とある幻想郷の幻想殺し   作:愛鈴@けねもこ推し

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連載再開なんでせう


切られた「モノ」と繋がった「モノ」

 

上条当麻SIDE

 

 

 

 

 

 

紅魔館の地下、即ちフランドール・スカーレットの部屋。ここで一つの戦いが幕を引いていた…がしかし、「はいじゃあ一件落着!!」と事が運ばないのが世の常であり上条当麻(イマジンブレイカー)の常である

 

「ってて…!と、とにかく玄関ホールだ。そこに皆が居るんだ…!」

 

「そのボロボロな身体で彼奴を倒す?無理だよお兄さん、今のお兄さんなら妖精にも苦戦するんじゃない?」

 

ヒビの入った壁に肩を擦るようにして階段を登る当麻にフランは肩を貸す訳でも無く呆れたように肩を竦める。

 

「全くだぜ、つーか脇腹にヒビが入ってるんだろ?止めろとは言わないが諦めろ。言いたくは無いが無駄骨だぜ」

 

とこれは当麻に向け溜息を吐く魔理沙の弁

 

「あっれ〜…おかしいな〜…疲れの所為からか霧雨の日本語が矛盾して聴こえるぞ…?とは言え諦めてられっかよ、フランドールとの約束もあるしな。ついでにここで売上が出せなきゃ上条さん他三名の儚い命が奪われるんでせう」

 

本音を言えば今の俺の体調は最悪だ。脇腹が内側から針を刺されたように痛むし火傷した箇所が服に擦れて涙目になりそうになる…

 

(それでも、だ…鈴仙が一勝してくれたし妹紅が負ける訳がない。そうなれば…後一勝で俺達の勝ちだ、何より…)

 

「お前だって少なからず真実が気になったから付いて来たんだろ?フランドール」

 

ようやく階段を上り終えた当麻はぽむ、とフランの帽子に手を置いた。

 

「そりゃ彼処まで煽られたらね、見届けない訳にはいかないでしょ。……あとよく分かんないけどムカつくからその手離してくれない?ギュッとしてどかーんするよ」

 

「この手厳しい返答と殺気、上条さんは既に慣れてるんですよーっと。さて…!ここからが問題だ、俺と霧雨は悲しい事に玄関ホールまでの道のりが分からない。だからフランドール、無理を承知で案内してくれないか?」

 

「無理だよ」

 

「あっさり拒否し過ぎだろフラン…当麻だって事情があるんだ、せめて近くまで案内してやれよ」

 

ジト目で当麻を見つめながら置かれた手を振り払うフランに今度は魔理沙がフランをジト目で見つめる。何ともシュールな構造だ

 

「嫌だ、って意味の『NO』じゃなくて『Can't』なんだってば。元から紅魔館は咲夜とパチェが内部構造を弄りまくってる上に私の部屋付近の空間は私が部屋から脱出したのを感知すると周囲の空間と隔離される仕様になってるの、オマケにこの辺りの空間の自動修復機能に入口と出口を偽造する機能まで…河童も顔負けだよね」

 

「…よく分からんが警備が厳重だってのは理解した、咲夜とパチュリーの合作なら抜け穴も無いだろ。てかよくそんな空間に私達は迷い込めたな?」

 

「それだけは私も何とも…だから魔理沙とお兄さん、どちらが異様にふこ」

 

「あぁ分かったよ上条さんの責任なんです全ては上条さんが悪いんですごめんなさい!…と言う事は、レミリアに会うことすら、敵わないってことか?」

 

「ううん、大丈夫。方法はちゃんとあるから」

 

「「あるのかよ!?」」

 

と、この息ピッタリなフランへのツッコミは言うまでもなく当麻と魔理沙のものである。

 

二人の完璧なツッコミに僅かにたじろいだフランであったがすぐに口を開いた

 

「確かに、咲夜とパチェの合作空間を正攻法で攻略して脱出なんて無理。でもさ…何も正攻法で脱出する必要なんてないよね?そもそも私の脱出自体非合法だし。なら…壊しちゃえば良いんだよ、そんな空間なんて!異様な空間だろうと所詮は『モノ』、モノを私が壊せない道理が無い」

 

