とある幻想郷の幻想殺し   作:愛鈴@けねもこ推し

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どうも、最近東方茨歌仙を購入したけねもこ推しでございます。やはり主人公が華仙ちゃんなだけにけーね先生やもこたんの描写はゼロに等しいです、ちょっと寂しかったですはい
タイトルの通り今回はていとくんの弾幕ごっこ教室となります。そして今回の後半はあの人の視点で話が進みますので新鮮味はあるかと思います

ゆっくり読んでいってね!!


パーフェクト弾幕ごっこ教室 垣根帝督ver

垣根帝督SIDE

 

 

 

 

 (やべぇ、これはマジで吐きそう…!)

 

当麻は現在進行形で月のお姫様に弾幕ごっこを強要されているし、永琳は既にどこかに消えた。てゐも姿が見えない。そんな中で俺…すなわち垣根帝督は友達の妖怪兎から受けた鳩尾への踵落としのダメージにより悶絶している最中であった

 

「つかよぉ…!俺って怪我人じゃなかったか!?それも割とマジで重症な!そんな病み上がりの患者に踵落としってここはどうなってんだよチクショウ!」

 

痛みを堪えて何とか起き上がるがそんな質問に答えてくれるような常識人は永遠亭にはいないんだろうな、そもそも純粋な人間なんて俺と当麻だけなんだが

 

最も「常識的な返答」ではなく「非常識な答え」を返してくれるやつならいたみたいだな

背後から何かを投げつけられる気配を感じた、まぁ俺に物を投げつけてくるやつなんてあいつくらいだろ

 

俺が右手を突きだすと、かなり重量感のあるカバンがドスッという音とともにぶつかって床に落ちた

 

「よぉ、うどんげ。朝から皿洗いをサボったくらいで結構酷い事をしてくれるじゃねぇか?おまけにこりゃなんだよ」

 

「サボったくらい、じゃないわよ!少しは当麻を見習いなさいよ、まったく…あと、それは弾幕ごっこの練習用教材だから大事に使ってね」

 

俺に朝から踵落としを食らわせ、練習用教材と言う名の何かを投げつけて来たうどんげは悪びれもせずそう呟いた。別に良いんだけどな、慣れたから…でも中身は何だ?いつから俺が弾幕ごっこの練習をするって言ったんだ?あと、さっきも言ったが俺は病み上がりの怪我人じゃ無かったか?

 

「あのなぁ…別に変に気遣えとか敬えなんて言う気は無いぜ?でも俺も一応怪我人なんだからまずはリハビリとかからだな…」

 

「……治ってるわよ、全部。記憶障害以外はね」

 

「…は?おいおい、ちょっと待てようどんげ。確か永琳の話じゃ俺はリハビリ込みで一週間は絶対安静じゃなかったか?それが何でもう治ってるんだよ」

 

「私だって分からないわよ、でも怪我が完治しているのも事実なの。師匠も驚いていたから本当なんじゃない?あんな師匠の驚いた顔なんて久し振りに見たもの」

 

言われてみれば確かに身体が昨日より断然軽いような…。あと、鳩尾以外は痛みもまったく感じねぇ…って、待ておい

 

「まぁそれも結構大事な話だってことは分かった。だがな…いつ俺の怪我が治ってることに気がついたんだ?昨日からは診察なんて受けてないぜ?」

 

「そりゃそうよ、変に傷を隠されたり暴れられると面倒だから師匠と私で垣根が寝ついてから麻酔薬を吸わせて検査したもの」

 

「…マジで?俺なんかもう人間不信になりそう…寝てる間に勝手に検査とか人権もクソもねぇだろ」

 

「別に人体実験を受けた訳じゃないんだから大丈夫よ、とにかく垣根の脅威な治癒能力は師匠が今調べているから置いておくとして…これでリハビリの段階を抜いて弾幕ごっこの練習に入る理由は理解できた?」

 

…この時俺は「いや、何で練習をするんだよ」とか「さっきの踵落としが効いたから嫌だ」とは言わなかった。理由は言うまでもなく身を守る為だ、うどんげの瞳が妙に紅い時は俺は素直に従うと心に決めました

 

「わーったよ、それじゃあ俺は何をすれば良いんだ?回避か?筋トレか?それともあそこで口論を交している輝夜姫と当麻の口論を止めれば良いのか?」

 

