クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 紫銀の月   作:MIDNIGHT

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葬送式

――――――――――歌が聴こえる……

 

 

 

 

 

セラの耳に―――いや、むしろ頭に直接響くように聞こえる歌は『永遠語り』だった。物心つく前から記憶の彼方で歌っていた声………

 

幾度となく、数えるのも馬鹿らしいぐらいに聴いた歌は自然と覚えていた。まるで、そうさせたいとばかりに―――誰が歌っていたのか、考えたこともなかった。

 

ただ……その歌が不思議な『安らぎ』をくれた。幼い頃より感じていた虚無感を満たすように。何故、そう思ったのか自分でも分からない。

 

己の『真名』など、何の意味もない―――アルゼナルに来た時点で意味などないからだ。それがハッキリと知覚できるならともかく、自我すら曖昧な童なら、そんな過去に拘りもなければ未練もない。

 

なのに何故―――『セラ』()は満たされなかったのだろう……………『何か』が欠けていた――――とでもいうのだろうか。

 

自分に哂ってしまう―――縋る『過去』すらないというのに、何に対しての虚無なのか。それが何かも分からず、何をすれば埋められるのかも分からない。その漠然とした『不安』を埋めてくれていた。

 

聴こえる『歌』に意識を集中させ、その音源を必死に辿る。

 

まるで、暗い中を手探りで歩いているような感覚だった。やがて、今までフィルターがかかった様にハッキリと知覚できなかった光景が見えてくる―――歌を奏でる人影が視えて………背を向けて唄う女性の背中――すると、その女性はそんなセラの視線にまるで気づいたように振り返った。

 

息を呑み、眼を見開くセラだったが、振り返った女性の顔は暗い陰に覆われて見えない。微かに見える口元が小さく微笑む。

 

口が動き、何かを喋っている。だが、セラには分からない。やがて―――セラの意識は水に沈むように途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――苦しい」

 

眼を開けたセラは思わずそんなぼやきが出た。

 

視界に飛び込んできたのは、木で覆われた薄暗い天井―――そのまま視線を横へと動かすと、すぐ隣で寝息を立てるアンジュの顔があった。

 

そのアンジュはセラを『抱き枕』よろしく、しっかりと両腕でホールドしていた。感じた寝苦しさはこれか、とセラは小さく息を吐く。

 

思考が徐々に動き出し、セラはようやく現状を理解する。昨日の戦闘を終えた後、疲労を癒すために早々に休息に入り、寝入った。

 

そこまでは良かったのだが、寝る寸前でアンジュがセラの手を強く握り、どこか睨むように見やった。ただでさえ心配をかけていたのだ。アンジュとしても文句の一つも言いたいし、なによりセラが無事に傍に居ると自覚したかったのかもしれない。

 

セラも無茶をやった手前、アンジュを振り解くようなことはせず、そのまま眠りに就いた。流石に身体が疲労を憶えていた。

 

死の一歩手前でいったのだからある意味当然だが―――あの時に何があったのか、アンジュに問い詰められても、答えられず濁すしかなかった。

 

動く左手で天井を仰ぎ、セラは虚空を見据える。

 

(誰なの……『あなた』は――――)

 

夢で視た『人物』に向かって問い掛けるも答は返ってこない。セラ自身も、無意識にだがあの歌を歌っていたのは『母親』とばかり思っていたが、違った。

 

あの時に聞こえた声―――死へと堕ちようとしたセラを隔世から引き戻した。いったい誰なのだ――――自分に…いや―――セラの知らないはずの記憶の彼方で歌うのは―――いくら考えても分からずに、セラは諦めたようにため息をこぼす。

 

とはいえ、久しぶりに深く寝入ったおかげか、眼も冴えてしまった。このまま横になっていても退屈だと、セラは無造作に身体を掴んでいたアンジュの腕を掴み、静かに引き剥がす。その仕草にアンジュが不機嫌そうに寝たまま顔を顰める。

 

その様子にセラは小さく苦笑し、徐に顔を寄せてアンジュの額に己の額を軽くコツンと当てる。

 

「私は、『ここ』にいるから」

 

小さく囁くと、まるで聞こえたようにアンジュの眉間の皺が取れ、穏やかな寝顔に戻り、セラはベッドから身を起こし、ライダースーツに着替えると、その上に用意されていた上着を羽織って静かに部屋を後にした。

 

屋敷の外に出ると、まだ薄暗く静けさに包まれている。昨日の戦いがまるで夢だったかのような静寂だが、少し視線を動かせば、破壊の爪痕を見ることができる。

 

暫しその光景を見つめていたセラは、軽く悪態をつくように肩を竦めた。

 

「あまり後ろに立つの止めてくれる、心臓に悪いから」

 

思えばこれで二度目だ―――振り返らずとも背中越しに感じる気配から小さな失笑が漏れる。

 

「失礼、もう起きても大丈夫なのですか?」

 