つまりはフランドール・スカーレット、あろうことか能力を使って空間そのものを破壊するという。この余りにも突拍子も前例も無い提案を放つ吸血鬼に人間の少年少女は数秒間の思考停止を余儀なくされた

 

そんな沈黙をまず破ったのは俺だった

 

「…とりあえず、その話が可能か不可能かは霧雨とフランドールの判断に任せる。でもな、フランドール…それをやっちまうと正真正銘レミリアに宣戦布告するみたい事と変わらないんじゃないか?上条さんが無理矢理連れ出したように見える方法を考えてからでも…」

 

「…当麻の意見もある、が。それより空間破壊なんて正気か?第一あのパチュリーと咲夜がお前の能力を考慮しない訳がないんだぜ、きっと何か仕掛けがあるはずだ」

 

フランドールには悪いが流石にその方法は話が飛躍している上に難題が多過ぎる、無理なんてレベルじゃない

 

「…分かってるよ、これをすれば間違いなく今度は軟禁じゃ済まないってね。殺されるかもしれない、仕掛けの話だってそう!空間の弱点の目を大量に分散させて私が簡単には破壊できないようにしてあるんだ、大人気ないとは思わない?」

 

「だったら尚更別の方法を!!」

 

分かってるなら止めさせないと、俺はフランドールに軟禁の真実をレミリアから吐かせるとは約束したが何も悪役にしたいわけじゃない。

 

「でもね、聞いてよ…魔理沙、お兄さん」

 

反対する二人を制したフランの『でも』…すかさず魔理沙が「でも、なんだよ?」と聞き返す

 

「お兄さんと魔理沙は私に新たな道になるかもしれない可能性を示してくれた、でも私はおんぶにだっこでお世話になりたい訳じゃない。どの道を私が選んでどう歩むかは私が決めなきゃダメなんだよ、だから私は私の判断で脱走するし彼奴に牙を剥くの」

 

「それに…ちょっと気になったんだよね、お兄さんの約束が幻想で終わるのかどうか。魔理沙の人を観る瞳が節穴かどうか。だから私はもう少し二人の側で二人を見てみたいんだ」

 

きっと…きっとフランドールの中で何かが…いやフランドール自身が変わろうとしているんだろう。それがどんな方向かは解らない、そもそも仮にここを脱出出来ても俺が挑んだ勝負でレミリアに負ければ今度こそフランドールは闇のどん底へ落ちてしまうかもしれない―――だから俺はフランドールの気持ちを無視するのか?

 

「…なんてね、お兄さんと魔理沙があの時暑苦しかったから私まで感化されちゃったよ。冗談冗談、私だって空間を破壊して亜空間に飛ばされたら嫌だもん。時間はかかかるけど何とか代案を考えよっか」

 

「…あーあ!本当に面倒臭いんだぜフランは!私が暑苦しかった?私は常にクールビューティな魔法使い、霧雨魔理沙様だぜ!暑苦しいのは当麻だけにしとけ、ついでにそのガキンチョに似合わない痩せ我慢も止めろよ」

 

と、怪訝な表情を浮かべていた魔理沙はフランの頭をわしわしと帽子ごと撫で回す

 

「いやいやどっちかってと暑苦しいのはフランドールのレーヴァテインだろ?実際に灼熱だったからな、いや〜しかしフランドールも良い感じに気持ちを伝えられるじゃないか。上条さんは嬉しいんですことよ」

 

先程フランに手を振り払われた当麻も魔理沙の手の上から重ねるように頭を撫で回す

 

「はぁ!?ちょっ…止めてよ、何するの!?頭おかしいんじゃない!?」

 

勿論二人の手を嫌がるフランであったが何故かこの時ばかりは顔を赤くしてあたふたするばかり、年相応の可愛さとはこの事か…魔理沙は静かに内心で呟く

 

「まぁまぁ、頭の方はともかくさ。良いんじゃないか、フランの計画。それにフランの部屋に迷い込んでからかなりの時間が経過してる、流石にもう咲夜対妹紅もケリが着いてる筈だ――――乗ってやるんだぜ、フランの舟に」

 

「そういうことだ、フランドール!お前の意思、上条さんと霧雨が受け取った!だから俺は代わりにこれから先の運命をフランドールに預ける―――頼んだぞ」

 

「ッ…これだから人間って生き物は本当にさぁ!!あぁもう!とにかく私の案に二人とも賛成なんだよね?」

 

