藤原妹紅SIDE
戦争………私はそこまで詳しい訳では無いが以前、慧音に半ば強引に勉強をさせられた事があった。その時の世界史の授業で第二次世界大戦……?だったかよく覚えていないがそのような戦争について私は耳にたこが出来る程話を聞かされた。何でも戦争は勝っても負けても争った双方に被害を生みだし、多くの犠牲があったりととにかく損にしかならない争いらしい。
私はその時慧音に
「なら私と輝夜との殺し合いのように代表の人間が一対一で殴り合えば良いじゃないか、それなら被害も最小限に抑えられるしその喧嘩の中で和解できるかもしれないだろ」と冗談交じりにおふざけで言ったのだ。すると慧音に
「………そうだな、それを人間達が分かってくれればきっとこの世から争いなどは消えるだろうな…」
と半ば諦めた様な目付きで見られたっけ…。
あの時は特に深くも考えなかったがいざ自分の住まう土地が戦場になるかもしれないと聞かされると冗談など言えなくなった
「えっと……それは確かな信頼できる情報なのか?まずどこの誰からそんな危なっかしい話を聞いたんだよ」
私はもっともな疑問を紫にぶつける
「そうね……あまり詳しくは話せないけれど……私はこの情報を外の世界の人から入手したの、最も情報提供者はもはや人間とは呼べないかもしれないわね」
「と、言う事は妖怪か神の類か?物好きなやつもいたものだな」
「残念ながらその予想はハズレね、でも今はそんなことはどうでも良いの。大事なことはこれからの事についてよ」
「……まさかとは思うが私にその戦争で戦え、なんて言うんじゃないだろうな?」
私は「禁薬「蓬莱の薬」」を使った不老不死の人間だ、確かに争いにおいて不死身の兵士はこの上なく使い勝手は良いだろう
「一応それも視野に入れておいて頂戴、どの道戦争が勃発すれば否が応でも皆戦う羽目になるのだから…。それに……また目の前で大切な人が無意味に死んでいく様なんて見たくないでしょう?」
「…ッ!!!」
私は紫を殴り飛ばしたくなる気持ちを抑え拳を思い切り握った。
「少し……言い過ぎたかしらね。とにかくもし戦争が起こった場合は貴女には最前線で戦って貰うことになると思うの。それだけは覚悟してもらうわ」
「……あぁ……せめてこの瞳(め)に映る人々くらいは守り切ってみせる」
「…貴女のその覚悟に期待しているわ、それと頼みたいことがもう1つあるの」
「当麻に関する何かか?悪いが子供のお守りと戦争の両立は断る」
「そう話を先読みし過ぎるのは良くないと思うわよ?まぁ彼に関する話だと言うのはあながち間違いでも無いのだけれどね」
私は紫の話を聞き流しつつ頼まれるであろう内容について考えた
(当麻の保護…?それならば最悪気絶させてスキマ送りにしておけば良いのだから違うだろうな、ならば当麻の説得か?…違う、確かにあの右手の力は驚異的だが戦争という現実を殺せる訳じゃない…それに幻想郷には博麗の巫女や死を司る亡霊、吸血鬼…他にも戦争を単騎で片づけてしまうような連中が溢れているからな。わざわざ外来人を連れてきてまで協力を仰ぐとは考えにくい、それが紫なら尚更だろう)
ダメだ、考えれば考えるほど分からなくなってくる
「かなり頭を働かせているようだけど…そろそろ喋っても良いかしら?待ちくたびれてしまいましたわ」
「じゃあ勝手に話せば良かったんだ、私は時間をくれだなんて一言も言っていない」
「はぁ…すっかり私は嫌われ者になってしまったようね……ゆかりんちょっとショック……」
(頭に血が上る、今すぐにでもこの年増妖怪を消し炭にしてしまいたい……!)
