それと七月までは不定期更新になると思います、私女性にはモテない割に無駄な面倒事とは相思相愛でして…。ただ超電磁砲11巻発売の週に絶対番外編は投稿します。これは前々から決めていましたので。勿論フラグじゃないですよ?いや、本当に(以下略
垣根帝督SIDE
上条当麻がおおまかにではあるものの自身が幻想入りした理由を見つけた時、垣根帝督は何とも言い難い感情を抱いていた
目の前には豪華とは言えないがそれでも暖かくて食欲をそそるような食事があり、そしてそれを囲む大切な人達
てゐに焼き鳥の串を奪われ涙目になりながらキレる当麻
うっすらと汗を浮かべながら輝夜との口論と焼き鳥を焼く作業を同時並行でこなしている妹紅
そんな様子を楽しそうに見守っている永琳
(……ここに俺の居場所なんてあるのか?確かにこの光景は当麻がこの世界へ来ることがなけりゃ実現しなかっただろうな。だが…この幸せな光景は俺がいなくても変わらず起こったんじゃねぇか…?)
この感情は当麻が現れる前から、いや目を覚ましてある程度動けるようになってから自然と感じていたものだったんだ。それが何故かは分からねぇ、だが理屈ではなく本能が俺に告げている
「俺の居るべき場所はここには存在しない…」
(俺が存在するだけでこの幸せな空間は異物の混じった空間、すなわち当麻やうどんげが知る空間では無くなる…)
以前から気付いてはいた、だからこそずっと隠し続けていた感情。自分すらも騙すことになっても…それでもここに、永遠亭で暮らすのは幸せだったし楽しかった。自分に嘘をついてまでもここにいたい、永遠亭はそんな事を躊躇い無く思わせてくれる場所であり、人達が溢れていた
(でも…そんな大切な場所であり、大切な人達がいる場所だからこそ不純物(おれ)が存在しちゃいけねぇんだ…)
俺は確かに1度永遠亭の住人全てを、そして上条当麻も守り切ると決めた。その意思に関しては覆すつもりはない。だが、仮に…仮に俺さえいなければそもそも誰も守る必要などは無く俺がいることで誰かが傷付いてしまうのだとすれば……
「おーい、垣根!聞いてるのか?カワとモモ、どっちが良いんだ?」
どうやら俺が考え込んでいる内に妹紅が俺の分の焼き鳥を確保していてくれたらしい。それなら早く食べておかないとな、特に輝夜の野郎は見た目に反して1度の食事でこれでもかとばかりに食べまくる。うどんげ曰く、そんな輝夜でも幻想郷では小食の部類らしいが
とにかく今は何かを胃袋に納めない事にはプラスにもマイナスにも考えられねぇ。とりあえず俺は気分でモモ肉を貰おうとして身を乗り出した
「ん、サンキューな妹紅。俺はモモを貰うぜ……って、ここの床はこんなにも柔らかかったか?」
俺は妹紅から串を受け取ろうと身を乗り出した際に手を床についたはずだった。だが…何故かその床は柔らかい。これも永琳の仕業か?もしくはてゐのいたずらって可能性も…
「…垣根……いくらこんな皆の気分が良い時でもそれは不味いと思うぞ?」
は?妹紅、何のことだよ?
「……上条さんは知りませんよーっと」
待て、当麻。目を反らすな
「若いって良いわね、羨ましいわ」
永琳は興味がなさそうな表情だが…
「うーん、垣根。顔面に回し蹴りくらいで済めばマシなんじゃない?」
てゐさん、さらっと怖い単語が飛び出ている上に日本語がめちゃくちゃですよ?
「別に良いんじゃない?垣根は『モモ』をくれって言ったんだからあながち間違いではないと思うわ。もっとも…『イナバの鈴仙の太もも』とは思わなかったけど」
……え?鈴仙の太もも?ていうことはあれか?今皆が湿気てるのも、鈴仙の声がまったく聞こえないのも、妙に俺の真横から黒い殺気が感じられるのも…要は俺が鈴仙の太ももを思いっきり触っているからなのでしょうか?
「垣根、アンタがそこまで最低な三下だとは思わなかったわ…」
そしてご多分に漏れず俺の横にいらっしゃるのは、瞳を異常なまでに紅く染めたうどんげこと鈴仙・優曇華院・イナバだった。
「ま、待て鈴仙!!たかが太ももに触れたくらいで三下って扱いはひどくねぇか!?誰も触りたくて触った訳じゃないんだぜ!?不可抗力だ!!」
このままでは、何とか永琳の実験台になる運命から逃れられた俺の身体がうどんげのせいで再び『死』へと向かうハメになる。とにかく俺は本当に邪な気持ちが無かった事を説明するためにこれでもかと力説した、まさに完璧な意見だろ?