「「あぁ!!」」

 

――――この二人、否二人+一吸血鬼はどうやら相性は良いらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランドール・スカーレットSIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

改めてお兄さんと魔理沙と一緒に軽く空間を調べた上で分かった事は次の通り

 

・幻想殺しで触れただけでどうにかなるものではない(そもそも空間の定義が曖昧で触れる事すら出来ない)

 

・空間の弱点の目は何万個、何十万個と分散されていて一撃で破壊し尽くす事は出来ない。しかも一つでも弱点が残っていれば再構築可能

 

……うーん、二人の前じゃ絶対に言えないけど流石に不安になってきたかも。流石パチェ、咲夜…としか言いようがない

 

そうした現実を踏まえて見出したのが次の案

 

①まずは私がなるべくたくさんの弱点の目を破壊して少しでも良いから空間に亀裂を作る

 

②そこに生まれた亀裂へ魔理沙が最大火力の弾幕を叩き込み更に亀裂を広げる

 

③大きくなった亀裂へお兄さんの右手の一撃を叩き込み生みだされた空間を破壊、辺りの空間は本来の形へと戻る

 

「こんなところだね、二人とも覚悟は出来た?」

 

「言うまで無いだろ?上条さんはやると決めたらやりきる人間だぜ」

 

「今更逃げ出しても魔法使いの名が泣くからな…ほらよ、当麻。最大火力を出す為の魔力を残しているから完全とはいかないが肋骨のヒビは限界まで治療したし痛みも和らげたぜ」

 

当麻の脇腹に手を添えていた魔理沙が立ち上がりフランに向き直り返答代わりに親指を突き立てる

 

(忘れてた…お兄さんって私に蹴り飛ばされて肋骨にヒビが入ってたんだよね、すっかり忘れてたよ…)

 

罪悪感がある事は事実だしお兄さんには今も彼奴と戦う時も頑張って貰わなきゃいけないもんね

 

そこでフランは魔理沙と入れ替わるように当麻の脇腹に手を添える

 

「…?フランドール、どうしたんだ?」

 

「…借りた借りを返してるだけ、って言うか骨折した状態で彼奴と戦うなんて無理。肺に骨が刺さったらどうする気?」

 

幸いな事に私は魔力量にも自身がある、これくらいの怪我ならすぐに治癒出来る自身はあった

治癒魔法は確か…100歳の時に覚えた魔法だったはず、彼奴と喧嘩する度に吸血鬼の自然回復力だけでは治癒が間に合わない時が増えて仕方なく基礎だけは覚えたのが始まりかな

 

その後は軟禁されている間にパチェの魔導書を何度か差し入れで頼んで読み耽った。覚えておいて損はない、程度の意識で始めたけど495年の人生(?)の中で自分以外の生き物に使った事も役立てた事も初めてだったりする

 

「どうかな、まだ脇腹は痛む?私がギュッとして確かめようか?」

 

「フランはそれわざとやってるんだよな?そうだよね?まっ、痛みは消えたし動きにも影響無し!助かったぜ、霧雨、フランドール!」

 

そう言って立ち上がった当麻は軽く飛び跳ねてから素早く三回のジャブを放つ

そこから左足で踏み込み右ストレート……もはやその動作の中に怪我を庇う様子は見受けられない

 

「お兄さん完全復活」

 

「なんだぜ!」

 

「そう、みたいだな…それじゃあフランドール!霧雨!準備は良いな!」

 

「むしろ私達は当麻の復帰を待ってた位なんだぜ?待ちくたびれたっての!」

 

「アハハッ!逆にお兄さんの準備は良いの?踏み出す足の場所を間違えれば空間の隙間に落ちて…って可能性もあるけど!」

 

特にフランのこのタイミングのこの発言に悪意も意味は無い。強いて意味合いを持たせるならば発破をかけた、その程度のものだ。

 

対する上条当麻はと言えば

 

「ハハッ!上条さんはこれでも右ストレートには自信があるんだ、例え空間だろうが殴れるんなら俺はソレを殴り飛ばす!」

 

まったく…!この人達ってのは頭のネジが外れているのかそうでないのか分からなくなるよね…!