「残念ながら回避以外はハズレね、姫様は一度興味を持つと飽きるか満足するまで諦めないもの。筋トレは意味がないわけでもないけど短期で仕上げるには無理があるわ、だから当面は回避と」

 

「『攻撃方法の確立及び正確な弾幕ごっこのルールの把握、基本はこんなところね』ってとこか?」

 

「人の台詞を取らないでよ…まぁ良いわ、実際合ってるから。ちなみにそのカバンの中には垣根の攻撃用のアイテムが入っているわ、私のお下がりだけど構わないでしょ?」

 

うどんげのお下がりで攻撃用のアイテムと言えば…多分あれなんだろうな。出来れば予想が外れていてくれと願いを込めつつ俺はカバンのファスナーをゆっくりと開いた

 

「拳銃と出刃包丁…なわけねぇよなこれは。確か拳銃の方はトカレフ…だったか?ナイフの方は初めて見るな」

 

中から出てきたのはトカレフと呼ばれる安全装置が最初から付いていない拳銃一丁と分厚い肉でも切り裂けそうなナイフ、ナイフの刃に取りつけるカバーに拳銃のメンテナンス用の小道具と弾丸は…非殺傷用のゴム弾か?あとは…名前は分からないな

 

「見た目が物騒な割には人命に配慮した装備一式だな、でもこんなに貰って良いのかよ?しかもトカレフなんてうどんげが初任給で買ったって大事にしてたやつだろ?」

 

「そうよ、でも弾幕ごっこが普及した幻想郷で拳銃なんてあんまり使わないのから。それにどうしても必要なら指から撃てば良いじゃない」

 

「それもそうだけどよ…本当に良いのか?素人に拳銃を持たせるにしてもうどんげの愛銃を貰い受けることにしたってそうだが…。俺に投資し過ぎだぜ?」

 

「良いのよ、それで…あとこれは『投資』じゃなくて『協力』!私達はもう患者と医者じゃなくて友達同士なんでしょ?友達なら私の愛銃も信じて託す事が出来るし、素人でも私が教えてあげるから…ね?まだ不安?」

 

友達、か…どいつもこいつも…何で必要も無い薬売りに行く羽目になったのかちゃんと考えろよ…。そんな発端になったやつを友達にしちまうんだから危なっかしいったらありゃしねぇ…

 

「…良いもんだな、友達ってのは。なぁうどんげ、お前はともかく当麻や輝夜に妹紅、てゐや永琳は俺の事を友達や仲間だって思ってくれてるのか?」

 

「当たり前じゃない、私もてゐも姫様も師匠も当麻も妹紅も皆友達なんだから!理由なんて要らない…少なくとも私はそんな風に考えているわ」

 

俺はこんな風に思ってくれる友達がいるのに孤独感なんて感じてやがったのか?…我ながら笑えて来るぜ、自意識過剰にも程があるってもんだ

 

「じゃあさ、改めて友達ってことを確認できた所でうどんげ…俺に弾幕ごっこを教えてくれねぇか?」

 

「うん…友達の頼みなら喜んで♪」

 

俺は拳銃やナイフ等を全て丁寧にカバンの中にしまい込んだ。せっかく友達がくれた装備一式だからな、万が一にも壊れる事がないようにしないといけねぇ。

 

「ありがとな、うどんげ」

 

「へ?拳銃のこと?垣根が素直にお礼を言うなんて珍しいわね」

 

「それもある、でもそれ以上にうどんげや当麻、永遠亭の皆には借りが出来ちまったからな…それの礼だ」

 

俺はそれだけを伝えると中庭へと向かって歩き出した。背後でうどんげが頭上に???のマークを浮かべているんだろうな。

 

(…そう、この借りはいつかうどんげや当麻がピンチになった時に俺が守って返す。いや、それ以前にピンチにすら陥らせねぇ…今の俺に出来るのはこれくらいだけどよ…。それでも本当に今、感謝もしているし嬉しいんだぜ?)