微笑を浮かべながら歩み寄ってくるサラマンディーネが気遣うように言葉を掛けると、苦笑する。

 

「おかげ様で―――別にどこも怪我なんてしてないわよ」

 

軽口で返すも、当のサラマンディーネはどこか苦く顔を顰める。

 

「それでも、です」

 

その気遣いが意外だったのか、セラは首を傾げる。てっきり、不遜な言葉の一つでも返ってくるかと思ったが、サラマンディーネは不安そうにしている。

 

「そんな顔しなくても、心配は無用よ」

 

その言葉に少しは調子が戻ったのか、サラマンディーネの表情が微かに和らぐ。

 

「それで、お姫様はこんな時間にお目覚め? あなたこそ、休んだ方がいいんじゃない?」

 

昨日の戦いの疲労は当然だが、セラはあくまで客分――サラマンディーネはドラゴンの責任ある立場だ。いろいろ後始末もあるだろう―――それを思っての言葉だったが、不意に顔を見ると、どこか不機嫌そうに口を尖らせている。

 

首を傾げるセラに向かって、サラマンディーネはやや大股で隣に歩み寄ると、セラを不機嫌なまま睨む。

 

「その呼び方、少し不満があります」

 

「は?」

 

唐突に突きつけられた言葉にますます戸惑い、困惑するセラにサラマンディーネは口を尖らせ、言葉を続ける。

 

「『姫』ではなく、その…名前で呼んでほしいんです!」

 

拗ねるように口ごもったが、意を決したように言葉を続けた。

 

「名前………?」

 

まだ分からないとばかりに眼を白黒させるが、サラマンディーネは焦れるように呻く。

 

「で、ですから――その…『姫』という他人行儀な呼び方、ではなく……あ、あなたと『とも』になりたいんですぅ!」

 

しどろもどろになりながら、羞恥で顔を赤くするサラマンディーネの様子にセラはようやく、意味を察した。そう言えば―――セラは未だにサラマンディーネのことを『ドラゴンの姫』としか呼んでいなかった。

 

思わぬ申し出にセラも答に窮し、頬を掻く。別に意識していたわけではないし、嘲るようなつもりもなかったのだが、最初はやはり警戒心が強かったせいもあってずっと呼び続けてしまった。

 

「ダメ…ですか?」

 

そんなセラのようにサラマンディーネは今までの自信に満ちたものではなく、どこか不安そうに見る子犬ように見え、セラは居心地が悪くなる。

 

「あーはいはい、別にダメってわけじゃないし……そうね―――『サラマンディーネ』って言いにくいし、あなたのこと『サラ』って呼ぶわ。それでいい?」

 

妥協案とばかりに告げると、サラマンディーネの表情が一転してぱあっと輝く。

 

「ええ、構いません。『サラ』、ですか―――フフ、あなたと一字違いですね」

 

何がそんなに嬉しいのだろうか―――意外なほど喜ぶサラマンディーネの様子に戸惑うばかりだ。そこでようやく己の醜態に気づいたのか、わざとらしく咳払いをし、頬を軽く叩いて引き締める。今更だが―――

 

「セラこそ、お疲れではないのですか? まだ陽も出ていませんし、もう少しお休みになった方がよろしいのでは?」

 

「眼が覚めちゃってね――それに、少し考えたいこともあったから」

 

そう言いながら、セラは未だ薄暗く染まる空を見上げる―――もう日の出も近いからだろうか、星はほとんど見えないが、まだ微かに見える月を見据える。

 

遠くを見るセラの姿にサラマンディーネは顔を曇らせるが、何かを思いついたように顔を上げた。

 

「でしたら、少し付き合いませんか?」

 

唐突な申し出にセラは首を傾げる。

 

数分後――――セラはサラマンディーネに連れられ、程近くに建っている建物へと案内された。小さな離れのような建物のなか、板張りの床に家具などはほとんどなく、小さな空間が広がっている。

 

奥の壁には『一意専心』と達筆で書かれた掛け軸が下げられており、その前でセラはサラマンディーネと並んで座禅を組んでいた。

 

「いかがですか…『禅』という、古代の心を沈め、精神修行のための業だそうです。心が落ち着きませんか?」

 

「―――――そうね」

 

正直、分からん―――と、セラは思わず内心に独りごちる。だが、こちらをどこかキラキラとした期待の眼で見るサラマンディーネに水を差すのもなんなので、同意はしたが。

 

(まあ、考え事するにはいいか)

 

サラマンディーネの言うような精神修行というものは分からないが、こうして静かに気持ちを落ち着かせると自然と思考も纏まってくる。とは言え、そう簡単に『答』などでないが。

 

どれほどそうしていたか―――互いに並んで座したまま、無言が続いていたが、サラマンディーネが静かに口を開いた。

 

「訊かれないのですか―――兄のことを」

 

