とある幻想郷の幻想殺し   作:愛鈴@けねもこ推し

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今回はちょっと話の中の時間軸が分かりにくくなってます、申し訳ないです。

ネタバレ防止の為に前書きでは記述を避けますが、後書きではこの話の時間軸を記しておりますので、お暇な方は2回目の閲覧にチャレンジor前もって後書きを読む等をしていただければと思います。


3人目のヒーロー

ミサカ10046号SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで空間移動(テレポート)のように背後から現れた女性は自らを八雲紫と名乗り自身が上条当麻を誘拐したと明言。またその安否も握っていると告げ―――何より上条当麻を返して欲しいなら私を倒せ…とも。

 

だから2人は挑んだ…いや挑んでしまったと言うべきか、大妖怪…八雲紫に。

 

勝てない、その感覚は理解すると言うよりは記憶を思い返すそれに近かった。

例えば妹達(シスターズ)が一方通行に嬲られるだけだったように…あまりにも実力差が開き過ぎるとどれだけ鈍くても考えるより先に答えが出てくる。

それほどの実力差があるのだ、彼女と二人の間には……

 

でも、とその事実を割り切るのにミサカ10046号は時間を必要としなかった。昔とは、実験動物だったあの時とは違う。

 

…いえ、もしかすると変わっていないのかもしれません。あの時も今も…ミサカの側には支え助けてくれる人がいます。

 

『いい加減…折れなさいな?貴方は何度繰り返そうと私には勝てませんわ―――念動砲弾(アタッククラッシュ)欠陥電気(レディオノイズ)

 

『負け、ませ、ん……絶対に…ッ…!』

 

LEVEL5第7位削板軍覇と御坂美琴のクローン、ミサカ10046号は―――薄暗い地下で大妖怪(八雲紫)に抗い続けていた。

2人が交戦を開始してそれなりに時間が経過したが攻撃は全て通用しない。銃撃、打撃、奇襲、その他etc……無論学園都市で7番目の規格外を誇る仲間の攻撃も…だ。

 

(私達の遠距離攻撃は謎の空間に吸い込まれ、軍覇の近接攻撃を日傘1本で弾き返す…!とても人間とは、思えない…!)

 

『……ミサカ、悪いな。守るなんて格好つけながら情ねぇ…でもやっぱりすげぇよ、コイツは…!気に食わねぇが滅茶苦茶強い…!』

 

空間移動(テレポート)念動使い(サイコキネシスト)…それも間違いなくLEVEL5クラス…尚且つあなたの身体能力を赤子の手を捻るようにあしらう、まるで妖怪ですね…とミサカは敵の分析を行ってみま…す…』

 

『確かに…私を学園都市の型枠に当て嵌めるのならば、その辺の能力に絞られるのが妥当ですわ。それに私は人間ではありませんから貴女の推察もあながち間違いでは無いわね』

 

なるほど…ここまでの現実を叩き付けられれば、そんな幻想(オカルト)も頷けてしまいます…!

ですが今はそれよりも現状を打破する策を考えなければなりません、例え万策が尽きた今でも…

 

『根性でどうにかしてみせる、そうでしょう…ぐん…は……』

 

『ミサカ…!?しっかりしろ、ミサカ!大丈夫か!?』

 

急に意識と無意識の境界が曖昧になる、これも敵の能力か…それとも既に意識がふらつくまでにダメージが蓄積したか

 

敗北と言う事実が足音を響かせて軍覇と10046号の背後に、紫が手を下さずとも直に体力気力が限界を迎える二人。誰がどう見ても敗色濃いこの瞬間―――の前に。一体彼等に何があったのか?時間を巻き戻して確認してみよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よく漫画や小説では場面が激変する際に登場人物は何らかの変化を感じ取るのが常……らしい。

例えば何の気無しの虫の知らせであったり、バトル漫画の主人公ならば空気の流れの違いでも感じ取ったりするのかもしれない。

とは言え彼女、ミサカ妹こと検体番号10046号のそれは痛烈と言えば痛烈。地味と言えば地味…何とも表現技法に困るのが悩みどころである。

 

それは時刻にして彼女の寝起き直後AM8:00の出来事であった。

 

