とある幻想郷の幻想殺し   作:愛鈴@けねもこ推し

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どうも、ようやく厄介な面倒事の束縛プレイから解放されたけねもこ推しでございます、どうせ束縛されるならけーねが良かったなぁ…。もしくは打ち止めでも可

そんなわけで久々の投稿になります、遅れたのは私のせいじゃないテストのせい。だから責めるなら私ではなくテストを責めるべきそうすべき

※注意※ 今回の話は過去一番の一万文字を超える話となっております、読んで頂ける方は目薬持参のうえで読破頂きますようお願い申し上げます


とある科学の欠陥砲弾(レディオクラッシュ) 〜番外編後編〜

ミサカ10046号SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 休日であるにもかかわらず、平日と通行量があまり変わらない道路をその少女……ミサカ10046号は歩いていた

 

「この通行量の多さはどうにかならないのでしょうか、とミサカ10046号は答えが分かり切った独り言を口にしてみます」

 

勿論、答えはノーだ。休日だからこそ人は出歩きたくなる、かく言うミサカ10046号もそんな中の一人なのだから。だが、それではいそうですかと納得してしまうにはいささかこの人込みは表の世界に馴染み始めてまだ日が浅いクローンの少女にはキツイ物があったのかもしれない

 

(後でコンビニアイスでも買いましょうかとミサカは……っと、MNW(ミサカネットワーク)から何か連絡が届いていますね)

 

MNW……分かりやすく言えばSNSのグループトークのようなものだ。最もこれが使用される時はあまり碌な事が起こらない、だからこそ10046号は何事かと思わず警戒してしまう

 

(かと言って、無視するわけにもいきません。まずは話の概要を聞きましょう)

 

そうしてミサカ10046号は意識を集中させる

 

「何事ですか?とミサカ10046号は人込みに揉まれている事への不満を微かに漏らしながら呼びかけに応答します」

 

「それは申し訳ありませんでした、とミサカ10032号は10046号に素直に謝罪します。ですが今はなるべく多くの妹達の力を借りたいのです」

 

「分かりました、ですがその要件とは一体?とミサカ10046号は不安と期待が入り混じった声で返事をしてみます」

 

「残念ながら的中しているのは不安だけと思われます、実は偶然にも妹達を救ったあの少年と同居しているシスター風の少女と出会ったのですが……上条当麻が失踪してしまったらしいのです。現在、近くにある風紀委員の支部に通報はしましたが手掛かりや行き先のヒントのようなものは何も見つかっていませんとミサカ10046号はなるべく簡潔に説明を完了させます」

 

………これはまた予想の右斜め上を行く最悪の事態ですね、おまけに手掛かりも何も無いとなると…

 

(あの少年のことですからまた人助けの内に厄介事に巻き込まれたのでしょうか?…それにまだ彼が失踪したと考えるには早すぎる気がしますとミサカ10046号はいつの間にか焦っていた自我に制止をかけます)

 

「ミサカ10032号に質問なのですが、彼が失踪した時間は分かりますか?他にも何か情報があればこの際些細なことでも教えて欲しいのですとミサカ10046号は情報の開示請求を行います」

 

「同居しているシスターを名乗る少女曰く、昨晩の12時にベッドに寝転ぶ姿を確認し、そして彼の失踪に気づいたのが今朝の8時半だったとの事ですのでその8時間半の間に何かが起こったとミサカ10032号は推理します。また時間が時間ですのでいくらあの少年でも寝ている間に人助けを行ったとは…」

 

確かに10032号の言う通り、時間帯だけで仮説を建てる分には事故の可能性は低いでしょう。そうなると…まさか誘拐?果たして彼を誘拐した犯人の目的は?ですが誘拐にしてはあまりに手口が大胆過ぎます、そうなってくるとますます真相が見えなくなってしまうとミサカ10046号は制止をかけていたはずの焦りが再び表れるのを感じ取ります

 

「10032号、一度状況を整理したいと思います。現在確かなことはあの少年が失踪したことです、これに間違いはありませんね?とミサカ10046号は確認を取ります」

 

「はい、その通りです。正確には彼が失踪した時間帯は昨晩の12時から今朝8時半にかけて、また現状では不慮の事故による失踪の可能性は低いとミサカ10032号は補足説明を加えます」

 

「では、念のために妹達に聞いておきましょう。彼…上条当麻を事件性の有無に関わらず妹達で探し出すことに反対案はありませんか?とミサカ10046号は今MNWに接続してこの話を聞いていた全ての妹達に確認作業を行います」

