本当なら数日前にはこの話を投稿しておきたかったんですよ、今後の話の都合もありますし
あと、みなさんはお酒は二十歳になってからにしてくださいね?多分未成年の方が多量にアルコールを摂取すると割と笑えないことになりますから
蓬莱山輝夜SIDE
上条当麻と垣根帝督が弾幕ごっこやその他諸々の訓練を始めてから7日目の夕方が訪れようとしていた。いよいよ、明日からは永遠亭を出て幻想郷中に売って歩かねばならない。そうなると必然的に今日はクールダウンの日となる、はずだった
「情けないわねぇ、大の男がちょっとトレーニングをしたくらいでバテるなんて…私でもまだまだ余裕なのよ?」
私は目の前でピクリとも動かず寝転がっている男2人に声をかける。彼らの名前はウニ条当麻と垣根帝督、私の友達にして今となっては家族のような存在ね。ちなみにウニ条には私の教え子でもあるわ、弾幕ごっこの…だけど
「…蓬莱山…人間にとって一日8時間も弾幕をひたすら避け続けるのはちょっととは言わないんだよ…。あとな…」
「あと?何かしら?私と妹紅の指導方法に問題は無かったでしょう?」
「あるよ!ありますよ!大アリですよ!?そもそも俺は妹紅に弾幕ごっこを教わるんじゃ無かったか!?それがどうなったら蓬莱山と妹紅の弾幕を同時に回避するなんてものに変わるんだよ!?今日なんて上条さんはもう身体が打たれ強くなっただけだからな!?」
本当に細かい男ね、ウニ条は…。1人が2人に増えたって弾幕の回避スペースが減るだけじゃ無い、第一指導担当の妹紅だって乗り気だったから問題無いと思うけど
「はいはい、それは御愁傷さまね~かわいそー」
「あのなぁ!?今日という今日は…あっ……腰の骨が…!!」
バタンという音を立ててウニ条は再び床に崩れ落ちた、白目を向きながら泡を吹いているから数時間は目を覚まさないわね。でもこれで翌朝になると何だかんだ言いながら復活してくるのだから驚きだわ、効果を弱めた蓬莱の薬でも飲んだのかしら
話し相手が気絶した為私はもう一人の友達に声をかけた
「垣根~、生きているなら起きて返事をしなさい。死んでいるなら生き返って返事をしなさい」
「ははっ…俺は最強の演算能力を手に入れたんだ…ははっ…俺は最強の演算能力を手に入れたんだ…」
あ。これは危ないわね。何が危ないのかまでは分からないけどかなり危険だわ、とりあえず垣根を正気にさせないと
「新難題『金閣寺の一枚天井』!!」
私のスペルの一枚の名前を少し声を大きくして呟く、すると何故かウニ条と垣根の2人に変化が起きた
「まずはそのふざけた幻想を!!」
「だが俺にその常識は!!」
「ぶち殺すっ!!!」
「通用しねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
もはや上条当麻と垣根帝督の中で危機回避本能として根付いたそれは彼らの身に如実に危機を知らせていた。その中でも2人の輝夜に対するスペルの恐怖心は異常である。
そして、幻想殺し(上条当麻)と未元物質(垣根帝督)は自らの命を守るべく起き上がって蓬莱山輝夜に殴りかかる
(とにかく垣根が正気に戻って良かったわ、ウニ条まで目を覚ましたのは誤算だったけど)
蓬莱山輝夜は目を覚ました友人たちを大人しくさせる為、手に握っていたカードを消し殴りかかってきた2人の襟首を掴む
「新難題『名前が思い浮かばなかったからとりあえず投げてみる』!!」
「そげぶっ!?」
「ごふっ!?」
輝夜のスペルからも分かる通り、見た目とは裏腹に蓬莱人というのは恐ろしい腕力を持っている。天井一枚を持ち上げて敵に投げつける輝夜からすれば2人の襟首を掴んで背後に投げつけるなど簡単なことだ。
その結果として不幸な2人は壁に叩きつけられて更なる青痣を作る羽目になるのであった
「姫様、今何か大きな物音がって……何で当麻と垣根がおかしな方向に首を曲げて転がっているんですか!?」
「あぁ、イナバ。これにはふかーい事情があるのよ。適当に治療してあげなさい、それと今日の晩御飯は何?」
「まったく2人揃って何をしてるのよ…明日から忙しくなるから今日は安静にって言ったのに…。あぁ、それと今日の夕食でしたら明日からの成功を祈って肉料理ですよ!もうすぐ調理に取りかかる所です」
「お肉…!良いわね、久し振りに食べたいと思っていたのよ。じゃあお酒も用意しないと…!」
「ちょ、ちょっと待ってください姫様!!当麻と垣根はまだ子供ですし、私だって明日から忙しいんですよ!?」
「大丈夫大丈夫、永琳に頼めば二日酔い対策の薬くらい処方してくれるわ。じゃあ頑張ってね~」
背後でイナバの「そんな~……不幸よ…」と呟く声が聞こえたような気もするけどきっと気のせいね。だってお酒が呑めるのに不幸な訳が無いでしょう?
