのだから戦力の軍配は垣根達に下るだろう。問題は彼等にはあまり時間が無いということ

 

「クッソ、こんな時に妹紅なら派手に爆発して片付けるんだがな・・・!」

 

「こんな狭い竪穴で爆発したら私達まで巻き添えじゃない・・・まったく次から次と・・・!」

 

亡霊だけを相手取る鈴仙には返り血こそ付着しないものの既に50体ほどは屠っているだろう

幾ら鈴仙と言えど混乱した戦況の中で数十体を短時間で屠る事は出来ない

 

訓練された彼等には珍しく疲労より先に焦りの色が見え始めた

 

 

───その時だった。

 

 

 

「ゴツン!!」

 

 

「・・・え?」

 

「・・・ア?」

 

「うげっ」

 

上条当麻、無事追突。

 

何と彼はあろう事か落下先にいた垣根帝督に背面からぶつかり頭同士を思い切り頭突いたのだった。

 

つまりホバリング中の垣根に頭からぶつかった当麻は地面にぶつかるよりは何十倍も軽度の衝撃で落下を停止した事になる。めでたしめでたしな話と言えるだろ──

 

「おいゴラ、当麻・・・・・・てめぇ・・・・・・俺みてぇな能力者はどうやって能力を発動するか知ってっか?」

 

「上条さん・・・無能力者・・・・・・シラナイシラナイ・・」

 

「てめぇが今かち割りに来やがった脳味噌使ってんだよ・・・覚え、と、け・・・・・・後でコロス・・・・・・」

 

フラフラと身体が揺らぐ辺り先程の衝撃で軽い脳震盪でも起こしたのだろう、しかしさりげなく当麻の襟を掴んでいる辺りは流石と言うべきか

 

「何で先に落下した当麻が私達より後に降ってくるのよ!?それに今はあの大軍を何とかしない、と・・・・・・・・・」

 

「おいうどんげ・・・こりゃどんな絡繰りだ・・・?まさかさっきまでのが全て幻覚だった、ってか・・・?」

 

彼等が硬直するのも無理は無い。

 

彼等の進路を塞ぎ、その命すらも蹂躙しようとした亡霊や妖怪の大軍。垣根と鈴仙の奮闘によりその数は減っていたとは言え全滅には程遠かった。

 

そんな連中が何故か1匹残らず───消えていたのだから。

 

「・・・当麻が私達より後に落ちて来た事もそうだけど。どうも嫌な予感がする、それも前回を紅魔館での一件とは違ってもっと根本的に・・・・・・危険な予感がする」

 

恐らくそれは鈴仙に限らず垣根も感じていたこと。

 

「・・・チッ、俺達はただ荒稼ぎがしたいだけだってのに。どうも気に食わねぇ奴がいるみたいだな。・・・・・・だが方針は変わらねぇ、降りかかる火の粉は払うだけだ」

 

 

 

 

だが彼等はまだ知らない。

これまでの出来事がプロローグにすら成り得ない事を。

 

自分達がこれから次々と巻き起こる数多の闘争の中核となる事を・・・・・・

 

彼等はこれから身体に、心に刻み込まれる事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

????SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、10031号・・・早かったじゃない」

彼女はふわりと現れた亡霊の少女を出迎えた。

 

「えぇ、貴女の予想通り彼の殺害は失敗に終わりましたから、とミサカ10031号は報告を手短に完了させます」

 

別に失敗など咎めるつもりは更々ない。

彼女では幻想殺し───上条当麻は殺せないと分かっていた。それでも彼女を向かわせたのは単純に覚悟を決めて貰うため。

 

これから多くの命が失われる

 

その中には10031号が手を下す事を躊躇う人物が居るかもしれない、ならばその前に彼女なりに区切りを付けさせるのが最善。

それが妥当であり10031号ならば可能だと少女は確信していた。

 

「彼は以前よりも強くなっていました、まだまだ強くなるでしょうとミサカ10031号は推察を深めます」

 

「所詮右手の幻想殺しだけでしょう?上条当麻を台風の目足らしめる要因は・・・私から言わせれば取り巻きの有象無象の方がまだ手応えがあるわよ」

 

「──そう、かもしれませんね。そうであれば私達の悲願の達成は容易く成せるでしょう・・・とミサカは意味深な言葉を残して消え去ります」

 

へぇ・・・この娘にここまで言わせるなんて。まぁ私も上条当麻が幻想殺し(それ)だけで幻想郷の重鎮達にまで名前を轟かせたとは本気では思っていないけれど。

 

「消える前に一つ聞かせて」

 

「まだ何か?とミサカは不思議そうに貴女に振り向きます」

 

「・・・もし気が変わったのなら、私は貴女を咎めない。そもそも今回のプランは貴女達の意志に沿って進めているのだから」

 

「変わりませんよ、ミサカの意志も・・・ミサカ『達』の意志も」

 

「そう、安心した。・・・・・・八雲紫は学園都市から鍵となる人物を拉致した、これを機に私達も計画を第二ウェーブに移すわ」

 

「第四ウェーブ、つまりはプランの達成までもう止まれない。10031号にも沢山汚れてもらう、覚悟しておきなさい」

 

 

 

 

 

誰しもがあの虐殺(じっけん)には終止符が打たれたと信じていた。

 

が、真実は異なる。

 

学園都市でも

 

そしてここ、幻想郷でも・・・・・・

 

絶対能力進化計画(あの時)より邪悪さを増して彼等の背後に迫っていた─────

 




出来れば年内に後1本は投稿する(予定)

え、年末の休み?年末がセールスピークの会社には知らない単語ですねぇ

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