『緊急連絡、緊急連絡!起きて、寝てても起きて!ってミサカは可愛い妹10046号をネットワーク越しに叩き起してみる!』

 

『可愛いなら叩き起こすなよ、とミサカは仄かな殺意を欠伸と共に噛み殺します…しかし何ですか?それも個別回線とは…』

 

『寝起きなら急いで!ヒーローさんが関わっているかもしれない情報を掴んだの、ってミサカは緊急報告してみる!』

 

『ッ…それは確かな情報ですか?とミサカは問いかけます。それに何故このミサカにだけ…』

 

『…ソースまでは話せない、でも信頼性は高いよってミサカは言い切れる。それに聞いた限りだと危ない組織も関わっているらしいんだ…』

 

なるほど…確かに現在ネットワークに公開されている限りでは他の妹達は協力者を確保出来ていない。基本的な銃器の扱いを覚えた程度の他の個体が群になるよりは…

 

『分かりました、幸いミサカの協力者の少年は腕っ節に事困りませんと過去の荒療治を回想しながら返答します。ところで他の妹達にはこの話は伝わりませんね?とミサカは上位個体への念押しを怠りません』

 

『うん、ネットワークの最深部に何重にもロックを掛けたからその点は大丈夫!ってミサカはミサカは胸を貼ってみる!』

 

『よろしい、ではこのミサカが夕方には何らかの新情報をネットワークにアップして愉悦に浸ってやると微かな一面を覗かせてみます。……それと上位個体、貴女が他の妹達に情報規制を図った理由とその意味を忘れないでください――と更なる念押しをミサカは行います』

 

『…分かってる、その情報に関しては10046号に一任するよってミサカは情報のアップロード準備を行いながら承諾してみたり』

 

そうして上位個体との通信を終えてミサカネットワーク(MNW)との通信を切断。朝でしかも寝惚けた状態での急展開、10046号はここでようやくベッドから脱出と共に窓から差し込む朝日をその身で受け止めた。

 

差し込む朝日は全身の細胞を覚醒させるには最適だが人間本来の怠けた感情が日光を受け付けない、と言うか嫌がる。恐らくはこのような感情を『人間味』と表現するのだろう、そこまで考え込んだところで10046号はフッと笑みが自然に漏れるのを数テンポ遅れて感じていた。

 

「さて―――この人間味、を感じるキッカケとなった少年を。私達のヒーローをいざ助けにいきましょう、とミサカ10046号は柄にも無く独りごちてみます。…ですがその前に」

 

やる事があるのです。

まずは寝巻きから着替える事もそうですし、戦闘になる可能性を考慮すればどれだけ簡単でも朝食は取らねばなりません。それに―――この家の家主にも話を通す必要があります、とミサカ10046号は早速着替えを実行に移しながら予定を脳内で――

 

「よっ、ミサカ!昨日は良く眠れたか?って悪い、着替えの最中だったか俺は風呂場にもど―――」

 

「ッ!!…少しは反省しろや、とミサカ10046号は最早この状況に耐性が付き始めた自身とあなたに呆れ果てながら制裁を加えます!!」

 

休日の朝8時、学生が大半のこの街であればまだ寝ている学生も多いかもしれない。そんな中響き渡った銃声はおよそ25発。

 

………これは余談だが。ミサカ10046号を含め妹達(シスターズ)不法所持(あいよう)しているアサルトライフルの装填数もまた25発とのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

削板軍覇SIDE

 

 

 

 

 

謎(?)の銃声から約1時間が経過、張本人である二人の少年少女はとある施設を目指し学園都市第七学区の歩道を歩いていた。

 

 

朝から、それも自室で銃撃を受けた削板軍覇。とは言え本人がそれを気に留める様子はあまり無い。

それは勿論自分に非があるからに他ならない。悪意は無かったとは言え相手の嫌がることをしたのならばそれ相応の詫びは入れるべきだ…と彼の信条。しかしそれとはまた異なる理由が彼にはまだある。

 

「いやー、しっかし的確に眉間に叩き込む辺り根性じゃくて殺意入ってんな。その調子で今日も根性入れてカミジョー探し頑張ろうぜ!」

 