 

「無論反対案はありませんとミサカ10098号は二つ返事で承諾します」

 

「私も…」

 

「ミサカ10987号も…」

 

「ミサカ……」

 

……これは不味いですね、とミサカは自分の失敗に今更気づきます。もちろん全員の同意を得てから捜索を開始するつもりでしたが…何分1万人近くいる妹達全員の返事を全て待つのはかなり時間がかかってしまいます。ですがもはやこの賛同の嵐を止める手段をミサカ10046号は所持していません。

 

ミサカ10046号の心配したとおり、全員が返事を終えたのはその15分以上後だった。

 

「それとこれはミサカ10032号の独断に近いものがあるのですが…20001号にはこの情報については隠せる限りでは隠しておくべきだとミサカ10032号は提案します」

 

(それが妥当な判断だと思われます、正直いつまで隠し通せるかは分かりませんが…これはあくまで私達があの少年に受けた恩を返す為の捜索劇(戦い)なのですから…。そこにまだ幼い上位固体を巻き込むのは得策とは思えません)

 

「そのことに関しては、各々の妹達がそれぞれ20001号からの情報開示請求に応じないという形で対応しましょうとミサカ10046号は10032号の提案に賛同します」

 

 

だが、ミサカ10032号は大事なことをド忘れしていた。何故先ほど、話がまとまっていたはずなのに次の話に進むまでに15分という時間を要していたのか、を

 

「上位固体に対する対応に関してミサカ10056号は反対の意見など一切無く賛同します」

 

「もちろんミサカ10765号も…」

 

「ミサカ……」

 

(……誰か、誰かこのネットワーク上で発生している賛同の連呼を止めて……とミサカ10046号は…)

 

結局、再び全員の賛同を確認するまでに20分の時を要した。ミサカ10046号も含めきっと他の妹達もヘトヘトになっているであろう

 

「しばらくはMNWへの接続がトラウマになってしまいそうです、とミサカ10046号ははぁ、とため息をつきます」

 

そんなため息をつきながら再び人込みの中を歩き出すミサカ10046号、だが今日の彼女の不幸はこの程度では収まりを見せなかった

 

「ってぇなぁ。オイお嬢ちゃんよぉ!人にぶつかっておいてお詫びのひとつも無しってのは話が良すぎるんじゃないの?」

 

「そぉそぉ、ここはお詫びに俺達と遊んでいってくれないかなぁ?」

 

今現在、目の前にいるどう丁寧に見積もってもスキルアウトとしか思えない少年達にどうやらミサカ10046号は真正面からぶつかってしまったらしいのです。やはり頭の中で30分以上延々と話し込んでいると集中力がもちません。だとしても…神様、この仕打ちはあんまりではないでしょうか?とミサカ10046号は脳内に何気なく浮かんだ台詞を口に出した

 

「……不幸です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

削板軍覇SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏を終えたはずの季節なのに夏のようにうだるような暑さが学園都市を襲っていた。十人に今の気分を質問すればほとんどの人間は「暑い」と答えるだろう。ただ皆が皆そう感じているわけではない。勿論世の中には例外だっている、それはこの少年……削板軍覇(そぎいたぐんは)のことでもある

 

夏日といっても差し支えないような日であるにも関わらずその少年の服装は、日の丸が描かれたTシャツに短ランという見ているだけで暑い、という印象を抱かせた

 

「ふぅ…こんなに暑いのに皆倒れもせず頑張ってるんだから根性あるな!」

 

周囲から見れば軍覇自身が一番根性がある服装なのだが、残念ながらこの少年悲しいかなおつむが弱い。だからこそ周囲の視線に気づくことも無ければ気にも留めない、ある意味では幸せな生き方だろう

 

(でもこういう暑い時は皆どこかイライラしてるからな、気を付けておかないとイライラに任せて誰かに八つ当たりする根性無しがいるかもしれねぇ!!)