そう言えばその前にするべき事がある、心の中で呟いて私は台所へと向かった
(きっとイナバなら他にも小物を何か作っているはず、少しくらいならつまみ食いしても許されるわよね…!)
同じ料理でもつまみ食いという背徳感の中で食べるとまた違った美味しさがある。それが永遠を生きるお姫様のポリシーでもあった
「さてさて……って、妹紅…あなたも来ていたのね。遅くなったけどウニ条の指導、お疲れ様」
「輝夜こそお疲れ、箱入り娘ならぬ箱入りのお姫様が弾幕ごっこを教えたんだ。疲れただろ?もっとも一番クタクタなのは私と輝夜の両方のスペルを一気に受けた当麻なんだろうけどさ」
今となっては永遠亭の顔馴染みであり、私と同じ蓬莱人である藤原妹紅が台所に立って包丁でネギを切っていた
「あと、輝夜。つまみ食いなら諦めなよ、鈴仙が作ってたのは葉物の和え物だからお前の好みじゃないと思うぞ」
「…まだ何も言ってないじゃない」
「お前が台所に来る理由なんてそれくらいだろ?それとも私を手伝ってくれるのか?」
嫌よ、そう断ろうとしたら全てを言い終わる前に「こっちからお前の手伝いなんて願い下げだよ。それこそ蓬莱人じゃないとあの世を拝む羽目になる」と言われてしまった。どうやらこれは久し振りにどちらが上なのかをはっきりさせる必要があるんじゃないかいしら?
「妹紅、今のは温厚な私でもちょっといらっと来たわ。表に出て食前の弾幕ごっこよ!」
「もうすぐ永琳が往診から帰ってくるから大人しくしておいた方が良いんじゃないか?また暴れて怒られるのも嫌だろう?」
…そう言われると何も出来ないじゃない…。私は怒りと手に握った蓬莱の玉の枝をしまった
「それよりお前から見て当麻と垣根は成長したように見えるか?指導者の顔ぶれは中々豪華だったが一週間は短過ぎるだろう?」
妹紅は切り終えたネギを味噌汁の中に投入し終えてから私に質問してきた。
「ん~?まぁ成長はしたんじゃない?少なくともウニ条は一日目みたいに右手に頼り切った回避方法はもうしなくなったし、身のこなしも上手くなったわ。垣根は…私の担当じゃないから何とも言えないけど永琳が指導したんだからそっちも問題はないはずだけど」
それは妹紅も見ていたでしょう?私はそう返したけど妹紅は「一応お前の意見も聞いておきたかったんだ」とやけに慎重なご様子。
そもそもウニ条のあの能力は弾幕ごっこの前提を崩しかねない、それが私の…もっと言えば永琳や鈴仙、妹紅の意見でもあるのよね。そもそも弾幕ごっこの基本ルールは
「回避スペースのある弾幕を放ち、そのスペースに上手に移動しながら自分も弾幕を放ち相手に被弾させること。尚且つその弾幕は美しくなくてはいけない」
というもの。ウニ条の場合、最後の美しい弾幕は仕方ないとして前者の回避スぺ―スの下りは大きく崩壊する。理由は簡単、右手で弾幕に触れるだけで元から存在した回避スペースに加えて更に回避スペースが作れてしまうから。勿論それだけで100%勝てると言われればそれはNOだけど…それでも弾幕ごっこの常識を殺すには十分過ぎる。
かく言う私もそれで少し……ほんの少し須臾よりも小さい単位で苦戦させられたのよね。だってウニ条、無駄に反射神経が良い上に回避されてから右手を使われたら当たる弾幕も当たらないもの
「とにかく後は実戦よ、永遠亭を出ればもっと手加減無しでスペルを使う連中もいるからその辺りはウニ条も学ぶんじゃない?垣根にしても同じよ」
「そうだな、いざとなったら私も助言くらいはしてやるさ。垣根は…後で永琳にさりげなく聞いておくか」
そんな会話を交わしている間に味噌汁の良い匂いが漂い始めた。妹紅もそろそろ肉の方に取りかかるかなと言いながら既に何か粉のような物をまぶし始めている
さぁ、もう少しで楽しい宴会の始まりね!