 

置いて行くなと制止をかける鈴仙の声を背中で受け止めながら、垣根帝督は楽しそうな笑顔を誰にも見せず浮かべていたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八意永琳SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 「関係者以外立ち入り禁止」、そんな紙が貼られたドアを開けるとその奥の部屋には大量の薬品、資料、研究機材などが置かれている。そんな部屋の主…月の頭脳とも謳われた八意永琳は部屋に置かれていた椅子に腰かけながら資料と睨めっこを5分以上続けていた

 

「これが未元物質(ダ―クマタ―)…やはり垣根君の身体から大量に検出されたわね。まさか妖怪並みの治癒能力があるとは考えもしなかったけど」

 

目の前に置かれている資料を改めて手に取り、書かれている内容を見直す。そこには通常人間の体内に存在する物質の他に『???』と表記されていた物質が混じっていた。これは未だに知られていない未知の物質ということになる、即ちどこかから発生したその物質が垣根帝督の身体に異常なまでの治癒能力を与えたということだ

 

(彼があんなボロボロな姿でここに来る前に紫から資料は見せて貰っていたけどそれでも実物を見ると驚かざるを得ないわね、でも今はその事は全て置いておきましょう。大事なのはこれからのことよ)

 

実は八意永琳は既に垣根帝督とその能力の事をある程度は知っているのだ、それには様々な人物の思惑が絡んでいるのだが今はそれを語るには時期尚早だろう

 

分からない事が多過ぎる、それが今の八意永琳の率直な心境だった。まず未元物質とは何なのか?定義としては垣根帝督が能力によって生み出すこの世には存在しない素粒子、なのだが分かっているのは所詮それだけだ。それが分かっても物質の詳しい構成などが分からないと研究も出来ない、また未元物質自体にも謎が多いがそれ以上に能力を発動させた時の垣根帝督自体が異常なのである

 

(彼は自分だけの現実(パーソナルリアリティ)という現実を捻じ曲げる誰にでも存在する物に複雑な理論値などを入力してより具体的に現実を捻じ曲げている、つまり科学の力で超能力を引き起こしている。でもあれは…彼が能力を本気で行使した時に発生するあの天使のような翼は完全に魔術によるもののはず、でもそれなら何故魔術と能力の同時使用の副作用が起こらないのかしら?と、なるとやはりあの翼は能力によるもの…?…ダメね、悩んでばかりいても埒があかないわ)

 

ここで悶々と悩むのにも飽きてきた所だ、少し前に硝煙の臭いもし始めたのだからそろそろウドンゲと垣根君の訓練が始まったのだろう。

 

「さてさて、弟子がどうやって人に指導をするのか見学しようかしらね」

 

そう呟いて、私は部屋のカギをかけ屋外へと出る

すると案の定、庭で垣根君とウドンゲはそれぞれ拳銃を片手に相手を睨みあっている最中でこんな時に邪魔をするのは無粋だと私の中の自制心が2人に声をかけるのを躊躇わせた

 

「なぁうどんげ…非殺傷用のゴム弾でもかなり痛くねぇか?」

 

「当たり前でしょ?急所に当たっても死なないだけで銃弾なんだから当たると痛いに決まってるじゃない」

 

「お説御尤もだな、じゃあ次はうどんげに命中させるから痛みで泣くなよ?」

 

「そういうことは拳銃の扱い方に慣れて、反動を受け流せるようになってから言いなさい。暴発しても知らないわよ?」

 

「その時は永琳に助け船を出してもらうぜ」

 

それが合図であったかのように2人はほぼ同時に銃口を向けあった

 

(う~ん…ただ見ているだけって言うのも暇なものね、2人が集中しているから仕方ないのだけど。今はこの訓練を見守って後で2人の改善点でも伝えてあげようかしら)

 

そうと決まればやる事は1つ、2人の動きを注意深く観察すること。おまけで救急箱くらいは用意しておくべきかもしれないけど、そもそもウドンゲは妖怪兎だから人間よりかは治癒は早いし垣根君に至っては言うまでも無い

 

(恐らく能力が暴走して永遠亭を半壊させた時に発生したのがあの治癒能力を高める物質ね、それであの時から一気に傷が回復した、と…。効力がいつまで続くかは分からないけれど体内に残っている以上はまだ効力はあると見るべきかしら)

 

「それにしても…随分とお熱なようね」

 

中々目の前で壮絶なバトルを展開させている2人はこちらに気付く事も戦いを終える気配すら見せない。挙句の果てに戦いは更に熱を帯びて、こちらに流れ弾が飛ぶようになってきたから性質が悪い