「垣根…!!あんたって人は…!!」
あ、ヤバイ。何がヤバいかと言うと既に鈴仙が右足に力を込めている事だ。ちなみに俺は座ったままの状態…
「「「「「垣根帝督、アウトー」」」」」
何故かタイミングが完璧にあった当麻、妹紅、てゐ、永琳、輝夜の声を聞いたのが俺の最期の記憶だった
「変態は外で頭でも冷やしてきなさい!!!」
とうとう俺は永遠亭の住人からも見放されたな…俺は顎を襲った鈴仙の蹴り上げの激痛に襲われながらそんなことを自嘲気味に考えていた
鈴仙・優曇華院・イナバSIDE
あの変態…!垣根ときたら本当に信じられない!!私の太ももを思いっきり触っておきながら嫌々触ってしまいました、みたいな言い訳をして!悪かったわね、嫌々じゃないと触れないような色気の無い身体で!!
「まぁそう怒るなよ鈴仙。それにしても結構吹っ飛んだな、垣根のやつ…俺がここに来る前の世界にも脚力がすごい女の子がいたけど良い勝負だと思うぜ」
「うるさい!当麻は分からないと思うけど女はそういうのが気になるの!!」
私は久々に怒りに任せて蹴りを垣根の顎に放った、勿論手加減はしたし死ぬような事は無いと思うけど…ちょっと心配ね…。やり過ぎたかしら…
「そんなに気になるなら見に行けば良いじゃない、行ってあげれば垣根も喜ぶんじゃない?」
「姫様まで……良いんです、あれは垣根が悪いんだから垣根から謝罪に来るのが筋なんです!」
「あらあら、太ももを触られたくらいで大激怒なんて垣根の行く末が心配ね。永琳はどう思う?」
今気付いた、多分…と言うよりかは十中八九姫様はこのネタで私をいじめるつもりだ…!それだけは避けないと…!
「私ですか?私はあまり男女のそう言った深い中についての知識はありませんから何とも言えませんね」
師匠!?何でそんな意味深な言い方をするんですか!?早く反論しないと…!
「だから私は…!」
「ただ……今のうどんげの傾向は悪くないと思うわよ。以前のうどんげなら人間に真っ向から感情を表すなんて事はなかったでしょう?要はそれだけ垣根君に心を許しているということよ。それは恐らく彼も同じね」
「……そんな事はありませんよ、私にだって心を許している人間は…」
勿論私にだって友達はいる、妖夢や咲夜なんかは人里に買い物に出かけた時によく会うから会話はするし…他には……他に人間の友達は…。あれ?私って人間の友達が少ない…!?
そんな私の心を見透かしたように師匠は続けた
「そんな人間の友達の少ないうどんげなら彼の悩みを理解してあげられるんじゃない?」
(師匠、さらっと私の心を抉る発言はやめてください!でも確かに…何となく垣根が思い悩んでいたのは分かったのよね…。楽しいはずの夕食なのにどことなく輪に馴染めていないというか…それよりは勝手に自分が孤独だと感じている感じだった…)
「鈴仙、これは垣根の分の焼き鳥なんだけど持って行ってくれないか?私はもう焼く作業にクタクタで動きたくないんだ」
そう言った妹紅の手には皿にのせられた熱々の焼き鳥が湯気をあげていた
「じゃあイナバ、ついでにこのご飯も持って行きなさい。せっかくの妹紅の焼き鳥でもホカホカのご飯が無ければ無価値になってしまうわ」
「あ?それは私の焼いた焼き鳥はご飯が無ければ無価値だと言いたいのか?」
「あら、そう言ったのよ?妹紅にはどう聞こえたのかしら?」
「…よし、ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・いだな!」
……肝心の姫様はご飯が入った容器を当麻に押し付け妹紅と一緒に外に出てしまった…
「えっと…だな、鈴仙。とりあえずこれも垣根に持って行ってやってくれ」
哀れな当麻は慣れた手つきでご飯をよそい、ご飯茶わんを私に手渡した
「あ、ありがと…何だかごめんね?」
「良いって、気にするなよ。こういうのは慣れっこだからな」
何でかな…当麻にこんなにも親近感が湧くのは…
「それと鈴仙、1つ良いか?」
「う、うん、どうしたの?」
「俺はさ、垣根の抱えている物も悩みもまったく理解してやれないからこんな事言うべきじゃ無いのかもしれないけど……多分今の垣根が求めているのは…自分とちゃんと向き合ってくれる人、ちゃんとぶつかってくれる人を今の垣根は求めているんじゃないか?まぁ上条さんの勘はあんまり当たらないけど…」
……多分私も心のどこかではその事に気付いていたんだと思う。でもそれでも私が目を反らしたのは…
「ありがと!しょうがないからふがいない相棒に私が食事と元気を届けてくるわ!!」
「おう、ついでに蹴った事もちゃんと謝るんだぞ~」
さて…垣根の為にも、私の臆病な心とケリを付ける為にも頑張ってみよう!