 

「魔力充填完了…!フラン!」

 

「OK、魔理沙!!さぁいく……よ……」

 

魔理沙の魔力充填は完了した、お兄さんも体勢を立て直した。後は私が空間になるべく大きな亀裂をこじ開けて魔理沙にバトンを渡すだけ、別に特段難しい事じゃない。難しい事じゃない…はず、なのに…

 

指先が震える、足が震える、瞳の焦点が定まらない。何より――――

 

『何、今更あの二人に味方して善人気取り?バッカじゃないの!』

 

「ッ…!」

 

それはパチェや咲夜が私の為に仕掛けた罠じゃない、そんな事は私が誰よりも知っている。頭の中でズキズキと突き刺さる不快な声、ずっと私を悪魔(ワタシ)足らしめてきた正体そのもの

 

『ソレ』はいとも容易くフランを静止させ、吸血鬼(さいきょう)腰抜け(さいじゃく)へと生まれ変わらせた

 

『大体あのパチェと咲夜が他にトラップを仕掛けてない訳が無いじゃない、アンタはともかくあの二人は間違いなく死体確定だね。まーたアンタの所為で誰かが壊れちゃうよ?でも関係無いか!だってアンタはさ』

 

「違うッ!私は変わろうとしてる!お兄さんと魔理沙を壊したりなんて…壊したりなんてしない…!」

 

『だってアンタは…家族にすら見限られた悪魔(ワタシ)だもんねぇ!!』

 

そう…私の前に立つ、私だけにしか見えない、私の中に潜む私自身―――『ワタシ』の声が響くだけで気分が可笑しくなる、「私」が抗う度に『ワタシ』は不快な声で笑い続ける

 

二重人格、多重人格と言うべきか。先程フランが自覚していたようにこれは空間の製作者達の悪趣味なトラップでは無い。列記としたフランの内側に潜む人格である。

静止したまま震え続けるフランとは対照的に魔理沙は計画通り八卦路を構え発射準備を完了させていた

 

「ッ!?フラン、何やってんだ!?既に発射準備に私は入ってるんだぜ!?」

 

「っ…!あっ、あぁ……」

 

何時ものように壊せない、弱点を掌の中へと収められない――――これが壊す、ということ。何かの生命を奪い、失敗すれば奪われる危険も孕む…つまり今回奪われる可能性があるとすれば…フランの背後にいる二人の人間

 

「く、そぉぉぉぉぉ!!!間、に合わない…!!」

 

既にスタートを切っていた魔理沙の最大火力の弾幕、即ち『ファイナルスパーク』

途中で止められるわけもない『ソレ』は魔理沙の静止虚しく虹色の閃光を何もない空間へと放出する

 

(わ、私の所為で……全部台無しに…!)

 

『アハハッ!バッカみたい、あれだけ大見得切った癖にその張本人が腰を抜かして座り込んでるよ!道は自分で選んで自分で歩む?何訳分かんないこと言っちゃってるのかな?』

 

『でもでも、これを機に彼奴が私の様子を見に来るかも!それはそれでチャンスだよね、あの二人の命を無駄にするのも悪いしさ…これを機に殺っちゃおうよ!』

 

空を切り続ける魔理沙のファイナルスパークをただただ目で追う「私」に『ワタシ』が甘く囁いてくる、何時もこうだった。『ワタシ』に主導権を預けてしまえば後には何も残らない、今まではそれでも良かったと思っていた。別に悲劇のヒロインをするつもりは無いし破壊する事は「私」も嫌いじゃない

でも…この、二人だけは…叶う事なら失いたくは無かった…

 

だって…!だって…!!

 

上条当麻は余りにも強『過ぎた』。何度倒されても立ち上がり、必要とあらば自分を倒した敵さえ助ける。笑顔を見せる。手を差し伸べる

 

霧雨魔理沙は余りにも優し『過ぎた』。自身に狂気と殺意をぶつける相手の心を見つめ歩み寄る。寄り添う。それを躊躇わない。

 

逆にフランドール・スカーレットは襲い掛かる全ての敵を屍に変え、差し伸べられた手も向けられた優しさも全てが少女の瞳には映らなかった。

それでも、フランドール・スカーレットにも上条当麻を屍に変える事は出来なかった。霧雨魔理沙の優しさを瞳に映さずには居られなかった。

 