 

「相手が自分から半径2m以内に入った時は拳銃の使用は控えてナイフに切り替えなさい!2m以内なら被弾せずに相手を制圧することも可能だし、ナイフの方が早く動けるわ」

 

「んなことを急に言われても分からねぇよ!てか、今切り替えたらその隙に吹っ飛ばす気だろうが!!」

 

現状としてはウドンゲが圧倒的に有利と言える、元より実戦経験はウドンゲの方が圧倒的に多いのだから当然と言えば当然なのだけど。でも垣根君自身も必死にウドンゲに食い付き隙あらばゴム弾をお見舞いしようとタイミングを伺っており、このまま訓練を積めば彼はまだまだ強くなるだろう

 

そんな時だった、一度距離を取り直した垣根がウドンゲに向かって発砲したのは。問題はウドンゲがそれを回避するのではなく逆に突っ込んで銃口を右にはたいて弾道を反らしたことで、その先には無防備に2人を眺めている八意永琳がいた

 

「ちっ……って永琳!?何でここにいるんだよ!?」

 

「え、師匠!?不味い…!」

 

(あらあら、まさか流れ弾が私に飛んでくるなんてね。ゴム弾なんて被弾しても何とも無いのだけど…だからと言って被弾する必要も無いわね)

 

仮にゴム弾と言えども本物の拳銃から発砲されるのだ、特に今垣根が使用しているトカレフと呼ばれる拳銃は貫通能力が高い。貫通能力が高いと言うことはそれだけ発砲される際の速度が速いということだ、最も八意永琳に被弾させたいのであればそれだけの条件ではまったく足りないのだが

 

「パン!」

 

そんな渇いた音が中庭に響いた後に永琳はいつの間にか握っていた拳を開いて掴んでいたゴム弾を地面に落とす

 

「…一応聞くけどよ、まさか銃弾を見て掴んだのか?」

 

「まさか、いくら私でもあんな至近距離から放たれた亜音速で進む9mm弾を目で追うなんて芸当は出来ない訳ではないけど眼球疲労に陥るからやらないわ。単に勘で手を突きだしたのよ」

 

「出来ない事も無いんですね…でも師匠に何も無くて良かった、被弾なんてしたら垣根の命なんてとっくに消えているわ…」

 

「まったくだぜ…考えただけでも冷や汗がとまらねぇ」

 

「それはどういう意味かしら?まるで私が独裁者のように聞こえるのだけど」

 

「「いえ、滅相もございません」」

 

どうやら連携は完璧なようね、確かめる方法が不服だったのだけど

 

「永琳、さっきのは悪かったな。不可抗力だ、それで…どうかしたのか?研究はもう良いのかよ?俺の治癒能力を調べていたんだろ」

 

(早速ストレートな質問ね…答えは簡単なのだけどそれを素直に答えると後々面倒だから適当にはぐらかして答えないと)

最もその答えは既に用意してある、そのついでに少し助言も与えるつもりだった

 

「えぇ、詳しい事までは分からないのだけど垣根君の血液中から私も見た事がない物質が含まれていたわ。その物質が垣根君の傷を癒した考えて間違い無いわね」

 

「へぇ…凄いじゃない、垣根!じゃあ今からどれだけ怪我をしても問題は無いんですか?」

 

「さぁ…少なくともその物質が体内に存在している以上は傷の治りは異常に速いでしょうね。彼が痛みに耐える事が出来ればの話だけど」

 

「その怪我をする前提の話は止めろよ、俺だって出来れば無傷で弾幕ごっこに勝ちたいんだ。あとそんな物質を作った記憶なんてないぞ」

 

(さて、正念場はこれからね…下手に彼の脳を刺激して記憶を悪い意味で呼び起さなければ良いのだけど)

 

かと言って分かっている事を必要以上に分かりません知りませんで通すというのは八意永琳が好むやり方ではなかった

 

「ここからはあくまで私の仮説なのだけど…良いかしら?」

 

「永琳の仮説なんて実際真実みたいなもんだろ、仮に間違ったとしても俺は気にしねぇよ。聞かせてくれ」

 

「……師匠、もしかしてその物質が発生した原因は」

 