元・月のお姫様は今日の夕食をいつの間にか宴会に変更して鼻唄を歌いながら台所を後にした
鈴仙・優曇華院・イナバSIDE
姫様に投げられた当麻と垣根の治療を終えてから、私は台所にいた妹紅と一緒に夕食を作り終えた。いつも以上に人数が増えたこともあり労働量が増えて大変だったのよね…。でも姫様が「宴会よ!」なんて言わなかったら…多分私はここまで疲れていなかったわ…
それでも、明日からの商売繁盛を祈って宴会をするのは良い事だ、鈴仙はそう自身に言い聞かせて皆が集まっている食事場に腰を下ろした
「イナバも座ったわね?それじゃあウニ条ともこたん、それに垣根とイナバの明日からの生存を願って!」
「ふふっ、頑張るのよウドンゲ!頑張れば賠償金返済もすぐよ!」
「頑張ってね、上条、垣根、鈴仙!おみやげを期待しているウサ!」
明日からゴールの見えない薬売りの毎日が始まると言うにも関わらず、無関係の輝夜・永琳・てゐはお祝い気分で乾杯の為のコップを掲げていた
…皆私達を応援してくれているのよね?そう信じたい、いやきっとそうに違いない!そもそも薬を売った位で永遠亭を修繕するほどのお金を稼げるのかなんて分からないけど!今は飲んで飲みまくるしかないわ!
不安になればお酒の力に頼りたくなる…それは人と妖怪に共通した数少ない共通点であった
「ちょ、ちょっと待てよおい!俺と当麻は未成年だろ?本当に飲んで良いのかよ?」
「そうだぞ、蓬莱山!診療所で未成年に酒を飲ませたってのはよろしく無いんじゃないか?」
(ここでまず当麻と垣根がまともなツッコミを入れたわね、ここ一週間は2人とも非常識的な訓練漬けの毎日を送っていたから頭のネジが外れていないか心配だったけど…)
何を隠そう垣根に至ってはあの八意永琳の指導を一週間も受けたのだ、表面上は鈴仙も平静を装っていたが永琳に「ウドンゲ、あなたも鍛えてあげるわ」なんて言われたらどうしようかと内心ビクついていたものである
(当麻だって訓練を始めてから生傷と火傷が絶えなくなったし…きっと似たような厳しい指導を受けたのね)
自身も加害者もとい指導者の一人であったことも忘れ、鈴仙は1人ここ数日の訓練を思い出して感傷に浸っていた。少なくともあれは人がこなすものではない
「ねぇ、イ…あなたも…」
「なぁ、うど…げ…!おい…!」
「はぁ…思えば大変だったなぁ…。三日目なんていきなり垣根からあのメルヘンな翼が生えてきて焦ったのよね…」
「うどんげ?意識飛んでるぞ、大丈夫か…?上条さんの声は聞こえるか~?」
(何でだろう、何故か姫様や皆の声が聞こえる…)
だが、この時鈴仙は大事な事を忘れていた。今は宴会、そんな場所で無警戒に感傷に浸る事がどれだけ危険かと言う事を…
「あぁ~…これ完全に別次元に意識が飛んでるね。そんな時は私にお任せウサ!!」
「え、てゐ…あんた何持ってるの…って、ちょ!?」
「戻ってこい、鈴仙!お前の居場所はここにあーる!!」
自らの小柄な慎重に似合った軽快な動きで一升瓶を担いだてゐはその一升瓶を…鈴仙の口に蓋を開けて突っ込んだのである
「ん~っ!!!????モゴモゴモゴ!!無理、一升瓶の一気は絶対に無理!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ~!!!」
「大丈夫、骨は拾うから安心して一気飲み一気飲み!!」
「えっと…確か上条さんと垣根はうどんげに俺達も場の雰囲気に合わせて少量でもお酒を飲むべきか聞いたんだよな…?」
「うん、私の記憶が正しいのならそうだぞ…あっ、このお味噌汁もうちょっと薄味の方が良かったかな」
「とりあえず当麻にしても妹紅にしてもうどんげを助けようとか言う気は起こらねぇのか?うどんげのやつ、顔色が薬決め込んだヤバいやつみたいになってるぞ」
「そういう垣根は助けに行かないの?それにあれを飲み干されると私達が飲む分がかなり減るわよ」
「結局は自分の分の心配かよ…まぁ、既に八割がた消えてるから俺が出張っても時既に遅しってやつだろ?あと当麻、その唐揚げは俺のものだ。勝手に取るんじゃねぇ!!」
