クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 紫銀の月   作:MIDNIGHT

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アネモネ~紫音-sion-~

サリア達から逃れ、食堂へと入ったアンジュとモモカだったが、食堂は完全に照明が落ちて暗闇に包まれていた。だが、何故だろう――この食堂全体に漂う異様な悪臭は。

 

顔を顰め、恐る恐る降りる中、すぐ傍の通路から足音が聞こえ、そちらに振り向く。

 

「セラ!」

 

「アンジュ、無事だったのね」

 

通路から入ってきたのはセラとナオミだった。手にはアサルトライフルを持っており、所々薄汚れている。

 

「どうしたの、その格好?」

 

「人間よ。かなりの数が侵入してるわ」

 

ややウンザリとした面持ちで悪態をつく。あの後も人間の特殊部隊と遭遇し、銃撃戦を行った。相当数がアルゼナルに取り付いたらしく、キリがない。

 

おまけに、通路が至る所で崩落し、塞がれてしまい、回り道をしながらここへと辿り着いた。

 

「とにかく、ここを抜ければデッキよ。パラメイルを手に入れないと、動きが取れない」

 

セラの言葉に頷き、食堂を進もうとすると、モモカはマナの光で灯りを照らした。

 

「こちらですアンジュリーゼ様、ここから行けそうです」

 

進もうと、灯りを前に向けた瞬間、四人は息を呑んだ。暗闇のなかに倒れ伏す幾人もの死体、そのどれもが焼け爛れ炭化し、もはや判別すらつかない状態だった。

 

「ひ、ヒドイ……」

 

ナオミは顔を青くして声を震わせ、モモカも思わず手を口に当てる。アンジュはその光景に先程のドラゴンの炎に包まれる光景が重なり、あの時の不快感が再来する。

 

「うっ」

 

「アンジュ!」

 

思わず咽るアンジュにセラが身体を支え、モモカが慌てる。

 

「アンジュリーゼ様! み、水を!!」

 

すぐさま食堂のキッチンに向かったモモカに、セラがアンジュを支えながら背中をさする。

 

「しっかりしなさい」

 

「ゴメン……」

 

まだ顔が青いアンジュを気遣いながら、セラは周囲を見渡す。黒ずんだ死体はどれも無抵抗で殺されており、ノーマに対して何の罪悪感も持っていないことを感じさせる。

 

「連中の目的はノーマの排除だけじゃない――じゃなきゃ、こんな効率の悪いやり方はしないわ」

 

内側に堆積してくる感情を抑えながら、思考を冷静に動かす。

 

「え……?」

 

「どういうこと?」

 

その言葉にアンジュとナオミが思わず声を上げる。

 

「単にノーマを排除したいだけなら、もっと簡単な方法があるわ。それこそ、自ら乗り込んでまで直接手を下すなんてリスクが大きい」

 

それこそ、先のドラゴンの攻勢でアルゼナルは大きな損害を被っている。施設ごと葬る手段はいくらでもあるはずだ。だが、わざわざ乗り込んでくるのは効率が悪い。確実に息の根を止めるにしても、当然ながら反撃もある。自らが傷つくのをあれ程嫌悪する人間の行動にしては腑に落ちない。

 

「なら、何か他に目的があって動いてる―――」

 

先程のジャスミンモールで、拘束したノーマの前で兵士達は何かを確認していた。仔細は分からないが、誰かを――『ターゲット』を探しているのではないか―――その指摘に、アンジュやナオミは驚きに戸惑う。

 

周囲を警戒していると、背後に気配を憶えた。

 

「成る程――なかなか、いい着眼点を持っている」

 

突然聞こえた声に息を呑み、反射的に振り返り、銃を構える。その先には、一人の青年が佇んでいる。

 

「――誰?」

 

銃口を向けたまま、睨むセラは相手を警戒しながらアンジュとナオミの前に回る。いったい、いつ背後に回ったのか――気配を感じさせなかった青年は、顎に指を這わせながら値踏みするようにセラを見る。

 

「その何者にも侵されぬ意思と心の強さ――アイオーンが選んだだけのことはあるようだ」

 

些かの動揺も感じさせない穏やかな口調で放たれた言葉にセラだけでなくアンジュ達も驚きに戸惑う。

 

「それにしても――酷いものだな。大切な物は失ってから気づく――何時の時代も変わらない心理だ。こんな事を許した覚えはないんだがな」

 