「えぇ、ミサカはもう突っ込みませんとも。例えあなたが銃弾を頭突きで叩き落とそうが噛み砕こうが…慣れましたから、とミサカは浪費するだけになった25発の銃弾達を憐れみながら思考を切り替えます」

 

そもそも削板軍覇、銃弾程度なら至近距離だろうが長距離からの狙撃だろうがお構い無し。大概は弾き落とすか噛み砕くかのどちらかで解決する上に被弾しようとも『根性』があれば勝手に治癒するのだから。

そんな訳で削板軍覇は今となっては居候として定着した少女からの銃撃など気にするまでも無ければ、ミサカ10046号もまた発砲を一切躊躇わない。

 

「なっはっは!!今日のミサカもいつも通りで安心した、それで今日はどこを探すんだ?」

 

「聞けよ、つーか朝食の時に話しただろ…とミサカは自身も知らない裏の人格が滲み出た事に驚愕しながら再度の説明を拒否します」

 

うーん……確かミサカは何処かの学区の何処かの施設…とか言ってたんじゃねぇか?しかし駄目だな、俺に根性さえあれば食事と会話くらい並行して…!

 

と、軍覇が悔しがるようなポーズを取った辺りで10046号の『いや、根性は必要無いのでは?』と言う的確な突っ込み。このボケからツッコミの滑らかな流れは、方向性は間違っているとは言え二人の呼吸がマッチしている事を感じさせた。

それもそのはずで彼等は同居しているのだ、住まいは軍覇の学生寮。理由は10046号のボディーガード兼緊急時に即座に行動を可能にするため。普通ならば年頃の男女が一つ屋根の下とは些か宜しく無い気もするが……そこは根性少年削板軍覇。自身の寝床を浴槽に変更すると言う提案に、10046号はワンクッション代わりの遠慮も無く承諾した事でこの同居生活は無事スタートした。

 

考えてみると一日に何回かはこの会話を繰り返してるよな、と俺は思い返しつつまずはミサカから話を聞き返す事にした。

 

「すまん、ミサカ!お前の話を聞いてなかったのは俺が根性無しだったせいだ、明日から気をつけるからもう一回頼む!」

 

「はぁ…とミサカはわざとらしいため息を漏らしつつ衣食住の内『食・住』で世話になっているあなたへの感謝の気持ちとの間で板挟みになってみます。……仏の顔は3度もあるそうですがミサカはそこまで甘くありません、ですからちゃんと聞いてくださいね…軍覇?」

 

「任せろ、俺も根性入れれば一回聞いた話は忘れないぜ!!」

 

「――今から向かう場所の詳細は省きます、あなたには大半が関係無い話ですから。しかし上条当麻に関連する情報がある『かも』しれない…推論の域を出ない話です、それに侵入すればタダでは帰れないかもしれません」

 

 

「それでもあなたは同行して―――いえあなたはしますよね、絶対に…とミサカは早々にあなたの退路を塞ぐと共に同行を強要します」

 

「おう!当たり前だ、俺達はカミジョーを助け出す為の仲間でコンビだろ?」

 

今更断る理由なんて無いからな、それに…そんな危ない場所へ女の子が向かうってのに足が竦むのは根性無しのする事だ!

 

「えぇ、えぇ―――仲間です、仲間ですとも。ミサカは心地良い響きと安心感に胸を震わせます」

 

「……今更ですが軍覇、ありがとう――軍覇のお陰で少しは不安が安らぎました」

 

…気の所為、か?ちょっとだけミサカの表情が暗かったような…でも安心した、とも言ってたよな?

大丈夫か、ミサカ―――と俺が聞こうとした瞬間にまたミサカは口を開いた。

 

「幸いその施設にはミサカは何度も出入りしていますし秘密の侵入経路も暗記済みです、とミサカは映画でありがちな前を向いたまま話しかける粋な会話術を展開しま――」

 

「おぉ、つまりはミサカは敵の建物について分からないことは無いんだな!」

 

と前を向いたまま自然体で話しかけるミサカ10046号に対して自然体が素直な軍覇少年。大きな地声で『敵の建物』と漏らしつつ即座にミサカ10046号に身体を向けてしまう。これではミサカ10046号が大きなため息を漏らしてしまう事は致し方無い話である

 

「少し位、警戒心は抱けないのですか?とミサカはあなたの知能指数の認識と信頼度を二段階ほど落としてみます」

 

知能指数は構わないが信頼度はちょっと悔しいな…根性入れて信頼度を取り戻さねぇと!

