とある幻想郷の幻想殺し   作:愛鈴@けねもこ推し

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プロローグ【2】〜それは物語が始まる前の物語〜

藤原妹紅SIDE

 

 

 

 

 

 

 

もう朝になったのか,早いな….

空を見上げれば既に朝日が登りきっていた.輝夜を死体らしき何かに変えた後に私はそのままの場所…にいると再生を終えた輝夜と鉢合わせになる可能性があるから確か身体に鞭を打ってかなり離れた場所で眠りについたんだ.輝夜を殺すのは楽しいし気分も爽快になるけどやっぱり疲れる,だって輝夜も私を殺してくるからね.輝夜の分際で生意気も良いところだ

 

「次はいつにするかな?昨日のアレで満足したから数日は殺さなくて良いかも,久しぶりに食料も調達しないと」

 

不老不死な私は飲まず食わずだろうが死ぬことは無いがやはり飢餓状態は辛い.理性が吹っ飛んで気付いたら輝夜を殺して喰らってました…じゃ笑えないぞ.輝夜は殺す物であって喰う物じゃない,第一あいつの血肉が私の身体に入るなんて拷問があってたまるかくそくらえだ

とにかく今の私の気分は殺しじゃなくて食事だ,家と言う名のボロ小屋に溜め込んだ食料はこれからを過ごすには心許ない.人里には蕎麦屋くらいならあるだろうが…

 

「…馬鹿か私は.こんな化物が店に入った所で注文所かまず人里にも入れないのにな」

 

わざわざ拒まれる事が分かっている場所に向かう義理はない,自分の容姿と体質が忌み嫌われる事など永い永い人生の中で嫌というほど理解した

思わず頭をよぎった過去の苦い記憶を無理やり消し去るように足を早めた妹紅は自称ボロ小屋へと足を進める.筍を掘る為に鍬を取りに向かったのだ

鍬を持ち籠を背中に背負った妹紅は改めて今日中に確保したい食材を思い浮かべる

 

(筍は勿論山菜も欲しい,川魚は…いや鹿か猪を焼いた方が保存は効きそうだね.そうなるとまずは筍を掘ってから山菜を収穫,家に持ち帰ってから獣狩りと洒落こみますか)

 

今の時期ならば比較的にどの食材も楽に手に入る,猪は秋に入ると餌が不足して気が短くなるから尚更だ

筍ご飯に山菜の天ぷらに干し肉…これで酒があればこれとない御馳走になるんだけどなぁ,だが米や調味料ならともかく酒を物々交換となると人や物が大量に動く大きな人里でないと厳しいだろうな…

 

せめて日常会話が出来る程度には努力すべきだったかな…思わず自分の話術の無さに呆れていた時だった,忘れようにも忘れられない英雄(ヒーロー)との出会いが始まったのは

 

「むぎゅ」

 

「……は?」

 

何故か今まではしっかりと私の足が踏みしめていた固い地面が愉快な音を上げて柔らかい「何か」に変わっているじゃないか.これは何だ?何かの罠か?それにしてはやけに野生の勘が働かなかったような?…とりあえず足元を見てみよう,それで全て分かるはずだよね

そして恐る恐る視線を下へと移した私の目に映ったのは……地面に転がっていた女性だった.それも蒼い髪に妙な帽子…なのか?とにかくそれを被った女を私は踏みつけている

 

「うわっ…よりにもよって女の行き倒れかよ.世知辛いこったナンマンダーナンマンダー,せめてもの情けに土葬してやるから安心し」

 

「人を勝手に踏み付けて勝手に殺すとは失礼な人だな,生憎と私はまだ黄泉の門を潜る気はないんだ」

 

うわっ,死体が喋った!…じゃなくて本当にまだ死んでないんだこの人…

 

「……それは悪かった,じゃあ私はこれで」

 

「私は気にしないさ,だがこんな山奥で女2人で出会ったのも何かの縁…今別れるのは賢明ではないな」

 

「そんな縁なら私はお断りなんだけど…あと出来ればその腕力で私の腕を掴まないで欲しいな〜…って思うのは間違いかい?」

 

パンパンと起き上がって服についた土埃を払った女はしっかりと私の腕を掴んでいる…見た目からは掛け離れた力強さで

改めて私が踏み付けていた女を観察していると行き倒れでは無い事は想像がついた,埃を払われた紺の衣服はよく手入れが施されているし血色も良い.何より瞳が綺麗だ,私みたいな薄汚い暗部の化物じゃなくて…普通の生活を送り普通に死ぬ事が出来る光の世界の人間なんだろう