「だが、俺にその常識は通用しねぇ…だっけか垣根の決め台詞?かっこいいよな」
「だろ?何となく頭に思い浮かんだからな…あと褒めても俺の唐揚げは渡さん!!」
ここは永遠亭、今日も今日とてここから活気と笑い声と怒声と何かが割れる音が消える事はないのだった
上条当麻SIDE
時刻は既に夜中の9時を上回り、夕食と称した宴会が始まってから早くも二時間以上が経過している。無論ながら宴会はまだお開きになる気配はない。そんな中上条当麻は他の友人達が食べ残した野菜をぱくついていた
「勿体ないよな、全く…ここに来る前の上条さんは野菜の芯までありがたく食していましたよっと」
「兎の私が言うのも可笑しな話だけど、野菜の芯って人間が食べるには堅過ぎると思うよ?そこまで食べないとお腹がもたないほど上条は大食いじゃないでしょ?」
「良いか、てゐ…1つ教えておいてやるよ…。自分が食わなくても食料は減るし、食料があっても自分は食べにくい箇所を食べるしかないこともあるんだぞ」
「…一体以前はどんな生活をしていたのさ…」
「聞くな…多分言っても誰も信じてくれないからな」
そう、ある日突然ベランダに大食いシスターが引っかかっていてそこから同棲が始まったなんて事を信じる物は人妖を通じてそうはいない
「それよりも、だ…あそこで顔を真っ赤にしてる2人を止めなくて良いのか?」
「今あの中に突っ込んだら最低2回は死ぬよ。私と違って当麻は1つしか命が無いんだから大事にしなよ」
今現在、永遠亭の食事場では蓬莱山輝夜と鈴仙・優曇華院・イナバの2人が頬を真っ赤にして酒を飲みながら弾幕ごっこについて語っていた
(しっかしよく飲むよな、蓬莱山にしてもそうだけど…うどんげなんててゐに一気飲みさせられてからノリノリだし…。そう言えば鈴仙はあぁ見えても結構な歳を重ねているんだったよな)
その時である、上条当麻の顔面に向けて銃弾に似た紅い弾幕が飛んできたのは。
上条は右手を使わず、横に飛び退いてから弾幕が飛んできた方向に顔を向ける
「うぉ!?危ないだろうどんげ!?いきなり弾幕を飛ばすとか正気か!?」
「うっさいわねとーま…あんた今失礼なこと考えたでしょー!」
「げっ…そ、そんな訳無いだろ!酔って感覚がおかしくなってるんじゃないか?」
「うっさい!大体私はねぇ!!月では結構優秀な軍人だったんだから~!!」
「あら、イナバ!また武勇伝を聞かせてくれるの?それじゃあいつもの言ったげて!!」
…ダメだ…蓬莱山に至っては酔いが回り過ぎて口調もおかしいし、うどんげは泣き上戸になって自慢話を始めてしまった。てかさりげなく上条さんの心を読むのは止めて欲しいんだけどな…
「まずはね~姫様~!私にはきょーきの瞳があるんですよ~!」
「武勇伝武勇伝!武勇デンデンデデンLet`s Go!!」
「それに私は…とっくにししょーの強さなんて超えちゃってるんですから~!!ざんねーん!!!」
「そう、それは酔いに任せた悪ノリの強さの話かしら?」
部屋に冷たい、それでいて無関係な俺までも凍りつかせるような声が響いた。とりあえずうどんげ、蓬莱山…御愁傷様だな。それこそ骨は拾うからな
「はぁ~!?違うに決まってるじゃない!実戦の……話……」
「前もって言っておくけど輝夜、私はお祝い程度にお酒を飲む事は許しても必要以上に羽目を外す事を許した覚えも無いし今逃げて良いとも言っていないわ」
「ギクッ!?わ、私は別に逃げてなんていないわよ…!!」
その声の主は…言うまでもなく八意永琳さんだ。最後に見たのは…確かお酒が足りなくなりそうだからと、垣根を連れて倉庫からお酒を取りに部屋を出た時だから15分程前のはず。確かに15分でこうも部屋が荒れていれば誰でも激怒するだろう
「し、しひょう?私はべすにしひょうのことを弱いひゃんて…!!」
「まずは呂律を元に戻してから弁明するのね、とにかく…あなた達の酔いを醒ましてあげるわ。ついてきなさい♪」