 

そんなことを軍覇が考えていた時だった、何と数人のスキルアウトが常盤台中学の制服を着た女子生徒に数名で絡んでいるではないか。これを見て見ぬフリを出来ないのがこの軍覇という少年の最大の長所であり…短所だった

 

「おいお前達!暑いからって女の子1人に男が数人で囲むなんて根性無しがすることだぞ!今すぐ離れろ!!」

 

「あぁ?止めとけ止めとけ、これはそっちの女が俺達にぶつかってきたのが悪いんだぜ?悪いことをしたら謝ってお詫びをするのが筋ってもんだよな?」

 

確かにこいつらの言うことにも正しい、わざとじゃなくてもぶつかったらごめんなさいを言うのが当たり前だ。でもそれを理由に数人で1人を囲んで良い理由にはならない

 

「なぁ、お前?ぶつかった時にこいつらにちゃんと謝ったのか?」

 

「い、いえ…謝る間もなくまくしたてられたのでタイミングを見失ってしまったとミサカ100…いえミサカは弁明を行います」

 

「それなら仕方ないな、よしお前達!ここは俺もこの女の子と一緒に謝るから許してやってくれ!!」

 

そう言うと軍覇はミサカ10046号の隣に立ち頭を下げようと腰を曲げる、だが軍覇に返って来たのは言い過ぎた事に対する謝罪でもなければ許しの言葉でも無かった。

 

「…お前、頭沸いてんのか?」

 

「グッ……!?」

 

スキルアウトが躊躇い無く放った蹴りが軍覇の鳩尾に突き刺ささり、当然ながら身体が揺れる

 

「なーにが許してやってくれだ、俺はこの女にムカついたから脱がせて犯そうって思ってんだよ。分かったらとっとと失せろ、俺はお前みたいな正義のヒーロー気取りが一番うぜぇんだよ」

 

「…っ…!大丈夫ですか!?とミサカはあなたにかけよって様子を…!」

 

「おっと、またそこのゴミ虫みたいに風紀委員が涌いてきても目障りだからな。お前ら、とっととその女捕まえていつもの場所にでも連れ込め」

 

スキルアウトのリーダー格がそう命令すると先程までニヤニヤと笑っているだけだった取り巻き達がミサカ10046号を抑えつける

 

「離してください!断るのなら…!」

 

ミサカ10046号は正当防衛の範囲内で気絶させる程度の電撃を放とうとするがそれも取り巻きの右ストレートによって遮られる

 

「おいおい、その服装なら常盤台だよなぁ?それなのにここに来てまで能力を使わないなんてもしかしてお前も俺らのこと舐めてんのか?お前ら、高位能力者はいっつもそうなんだ、俺達を見下して嘲笑いやがる!腸が煮え繰り返るったらありゃしねぇ!!」

 

明らかにそれは八つ当たり、だがそれはこの学園都市に存在する生徒の大半が一度は抱いたであろう感情だった。

勿論、ミサカ10046号がそんな生半可な理由で能力行使を控えた訳ではない。当然能力まで使用した事件にまで発展すれば風紀委員だけでは無く、警備員まで動き始めてしまう。そうなってしまえば身元も詮索される、何より妹達の姉……御坂美琴に要らぬ心配をかける。それが彼女に能力行使をギリギリまで控えさせていた

 

(このままではミサカはともかく、あの旭日旗Tシャツの少年にまで迷惑が…!)

 

「おーい、まさかさっきの蹴り一発でもう動けなく無くなったのか~?どうせならずらかる前にむかつくその顔面にも蹴りをお見舞いしてやろうと思ったんだけどな~」

 

そう余裕をかましながら下衆な笑いを浮かべているこのスキルアウトは明らかにいくつかのミスを犯していた

 

「……んだよ」

 

「あ?何だまだ死んで無かったんですかぁ!?」

 

手の空いていた取り巻きがすぐさま軍覇に向かって右ストレートを放つ。だがそんなものは、彼には、軍覇には、学園都市LEVEL5の序列第七位である削板軍覇には何の意味も成さない。

スキルアウト達が犯したミスの1つ目、それは削板軍覇をただの正義感が強いだけの馬鹿だと見下していたこと。確かに軍覇は正義感が強いが、彼の単純な強さは正義感の強さを裕に上回る

 

取り巻きが放った右ストレートを身体を軽く捻って回避した軍覇はそのまま無防備に突っ込んできた敵の脇腹に膝蹴りを入れる

それだけでその取り巻きはエビのように背を反り、うめき声を上げながら倒れ込む

 

「離れろって言ってんだよ……」

 

「…たかが1人倒したくらいで良い気になってんじゃねぇ!囲んで潰せ!!」

 

「その女の子から離れろって言ってんのが聞こえねぇのかこの根性無しがッッッ!!!」

 

そして彼らが削板軍覇と対峙した時に犯していたミスの中でもっとも犯してはいけなかったこと、それは…人としてやってはいけない行為、すなわち「根性無し」がすることであった