 

そんな本音を隠さないミサカが言うにはその施設は部外者はまず真正面から入る事は出来ないらしい、確かに警備は固そうだよな!でも秘密に出入りする人達の為に離れた建物から地下通路が繋がっていて、そこからなら楽に入れる。今回俺達はこの地下通路を使うわけだ。

 

そうしてミサカ10046号の的確な指示、軍覇の人間離れした身体能力が見事に組み合わさり地下通路への侵入は難無く成功。何とか第一段階を突破したと言えるだろう。

 

「しっかし何でこんな地下通路をミサカは使うんだ?もし前にも施設に来てたんなら顔馴染みのよしみで玄関から訪ねても良いし話くらいは聞かせてくれそうだけどな」

 

「あなたにしては珍しく的確な質問ですね、頭でも打ちましたか?とミサカは的確な質問を的確にはぐらかしてみます」

 

「こう見えても身体と根性は鍛えてる!頭を打ったくらいじゃ平気だぜ」

 

「そうですね、銃弾を物ともしないフィジカルな訳ですし。……質問に答えましょう、ミサカは一時期この施設に頻繁に出入りしていました。目的は話せませんが仕事の一環と思って貰って構いません」

 

「ですが数ある部屋の内の幾つかを事務的に使っただけですから施設の職員と私的なつきあい、増してや機密情報を聞き出せるような繋がりはありませんとミサカは早速暗視ゴーグルの着用を始めます」

 

なるほど、つまり入った事はあるが職員と仲良くは無いって事か。確かにミサカの言う通り……ん…?それだと何かおかしく無いか?

 

ミサカは以前、施設に頻繁に出入りしたがそれは仕事の一環だった。だから職員と付き合いは無いし詳しい事は知らない。……じゃあ今俺達が進んでる地下通路をミサカが知っているのはおかしい気がするぞ、ミサカ自身も秘密の通路だって言ってたしな

 

軍覇自身、超能力者(LEVEL5)の第7位という格付けでありながら頭の回転は良い方では無い。定期考査の後に行われる成績『不』優秀者を対象とした補修でも彼は常連メンバーだ。

そんなお世辞にも考える事が苦手な軍覇が気付いたのだから余程の事なのだろう

 

ちなみに彼等が今現在走っている地下通路、勿論ながら電灯などない真っ暗闇である。特殊な装備や異常な身体能力を有していなければ歩くことすらままならない暗闇を軽快に駆け抜ける2人。……だが何かがおかしい、2人の軽快な足音にどう考えても人が走るだけでは発生しようがない音が混じり始めていた。

 

『侵入者発見、侵入者発見。即座に担当のチームは侵入者の捜索と迎撃に向かってください』

 

「なぁ、ミサカ。一つ聞いて良いか?」

 

『ビーッ!ビーッ!!』

 

「構いませんよ、その質問の内容は読めていましたから。とミサカは無駄に勘の働くあなたに舌打ちをしつつ……ん?何ですか、このうるさい機械音は……」

 

「あぁ、多分地下通路に入った瞬間に巡回ロボがいたからその警報の音じゃないか?ほら、聞こえる音もそんな感じだぞ」

 

「確かに、警報音ですね……って違う!!あなたは何でそんな大事な事を真っ先に言わないんですか!?馬鹿なんですか、いえあなたは馬鹿でしたね!とミサカは先程言及したあなたの知能指数について失念していた事を心底後悔します…!」

 

「だ、だって勝手に侵入して勝手に備品を破壊するなんて卑劣な真似出来ないだろ!それに俺が見つけた時は気付いた様子は無かったんだ!」

 