 

(今更憧れる事もないけど…やっぱり一緒に居るのは疲れる)

 

暗闇は眩しい光の前では霞んでしまう,もしくはそれ以上の暗い闇で光を塗り潰すか…どちらか二択

 

「あ,あぁ…すまない.流石に強く掴み過ぎてしまったな…謝るよ,痛くなかったか?」

 

「…大丈夫,痛みなんて慣れっこだから.気にしなくて良いよ,ところでアンタ…えっと名前は?それと何でこんな竹林で倒れ込んでた?」

 

「痛みに慣れっこ…あまり褒められた事ではないな.ちなみに私の名前は上白沢慧音(かみしらさわけいね),この近くの人里で子供相手に寺子屋をしている.実は竹林で倒れていたのは……恥ずかしい話,食べ物に困っていたんだ…」

 

行き倒れ…もとい上白沢慧音の話をまとめるとこうだ.子供に勉学を教える為の教科書やら鉛筆などを買う為に見事散財,何とか食費を削って凌いではいるがとうとう限界が到達.そこで食材を野山から調達しようとしたが筍の採り方が分からずいつの間にか竹林からも抜けられなくなり気絶した…と

 

中々愉快な人格だなおい,たかだか子供の為に散財したって言うのもお笑い種だが空腹のあまりこの迷いの竹林に迷い込むとは命知らずにも程がある

 

「なるほどね,アンタにもアンタなりの事情があるってことか.確かに空腹は不老不死の化物でも辛いから気持ちは分からないでもない…でもここに来るのだけは止めておきな,迷いの竹林はアンタみたいな人間が来る場所じゃないよ」

 

「…まるで自分が不老不死であるかのような口ぶりだな,それにここはえっと…」

 

「あぁ,私かい?私は藤原妹紅だよ」

 

「確かにここは人気も無くて妖怪も闊歩しているのかもしれないが…それを言うなら妹紅だって危ないんじゃないか?」

 

私は別に死にはしないし弱小妖怪程度なら簡単に焼け殺せる……なんて素直に言う訳にはいかない.私は無意識にそう告げそうになった口を急いで閉ざす

さてどう返すべきか?不老不死という体質上『危険』なんて概念を忘れかけていたが確かに上白沢の意見は尤もだ,上白沢が危ないなら私も危ない…やっぱり光の世界の人間と関わるのは面倒だ

 

「私はこの竹林の大抵の事は熟知しているから別に大丈夫なんだ,そんな事よりアンタ…空腹なんでしょ?筍掘りを手伝ってくれるならいくらかお裾分けしよう,悪くは無いだろ?」

 

「っ!か,構わないのか!?筍なんて高級食材をそんな簡単に…?」

 

「世間一般の常識なんて分からないけど迷いの竹林に入り浸っている私からすれば筍なんていつでも手に入る,それに他人とは言えここでアンタを見捨てるのも寝覚めが悪いからね,結局は私の自己満足だから気にしないで貰えると助かる」

 

「ここは…妹紅の優しさに甘えさせてもらうよ,ありがとう.このお礼はまた後日に必ずさせてもらうよ」

 

ありがとう,か……いつ以来だ?そんな事を言われたのは?……もうそれを思い出すことさえ今の私には叶わない…か

 

妙な出会いから上白沢慧音と筍掘りを始める事になった妹紅だがその道中はお世辞にも明るいとは言えないものだった.まず会話のキャッチボールが成り立たないのだ

 

「本当に助かるよ,妹紅.ちなみに妹紅はどこに住んでいるんだ?」

 

「…家…と呼べるかどうか怪しい小屋に一応住んでいる」

 

「そ,そうか…すまない」

 

先程は成り行きでどうにかなったが今度はそうはいかない,見通しのつかない道中で初対面の相手と会話を維持する…まともなコミュニケーションを避けてきた妹紅にとってはこんな何気ない会話のやり取りですら困難であった

続いて2人が苦労したのは互いの心の距離の置き方だ,慧音は妹紅に対して積極的に話しかけ近付こうとするのだが…妹紅は自然に距離を取りたがる.理由は誕生,人に,誰かに近づく事仲良くなる事は恐怖でしかないからだ

 

(……気まずいな,別に気にしている訳じゃないが…誰かと2人きりでいるのはこんなに疲れることだったか?今までは輝夜をぶっ殺す時が2人きりになったけど…決まって私は殺意に呑まれてる上に会話しようなんて気は微塵もないから何も感じないんだよな.はぁ……本当に何でありもしない善意を装って善人面なんかしてるんだ私は?)