 

「俺は別に強い弱いで人をどうだこうだ言う気はない!俺も頭はかなり弱い方だからな!!むしろその弱さを受け入れてでも前に進もうとするやつは俺なんかよりももっと強いし、かっこいいと思う!いやかっこいい!!」

 

一斉に襲いかかるスキルアウト達をの攻撃を避け、顔面にパンチをお見舞いする。多勢に無勢であるはずの戦いであるにも関わらず軍覇には倒れるどころか立ち止まる様子すら見えない

 

「でもな!自分が強くなれないイライラを他の人にぶつけるような根性無しがするような真似は俺は大っ嫌いだ!!そんな奴は俺が直接根性を注入してやる!!」

 

いつの間にか辺りにはスキルアウトが小さなうめき声を漏らしながらその場で動かない光景が広がっていた。今現在で立っているのは、軍覇とミサカ10046号、それと最後に残ったスキルアウトのリーダーだけである。ちなみにミサカ10046号を拘束していたスキルアウトは軍覇に数秒で気絶させられ、今は白目をむきながら泡を吹いている

 

「それにお前、さっき高位能力者がどうだって言ってたな?確かにお前の言う通り、LEVELが低い学生を馬鹿にするような根性無しのやつだっているんだろうな。それは俺も分かってるし、お前は悪くない。能力だけで人の価値を…そもそも人が人の価値を勝手に決めようだなんて考え方自体が根性無しなんだ。でもな、高位能力者達だって毎日頑張ってるんだ!さっきまでお前が抑えつけてた女の子だってそうだ、常盤台はLEVEL3以上の能力者しか入学できないからな。きっとすごい努力を積んだはずだ、もしかしたら才能だけで特に努力をしなかったのかもしれない!でも俺はその女の子が努力して能力を手に入れたんだって分かるぞ」

 

「何でお前がそんな事を言い切れる?まさか知り合いでしたなんて抜かす訳じゃねぇよな?」

 

取り巻き達を全て倒され、1人となってもスキルアウトのリーダー格である少年の表情からは焦りが一切感じられない。

 

「そんなものは簡単だ、さっきその女の子が捕まった時に俺が見た表情は自分の身の安全だとか後始末が面倒だとかそんなことじゃなかった!あれは明らかに誰かを心配する時の表情だったと俺は思ったぞ。それはもしかしたら仲の良い友達かもしれないし、担任の先生かもしれないし、お父さんお母さんかもしれない!もしかしたらペットで飼ってる魚かもしれないな!とにかく何だって良い、あんな表情は簡単に出来るもんじゃない!自分がピンチだって言うのにそこまで考えられる根性がある女の子が努力をしてない訳がないだろ?」

 

「……いい加減にしてください、とミサカはあなたに苛立ちを覚えて憤慨します」

 

「ん?どうした?俺が何か怒らせるようなことを言ったか?」

 

おかしいな…俺とした事が根性がないばっかりにこの女の子を怒らせてしまった!でも何か俺が怒らせるような事を言ったのか??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミサカ10046号SIDE

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初はミサカ10046号が彼に抱いた印象はおかしな人、でした。顔見知りでもないのにいきなり絡んで来てお説教を初めて助けてくれて…こんな人をおかしな人と言わずして誰をおかしな人と言うのでしょうか?とミサカ10046号は素直な疑問を頭の中で思い浮かべます

これではまるで妹達を救ったあの少年のようではありませんか。もっとも戦っている相手は格も規模も何もかもが違うのですが…

そうこうして彼とスキルアウトとのやり取りを見ている内に芽生えた感情は、感謝でも無ければ、尊敬でも無く「苛立ち」でした

 

『きっとすごい努力を積んだはずだ』

『根性がある』

 

(それは全くをもって違います、正確には妹達のお姉さまである御坂美琴という人物が努力を重ねてLEVEL5になったから遺伝子レベルで同一のミサカ10046号にも似たような雰囲気が現れているだけなのです、ましてやミサカ10046号には根性は愚かまともな感情すら満足に芽生えてもいないのです)

ミサカ10046号を勝手にお姉さまの雰囲気と重ね合わせ、その上あのヒーローである少年を思わせるかのような言動を取る。どうにも挑発されているようにしか思えないのですとミサカ10046号は怒りに身体が支配されるような感覚に襲われます

 

「……それを何故あなたという人は、まるでミサカのことを知っているかのような口ぶりで話すのですか?とミサカ10046号は隠しきれぬ怒りをあなたに露わにしながら質問を投げかけます」