「律儀か!?律儀なんですかあなたは!?じゃあミサカ達が初めて出会った時にあなたが破壊した公道は何です?暗部の備品を破壊するより何万倍も公共の福祉を妨げていますとミサカは八つ当たりと武器の展開を並行しますッ!」

 

危機的状況下(ピンチ)に置いてもボケ続ける、もといブレない軍覇相手に10046号もまたツッコミを忘れない。

だがしかし、2人の状況は即座にツッコミの余裕も無くなる程となった。何せ敵の展開が早いのだ――第1陣の改造警備ロボ部隊。念動砲弾(アタッククラッシュ)相手には足止めにもならないが第2陣の後続部隊到着までの時間稼ぎ程度にはなる。

 

「…悪かった、ミサカ。俺が腑甲斐無いばっかりに無駄なピンチを呼んじまった、ここは俺が何とかするから任せ…いッてぇ!いきなりビリビリは止めろよ…!」

 

集まり始めた機械軍団に1発叩き込もうとした瞬間、背中に静電気より強い痛みを持つ電流が流れ込む。これは間違い無くミサカのビリビリだよな…!

 

「ツッコミ代わりの電流です、文句は後で山ほど言わせてもらいますから先ずは敵を片付けましょう!どう考えても地下通路を破壊しかねない規模の武器を装備したロボは任せます、と早速ミサカはマガジン内の弾を全て敵に浴びせつつ指示を出します!」

 

「お、おう!ミサカに怒られるのは怖いが今はそうじゃないよな!よーしミサカ――こいつらに、こんな物騒な銃火器(オモチャ)を操る奴等に命をかける義理はねぇが」

 

「はぁ…あなたは本当にブレないと言うか何と言いますか…。まぁ、そんな訳で……ここは少しばかり根性を出します」

 

「だから…本気で潰すぞ」

 

先手必勝、仕掛けたのは…巡回ロボの一体。車輪の取り付けられた四本脚を動かし高さと位置を調節、素早く彼等の死角から秒速25発の銃弾を放つ。それに続いて他の機械達も我先にと2人のいる一帯に弾幕の雨を降らせ続ける。

 

だが駄目だ、いや問題外なのだ。そもそも前提が間違っている。

 

超能力者相手に対人の通常兵器では話にならない?…違う

 

間違っている、根本から履き違えている。まず『倒せる、倒そうとする』と言う所から的外れなのだ。それが例え侵入者を感知して自動で迎撃に当たるシステムとは言え―――念動砲弾(ナンバーセブン)を知る者がこの出来事を見れば皆が皆口を揃えてこう吐き捨てるだろう。

 

「根性無し、本当に根性無しです―――」

 

「機械相手の説教が馬の耳に何とやらであれ、そう告げざるを得ない―――まず土俵が違う。そうミサカは機械相手に独りごちてみます」

 

「確かにまぁ、2人を大人数で囲って弾幕の雨ってのは卑怯だよな。原因が俺達にある分ちょっと気が引けるが…女の子に浴びせるもんじゃねぇな、銃弾(コレ)は。だから全部、返すぞッ!!」

 

当然2人に被弾どころかかすり傷も無い。何故なら銃弾は彼等を包囲するように――停止しているのだから。

 

蜃気楼の波動、とはミサカ10046号の代弁。

確かに彼等を貫かんと地球の物理法則に従っていた銃弾はその全身運動を見えない『ナニカ』によって停止した。―――だがこれで終わりではない。

 

ヌンッ、と空気を握り潰すように指先を何も無い空間にくい込ませる。後はこの振り上げたこの腕を下ろせば…!

 

「すごいガードを超える新技、超ハイパーエキセントリックすごいガードだ!!」

 

すると不思議な事に銃弾は綺麗に跳ね返り周囲のロボ達の元へ返っていく。現象だけを見れば一方通行(第1位)の反射に似通った物ではある、ただ根本は全く異なるのだが。

 

 

「さて、ここからが本番です。いい加減に増援部隊も到着するでしょう、向こうは機械と違って戦況に合わせて臨機応変に対応します―――根性、叩き込めますか?と野暮な質問をミサカはわざと投げ掛けます」

 

「おう!カミジョーの事を知ってるかどうかまでははっきりしないけどよ、少なくともこんな真似するような連中だ。―――俺達みたいには身を守れない奴が犠牲になるかもしれない、だったらここで俺達が根性見せねぇと…だろ?」

 

それに―――ミサカ、お前は守るって約束したからな。

 

だから守る、お前も――お前が守りたいと思える人も。だからもう少し待ってろ、カミジョー…!すぐに俺とミサカが助けに行くからな!!