 

思わず口から漏れたため息,それに対して申し訳なさそうに俯く慧音に更なる罪悪感を感じる妹紅.状況はまさに会話下手な人間が陥るパターンのまさにそれであった

 

 

 

 

 

 

 

上白沢慧音SIDE

 

 

 

 

 

 

 

不味いな…やはり初対面の人の好意にいきなり甘えるのは失礼だっただろうか?しかし私も不死身では無い以上これ以上の断食は生命の危険が伴ってくる.実を言えばもう5日はまともな食事を摂っていないのだ,普通の人間なら死にはせずともまず自由に動き回る事は出来ないはずだ.だが私にはその様子はない,何故か?答えは単純

 

(私が純粋な人間ではないから…か)

 

私こと上白沢慧音は半人半獣のワーハクタクだ,言うならば身体の半分は人間で半分は妖怪という世にも奇妙な生物だ.人間でもなければ妖怪でもないどっち付かずの曖昧な存在…それが半人半獣

 

「な,なぁ妹紅?妹紅は半人半獣…そんな人間に出会ったら…どうする?やはり気持ち悪いと思うのか?」

 

「別に?幻想郷に妖怪なんて掃いて捨てる程いる訳だし妖怪みたいな汚い人間だってたくさんいるから珍しくも思わないね.何より上には上がいるものさ」

 

「フフッ…妹紅は優しいんだな?尖った言葉の端々に優しさを感じるよ」

 

冗談,バカ言わないでよ…そう言って照れ隠しに頬をかく彼女はきっと強いのだろう.私なんかよりも何倍も何十倍も……これは負けていられないな!

 

会話がすぐ途切れてしまうからと言ってこちらから話しかけなければ余計に会話が成り立たなくなる.だから私からもっと積極的に話しかける……なんて言うのは建前だ,私は何となくこの少女と話を続けたくなった.

 

「冗談なものか,私はこれでも教師だぞ?子供達を相手にする大人が茶化すような冗談を多用しては信頼関係が築けないじゃないか」

 

「あぁ〜…そう言えばアンタは教師だったね,それでふと思ったんだけど教師って楽しいの?少なくとも自分の食費を限界まで削ってやるようには思えないけど」

 

「楽しい…その質問に二択で答えるならば間違いなく楽しいよ.確かに食費を削る羽目になるとは私自身も想定外だがそれ以上に子供達の成長していく姿を見るのは楽しいし何よりやりがいを感じるんだ」

気付けばいつの間にか妹紅が言う筍がよく取れる箇所に到着していた私達だったが,鍬や籠を地面に下ろしてその後もしばらくは何気ない身の上話を繰り返していた.

私の教え子がイタズラをした時の話,宿題忘れの常習犯の生徒に大目玉を食らわせた話などを終えた辺りで妹紅が脇腹を抑えながら立ち上がった

 

「いやはや…最近の子供って言うのは活発なんだね…!黒板消しを扉に挟んで慧音の頭に落とした話!アレなんて最高だったよ…!いやぁお腹が痛い…!」

 

「そ,そこまで笑わなくても良いじゃないか!あの時は私もビックリしたんだからな?」

 

「そりゃいきなり頭がチョークの粉まみれになれば誰だって驚くさ.でも何より面白かったのはその後,怒った慧音先生がチョークの粉まみれの頭で犯人の生徒に頭突きをしたくだりかな?結局は慧音も生徒も頭が粉まみれになりました!なんてどう笑いを堪えろって言うのさ?」

 

そう言われては私も反論は出来ない,確かにあの姿は周りから見れば良いお笑い種になったのかもしれないが.私は妹紅の笑い声に頭突きをした後の他の教え子達の笑い声を重ねて赤くなっていた.ただ恥ずかしい思いをしただけの成果はあったようだ

 

「そう言えば妹紅…いつの間にか私を慧音,と読んでくれるようになったのか?」

 

私は立ち上がった妹紅に合わせるように立ち上がり鍬を手渡す

 

「へ?あぁうん,慧音と話す内にアンタ…って言うのも連れないと思ったからさ.悪かった?」

 

「全然そんな事は無いぞ,むしろ嬉しかった.これからも是非そう呼んでくれ!そうだ,何なら今度ウチに来ないか?狭い家だが歓迎するよ!」

 