 

「10046号?ニックネームか何かなのか、それ?それなら止めておいた方が良いぞ、いくらニックネームでもそんな作りものみたいな名前は」

 

「今質問しているのはミサカです!答えなさい!!」

 

どうもこの少年相手だと調子が狂います、あまりにも調子が狂ったせいでいつもの口調とは全く違うものになってしまったではないですか

 

「所詮私は借り物の身体に借り物の心!あなたがミサカに見た努力の面影も、根性などという非科学的で馬鹿げた話も全て幻想なんです!!そんな幻想相手に本気になるなんてあなたは馬鹿なんですか!?」

 

不条理な八つ当たり、あの少年からすればはた迷惑も良い所でしょう。ですがこれが所詮人工的に作られたクローンであるミサカ10046号の本性なのだとミサカ10046号は自虐的に自分を……

 

「あぁ、俺は馬鹿だぞ?そんなにお前が怒ってるって言うのにどれだけ原因を考えても分からないんだ。今の今まで俺なりに真剣に考えてみたがどうも分からん!でもな、そんな馬鹿な俺でも分かる事があるんだ。

 

例え、借り物の身体で借り物の心でも、努力家だって雰囲気が幻想でも、根性無しだったとしても………それでもお前は『生きてる』んだ。今だって必死に何かを悩んでるし、考えてる。もしお前が幻想だって言うんなら何でそんなに悩めるんだよ?何でそんなに前に進もうと足掻けるんだよ?何でそんなに1人で抱え込もうとするんだよ?

……うん、やっぱりそうだ。お前は幻想なんかじゃない!だっていくら俺が馬鹿でも幻想を怒らせて悩むレベルじゃないからな!!」

 

「あ、あなたは何を意味不明なことを…!ま、全くもって意味が分かりませんとミサカは…!ミサカは…!」

 

目頭がいっきに熱くなっていくのはきっとこの気温と目の前にいる暑苦しい少年のせいに違いありませんとミサカは必死に目を隠します

 

「…っておい!?何で泣くんだよ!?また俺が何かやっちゃったのか!?クッソ!!俺が根性無しなばっかりに…!!」

 

(…根性無しなのはあなたではなくミサカの方ですよ、とミサカ10046号は自分の八つ当たりまがいの言動の恥ずかしさで泣いているのだと言い訳をします…)

 

「とにかく、だ…!お前へのごめんなさいは後回しにするとしてだ!おい、根性無し!後はお前一人だけどどうするんだ?相手くらいにはなるぞ?」

 

根性無し、そう呼ばれたスキルアウトはどこか楽しそうに笑っていた

 

「俺の名前は根性無しじゃねーよ、根性野郎。まぁ良い、おかげで久し振りに馬鹿みたく能力のLEVELを上げることしか頭に無かったあの頃を思い出したぜ。でもそのLEVELも3で止まっちまったんだけどな、お前風に言うならその時に俺は根性無しに成り下がっちまったんだがな。あの時の俺にお前みたいな根性があれば今頃LEVEL4くらいにはなってたかもな、でも今はそんな事はどうでもいい。警備員に逮捕される前に勝負しろよ」

 

そう告げたスキルアウトのリーダー格は槍投げのような構えを取った

 

(不味い…!その話から察するとスキルアウトの少年は恐らくLEVEL3クラスの何らかの能力を有しています!いくらあの少年でもさすがにLEVEL3の能力者には敵う訳がないとミサカはすぐさま臨戦態勢を…!)

 

すぐさまミサカ10046号は間に入ろうとしたが、それを止めたのはまさかの軍覇だった。

 

「なるほど、な…。根性無し…じゃなかった、でも名前が分からん。お前の名前を教えろよ」

 

「名前なんてどうでも良いだろ?まぁ…強いて言うなら瞬間氷製(モーメントフリーズ)…それが俺の能力の名前だ、分かりやすい能力だからって舐めんなよ?」

 

能力名から推理すると恐らく何か氷に関わる能力なのでしょうか?それにあの構えから放たれるとすれば…

 

「特別サービスだ、前もって予告しておいてやる。俺は今から能力で大気中の水分を凍らせて作った槍を放つ、俺自身が自力で投げるだけに威力はたかが知れてる。でも…仮にそんなもんが刺さりゃいくらお前でも無事じゃ済まないだろ?」

 

「それはどうか分からないぞ?根性で乗り切れるかもしれないからな、でもせっかくの男が本気を出して勝負を挑んだんだ。それに応えないってのは…根性無しだよな!!」

 

対して根性少年が取った行動は……何の変哲もないファイティングポーズ、その余りの意外さにミサカ10046号は驚きを隠しきれません。まさか氷の槍に素手で立ち向かう気なのでしょうか?