重い口調で不意打ち気味に告げられた言葉―――返事はしなかったが、セラは表情を変えず、平淡な口調で応えた。

 

「別に―――無理に訊こうとは思わないよ。聞いたところで、何が変わるわけでもないしね」

 

喰ったような口調で手を後頭部に回し、我関せずとばかりに肩を竦める。

 

気にならない―――といっては嘘になるが、聞いたからといって何かが変わるわけでもない。むしろ、敵となっている相手のことなど知ったところで意味などないからだ。

 

「―――いえ、聞いていただけますか?」

 

しばし逡巡していたが、やがて決然と顔を向けるサラマンディーネにセラは無言のままだ。了承とも否とも分からない態度―――だが、サラマンディーネはポツリポツリと語りだした。

 

『アウラ』がまだこの地に居た頃―――生き残り、そして汚染された地球で生きることを決意した人類はアウラが行った遺伝子操作を自らに施し、ドラゴンへと己を変貌させた。

 

だが、遺伝子を組み換えるという所業自体が未知のもの。すべてが成功したわけではない。遺伝子の変質による人体への悪影響や、強化による精神への変調など、問題は多々起きた。それでも止めるわけにはいかなかった。

 

やがて幾多の経過を経て、安定した遺伝子への組み換えが進み、男は巨大なドラゴンへと、女は小型と同時に人型へとなれるように棲み分けが行われた。それぞれの役割を果たす中で、アウラの加護の下、ドラゴンの民は浄化を進めた。

 

そこまでは以前にサラマンディーネが話したことであるし、さして想像に難くない。

 

「アウラの下で浄化が進み、やがて生存領域を少しずつ回復させ、新たな世代が少しずつ誕生しました」

 

地上を汚染したドラグニウムの浄化が進み、地上における生存領域を確保するなかで、ドラゴンの中から次世代の子達が産まれてきた。

 

サラマンディーネもその一人だ。

 

ドラゴンから生まれた次世代にもその遺伝子が引き継がれるというのが実証された。だが、それは個体による差もあった。遺伝子変更が起こした歪みもまた受け継ぐ場合があり、生まれた時にはそれに耐え切れず死産ということもあった。

 

その様をサラマンディーネは幼い頃から見てきた。その頃になるとアウラは『神祖』と讃えられ、そのアウラの遺伝子情報を持って生まれた者達は高い身体能力を備えていた。

 

サラマンディーネもその例に漏れず、妹のリーファもそうだった。それらからますますアウラを神聖化する風潮が出てきた。

 

「同じね―――マナに溺れた人間と」

 

話を無言で聞いていたセラはどこか揶揄するように漏らした。実際は呆れにも近い。いくら縋るものが必要だったとはいえ、帰結するところはそこか、と。

 

その言葉にサラマンディーネも苦々しく顔を顰める。

 

「否定はしません。ですが、そんな状況に異を唱えたのが兄でした」

 

兄であるトウハは男でありながら長く大型ドラゴンへの遺伝子改造を外されていた。それは、次期長であり、アウラを護る守護役を司るサラマンディーネとリーファを護衛するためであった。

 

アウラが人間の女性であったということもあり、ドラゴンの一族は女性の存在が強い。無論それは、男の方がドラグニウムを体内へと取り込むのに必要な肉体を元々の要素として備えているというのもあるが、男は生まれて後にドラゴンの姿へと固定される。

 

トウハは二人の守護及び指南役を担っていたため、二人が成長するまではその役目を外されていた。そして―――サラマンディーネがフレイアの一族の長に就き、アウラの守護を司る神官の一人として就任した際にトウハは役目を外され、他と同じくドラゴンへとなるはずだった。

 

だが、トウハはそれに反旗を翻した。ドラゴンになることを拒んだのではなく、アウラを絶対視する状況に対してだ。それに対し、長となったサラマンディーネは否定した。

 

それは拒絶ではなかった。ただ、各々の役目があると―――そう伝えたかった。だが、まだ未熟であったために思いは伝わらず、トウハはドラゴンの都より姿を消した。

 

「もう、兄は死んだとばかり思っていました。それが……」

 

出奔した兄をサラマンディーネは密かに捜索したが、まったく見つからず、いつしか兄は既に死んだとばかり思い込んでいた。

 

それがあのような再会をするとは思いもしなかった。

 

「で―――あなたは私にどんな言葉を期待してるの?」

 

話し終えて沈痛な表情を浮かべるサラマンディーネに対して、セラは淡々と話しかけた。

 

「あなたは悪くない? それとも元気出せ? 悪いけど、私に言えるのは甘えるなってことだけよ」

 

どこか突き放すように言い放つ。

 

何故サラマンディーネがセラにこの話をしたのかは分からない。単に理解して欲しかったのか、それとも否定して欲しかったのか、だが、少なくともセラは安易に答えることはしなかった。

 

縋らなければ維持できなかった現実には理解できなくもない。だが、同情や共感は別問題だ。

 