どうやら私の表情から怒りを察したのかそれともただ単に私で遊ぶのに飽きたのか…どちらかは分からないが紫がやっと話し始めた
「それじゃあ貴女のお望み通り私が貴女に望む事を改めて伝えるわ
まずは1つ目、幻想郷で戦争が勃発した際においての最前線での戦闘、可能であれば人里を守ってもらいたいわね
次に2つ目、ざっくりと言ってしまえば上条当麻のお守りよ。ただし彼の身に何か危険が迫っても一々守ってあげる必要はないわ。貴女が必要と判断した時にのみ手を貸すなり共闘するなりして頂戴。ただし戦争が始まってしまえばもう彼を放棄しても構わないわ。どう?これだけよ?」
何がこれだけよ、だ…1つ目はともかく2つ目には疑問点が盛りだくさんじゃないか……
「いくつか質問しても構わないか?」
「えぇ、でも全ての質問には答えられないかもしれないわね」
「……では聞くが何故私にそんな中途半端な警護をやらせる、戦うだけならまだしも幻想郷には当麻を守りながらでも戦える人物なんていくらでもいるはずだ。肝心の博麗の巫女はどうしたんだ?こんな時こそ博麗の出番だろう」
「そうね……申し訳ないけれどそれには答えられないわ、それに貴女が言う彼を守りながら戦える程の幻想郷の実力者が簡単に「はい、分かりました」なんて言うと思うの?それに霊夢は私のサポートに回って貰っているわ」
「私は都合の良い駒、と言う訳か…ふん…実に身勝手でお前らしいよ。オマケに博麗の巫女が頼れないとなるとますます私くらいしかいなくなるな」
これ以上この質問について紫に問い詰めても無駄だ、私は経験則からそう悟った。
「分かって貰えたのなら結構、質問は以上かしら?」
「いや……最後に1つだけ……何故戦争が始まってからは当麻を放棄しても構わないんだ?戦力にならないからという理由だけで見捨てるのはあまりにも酷過ぎるだろう」
「良かった、その質問には答えられそうよ。理由はただ単にその時がくれば役目が変わるのよ、貴女から他の人物へと…ね」
「それは一体どういう……」
「ふわぁぁぁ~………ゆかりんもう疲れちゃった…。おやすみなさい……」
そう言うや否や紫はスキマの中へと消えた
「あのスキマ妖怪…!今度人里の油揚げを買い占めて従者を泣かせてやろうかしら…」
だが今は間接的で回りくどい報復よりももっと考えなければならないことがある
(紫のあの言葉……「また目の前で大切な人が無意味に死んでいく様を見たくないでしょう?」…。あれは私の参戦への意思を決定的なものにした。悔しいが紫の思い通りと言ったところか…。理由は言うまでもない、私が輝夜を憎み続ける結果となったキッカケ…父上が命を絶ったことだ。あの時の私はまだ幼かった…当然知識も無ければ力もなく父上の自害を止められ無かったのも当然と言えば当然だったのかもしれない。だが現実問題そう簡単には割り切れなかった…。「あの時の私に力があれば…」そう思った事はとうに年齢の数を上回っている。だが今は違う……老いる事も死ぬ事も無い程度の能力を手に入れ妖術も扱えるようになった、今の私なら…今の私ならこの瞳(め)に映る人々くらいは………」
「はははっ………何を甘えた事を言っているんだ私は…。こんな事をしても父上が生き返る訳でも今まで私が奪ってきた命に対する償いが果たせる訳でもないのにな……」
それでも……たとえそれでも私はどれだけの逆境が待っていようともどれだけ傷付こうとも戦わねばならない、何より…
(そっと目を閉じるとすぐ目の前に大切な人の笑顔が浮かんでくる……私の数少ない理解者である慧音、人里の皆、そして……私の永遠の好敵手(ともだち)である輝夜とその仲間達…。誰一人として悲しませたくもないし泣き顔などは見たくもない)
「まさか自然と輝夜の事を大切だと思える日が来るなんてな…昔の私が聞けば殴られたんじゃないか?」
何故か顔が無意識にはにかんでしまう。この1件が片付いたら少しくらいは輝夜に親しくいてやるかな?