 

「ははっ…!!面白いな、おい!さすがスキルアウト5人以上に素手で立ち向かうだけのことはあるぜ、死ぬなよ?」

 

「当たり前だ!根性さえあれば槍だろうと剣だろうと身体に刺さっても平気だからな!

 

ここはちょっと根性出す、まぁそんな訳だから……本気で潰すぞ」

 

一瞬にして彼の雰囲気が変わった…という表現が今の状況を表すには最適かもしれません。今更な話ですが彼は能力者なのでしょうか?今まで徒手空拳だけで敵を制圧したせいで能力らしき現象は確認できませんでしたが……

 

「潰す宣言の前に…こいつをどうするか考えな!!」

 

そんなスキルアウトのリーダー格の声が響いた時には既に1.5mはあろうかという大きな槍が形成されて軍覇に向かって放たれていた。その槍は真っすぐ、軍覇の心臓めがけて飛んで行く。

 

「すげぇな、これは根性入ってるじゃねぇか!だったら俺も…!

 

必殺、ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームもっかいハイパーーー!」

 

(な、長い!?そこまで長い技名にもかかわらず彼は上半身を捻って…ってあれは単なる右ストレートの構えとミサカ10046号はもはや状況理解が追いつかなくなった事に嘆きつつ彼の奇想天外ぶりに驚いてみま…)

 

軍覇が謎の呪文めいた必殺技名を唱えた次の瞬間に起こった事は…何か衝撃波のような物が軍覇の右手から飛び出た、としか言い様が無かった

 

「すごいパーンチ!!!!」

 

その衝撃波はまず第一に、スキルアウトのリーダー格が放った氷の槍とぶつかった瞬間にその槍を跡形も残らず粉砕し、それだけでは収まらず地面のアスファルトを抉りながら最後はその先にあった壁に大きな風穴を開けてようやくその威力を失った

 

「まさ…か…この威力は…超…能力者…?とミサカは腰を抜かして地面に座り込みます…」

 

その驚きようは周囲にいた野次馬も同じようで中には失神する者までいる始末で何より驚いたのは仕掛けた側の少年で空いた口が塞がらない、の状態だった

 

「……これが学園都市230万人の頂点……超能力者(LEVEL5)…。お前…そういうことは先に言えよ!?一歩間違えば俺死んでたぞ!?」

 

「大丈夫だ!ちゃんと手加減はしたし、根性があれば死なない!何より死にそうになったら俺が助けてやる!!」

 

「…そういう問題かよこの野郎……。クッソ、こんな惨敗昔でも無かったぞ…なぁ、お前はLEVEL5第何位なんだよ?心残りが無いように教えてくれ」

 

それはミサカ10046号も気になるところです、今のところ把握している超能力者は第一位と第三位、それと以前にお姉さまが話していた第五位だけですが…少なくともいずれとも違うと言うことだけははっきりしています

 

「俺か?あんまりそういう序列とかLEVELとかは気にしてないんだけどな、聞かれたからには答えるぜ!

俺はLEVEL5第七位の削板軍覇だ!能力名は念動砲弾(アタッククラッシュ)で内容は…俺もよく分からん!とにかく根性によって発動する能力だ!」

 

「……こんな化物じみた威力でLEVEL5の最下位かよ!?…ちっくしょー!!こんなの敵うわけねぇよ!!……でも次は勝つ、だから俺が少年院を出たらまた相手しろよ?削板!」

 

何故…あの少年は負けたにも関わらずあんな清々しい顔で笑っていられるのでしょう?よっぽど負けたのが愉快だったのでしょうか?やはりまだまだ感情について勉強しなければとミサカ10046号は当面の目標を定めてみます

 

「あぁ、当たり前だ!だからその時はお前の能力の名前じゃ無くて本名を教えろ!その時に今度はお互い万全な状態で勝負しようぜ!」

 

「それと…そっちの常盤台の女には謝らねぇとな…悪いな、根性無し丸出しの事しちまってよ…本当にすまなかった」

 

「…頭を上げてください、元はと言えばミサカの前方不注意が原因なのですから。ですから私からも謝罪します」

 