「あなたは後悔してるの? それとも今更、自分は間違っていたとでも言うつもり? だけど、既に起きてしまったこと、過去は変えられないわ」

 

過ちは終わってからでしか気づけない。だが、いくら悔やもうが渇望しようが、一度進んでしまった時計の針は二度と戻らないのだ。

 

「過去に悔いがあるなら、『現在』(いま)に活かしなさい。それが、『ドラゴン』(あなた)達の選んだ道なのでしょう?」

 

以前、サラマンディーネ自身がセラに告げたことだ。人間でありながら、ドラゴンとして生きるということであり、それが『生きる』という選択肢であり、自ら選んだこと―――強い想いを秘めるセラの言葉にサラマンディーネは無言で聞き入る。

 

「少なくとも、アンジュはそうしようとしているわ…あなたも、あの男の真意が訊きたいなら、あの気取った横っ面を引っ叩くぐらいやってみたら?」

 

最後は僅かに冗談を交えて不敵に笑う。それが意外だったのか、サラマンディーネは一瞬眼を剥くも、小さく溜飲を吐いた。

 

「やはり、あなたは私に必要な方のようです」

 

どこか納得したような面持ちで漏らした一言の意味が分からず首を傾げるが、サラマンディーネは不意に視線を合わせた。

 

「セラは―――後悔は抱かないのですか?」

 

それは本当に無意識に出た疑問だったのかもしれない。逆に問い返されたセラは眼を白黒させるも、肩を竦める。

 

「少なくとも、後悔のない生き方はできないわね。それも終わった後ばかりね―――けど、自分の生き方に覚悟は忘れないつもりよ。それが私が『セラ』()に誓ったことだから」

 

自身への自虐と皮肉を織り交ぜた顔―――後悔のない生き方などできるはずもない。だがそれでも、それを糧としなければ生きることなどできない。

 

もしそんな生き方をしているとしたら、自己本位で生きている者だけだろう。あの世界の家畜のように『後悔』どころか、生きていると錯覚させられるような世界を創った『神様』とやらもそうなのだろうか。

 

暫し、沈黙が降り、無言が続いていたが、やがてサラマンディーネは顔を上げ、静かに告げた。

 

「今夜、葬送式を執り行います。そして明日―――私達はミスルギ皇国へと進攻します」

 

その言葉にセラも僅かに表情を硬くする。

 

「―――本気?」

 

眉を顰め、視線が細まる。

 

「ええ、先程大巫女様より命が下りました。ミスルギ皇国に潜入している我らの同胞から一昨日、連絡がありました。ミスルギ皇国の地下、最深の機密区画でアウラを発見した、と」

 

サラマンディーネが早くに神殿へと召集されたのはその事だった。リザーディアから齎された情報をもとに進攻計画が立ち上がり、元々予定されていた。だが、昨日の予想外のアクシデントが起こった。

 

「―――――あなたは納得しているの?」

 

相手側にいた『兄』―――ドラゴン側の内情に通じている者がいるのだ。ドラゴン側の情報もかなり漏れていると見るべきだろう。もしかしたら、その進攻すら誘導されている可能性もある。

 

すなわち――――『罠』……リザーディアという存在を知らないセラにしてみれば、泳がされている可能性もありうる。サラマンディーネもそれを危惧しているのか、表情は浮かないままだが、それを抑え込むように首を振る。

 

「大巫女様の命です。それに、逆に好機と、捉えている神官もいます」

 

「楽観的ね―――あなたも識っているはずよ。相手には、『アレ』がいるのよ……それも複数」

 

ドラゴンの機械化したものや、あのトウハですらあの男にとっては単なる余剰戦力でしかない。本命は別だ。確かに、こちらに対して精神的揺さぶりを兼ねた昨日の戦いは大きな衝撃だったかもしれないが、それ故にすぐに行動を起こすとは思っていない場合もあるが、それでも不確定要素が強すぎる。

 

「分かっています。ですが、それが私の使命です。明朝朱雀の刻、特異点を解放――アウラを奪還すべく、私達の総力をもってミスルギに進攻します」

 

サラマンディーネの声色には微かな不安が混じっていたが、それでも己の使命を果さんとする指導者としての責任がある。

 

アウラの奪還はドラゴンの民の悲願であり、決して譲れぬ願いでもある。

 

「それで―――それを聞かせてどうするの? 私に戦線に加われ…とでも言うつもり?」

 

この作戦自体がいわば極秘であり、作戦内容をから考えるに強襲が前提となる。セラも立場的に教えていいはずがない。

 

なら考えられる理由は一つ――――真っ直ぐに見据えるセラにサラマンディーネはフッと肩を竦める。

 

「まさか」

 

今しがたまでの張り詰めたものではなく、どこか吹っ切れたようにも見えるほど笑った。

 