 

 

 

 

「超、すごいパァァァンチ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八雲紫SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り立てて興味がある訳では無かった。

 

世界最大の原石と進化の糧に成り損ねた人間の模造品、その程度の認識でしかない

 

「……ゆっくり休んでろ、ミサカ。コイツは俺が必ず倒す」

 

まぁ確かに、人間にしては頑張った部類に入る。

 

重武装の訓練された兵士を何十人も敵に回して対する仲間は自分も含めて2人だけ。

 

勿論無駄な戦闘を省くためこちらは2人が兵士を粗方倒し消耗したタイミングを見計らって顔を出した。

 

……それでも10046号とは違い未だに紫は軍覇の意識の境界に干渉出来ないでいた。

 

(それが根性……とでも言い張る気?…馬鹿も休み休みになさい)

 

「諦めない、それも根性かしら。おめでたいのね」

 

「そうだ、俺は根性があるから今も立っていられる。ただこの根性はこれまでの俺1人が頑張れば良い…なんて軽い物じゃ無い」

 

「どういう意味?」

 

「…俺が今諦めるのは簡単だ。でもな、今諦めたら…カミジョーは誰が助けるんだ?俺に負けない位の根性を見せたミサカの努力はどうなる?―――俺が諦めるって事はカミジョーを見捨てる事だ、ミサカの根性を踏み潰す事だ」

 

「そんな真似…根性以前の問題だ」

 

成程、これが…世界最大の原石、削板軍覇。

きっと彼のような人物をヒーローと言うのでしょう。

誰に教えられなくても、自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに進もうとする者―――三種類存在するとされるヒーローの一種類

 

(彼は上条当麻、上白沢慧音…に次ぐ3人目。彼等が居れば、彼等が団結すれば―――いえ。今は悪役に徹するとしましょうか)

 

「でしたら、貴方の根性と私の悪性。どちらが上回るか……根性を入れ直して吼えてご覧なさい」

 

何が貴方を…貴方達ヒーローを突き動かすの?正義感?

 

「当たり前だ…行くぞ…!」

 

簡単に散ってしまう人間なのに何故正義感だけで立ち上がるの?

 

軍覇の初速は音速を超える……狭い地下通路でさえ無ければ。

 

軍覇は自爆覚悟ならば紫に痛手を負わせられたのかもしれない……軍覇自身が死ねない理由を見出していなければ。

 

(彼は、念動砲弾は、削板軍覇は―――)

 

「きっと救える、上条当麻も。その仲間も……だけどごめんなさい、私にも貴方と同じように護らなければならない――諦める訳にはならない場所があるの。だから今は…譲って頂戴」

 

「これが俺の…フル根性だァァァァァァ!!」

 

「境符『四重結界』!」

 

軍覇の右手に集まる『ソレ』…即ち謎の力

 

紫の正面に張り巡らされた四重の結界

 

軍覇は『ソレ』を結界に叩きつけるだろう

 

紫は『ソレ』を結界で迎え撃つだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

……剣客同士の死合は達人であればある程即座に決着が付くと言う。

他にもガンマンの対決然り―――それはこの場に置いても。削板軍覇と八雲紫のぶつかり合いでも同じ事。

 

舞い上がる土煙の中、浮かび上がる影は一つだけ。

 

その影の主は―――

 

「まさか――二枚目の結界が半壊するなんて、それも消耗しきった人間を相手にして…」

 

「本当……貴方のようなヒーローは、何時も私の予測の範疇を超えてくれるのね」

 

浮かび上がった影の主……それは八雲紫だった。




ミサカ10046号SIDEの現在編→削板軍覇SIDE→ミサカ10046号SIDEの回想編→八雲紫SIDE


となっております。それと次の更新は4月下旬になるかもしれません。御容赦を。

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