スキルアウト…ではなく、彼が頭を下げたのでミサカも素直に謝罪する事にしました。顔は見えませんがきっと根性少年は今頃「おう、それで良いんだ!」みたいな顔で頷いているのでしょう

 

「まぁ俺も捕まる前に謝れたのは良かったんだけどよ、実は今非常にマズイ状況なんだよな。後ろを見てみろ」

 

「…?何かいるのか?」

 

「…ミサカはもう振り向きません、過去を振り返らない女になるとミサカ10046号は決意表明を露わにします」

 

そう、ミサカ達の背後には…今にもこちらに突っかかってきそうな……

 

「そこのお前達!!これだけ派手に暴れてただで済むとは思わないじゃんよ!?警備員の支部まで三人とも連行じゃんよ!!」

 

何とアサルトライフル装備の警備員のお兄さんお姉さんがいらっしゃるのです、それも数人ではなく20人以上も

 

「これは…弱ったな、仕方ない大人しく逮捕されるか」

 

「馬鹿野郎、俺やお前はともかくそっちの常盤台の女は完璧被害者だろうが。さすがにこれだけの規模となると被害者ってだけでも学歴に影響が出るんじゃねぇの?」

 

「さ、さすがに逮捕は笑えませんとミサカは恐怖を露わにします…」

 

元々、ミサカが能力の使用を避けたのも大事にしたくはなかったからなのですが……もはやその言い訳が通じるわけもありません…

 

「……はぁ…仕方がない、削板。お前はその女を警備員から逃がせ。その後の身の振り方は自分で考えな。どうせLEVEL5なんて捕まってもすぐに釈放に決まってるからな」

 

「で、でもそういう訳にはいかないだろ!?悪い事をして逃げるのは根性無しのすることだ!」

 

「じゃあ自分の信念の為に無関係の女巻き添えにするのが根性あるやつのすることかよ?ここは素直に甘えとけ、これは滅多におがめない超能力者の能力をおがめた礼だと思って逃げろ。あのじゃんじゃんうるさい警備員のババアには昔から世話になってるからどうにかしてやr……」

 

「今、ババアって言われたような気がしたけど気のせいじゃんよ?でももしかして幻聴じゃなかったりするじゃん?」

 

…何と20m以上離れた距離からアサルトライフルで少年の額にゴム弾を命中させたのですか…。これは捕まれば碌なことがなさそうです

 

「で、でも…!やっぱり俺には…!」

 

「良いから行け、散々迷ってそれでも自分のやったことに自身が持てないってんなら今度こそ自首しろ。何もその場の正義感だけで身を滅ぼす事はねぇよ」

 

「…行きましょう、根性少年。これ以上彼の犠牲を無駄にするわけには行きません」

 

「あれ?もしかして俺死んだ事になってる?」

 

「…あぁくそ!!どっちが根性無しのすることなのか俺には分からん!!!!だからこの場は…悪い!!」

 

その言葉を聞いた次の瞬間には…既にミサカ10046号は根性少年に抱きかかえられ数百m離れた場所にあったのです

 

 

そして、まずは騒動の原因であるリーダーも含めたスキルアウト達が逮捕された

 

「…一瞬で数百m先に逃げるとか反則だろ、俺庇う必要あったのか?」

 

「逃げ足速すぎるじゃんよ、まぁ逃がさず追いかけるけど…。それにしても今回はやけにド派手が過ぎるじゃん?こればっかりは少年院行きも免れないじゃんよ?」

 

「…確かになぁ…でもここまで道路とか破壊したのは俺じゃないぞ。あと、あの2人を捕まえたいんなら止めとけ。とても警備員の装備じゃ傷一つつけられっこないぞ。せめて一国の軍隊でも連れてくるんだな」

 

「……はぁ…お前の言う通りじゃんよ。今さっき警備員のお偉方かた直々に彼らからは手を退けってお達しが来たじゃんよ」

 

早いなおい、さすがはLEVEL5ともなると優遇度合いもVIPだよな…

 

「安心するじゃん、浮いた分の体力はお前達の更生に使うじゃんよ!」

 

「はいはい、今回ばかりは俺もとっとと更生してLEVELをあげないといけないからな。あんたの指示に大人しく従ってやるよ」

 

この数年後……彼は立派に更生しLEVEL4にまで上り詰めるのだがそれはまた別のお話

 

 

そして商店は逃げ切ったミサカ10046号と削板軍覇へと移る

 