「恐らく…垣根君が暴走して永遠亭を破壊した時に発生したものよ。何故垣根君が暴走したのかまでは分からないけど考えられる要因はそれしか思い浮かばないわ」

 

「だろうな、話を聞く限り寝ている間に完成してました、みたいな簡単なもんじゃないんだろうし。てか俺の身体って便利に出来てるのな」

 

…あら?これは私の予想を大幅に上回る軽い反応ね。もっと悩んだり暗くなったりするのかと思ったのだけど

 

「で、でも垣根?あの時あんたは嫌な記憶を思い出しちゃったんじゃないの?その時の事を思い出して辛いなら無理しなくても良いのよ?」

 

「いや、無理もしてないし悩んでもねぇよ。確かに暴走してる間に胸糞悪い奴を見たのは事実だがそいつはぶっ飛ばしたし、俺自身何でそいつが目障りなのかすらも分からん。大方学園都市って場所でそいつに虐められていたんじゃないのか?

ともかく…俺にとって永遠亭は命を救って貰った病院から、命と同じ位大切な人達がいる場所に変わったんだ。そんな場所で2度も3度も暴れるほど俺はガキじゃないんだよ、そういう訳で俺はあの翼の事を聞かれても分かる範囲なら普通に答えるし能力の話とも向き合うぜ」

 

どうやら私は必要以上に彼の事を過小評価していたようね。今の彼は自分の中の闇と向き合う準備が徐々に完成し始めている、それならば私が出来ることは…背中を押してあげるくらいだ

 

「…そう、じゃあ話を続けるわね。私としては垣根君の能力を弾幕ごっこに用いない手は無いと思うの、恐らく君の能力は未知の物質を生み出し操作する程度の能力だからもし完璧に使いこなせるようになれば幻想郷の住人たちとも良い勝負が出来るかもしれないわ」

 

「未知の物質を生み出し操作する程度の能力か…初めて聞く能力ね、でも何であんな天使の翼が現れるんでしょうか?もしかして垣根の趣味?」

 

「待て待て、俺は能力の話に向き合うとは言ったがさすがに2人同時に相手するのは疲れる。とにかく能力の概要が分かっただけでも大きな前進だろ、あとあの翼は俺の趣味じゃねぇ!うどんげだって能力を使ったら自然と瞳が紅くなるだろうが!あれもうどんげの痛い趣味なんじゃないのか?」  

 

「なっ…!誰が痛いですって!?表に出なさい、メルヘン垣根!」

 

「上等だ、きっちり白黒付けてやるよ厨二うどんげ!!」

 

前言撤回ね、背中を押し過ぎるのもよろしくないわ

2人を落ち着かせるために私は間に割って入った

 

「落ち着きなさい、2人とも。メルヘンも厨二も似たようなものじゃない…どちらもどんぐりの背比べよ」

 

「…永琳って時々精神も攻撃してくるから怖いよな。割と今のは辛かったわ」

 

「し、師匠…そんな風に思っていたんですね…」

 

「傷付けた事は謝るわ、でもまだ話は終わっていないのだから聞きなさい。それで能力を使った時の天使の翼に関しては残念だけど私の専門外よ、でも…紅魔館の大図書館になら何か参考文献があるかもしれないから薬を売りに歩くついでに立ち寄りなさい」

 

「こーまかん?何だそりゃ…悪魔でもいるのかよ」

 

「師匠、本気ですか?あそこの主がそんな簡単に図書館に入れてくれるとは思いませんが…。ちなみに垣根、紅魔館には悪魔もいるけどそれ以上に厄介なのがいるわ」

 

「え何それ怖い」

 

 

(確かにあの吸血鬼がすんなりと通してくれるとも思わないけど…それでも垣根君の能力で何か分かる事があるとすればあそこの本くらいでしょうし、それに大図書館の主なら天使に関する術式にも詳しいはず)

 

とにかくここで悩むよりかは行動を起こした方がプラスにはなるはず、色々な意味でもね

 

「それと肝心の能力行使に関してだけど、未知の物質をいきなり作れと言われても無理だと思うのよ。だから頭の中でどんなものでも良いから物質を想像してみなさい」

 

「お、おう…どんな物でも良いのか?例えば…このゴム弾を硬化させる物質みたいな?」

 