「ただ、あなたには隠し事をしたくはなかった。それだけです―――あなたは…いえ、あなた達は自由ですよ。この世界に暮らすことも、あちらの地球に戻ることも。望むのであれば、できる限りの便宜ははかりましょう」

 

意外とも言える申し出だった。

 

思わず眼を白黒させるセラにサラマンディーネはいたずらが成功したようにクスリと笑う。

 

「本音を言えば、私達と共に戦っていただけるのであれば、それほど心強いことはありませんが。でも、友となってくれたあなたをそんな風にはしたくないのです」

 

確かに最初はそうだった。だが、共に戦ったことでサラマンディーネの考えが変わったのだ。なによりこれはサラマンディーネ達自身の問題であり、自らの手で成さねばならぬことである。

 

そこに僅かばかり、私情が入っただけに過ぎない。

 

会話が途切れ、沈黙が続くなか、静寂を破るようにサラマンディーネは軽く肩を竦める。

 

「そろそろ終いにいたしましょう―――間もなく朝餉の時間です」

 

徐に顔を上げると、高く昇った陽から差し込む光が満ちていた。

 

 

 

 

 

 

「あ、やっと来た」

 

どこか不機嫌気味に声を上げるアンジュに、セラは苦笑する。

 

昨日と同じ食堂へと入ったセラとサラマンディーネの前では、テーブルに腰かけている一同がおり、その横のテーブルでは同じくヴィヴィアンが母親と一緒に先に食事を始めている。

 

そのままテーブルの空いている席へと座り、セラはアンジュの向かい側に腰かけ、サラマンディーネがその右隣へと座る。

 

「ちょっとセラ、どこ行ってたのよ?」

 

一緒に入室してきたサラマンディーネを一瞥し、詰め寄るように問い掛ける。今朝方、起きたら隣にセラがいないことに不安を抱いただけに、咎めるように睨んでいる。

 

「朝の散歩よ」

 

「ふーん…」

 

疑うように眼を細めるアンジュに肩を竦めながら、セラは朝食に手をつける。昨日と同じく今日も10種近い小鉢と白飯、味噌汁という御膳だ。

 

この白飯と味噌汁というのは昨日サラマンディーネから聞いたが、セラは気に入っている。似たようなものならアルゼナルでも出たが、あちらは最低限の栄養が摂れればいいというだけのノーマ飯。さすがに比べくもないが、仮にここを去った後で、またあの食事に戻るのかと思うと少しばかり憂鬱になる。

 

味というのは偉大だと、アルゼナルに来た当初、アンジュが受け付けられなかったのも分かると、しみじみ思っていると、手元の茶碗が空になり、それに気づいたサラマンディーネが声をかける。

 

「よろしければ、お代わりいたしますか?」

 

「お願い」

 

受け取ったサラマンディーネがお櫃からよそい、セラに手渡す様をアンジュは横眼で見ながら味噌汁を飲む。

 

「ありがと」

 

「いえいえ、『良き人』を支えるのが『妻』の役目ですから」

 

次の瞬間、アンジュは口に含んでいた味噌汁を噴き出した。

 

「うわっちちち!!」

 

それを横でまともに受けたタスクが悲鳴を上げるも、アンジュは知ったことかとばかりに口を引き攣らせる。

 

「な、ななな―――なに言ってんのよ、このドラゴン女!!」

 

そして、サラマンディーネの爆弾発言に声を荒げ、両手をテーブルに叩きつけ、あまりの衝撃に食器が浮く。思わず身を乗り出し、睨みつけるアンジュにサラマンディーネはしたり顔で笑う。

 

「誰が妻よ、誰が!!?」

 

「あら? つれないですね……将来的には義理の姉妹になるかもしれないのに。仲良くしませんか、義姉上さま?」

 

噛みつかんばかりに叫ぶが、困ったように首を傾げるサラマンディーネの言葉を挑発と取ったのか、アンジュの顔に青筋が浮かぶ。

 

「ぜぇぇったいに認めないわよ!!」

 

「フフフ、私、諦めは悪い性分ですので」

 

火花が散るような空気に、タスクは汁まみれで項垂れており、リーファとナーガ、カナメの三人はサラマンディーネの予想外の発言に固まってしまい、完全に硬直していた。

 

そんな混沌とする空間からセラは逸早く離脱し、自分の膳を持って隣のヴィヴィアンのテーブルへと避難した。

 

「セラ、醤油いる?」

 

「もらうわ」

 

ヴィヴィアンから受け取った醤油を卵にかけ、隣の喧騒を無視して食事を淡々と続けた。食後にラミアに淹れてもらったお茶で一服する間も、アンジュとサラマンディーネの火花が止むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミスルギ皇国へ進攻!?」

 

あの朝食の騒ぎから既に数時間―――セラとアンジュ、タスクは神殿の地下に設けられた工場区画の一画にいた。ハンガーに固定されたアイオーンとヴィルキス、そしてタスクの飛行艇が置かれたその区画を使わせてもらい、機体の調整を行っていた。