だから欲してしまった、この二人を

だから思ってしまった、この二人だけは失いたくない

…だから『ソレ』を失う事が怖かった、こんな短時間で出来た『友達』を――壊したくなかったから

 

「ご、めん…お兄さん…魔理沙…」

 

『謝らなくても良いって、どうせ今からワタシが二人を殺す…ッ!?』

 

フランが全てを諦め崩れ落ちる―――事は無い

 

何故ならば上条当麻がフランの背中に手を回し支えたからだ

 

「フランドール!まだ終わっちゃいねぇ!諦めんな!」

 

まだ上条当麻(ヒーロー)は失われていない

 

「そうだぜ、フラン!顔を上げてみろ!私のファイナルスパークはまだ消えてないんだぜ!!」

 

まだ霧雨魔理沙(ヒーロー)は壊れていない

 

当麻が即座にフランと目線を合わせるように屈んで肩を掴む

 

「正直俺には今のフランドールの苦しみが理解してやれない、お前はきっと俺には想像も付かないような重い物を背負ってんだろ?だったら俺や霧雨と友達になろうぜ!」

 

「別に仲良しこよしじゃなくて良い、喧嘩も殺気も上等だ!友達の悩みなら全部引っ括めてこの魔理沙さんと当麻が一緒に背負ってやる!!」

 

「だからお前と言う友達の重荷(げんそう)を俺が!」

 

「この魔理沙さんが!」

 

「ッ…!『私』も一緒に!」

 

「「「ぶち殺すッ!!」」」

 

果たして壊れたのは何なのか?そもそも壊れたのか変わったのか…ただ言える事は一つ

フランドール・スカーレットは、今度こそ手放さなかったのだ。自分自身を…大切な友達を!

 

『ッ…!煩いなぁ!今更アンタが抗ってどうにかなる話じゃないっての!』

 

「魔理沙!後少し耐えて、ファイナルスパークの斜線上に亀裂を造るから!……ふぅ」

 

(確かに、『ワタシ』の言う通り訳が分かんないよ。出逢ったばかりの人間二人に感化されて我を見失って…でもさ、出会い方も最悪な私達だけど…!)

 

「出会い方なんて関係無い、どうせ頭の螺子が外れたこの私…友達作りも狂っていようが構わない!!だからここでサヨナラだよ、『ワタシ』!」

 

お兄さんの瞳を見つめ小さく頷いてから私は右手を突き出す―――何も無い空間に向けて、『ワタシ』に向けて

 

『ワタシ』と呼ばれたフランが塵となって消えた事を「私」は一切気に止めていなかった

 

「カウントダウン、ギュッとしてドカーン(3)!!」

まずはフランの一撃、予告通りファイナルスパークの斜線上に真っ黒な亀裂が僅かに現れる

 

「ッ!!ファイナルスパーク(2)!!」

続いて魔理沙のファイナルスパークは現れた亀裂を直撃、そしてそのまま火力を上昇させ亀裂を更にこじ開ける

 

後は――――任せたよ、お兄さん(ヒーロー)…!

 

あぁ、任せろ…友達(フランドール)!!

 

立ち上がった当麻は一気に亀裂を目指し駆け出した。不思議と恐怖は何も無い

 

「これを造ったのは魔術師…いや魔法使い、だったよな?でもそんな事はどうだって良い!!フランドールをこんなつまらねぇもので縛ってんじゃねぇ!!」

 

幻想殺し(1)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

藤原妹紅SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやらレミリア・スカーレット曰く、妹が部屋から脱出した時には何があろうとも紅魔館から出られないようにあれやこれやと奇々怪々な術式を辺りの空間に施しているらしい

 

「それはつまり当麻は帰ってこれない、ってい」

 

「それはつまり今すぐてめぇの醜い腸引きずり出してでも空間に仕掛けた術式を解除させろ、って意味だな?上等だ、一分で肉塊に変えてやるから今すぐ俺と戦えクソ蝙蝠がッ!!」

 

既に垣根は臨戦体勢に入っている、これは不味い。しかし反対にレミリアは至って冷静であった

 

「そう息巻くな、私をどうしようがあれを造ったのは私じゃない。つまりは何をしようと無駄だ…しかし驚いたな、あの二人はどうやってフランの部屋の入口まで行き着いた?相当な幸運……いや不運か。とにかく!並外れた不幸体質なのか、あの幻想殺しとか言うのは?」

 

どうやら自慢の配下に造らせた自慢の術式が突破された事が余程驚きらしい

 

「…垣根、ちょっと抑えろ。流石に殺気漏らし過ぎだ馬鹿が。今アイツに怒りをぶつけたって当麻は救えない、私は魔法は専門分野じゃないからな」

 

「ざっけんな!妹紅は何も思わねぇのか!?」

 

…アホか、私が何も思わない?当麻を別空間に閉じ込められて?仮にも頭のイカれた吸血鬼と戦ってどんな怪我を負っているかも分からないのに?