「……わずか数分にして警備員どころか元いた場所すらも確認できないほどの距離にまで来てしまったのですが…。いったいどういう能力の使い方をすればそんなことが可能なんです?」

 

「根性入れて走れば音速の2倍の速さで走れるからな、要は根性だ」

 

根性で音速を超えられるのであればきっとオリンピックに出場する陸上短距離の選手はさぞかし根性に満ち溢れているのでしょうね

 

「しかし何でこんなことになっちまったんだ…?俺はただお前を助けようとして仲裁にはいっただけだったような…」

 

「元はと言えばミサカが人探しに夢中になっていたのがいけないのです」

 

「…?人探し?誰かいなくなったのか?」

 

…この際です、どことなくあの少年とも雰囲気や顔立ちも似ている事ですから聞いてみましょう

 

「えぇ、実は…ウニのような頭をした人助けが趣味の少年が行方不明になってしまったのです、口癖は不幸だ…という人なのですが…ご存じありませんか?とミサカはダメ元であなたに問いかけます」

 

「う~ん……似たようなやつなら前に一緒に戦ったんだけどな…。そいつって面白い右手をしてないか?」

 

…!?面白い、右手……確か彼は右手であればあの一方通行の反射すらも無効化する…!

 

「その面白い、というのは具体的にはどのような面白いなのでしょうか?例えば…右手に触れた異能の力を全て打ち消したりと…」

 

「おぉ!そうだそうだ!そいつはカミジョ―って名前だろ!?」

 

「…ビンゴです!そう、ミサカ達はその上条当麻を探しているのです!ではその居場所を知りませんかとミサカはあなたに興奮気味に尋ねます!!」

 

「いや、居場所はしらない!!」

 

まぁ…そんなことだろうとは思いましたよ…。

 

「そ、そうですか…ではミサカはそんな役立たずなあなたに舌打ちをしてからここを去ります」

 

「ま、まぁ待て!いきなり役立たず呼ばわりはないだろう?その代わりと言っちゃなんだが俺もカミジョ―探しを手伝おう!」

 

「そ、それはいけません!この件にはどんな闇が潜んでいるのかも分からないのですよとあなたの無鉄砲さにミサカ10046号は驚きながら制止をかけます!」

 

「だから、だ」

 

(…?こ、この少年は一体何を言い出すのでしょう…?危険だと分かっていてそれでも突っ込むなんてこれではまさにあの少年の鏡映しだとミサカは…)

 

「そんな何が待ち構えているかも分からないような場所にカミジョ―を放置しておけないし、何よりお前を1人で行かせようとも俺は思わないからな。それに今ここでお前を1人にしたら俺達を逃がしてくれたあいつの恩を汚すことになる。だから俺は何としてでもお前と一緒にカミジョ―を探す!」

 

…この少年もきっと何をどう言われても自分の信念を曲げないのでしょう、見ていて非常に危なっかしいとミサカ10046号は素直に心情を吐露します

 

「…どうぞご自由に…。ミサカ1人では心細いのも事実ですし、あなたもあの少年のことを知っているのなら問題は無いでしょう」

 

「おう!何かあったら俺に任せろ!お前も守り抜いてカミジョ―も助け出す!!」

 

 

想定外のメンバー追加に戸惑うミサカ10046号ではあったが、不思議と彼が隣にいるのも悪くはない。そう思えるようになった事に疑問を感じなかったのをミサカ10046号は気付いていないのであった




はい、お疲れ様です。正直私も疲れました。本当ならこの話は5000文字くらいで終わらせる予定だったんですがね。どうも軍覇の話を書いていると根性が移っちゃうんですよね。
あと、軍覇をチートと感じた方の為に補足説明なんですが全て公式設定です。
意味不明な念力の弾を飛ばしたり、音速の2倍で移動したり、今回は描写していませんがアイスピックが胸に刺さっても軍覇は「痛いな」程度にしか感じません。何を隠そう彼は公式公認のチーターですから(ドヤッ

ちなみに私が今回10046号を軍覇の相棒に起用した理由は単純です

DAマジで舐めんな、セロリにまとめて全員消されろ。妹達を人質に取るとかあのアクセロリータがマジギレするぞ

すみません、つい私怨が……。要するにとある科学の一方通行第二巻で10046号さんが奮闘したんですよ!私はもう感動しちゃいました、普通に可愛かいっていうのもありますが

ちなみに次回からは再び幻想郷でのメルヘンや不幸や優曇華やもこたんの話に戻ります

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