 

朝のことで憤慨するアンジュにため息をつきながら、セラはアイオーンの整備をしつつ、今朝方サラマンディーネより聞かされた内容を二人に伝えていた。

 

「ええ、明日決行するそうよ」

 

アイオーンのコックピットのパネルを外し、内部機器を露出させ、コード類をより分けながら、外部端末で操作する手を緩めず、視線を向けないままセラは淡々と答えた。

 

思わぬ言葉にアンジュは口を噤んでしまい、自身の飛行艇の整備を終えたタスクが歩み寄ってくる。

 

「悪くないと思うよ、ドラゴンと一緒に戦うのも。アウラを救い出せば、エンブリヲの世界に大打撃を与えられるのは間違いないからね」

 

タスク自身、その方法も悪くないと思っている。なにより、エンブリヲの強大さを骨身に理解しているだけに、共通の敵がいるのなら、協力するのも悪くない手だ。

 

だが、アンジュはますます眉を顰め、難しげに唸る。

 

「ま、まだ時間はあるし―――サラも無理強いはしないらしいからね」

 

とはいえ、正直どうするか―――とセラも内心で悩むが、アンジュはセラが漏らした言葉に眉を吊り上げた。

 

「ちょっとセラ―――」

 

「な…に………」

 

掛けられた声に顔を上げると、アンジュの顔が真近くにあり、眼を見開く。だが、アンジュは笑顔を浮かべながら話を続ける。

 

「な、ん、で? あの女の名前を愛称で呼んでるの?」

 

笑顔なのに眼が笑っておらず、有無を言わせぬ迫力を秘めて訊ねるアンジュに背筋に悪寒が走り、タスクはあまりの恐怖に身を引き攣らせる。

 

「いや、名前で呼んでほしいって言われて…『サラマンディーネ』って言い難いから、そう呼ぶことにしたんだけど」

 

口元が引き攣りながら、無意識に視線が横へと泳ぐ。事実を述べているだけなのに、なぜかますますプレッシャーが増していると感じるのは気のせいかと思いたい。

 

「へぇー―――……あの発情ドラゴンがっ」

 

眼を細め、アンジュは内心で大きく悪態をつくも、思わず声に出てしまう。

 

(さっきといい、あの女! ったく、ホントにセラは無自覚にライバル増やしてくれるんだから……って! 違う違う! 私はただ、姉として! そう、姉として妹が変な相手に引っ掛からないようにする義務が! そう、監督責任があるのよ!)

 

内心で大きく言い訳をし、頭を振るアンジュの奇行にセラもタスクも引き気味だった。そこへ気配を感じて振り向く。

 

「失礼、取り込み中でしたか?」

 

白衣を纏った久遠が淡々とした口調で訊ね、眼鏡を持ち上げる。

 

「いや、気にしなくていい」

 

正直、アンジュから気が逸らされて安堵したところだ。久遠は小さく納得したように頷き、今度はセラを無言で見やった。

 

「挨拶がまだでしたね。久遠といいます―――サラマンディーネ様より龍神器の世話を任されています」

 

恭しく礼をし、そのまま視線をセラへと再度向ける。

 

「やはり信用できませんか? 整備は特に問題なかったと思いますが?」

 

アイオーンのチェックをしている様子に久遠が抑揚のない声で問い掛ける。アイオーンを含め、ヴィルキスも既に昨夜の内に久遠を含めた整備班が龍神器と並んで不眠不休で取り組んでくれたおかげで、機体は整備を終えており、整備班のほとんどの面々は仮眠を取っている。

 

久遠も同じはずなのだが、表情に眠気は愚か疲労も見せていない。

 

「別にどうこうはない、ただ、自分の機体の構造ぐらい知っておきたいだけよ―――性分なもので」

 

苦笑しながら肩を竦める。別に機体を自分でメンテしていたのはドラゴン側を信用していないわけではなく、セラ自身少しでもアイオーンのことを知っておきたかったからだ。

 

万が一、自身で機体の面倒をみなければならなくなった時、構造を知ると知らないとでは雲泥の差がある。己の命を預ける機体のことは最低限理解すること―――あの女に教えられたということだけに皮肉なものだが。

 

久遠もそれ以上追及もせず、淡々と頷くとそのまま傍で未だに百面相をするアンジュに声をかける。

 

「そこの愉快な方、少しよろしいですか?」

 

声を掛けられ、アンジュがハッと我に返り、久遠に視線を合わせた瞬間、眼を見開く。

 

「ん? あんたは、あの時の!? って、愉快って何よ愉快って!」

 

あれだけ混乱していても聞こえていたらしい。昨日の戦闘中に突然割り込んできて、有無を言わせずに命令されただけにやや噛みつくように見るも、当人は涼やかだ。

 