「…あぁうん,ありがと.機会があればね」

 

何故か私からの誘いには乗り気ではない妹紅,やはり仲良くなったとは言えまだお互いの家を訪問するまでには至らないか…

私が何気ない事で落ち込んでいる間に妹紅は黙々と地面を掘り進めていた.気付けば既に籠には3つの大きな筍が顔を覗かせていたのだから驚きだ

 

「こ,こんなにも大きな筍を…妹紅の取り分はあるのか?それにあまり採り過ぎては他の人の迷惑にはならないだろうか?」

 

「今心配すべきなのは誰の事なのかちょっと考えれば分かるでしょ?私の頭が腐ってないのなら今一番心配すべきなのは他人の事ばかりで自分の事が考えられない空腹先生だと思うけどね」

 

ぐぅの音も出ない代わりに私のお腹は低く『ぐぅ〜』と鳴り響いた.恥ずかしい,私は平静を装っているがケラケラと笑いを堪える妹紅の反応も手伝って尚更恥ずかしい

せめて恥じらいを紛らわそうと私も筍掘りを手伝おうとしたその時だった

 

(空気の流れが…変わった?…それに何やら殺気のような物まで混じっているな….夜盗か?いや今はまだ時間帯的に活動時間じゃない,何よりここ近辺で夜盗はおろか泥棒の噂すら聞いたことがない…となると)

 

竹林の間を駆け抜ける風はどこか生暖かくなり速度も緩やかなそれに変わる.だと言うのに竹の葉がザワザワと騒ぎ立てる音が鳴り止む気配はない

これは……当たってほしくなどない勘だがこれは…

 

「「妖怪……」」

 

どうやら妹紅も感じた事は同じだったらしく2人の声が重なった.これが何もない会話なら喜ばしい事だが今は笑えない,まったく笑えない

 

(どうする?私1人で妹紅を守り切れるか?今は昼間,満月も出ていない今の私では能力を用いても…勝ち目は…)

 

私が人から妖怪へと変わる条件は月に1度の満月の日になること,そうすれば多少の妖怪ならば相手に出来るのだが…今は皮肉な事に私は非力な人間でしかない

折角掘ってもらった筍をそっちのけで妹紅を庇うように私は辺りを警戒する,今はまだ敵が単体であるかどうかも分からない以上は迂闊には動けないし妹紅に怪我を負わせては元も子もない

 

「安心してくれ,妹紅…!これでも私は非力だがこの場から妹紅を逃がすくらいなら可能だ!人里についたらすぐに助けを呼ぶんだ!」

 

「…あぁ別に良いよ,私は『助けられる側』でも『助ける側』でもないから.慧音は危ないから私から離れて?…火傷じゃすまないよ」

 

そう告げた妹紅は筍の入った籠と鍬を私に預けて首をバキバキと回して鳴らす.痛くはないのか?と聞きたくなる位だが私の今の疑問はそれではない

 

「それは一体どういう意味なんだ?第一火傷じゃ済まないって言うのは…!?」

 

「……こォ言うことだ」

 

刹那に舞い上がった私と妹紅を円の中心点とする爆発と爆炎,それは辺りの竹も…地面も筍も何一つ区別無く全てを焼き払った

 

「…いつかはこんな日が来るとは思ってたンだ.こっちがちょっと光の世界の住人と関わっただけですぐに連れ戻そォとしやがる…ちったァ空気って奴が読めねェのかテメェ達はよォ!!」

 

「も,妹紅!?急にどうしたんだ!?落ち着け…ッ!?」

 

だが焼き払われた跡地に残されたのは私と妹紅…それに地中に潜んでいた巨大な蛙状の妖怪と竹薮に擬態していた猪の妖怪,まさか妹紅は…これを見破っていたのか!?

 

だが妖怪達はその2匹だけでは収まらない,上空には鷲の体躯に犬の頭が付いた異形の妖怪が,竹林の奥深くからは大蛇の妖怪などなど数え始めたらキリがないほどの妖怪が慧音と妹紅を取り囲んでいるのであった

 

「…慧音,悪いがこいつらを退けてテメェを逃がすのは後だ.単に気が立ってるってだけなら私の機嫌に免じて半殺しで済ませるンだがなァ…生憎とそうはいかねェ!無関係のしかも光の世界の住人を巻き込むンなら話は別だァ!!愉快な焼死体になりてェ奴から掛かってきな,焼き加減はお好みにしてやるからよォ!!」

 

「…あっ……まっ,待って……妹紅…!少し落ち着け…!!」

 

今,私は何に恐怖しているのだろうか?