「いやぁぁぁぁ!!助けてもこたん!!」
「やだ、散々もこたんもこたん言った挙句私の分の唐揚げまで食べた天罰だ。どうせ不死なんだから大丈夫だって」
「と、当麻ぁ!!さっきは悪かったから!!助けてぇぇ!!」
「…そうしてやりたいのは山々だが、生憎と上条さんは幻想しか殺せないんですのことよ。それに優秀な軍人さんなら大丈夫だ」
永琳に輝夜と鈴仙が引きずられた数分後に甲高い悲鳴が竹林に木霊したがその事を知っているのはごくごく一部の人妖だけである
「って、そう言えば垣根はどうした?確か永琳さんと出て行ったんじゃなかったか?」
「そう言えばそうだな…どうする、様子を見に行くか?」
まさかとは思うが垣根も何かやらかして永琳さんにお仕置きされたのか…?でも悲鳴は聞こえ無かったよな…
「様子見は良いからこれを持ってくれよ、つーか輝夜とうどんげのやつ何をやらかしたんだ?さっきすれ違ったが永琳のやつマジモードだぞあれ」
そう言って、垣根は2本の一升瓶を抱えながら襖を足を使って開けて入って来た。俺は慌ててそのうちの1本を受け取る
「悪い悪い、まぁあの2人が何をやったかは部屋を見て察してくれ。っと…意外に重いな」
「酔いに任せて何かやらかしたんですね分かります、ったく…いよいよ明日からだってのに元気なやつだぜ。安静にって言ったのはうどんげじゃねぇか」
「仕方ないさ、多分不安なことでもあって酒を身体が欲してたんだろ。まぁそれでどうなっても自己責任ってね」
俺は受け取った1本を妹紅に手渡して、蓋を開けて貰う。妹紅は待ってました!とばかりに笑みを浮かべてから自分のコップに酒を注ぐ
「それで当麻と垣根はどうするんだ?私は飲む事を強制しないけど飲むのなら止めはしないぞ。量は…まぁ未成年って言っても寺子屋に通うお子様じゃないんだからちょっと多く飲んでも大丈夫でしょ」
「そう言われるとな…どうする、垣根?」
「まっ、毎日飲む物でも無いしな。俺はコップに一杯だけ貰うぜ、ただ先に明日からの予定を決めたいんだが…それからでも良いか?」
「上条さんは構わないぞ、ちなみに酒の量は垣根と一緒にするかな」
「私も異論無しだ」
そう言えば出発はもう明日だと言うのにまったくそんな話をしていなかった。ここ最近はひたすら弾幕ごっこの訓練をしては寝るの繰り返しだったからな
垣根は机の中央に置かれていた漬物を一口齧ってからじゃあ、と切り出した
「もし妹紅や当麻にこれと言った予定が無いんならまずは紅魔館にいかねぇか?これはうどんげと永琳にはもう相談してあるから後はお前達次第なんだ」
「…紅魔館?何だよ、それ?」
「まぁ狙いとしては悪くないけど…何でよりにもよって初っ端から悪魔の住む館なんだ?確かに幻想郷の中じゃ金持ちの部類だろうけど」
「あ、悪魔!?幻想郷には悪魔もいるのかよ…」
「安心しろ、当麻。紅魔館の主は吸血鬼だそうだぜ。もっとも悪魔もいるらしいがな」
結局いるのかよ!?しかも吸血鬼まで…こんな時に姫神がいてくれれば…ってそれはダメだよな。仮にも客を殺すなんて真似をしたら上条さんの上半身と下半身がおさらばして上条/当麻になってしまう
「もっと言うならそれと同じ位性質の悪い人間もいるんだけどね。で、紅魔館を選んだ理由は?何かあるんだろう?」
「あぁ、俺が本気で能力を使った時に何故かメルヘンチックな翼が現れるのは知ってるだろ?」
「あぁ、訓練三日目に現れたアレか。でもそれが何か関係あるのか?」
「永琳曰く、あの翼の正体までは分からねぇが魔術の類で人間の身体に天使を降ろす術式があるらしい。それで、その紅魔館の大図書館には大量の魔術に関する本があるんだとよ、もし俺が無意識の内に魔術を発動させているってなら少しでも俺の能力について何か分かれば良いなってとこだ」
垣根は魔術や天使なんてオカルトは未だに半信半疑なんだがな、と付け加えて2切れ目の漬物を口に銜えた
確かに自分の能力の事を知れば垣根も過去の事を思い出すかもしれないな、ショック療法…って言うのか?