「その節はどうも、おかげでいいデータが取れました」

 

悪びれず告げると、久遠はアンジュの反応を待たず要件を告げる。

 

「ヴィルキスに装着した天羽々斬の件で話が…」

 

「アレ? 結構よ、もう使いたくもないから!」

 

聞き終える前に不機嫌気味に手を振って拒否する。確かに昨日はやむにやまれずの状況でもあったし、助かったのは事実だが、いちいち叫ばないといけない、モーション前に妙なアクションがあるなど、正直アンジュの性に合わない。

 

不機嫌な顔で腕を組んで顔を逸らすアンジュに久遠はさして動揺もせず、小さく肩を竦めた。

 

「そうですか―――仕方ありませんね。自分に難しくて扱えない、と言うのであれば無理強いはできませんしね」

 

やや嫌味混じりで嘆息し、溜飲を下げる久遠にアンジュの眉がピクっと釣り上がる。それに気づいてか気づかずか、久遠はそのまま告げる。

 

「『あなた』なら使いこなせるとサラマンディーネ様も信じていたそうですが、見込み違いだったようですね。サラマンディーネ様は扱えますが、あなたは無理、と」

 

並べ立てられる言葉にアンジュの顔が大きく引き攣り、ヒクヒクと怒りが溢れてくる。

 

「仕方ありません。当初の予定通り、黄龍號にセッティングし直しましょう。リーファ様なら扱えるはずですし―――」

 

そこで踵を返そうとした瞬間、久遠の肩がガシッと掴まれた。

 

「誰が無理だって―――いいじゃない、どんな物でも使いこなしてやるわよ!」

 

自棄とも開き直りとも、理由は単に負けず嫌いなだけだろうが―――高らかに宣言するように叫ぶアンジュの姿にセラは呆れ、タスクは顔を引き攣らせている。

 

その返答に対して久遠は見惚れそうな―――セラから見れば胡散臭い笑顔を浮かべて頷く。

 

「それは良かった。では……これを」

 

次の瞬間、アンジュの両手にズシリと重さが加わり、アンジュは眼を白黒させながら視線を落とすと、いったいどこに持っていたのか、厚さ数十センチはあろうかという分厚いマニュアルがあった。

 

「『天羽々斬』の仕様、及び構造設計図、ならび各種装備の説明、操作方法をなどをコンパクトに纏めたものです。すべて熟読しておいてくださいね」

 

どこが…と、言いたくなるほどの分厚いファイルにアンジュは持ったまま固まる。それに対して久遠はさらにニコリと微笑む。

 

「あれだけ自信満々に仰ってましたから、問題ありませんね?」

 

死刑宣告とも取れる言葉を掛けると、肩の荷が下りたとばかりに踵を返す久遠を横に、アンジュは助けを求めるように視線を動かすが、セラもタスクもサッと逸らし、眼を合わせない。

 

絶望したアンジュは泡を吹きそうなほどの量に柱と化す。口は災いのもと―――それを目の当たりにし、セラは小さくため息をついた。

 

踵を返した久遠が、区画の一部に設けられた簡易レクに向かうと、そこに置かれていたコーヒーポッドを取り出し、徐に出したカップに注ぐと、それを持って戻ってきた。

 

首を傾げるセラに向かって微かに湯気を出すコーヒーを差し出す。

 

「よければどうぞ。生憎と合成モノですが、味はそう悪くないと思いますよ」

 

気遣ってなのか、意図は分からなかったが、一息つきたいと思っていただけに受け取る。

 

「そちらの方もどうぞ」

 

現実逃避していたアンジュはその言葉にハッと我に返る。悪びれず、小さくクスリと笑いながら差し出すコーヒーに不機嫌気味に持っていたファイルをこれ見よがしに床に下ろし、ひったくる様にカップを取り、唸るように見るアンジュだったが、飄々とかわす。

 

そのやり取りに肩を竦め、セラもコーヒーを口に含み、僅かな苦みとほのかな温かさが喉を潤す。微熱が徐々に身体に浸透していくような感覚と共に心持ちも落ち着いてくる。

 

アンジュもおずおずと口をつけ、同じような状態だ。その様を見ながら、久遠は言葉を発した。

 

「大概の問題は、コーヒー一杯飲んでいる間に心の中で解決するもの――大昔のある医者がそう言ったそうです」

 

思わぬ言葉にセラとアンジュは眼を剥く。そんな二人に久遠は微笑を返す。

 

「あとはそれを実行出来るかどうか―――それが一番難しいかもしれませんね」

 

まるで自身を嗜めるように踵を返し、久遠はその場を離れていった。去り際の言葉に思わず、無言が満ちる。

 

『答』は既に出ている―――だが、とアンジュは顔を曇らせる。

 

「いいのかしら、それで……」

 

思わずポツリと漏らす。

 