そして私は大体垣根が吹っ飛んだであろう中庭に向かった
「それにしてもあそこまで綺麗に決まるなんて…こんな所で依姫様の訓練の成果を発揮してもなぁ…」
月で暮らしていた頃の上司の名前を口に出しつつ私は永遠亭の中庭を見回す
すると……直したばかりの中庭の芝生に寝転んで垣根は月を眺めていた
「月、好きなの?」
私はそんな垣根の隣に腰を下ろし、焼き鳥とご飯を垣根に見せる
「……嫌いじゃねぇよ、まぁ大好きって訳でもないんだけどな」
「…私に蹴られた事、怒ってる?」
まずはこっちの問題から解決しよう…
「いや、別に気にしてないぜ?ちょっと頭を冷やしてみればどっちに非があるのかはすぐに分かったからな。さすがに配慮に欠けた発言だったぜ、悪かった」
垣根は意外にもあっさりと謝罪した、もう少し口論になると思ったけど…。でも垣根が謝ったのなら私も謝る必要があるわね
「とは言えすぐに感情的になって暴力を振るった私も悪かったわ、後で師匠に頼んで湿布を貰ってくるからちゃんと貼るのよ?」
「あぁ、分かった。そうするよ」
そしてしばらくの間、沈黙が続いた。垣根は焼き鳥に手を付け黙々と食べ続ける、私はと言うと…話が切り出せずにいた
(でもいつまでもダンマリ…じゃダメよね…。ましてやこの話は私から切り出さないと…)
「…ねぇ、垣根?私があの月から来た兎だ、って言ったら信じる?」
「あぁ、信じる」
「…聞いておいて何だけど…ちょっとは疑ったりはしないの?」
「別に疑う理由がねぇからな。うどんげは訳も無く嘘をつくやつじゃないし、例え訳アリで嘘をついてもすぐに顔に出るタイプだ」
な、何だか知らず知らずの内に分析されているみたいね…
「それでその月の兎がどうかしたのか?」
「私はね、月にいた頃の私と今の垣根がそっくりだなって思うのよ」
「…どういう意味だ?俺は鈴仙ほど有能じゃないぜ?」
「違う違う、臆病な所が似ているなぁってね…」
垣根は不思議そうな顔をしたけど…話を遮る様子は無いから続けて良いんだと思う
「私はね、月で暮らしていた頃は軍隊にいたのよ。もっとも地球のとは違って平和で銃も滅多に握る事がないような軍だったけど…。その中で私は俗に言うエリート、だったのよ。自分で言うのは恥ずかしいけど…」
「…良いじゃねぇか、無能な事をひた隠しにするやつよりは自分の有能なポイントをちゃんと主張できるやつの方が俺はかっこいいと思うぜ。最も万人にこの考え方が適用される訳じゃないからそこは気を付けろよ」
「ふふっ、そうかもしれないわ。それでね、確か射撃訓練を終えた後だったかな?周りの視線がいつもと違うのよ。おまけに何か小声で話しているし…それで気になったから1度その場を離れて盗み聞きしたの、そうしたら皆私の事を何て噂をしていたと思う?」
「……分からねぇな…」
何だ…垣根だって分かりやすいバレバレの嘘をつくじゃない…
「……その射撃の訓練は敵に見立てた板を撃ち抜く訓練だったの、それで私は敵の頭部に当たる部分を完璧に撃ち抜いていたわ。それが周りの同僚からすると多分怖かったんでしょうね、仮に訓練だとしても表情1つ変えずに敵を殺せるんだもの…。皆は私の事を『化物』って言っていたわ…」
「そんな訳ねぇだろうがっ!!!」
垣根は跳ね起きて地面を思い切り殴りつける、その様子はまるで自分自身に言い聞かせているようだった
「うどんげはただ真面目に訓練をこなしていただけだろ!それが何で化物扱いをされなきゃならねぇんだよ!!お前は普通なんだ!!」
「…ありがと…そんな風に言ってくれたのは垣根が初めてよ」
今度は私が芝生に寝転び、その後に垣根もため息を1つついてから寝転ぶ
「悪い、ついカッとなっちまったな…。でも俺は間違った事を言ったとはおもってないぜ」
「…たとえ正しくても集団の総意が優先されるのは人間も妖怪も同じなの。それにその同僚だって軽い冗談で言ったのかもしれないし…。でもそれからは悪循環だったかな…1度『化物』の烙印を押されると周りがそれを忘れたとしても自分の記憶にはいつまでも残ってしまうもの。『化物』と言う烙印から目を反らす為に必死に訓練に打ち込んだけど努力すればするほど周囲の目線が気になる、その目線からも目を反らす為に訓練して……の繰り返しよ」