妹紅の雄叫びと共に背中から現れた紅翼?

辺りを取り囲む無数の妖怪?

それとも………変わってしまった妹紅の様相?

はたまたそれら全てに?

何にせよ慧音は謎の恐怖に支配され腰が抜けてしまったのだ,対照的に妹紅はと言えばそんな慧音を見向きもせずに高笑いを浮かべながら殺戮を繰り返す

 

「あァ楽しィ!!こンだけの数を殺るなんていつ以来だ!?雑魚を殺ンのは趣味じゃねェがこンな大量に殺して良いなンてたまらなく楽し過ぎンぞおい!!」

 

ある妖怪は両眼を妹紅の両腕に貫かれ身体を内側から爆発させられた

 

「おいおい…敵前逃亡なンて湿気た真似してンじゃねェぞ三下ァ!!てめェの命なんてもう無くなったも同然なンだからせいぜい私を楽しませろッ!!」

 

またある妖怪は両手足を妹紅の紅翼に焼き払われ,あえなく達磨にされたまま火をかけられ長時間苦しみながら最期を迎えた

 

そして残りの妖怪が数体となった時,妹紅の不意を付いた妖怪が私に襲いかかってきた.無論腰が抜けたままの私に為す術などある訳がない

 

「っ……あぁ…!」

 

助けて妹紅!……何故そのような身勝手な事が言えるのだろうか?

私の身勝手な行動で妹紅を巻き込み

私の未熟さが原因で無用な殺戮を妹紅に行わせ

…私の心が弱いあまり私を守ってくれている妹紅に恐怖すら感じたこの私に.

どう助かる権利があると言うのか?どう解釈すれば都合良く妹紅に助けを求められると言うのか?

 

(……私の弱さが招いたこの殺し合い,妹紅の足枷のまま終わってやるものか!!せめて一撃!せめて一撃でもお見舞してやる…!!)

 

せめて…ただそれだけを心の中で連呼を繰り返し自分の膝を殴りつける

 

「くそぅ…!!すまない妹紅…!悪かった…!!」

 

やっとの思いで立ち上がった私は届く訳もない懺悔を口走りながら拳を握り締める

この一撃であの妖怪を倒せるだろうか?いや仮に倒せなかったとしても…ただただ怯えたままでこの場をやり過ごす事だけはしたくない,それが私なりの…半人半獣の私の…

 

「正義なんだからなッ!!」

 

振りかざした慧音の拳,迫る妖怪の牙.負ければ慧音は一瞬で肉塊に変わるだろう

 

だが…その直後に響いたのは慧音の痛みによる叫びでも妖怪に炸裂した右ストレートの生々しい音でもなく

 

「……何度言えば分かるンだお前はァ?馬鹿なんですかァ?…慧音はこォいう暗部の戦いには首を突っ込まず心配もしなくて良い.その前に自分の心配をしてろってなァ……グフッ…」

 

「……も,こ…?お前…何をして…?何で私を庇って…!?」

 

慧音の右ストレートを片手で受け止め自身の左手を妖怪に食いちぎらせた妹紅の小さな声,それだけであった

妹紅の左手だけでは飽き足らず更に肩まで食いちぎりそれを飲み干して満足した妖怪は1度距離をとる

 

生まれて初めて見る無惨な光景…嗚呼これが私の弱さなのか…情けない…結局…私は妹紅の足枷でしか…

 

首筋に微かに感じた鈍痛,それを感じた時には既に意識が暗闇へと沈んでいく最中だった.そんな気を失う直前の私の瞳に映ったのは食いちぎられたはずの妹紅の肩から先が徐々に再生していくというありえない光景と,それを私に見られた妹紅の…何とも言えない悲壮感に溢れた顔付きだった




何とか投稿間隔2週間は…セーフでしょうか?
勿論アウトですね分かります申し訳ありませんでした
本当なら昨日で完成していたはずですが中々どうも...眠気は恐ろしいですのことよ
さて,この『プロローグ〜それは物語が始まる前の物語〜』ですが残り3話を予定しております.
そして年内も残す所約一週間...一週間で続きを書き上げるのは若干厳しいような気もしますしかと言って私が年末年始にせっせと執筆するような性格だとは思えませんし...さてどうしましょうか?

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