(でも垣根は魔術師だったのか…?それにしては何か雰囲気がステイルや神裂とは違うんだよな…)
「おーい、当麻?どうかしたのか?」
「え、あ、悪い…ただ垣根が魔術を使えるのなら相当な実力だなーって思ったんだよ。うろ覚えだけど天使って簡単に呼び出せるもんじゃないって知り合いが言っていたのを思い出してな」
「どうやらそうらしいな、ってか当麻は本当にどんな人生を歩んでんだよ。これも永琳からの受け売りだがそもそもあの翼が魔術から来ているのかも疑問なんだよな、俺が能力を使ってる時も永琳は俺から魔力なんて微塵も感じなかったそうだぜ」
「…あのさ、結構大事な話だってことは分かるんだけど…そろそろ飲まないか?目の前にあるコップに入った酒を我慢するって言うのは蓬莱人の私にもちょっと辛いんだ…」
ついつい垣根と話しこんで妹紅の事を忘れていたが、妹紅は既にコップを握り乾杯の構えを取っている。それだけ酒が飲みたかったのか…
「悪い悪い…それで結論としては紅魔館に向かうってことで構わねぇか?調度その図書館の主も身体が弱くてここの薬に頼ってるらしいから売上も期待できるぜ」
「それを先に言ってくれよ、出来ればまずは人に薬を売りたかったけど…事情があるんなら上条さんは構わないぞ」
「紅魔館ねぇ…気は進まないけど今は背に腹は代えられないし、反対してまたお酒をお預けにされるのもたまらないから私も賛成だ」
「絶対後者が主な理由だろ妹紅…まぁ良い、俺の事情で行き先を決めちまって悪いが乗りかかった船だ。よろしく頼むぜ?」
そう言ってまずは垣根が妹紅に酒を注いでもらい、コップを掲げた
続いて上条さんも人生初の飲酒に挑戦する、小萌先生にバレたらお説教じゃ済まないぞコレ
「これで上条さんも立派な不良の仲間入りか…でも一杯くらいなら良いよな?」
「そうだぞ、私の友達の教師が聞けば激怒するけど子供の内から経験を積むのも勉強さ。ん、当麻もコップは持ったね。それじゃあ!」
「薬の完売と俺と当麻は学園都市に帰る事を目指して!!」
「「「かんぱーい!!!」」」
笑顔とお酒が交差する時、物語(宴会)は始まる!!!
はい、何とかこれでとある幻想郷の幻想殺し第一章の「とある永遠亭での不幸物語~起~」は完結です。ここまで長かった…!なんて言うのはまだまだ先なんですがそれでも中々長い第一章でしたね。初めは思い付きで始めた執筆で、つまらなければ投稿を打ち切る予定でしたがこれが思いのほか楽しいんですよ!それも全ては読んで下さった皆様のおかげです、非常に短文ではありますがこれを持ってお礼の言葉とさせていただきます
そして次回からは第二章である「とある紅魔館での不幸物語~承~」を書いていきたいと思います。内容としては紅魔メンバーとのお話がメインで、前々から予告していた東方キャラオンリーの番外編と回想変を少し入れたいな―と思っております、長々となりましたが第二章も引き続きよろしくお願い致します