 

「だから黙れって言ってンだ、てめェの気持ちは分かるしこの状況で冷静で居ろってほォが無理だろォな。でもなァ、それは私も同じなンだ…分かるな?」

 

怒り心頭なのは私も同じだ、叶うならば今すぐレミリアの舌を炭化させてなめた言動を封じてやりてェに決まってンだろ――でもそれじゃあ意味がねェンだ

 

「…チッ…!」

 

妹紅は垣根を制する為に――敢えて睨まなかった、殺気もぶつけなかった。垣根帝督は馬鹿じゃない、寧ろ妹紅の何倍も賢い部類だ。すぐに冷静さを取り戻す

 

「あァそれとレミリア、一応聞いとくが―――てめェはこの始末どう付けるつもりだ?」

 

「そうだな、フランがあの二人と戦った後に部屋を出た…あの男や魔理沙がフランを追い詰めるとは思わないが興奮させている可能性はある。数週間は空間を閉じた上で更に結界を張って様子見だな、その時まだあの二人が生きているなら紅魔館としても治療は一切惜しまない」

 

つまりは今すぐ助ける気はない、そもそも当麻と霧雨の生死など二の次…要約するとそう言いてェんだろ

 

 

 

「…そォか、よォーく分かった。コイツは今ここで血祭りにあげる。それからさっき潰したメイドと喘息魔法使いを捕まえて無理矢理にでも空間を元に戻させンぞ、時間がねェから瞬殺するが垣根は手を出すな」

 

「…どういう意味だ?俺は役立たずってか?」

 

「そうじゃねェ、ガキに殺らせンのは二流三流の小悪党のする事だ。だからここは下がってろ」

 

「勝手に一流気取ってんじゃねぇ!第一俺は…!」

 

「…当麻は生きてる、絶対になァ…その時治療してやれンのは無事なお前だけだ。だからよォ―――その時までお前は何があっても手は出すな、何より私を信じろ」

 

「ッ…だったらとっとと片付けろ、今は妹紅の顔を立てて丸め込まれてやるよ」

 

「上出来だ」

 

コツコツコツ、と革靴の音が玄関ホールに鳴り響く。

垣根帝督に背を向け鋭い視線をレミリアに突き刺す

それすら心地好いと言わんばかりにレミリアは口角を釣り上げる

 

「フッ、昂ってるな。しかし…幻想殺しが生きているとはどういう意味だ?確証があるのか?」

 

「テメェに教えてやる義理はねェわな、第一絶対ェにお前には分からねェだろ」

 

「嫌われたものだな、私も…まぁ良い。観戦にも昔話にも飽きてきた所だ、早々に片付いてくれるなよ不死鳥(さんした)!」

 

「勝手にこれが愉しめる戦いだとか思い上がってねェか?今から殺ンのは『一方通行』の虐殺だ吸血鬼(かくした)ァ!!」

 

妹紅の背部から紅翼が現れる

レミリアの手の中に神槍が現れる

 

戦いの火蓋は…

 

 

 

―――切られない

 

 

「止めろ妹紅!レミリアとの戦いは俺に預けてくれ!!」

 

玄関ホールに一人の幻想殺し(かみじょうとうま)の声が響き渡る




お久しぶりな方も今初めて知ったわって方も改めまして宜しく御願いします。「けねもこ推し」改めまして「愛鈴@けねもこ推し」でございます、これからは愛鈴とお呼びください。

いやー、長かった。間に生存報告をしていたとは言え長かった。そんな訳でこの物語も再始動という訳です、またお付き合い頂ければ幸いですな。
ちなみにここで語るには無駄な私の身の上話等々は活動報告に綴っておりますので宜しければお目汚しをば

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