「軍を辞めようとは思わなかったのか?幹部クラスならともかく、毎日訓練をしている兵をエリートってだけで縛る程厳しい訳じゃなかったんだろ?」
「それは何度か考えたの、簡単に辞職出来る訳じゃなかったけどそれでも平和だったから…」
それでも私が軍を辞められなかった理由は……
「気付けば私にはもう銃を持って戦うことしか選択肢が残ってなかった…。誰かに職業の自由を阻害されていた訳でもないのに、長年戦うことしかしてこなかった私には他の職に就くなんて想像も出来なかったわ…。結局軍は退役せずに続けたけど…それから更に荒れたわね。私自身の勝手な思い込みで独りだ、孤独なんだって決めつけて…優しく接してくれる月の民は何人もいたけど私はその好意を受け入れなかった…。そして段々と私は誰かと接することも、銃を持って戦う事も…何もかもが怖くなってしまったわ。誰かと仲良くなって化物呼ばわりされるのも怖かったし、その原因を作る『戦い』も怖かったから…」
「…その話が本当だとするんなら…当麻に負けず劣らずうどんげは不幸なやつだな」
「私を当麻と一緒にしないでよ、さすがに当麻レベルの不幸は体験してないわ」
(今でも時々思う…あの時私に「助けて」って言える勇気さえあれば…きっと月から逃げ出して仲間を裏切るなんて真似はせずに済んだんだろうなぁ…)
「それでね、私は垣根に謝っておく事があるのよ…」
「今度はどうした?空気がしんみりとした事なら謝る必要は無いぜ、俺は気にしてないからな」
「違うの、私はね…きっと垣根に優しく接していたけど結局心の中では同情して自分自身を慰めていたの。同じ悩みを抱えるのは私だけじゃ無い、ってね。垣根の集団の。輪に交われない苦しみに、垣根自身でもどんな能力なのかすらも分からない人外の力に翻弄される苦しみに…寄り添う気も無かったのに…本当に私は都合の良い兎よ」
「もう良い、何も言うな…」
違うの、これは垣根の為でもあるしそれ以上に私自身の臆病な心と決別する為のことなのよ…
「もし垣根が集団に馴染めないのなら私が間に入って仲介役になるし、例え100人の人間が垣根を化物扱いしても私は200人分の声量で垣根が人間だと叫んであげる
だって私には垣根と同じ苦しみを背負おうとしても背負えないし、かといって垣根が今彷徨っている同じ闇(げんそう)の中に飛び込む気も無いもの。
だからまずはそのふざけた闇(げんそう)を……撃ち抜いて見せる!!」
私は即座に太ももに提げているホルスターから拳銃…トカレフを抜き天に向かって発砲した。その発砲音は夜の静寂を突き破り…夜の闇を引き裂いて長時間木霊し続けた
垣根は目元に腕を置いて表情を隠していた、頬が微かに濡れているのは…きっと私の気のせいよね…
「…誰がそこまで優しくしてくれって頼んだんだよ…本当にうどんげはお節介なやつだな…。なぁ、何でうどんげはそこまで優しいんだよ…」
(そうよね…垣根がもがいているのなら、苦しんでいるのなら…同じ孤独で苦しんだ私が助けてあげれば良いじゃない…!例えお節介でも、例え助けて、が言えなくたって…)
「…簡単じゃない、私と垣根がパートナーだから、でしょ?パートナーが困っていて手を差し伸べるのに理由が必要だとは思わないもの。仮にもそのパートナーが助けて、を言えなくても…ね?」
そう、理由なんて要らない。垣根が助けを求めてくれるのなら…私はその小さな幸せを守る為にどんな大きな闇(げんそう)でも撃ち抜いてみせる
中盤までは個人的には順調だったようなそうでもなかったような…やっぱり深夜にぶっ通しで書くとこうなるのかぁ…。でも私としてはこんなフィニッシュも悪くは無いと思うので書きなおしはしません!はい!!
ちなみに今回からしばらくキャラ紹介はお休みです、紹介出来るキャラが減って来たのも事実ですしオリジナル設定の在庫がもうスッカラカンなんですのよ…。
とりあえずこれから努力はしますが七月までは不定期更新になると思います、本当に申し訳ない!