そんなセラ達を横に青年は周囲を見渡し、嘆かわしいとばかりに顔を曇らせる。

 

「君の――いや、君達のお兄さんだよ、この虐殺を命じたのは。セラ、アンジュ」

 

「なっ!?」

 

その言葉にアンジュは驚愕に眼を見開き、セラも表情を強張らせる。

 

「北北東14キロの場所に彼は来ている――アンジュ、君を八つ裂きにするためにね。この子達はその巻き添えを喰ったようなものだ」

 

淡々と告げられた内容にアンジュの内に沸々と怒りが沸き、セラはそんなアンジュに小さく眼を伏せる。その時、キッチンから乾いた銃声が響いた。

 

「きゃああああ!!」

 

「モモカ!?」

 

「アンジュ!」

 

次いで聞こえるモモカの悲鳴に、アンジュは反射的にモモカの名を呼んで駆け出し、ナオミも後を追う。セラは一瞬だけ視線をアンジュ達に向け、再び戻すとそこには誰の姿もなく、まるで幻でも見ていたような感覚を覚える。

 

アンジュがキッチンに向かうと、二人の特殊部隊の兵士がモモカを狙っており、モモカは左肩を撃たれていたが、動ける右手でマナの光を出して防御をしていた。

 

そんなモモカを追い詰める二人にアンジュは頭が真っ白になり、反射的に銃を取り出し、躊躇いなく一人を撃ち殺して、もう一人は両肩を撃ち抜く。

 

呻き声を上げて座り込む兵士に銃口を向けたまま近づき、睨みつける。

 

「あなた達がやったの? お兄様の命令で?」

 

「貴様、アンジュリーゼ――ぎゃぁぁつ!」

 

すぐに銃を構えるも、アンジュに手を撃たれてしまう。

 

「う、撃たないでくれ。我々は、隊長と…ジュリオ陛下の命令で……」

 

これ以上聞く耳は持たないとアンジュは銃を撃ち、兵士を撃ち殺す。相手が絶命しても構わずトリガーを引き続け、弾倉が空になってもトリガーを鬼気迫る表情で引き続けていた。

 

「ア、アンジュリーゼ……」

 

そんなアンジュを止めようとモモカが近づこうとするより早くアンジュの腕をセラが掴む。

 

「もういいでしょ――そんなクズにそれ以上構うな」

 

キッと睨むアンジュの顔は怒りとどしようもない葛藤に苛まれており、過呼吸するように息を乱している。モモカは思わずアンジュに抱き付く。

 

「大丈夫です! モモカはここに居ます!」

 

モモカの声に少しは落ち着いたのか、呼吸を落ち着けるも、アンジュの眼はここではない――『敵』を視ていた。

 

「行かなきゃ―――」

 

低い声で呟くアンジュの眼に宿る怒りと憎しみ――それを見たセラは一瞬瞑目すると、瞳に決然とした色を宿した。

 

「アンジュ……」

 

声を掛け、振り向いた瞬間、セラはアンジュの鳩尾に拳を叩き入れた。

 

「あぅ……」

 

突然のことに反応できず、掠れた声を漏らし、アンジュは驚きに眼を見張る。

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「セラ、何を!?」

 

呻きながらよろめくアンジュをモモカが支え、ナオミが困惑を隠せずセラに詰め寄る。だがセラは無言のまま、痛みと困惑に見上げるアンジュを見つめ、一瞬逡巡すると、視線をモモカに移す。

 

「モモカ、アンジュを連れてここから逃げなさい」

 

「え……?」

 

一瞬、何を言われたのか分からずに思考が止まる。

 

「セ、ラ……?」

 

アンジュは苦しげな表情のまま、伺うように見上げるも、セラは微笑を浮かべる。

 

「この状況を招いたのは、私の責任よ―――あの時、あの男を殺さなかったね」

 

やや忸怩たる面持ちで顔を曇らせる。あの時に……ミスルギ皇国で殺しておくべきだった。ジュリオ・飛鳥・ミスルギを―――そんな仮定に何の意味もない。だが、それでもこの事態を招き寄せた一端は自分にもある。

 

「だから、このケジメは私がつける」

 

曇っていた顔に決然としたものが浮かび、セラは踵を返す。

 

「それに―――いくら憎いとはいえ、あなたに兄殺しなんかさせられないわ」

 

背中を向けたまま告げられた言葉にアンジュは眼を見開き、苦しげな顔のまま声を出そうとした瞬間、突如食堂の外壁が崩れた。

 