私はどこかスッキリとした心境で当麻と合流するため永遠亭に入った
「ふふっ、本当なら彼…上条当麻君に貴女のその苦悩(げんそう)を殺して貰う予定だったのだけど自分で一応の踏ん切りはつけられたようね。一安心ですわ」
妹紅が永遠亭に入るのを少し離れた場所に開いたスキマから見ていた紫はそう呟いた。
だが安心は出来ない、何せ戦争はまさに今から起ころうとしているのだ。こうしている間にも敵は着実に根を張り巡らせているに違いない
「私が愛したこの幻想郷で戦争を起こそうだなんて随分とふざけた思考をしているじゃない、ここまで怒りを隠せないのはいつ以来かしらね…」
そう呟く紫の表情は誰も見た事がないほど憎悪の感情が表れていた
(さて……一応貴方に頼まれた約束の半分は片付けたわよ?アレイスター=クロウリー……)
元世界最高最強の魔術師にして現世界最高の科学者、そして何より学園都市の統括理事長である人物の名前を心の中で複唱し、八雲紫はスキマを閉じた
上条当麻SIDE
………わたくしこと上条当麻の現在の状況は非常によろしくない。
足元にあった服から察するに彼女が妹紅の言っていた姫だということは俺にも想像できた。問題はそのお姫様の着替えの真っ最中に部屋に突入してしまい見事逆鱗に触れてしまったことである。結局あの後、かなりの間俺は彼女が放ってくる光弾を避けては打ち消し避けては打ち消しを繰り返し今……
目の前にいらっしゃる右上と左下の部分が青く、左上と右下の部分が赤い服を着ている女性に土下座で謝罪をしている真っ最中だった。
「本当にすみませんでした!!悪気は無かったんですよ上条さんには!あのイタズラ兎を捕まえようとしたら…!不幸だっ!!」
「わ、私は悪くないのよ!?何故かそこの男がいきなり着替え中に乱入してきてそれで不幸だ、なんて言い出すから仕方なく攻撃したのよ!!」
何故か俺の隣には先程のお姫様が正座で言い訳をマシンガンのごとくまくしたてていた。
「はぁ……とりあえず二人の言い分は分かったわ、そちらの少年は…何故かケガ1つ無いようだけどうどんげ、一応診察してあげなさい」
「は、はい……分かりました……」
どこか顔色が悪そうな頭にウサ耳を生やした少女が返事をした
「えっ…?良いのか…じゃなくてですか…?」
「そうよ、えーりん!この男は私の裸を見たのよ!?」
「確かに彼…上条君と言ったかしら?とにかく覗きを働いたようだけど本人が言うように悪気は無かったんでしょう?それに話を聞く限りはてゐが原因だそうじゃない」
(このお方は聖人じゃないのか…!?いや、俺が知っている聖人はもっと性格が荒かった!まさかそれ以上なのか!?)
と、俺はとある女聖人を想像しながら目の前の女性に感謝した
「だ、だとしても…!」
だが裸を見られた少女はそうは問屋が卸さない
「貴女の言い分は分かるわ、輝夜…でもここまで部屋がボロボロになるまで暴れる必要は無かったんじゃない?」
「………………」
輝夜と呼ばれた少女は黙り込む
「さて、まずは上条君の怪我の有無の確認から始めましょう」
「はい、師匠。それでは上条さん、こちらへ」
先程まで顔色が悪かったうどんげと呼ばれた少女は俺を案内しようとした
(このまま黙っていれば許してもらえるよな…実際あのイタズラ兎のせいでもあるわけだし……)
(でも俺はこのままでいいのか?女の子を傷付けてしまったことは事実なんだぞ…それを………俺は…)
「あ、あの~……理由はどうであれ俺が彼女を…輝夜さんを傷付けてしまった事は事実だと思うんです…。だからせめてものお詫びにこの部屋の片付けの手伝いをさせてもらえませんか?」
俺の頭に浮かんだ今最もベストな選択肢を選んだが…問題は輝夜とえーりんと呼ばれた女性がどう受け止めるか、だ
「別に気にしなくて良いのよ?むしろこちらこそ謝る必要があるみたいじゃない。落とし穴に落ちた時怪我は?無かったの?」
「そ、それなら俺の方こそ気にしないでください!もこ……助けてくれた人がいたので何も怪我はありませんでしたし何より俺が手伝いたいから手伝うだけなんです。ダメですか?」
「そこまで言われると…ねぇ……」
女性は困ったように輝夜を見つめた
「…………あぁもうめんどくさいわね!そんなに手伝いたいなら好きにすれば良いじゃない!私は知らないから!!」
そう言って輝夜は走って逃げだした
「ひ、姫…!」
「姫様……」
「な、何か俺のせいで余計にややこしくしてしまったみたいで……すみません……」
「いえ…良いのよ、あの子はあんな性格だから仕方ないと言えば仕方ないのよね。とにかく君はまず怪我の確認よ。話はそれから、ね?」
確かにいつまでもこの部屋に居座り続けるのも不味いよな……となれば今は大人しく従うのが筋ってもんだよな
「分かりました、お世話になります」
「それでは改めて、こちらです」
俺はうどんげという少女に連れられその部屋を出た
ふぅ……毎日文字数が増えてますね…。大体何文字くらいだと小説というのは読みやすいのでしょうか?私は小説よりマンガ派なのでその辺りの感覚がイマイチしっくりと来ないのですよ…。
さて昨日は気長に書いていくなどとぬかしておきながら今回はまさかの話の核心に迫るというまさかの展開、書いてる自分でも「これはおかしい…」と思うくらいでしたよ…スミマセン…
ただ一応自分の書きたい事は書けたので反省はしていますが後悔はしていません、今回の指摘、改善点、感想など全て喜んで受け付けますのでお気軽にコメントください。
それではまた次回もよろしくお願いします