そう呟くと垣根は拳銃からゴム弾を取り出し手のひらに乗せた

 

「まずはイメージからで構わないわ、ただしなるべく具体的にイメージするの。イメージを脳内に焼き付けたら次はその物質がどんな物で構成されているのか具体的に思い描いて、ゴム弾を硬化させるのならまずは硬度を上げる物質ね。あとは発砲した際の火薬の熱に耐えられる物質かしら」

 

「よく分からねぇが研究されてるんだな、それじゃあ…」

 

1分、5分と経つが弾丸は何も変化を起こさない。永琳とウドンゲは垣根を無言で見守るがそれでも変化はない

 

さすがにいきなり能力を行使するのには無理がある、そう永琳が垣根に謝ろうとした時だった

 

「…完成だ、実弾の硬度を知らないから何とも言えないが少なくともゴム弾よりかは硬度は上がっているはずだぜ。確かめてくれ」

 

「…!?ウドンゲ、確認して頂戴」

 

「は、はい師匠!」

 

およそ7分28秒、それが記憶を失ったはずの垣根帝督が未元物質を行使してゴム弾を実弾並みの硬度にまで変化させるのに要した時間であった

 

「し、信じられない…!本当に硬度が上がってる…!これが垣根の能力なのね…」

「5分以上かかって生み出せたのがゴム弾の強度を上げるだけだぜ?とても実用向きとは言えないだろ…あと滅茶苦茶疲れるな、これ…。何か一気に何時間も勉強したような疲労感があるんだが…」

 

ウドンゲに確認させた所、本当に硬度が上がっていたのだから驚きね。正直ここまで早くに能力が行使出来るなんて…それだけ彼が才能に溢れていると言うこと…

 

(まさに素晴らしいの一言に尽きるわね、記憶も失い、0からのスタートで早くも能力の実用化にまで辿り着いた…これが学園都市で頂点を冠するLEVEL5第二位の垣根帝督…。こんなに才能を感じたのは依姫と豊姫に出会って以来じゃないかしら)

 

今では月のリーダーを務める2人は才能の塊のような存在だった、特に妹の依姫の能力は他の追随を一切許さない、そんな言葉が似合う能力なのだ

だが今はそのことは関係ない、依姫と豊姫はとうに私の手を離れ立派に月のリーダーを務めている。今私がサポートすべきなのは荒削りのダイアである垣根帝督だ、それ次第では今後の彼の人生にあらぬ負担を与えてしまう

 

「さて、次はもっと素早く効率的に能力を行使できるようになるための訓練に移るわ!ウドンゲの弾幕ごっこの指導も並行して行ってくれるかしら?ダラダラと時間をかけても意味は無いし1週間後にはここを出て薬を売って貰わないといけないもの」

 

「はい、師匠!お任せください、弾幕ごっこのコツとその他諸々は私が垣根に叩きこみますから師匠は垣根に能力について指導してください!」

 

「…おい」

 

「勿論よ、ふふっ…まさか私とウドンゲが協力して誰かを指導するなんて思いもしなかったわ。よろしくね?」

 

「…お~い」

 

「わ、私こそよろしくお願いします!ほら、垣根も改めて挨拶をしなさいよ」

 

「いや、待て!さっき俺は能力を使うのは滅茶苦茶疲れたって言わなかったか!?しかも今度はうどんげの相手をしながらだと!?そんな事やったら俺が死んじまうぞ!!」

 

「安心なさい、死ぬ前に私が治療するから問題ないわ」

 

「え、ちょまっ……不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!」

 

こうして見事垣根帝督にも優秀な2人の指導者がつきましたとさ、めでたしめでたし

 

 

 




さて、今回も少し長い話となってしまいました。初めての永琳視点はいかがでしたか?まぁ安定のドS永琳なんですがね。
ちなみに皆さんは弾幕ごっこを教わるならどちらが良いですか?
もこたん&輝夜の死ぬまでひたすら実戦で慣れろコース!!

ウドンゲ&永琳の死ぬまでひたすら修行しろコース!!

どっちも嫌なんですね分かります。

ちなみに予定では次回はもう修行の所は描写せずに一週間が経過して永遠亭を出発する当日になる予定です。もしかするともこたん組の方をもう少し書くかもしれませんがまだ分かりません

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