葛藤が心の中でせめぎ合う。ミスルギ皇国で皇女として過ごしたこと、ドラゴンが人類の敵だということ、ノーマの使命が世界の平和を護ること、今まで自分は歩いてきた道はすべて偽りであり、間違いであった。

 

だからこそ、アンジュは今の状況に対しても不信感を拭えなかった。

 

「ドラゴンと一緒に戦って、それが間違っていたとしたら? 大体、『元』皇女がドラゴンと一緒にミスルギ皇国に攻め入るなんて、悪い冗談だわ、っ」

 

思わず愚痴るように呟いた瞬間、己の失言に気づき口を手で覆う。やや怖れるように視線を向けるも、当の本人は特に気にした素振りも見せず、淡々としている。

 

「『正しい』って何なのかしらね―――」

 

もうほとんど飲み終えたカップを見つめながら、セラが呟く。唐突な言葉にアンジュとタスクが戸惑う。

 

「その判断をするのは誰? そもそも、『答』なんて誰にも分からないわよ」

 

選択の規模が大きくなればなるほど、『正解』なんてものはない。『ベスト』なんて選択はないのだ。

 

「だけど、選ぶことはできる。『自分』で、ね……それが正しいと信じるしかないんじゃない」

 

答え合わせは終わった後のことだ。そこでまた迷ったなら、違う道を選べばいい―――どうすればではなく、自分がどうしたいかだ。

 

「身勝手って言われるかもしれないけど―――私は、そう生きたいわ」

 

後悔の少しでも少ない道を選ぶ責任は他の誰でもない、『己』にしか課せられないのだから。セラの言葉にアンジュとタスクが思わず顔を神妙にする。

 

「ま、さっきの言葉じゃないけど―――あとは、どう行動に移すか、か……まずは、もう一杯、お代わりでも貰おうかしら」

 

残っていた分を飲み終えると、小さく笑いながら、セラはコーヒーメーカーの傍へと歩みだす。だが、アンジュとタスクは難しい顔のまま、思考を巡らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

時間が経ち、再び夜の帳が都を包むかという微かな茜空のなか、神殿の前の大広場には巨大な櫓が組まれていた。

 

その中には昨日の戦いで死んだドラゴンの民や、エンブリヲに利用されたドラゴン達の遺骸も安置されている。大型ドラゴン達が日中、破壊された戦場跡から可能な限り回収していた。

 

それらを囲うように大型ドラゴン達が無数に見守り、その足元では女性達が静かに神殿に設けられた場所を見上げている。

 

リーファを含めた近衛軍の衛士達が凛と佇むなか、サラマンディーネが姿を現わし、場の空気はさらに厳粛なものへと変わる。その様子を離れた場所で見守るセラ達の前で、サラマンディーネは瞑目する。

 

ほんの数分間、瞑目する彼女の内に何が去来しているのか、推し量ることはできなかったが、やがて静かに眼を開くと、その口を開いた。

 

「我が同胞達よ――――此度の戦で命を落とした者、戦いに倒れた者、死して尚その身を利用され、死を冒涜された者――――すべてのアウラの子らよ………」

 

櫓を見据えながら、重く語る声がまるで染み渡るように響く。あちらの世界で命を落とし、その身を利用され、このようなカタチで戻ってきた同胞へのやるせない思いを抱く。

 

「あなた達が命を賭して守ろうとしたもの―――我らが今、ここで受け継ぎましょう………あなた達がその胸に抱き続けた誇りと想いは、我らがここに引き継ぎましょう」

 

サラマンディーネは徐に刀を抜き、その刀身を天へと掲げる。

 

「誓いましょう! 我らは、あなた達の魂に! 我らの悲願を成就すると!」

 

ドラゴンの悲願―――母なるアウラを取り戻すこと。それが改めて、ドラゴン達にのしかかり、その意志を固めていく。

 

「眠れ、我が同胞達よ。その魂に安らぎを……安寧のうちに、我らが先達のもとへと向かわれよ」

 

慈しむように、そしてその瞳が僅かに悲哀を帯びる。掲げていた刀を下ろし、鞘へと収め、誓のように掲げる。

 

「あなた達の背は、我らが守り続けます!」

 

サラマンディーネの言葉が終わると同時に、リーファが腕を上げ、それを合図に大型ドラゴン数体が手に松明を持ち、それを櫓の中へと置いた。

 

火は燃え上がり、やがて炎となって遺骸を包み込んでいく。炎の中で燃え落ちていく様を全員が眼を逸らさず凝視する。その死を哀しみ、そして刻む中、物言わぬ同胞達の身体はやがて灰となり、天へと昇っていく。

 

立ち上る死煙を神妙な面持ちでセラやアンジュも見送った。




あけましておめでとうございます。
新年一発目になんとか間に合いました。

今年もよろしくお願いします。

次に書くのはどれがいいですか?

  • クロスアンジュだよ
  • BLOOD-Cによろしく
  • 今更ながらのプリキュアの続き

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