落ちる天井と振動に思わず眼を覆うも、崩れた後から差し込む光に眼を向けると、外壁を破壊した後に漆黒の機影がゆっくりと後下してくる。

 

「アレって―――」

 

その機影を確認したナオミが呆然と呟く。逆光を背に降下してきたのはアイオーンだった。何故ここに現れたのか――戸惑う一同のなか、セラだけは苦笑を浮かべる。

 

降下してきたアイオーンが着陸すると、セラのペンダントが共鳴するように輝く。まるで、主を呼ぶかのように―――やがて、セラはゆっくりと歩き出し、アイオーンへ歩み寄っていく。その背中が酷く遠くに見え、ナオミが思わず声を上げ、後を追おうとする。

 

「来るな!」

 

だが、それは鋭い制止によって止められ、ナオミだけでなくアンジュもまたビクッと身を硬直させる。

 

「これは私のけじめよ―――地獄へ行くのは、『私』だけでいい」

 

そう―――自分はその『ため』に育てられのだから。無意識にペンダントを握り締める。

 

(『生きろ』――か……なら、無様に生きてやるわ)

 

顔すら覚えていない母親が自分に向けた願い――いや、それは『呪い』だった。その言葉がセラを今日まで生かしてきた。なら、どう生きるかは自分で決める。

 

どうせ、血に塗れた生き方だ。今更、それを捨てるつもりもない―――世界がそれを突きつけてくるなら、その中で『鬼』となって進むまでだ。

 

拒絶と共に見せる覚悟。セラは徐にナイフを取り出し、片方の手でうしろ髪を束ねている根元を持ち上げると、戸惑うアンジュ達の前で、髪をナイフで断ち切った。

 

驚く一同の前で、根元から切られた銀の髪が亀裂から吹き込む風に煽られ、舞いながら散っていく。まるでそれは、死地へと赴く古代の戦士の儀式のように見えた。

 

どうしようもない不安と恐怖がアンジュとナオミの心を侵食していく。セラは背を向けたまま、声を出した。

 

「ナオミ…この10年、あなたには迷惑ばかりかけたわね。でも、嬉しかった―――あなたの優しさに助けてもらったわ。ありがとう――」

 

いやだ―――心が悲鳴を上げ、ナオミは足元がガクガクと震える。何故そんなことを言うのだ、まるで―――その言葉が出そうになるのを必死に呑み込むも、声が出ない。

 

「アンジュ」

 

名を呼ばれ、アンジュはもどかしい呼吸のなか、顔を上げる。

 

「あなたには逆に迷惑ばかりかけられたけど……あなたと過ごしたこの半年間、悪くなかったわ。それに、『セラフィーナ・斑鳩・ミスルギ』なんて存在は、最初からいなかった。だから、あなたが気に病む必要なんかない」

 

そこで初めて振り返るセラは、震えるアンジュに向かって微笑んだ。

 

アンジュは声にならない声を上げる。そんなアンジュを見ず、セラはアイオーンに飛び乗り、浮上していく。縋るように見上げるアンジュにセラは口を動かす。

 

 

 

―――サヨナラ……姉さん――――――

 

 

 

声が聞こえたわけではない―――だが、アンジュには確かにそう聞こえた。アイオーンは機体を翻し、飛び去っていく。それを見つめながら、アンジュは眼に涙を浮かべ、奥歯を噛み締める。

 

「モモ、カ……」

 

「は、はい!」

 

茫然となっていたモモカ自身も掠れた声で呼ぶアンジュに返事をすると、アンジュは必死の形相でデッキへ連れて行くように頼んだ。

 

 

 

 

 

アルゼナル上空に浮上したセラは前方の海域を見据える。砲火が飛び交う中に走る火線と無数の無人兵器。身構えるセラの前でコンソールが光り、戸惑うセラだったが、突然光が全身を包む。

 

気づくと、制服がライダースーツへと変わった。着慣れた漆黒のライダースーツとヘッドギアに一瞬驚くも、すぐにフッと口元を緩める。

 

「死装束ぐらいは用意してくれるって、随分気が利いてるわね―――なら、地獄までエスコートしてちょうだい。いくわよ、アイオーン!」

 

セラの意思に反応し、アイオーンはスラスターから粒子を放出させ、機体を加速させる。

 

戦場では、ミスルギ皇国の開発した無人兵器:ピレスロイドに苦戦を強いられていた第三中隊。メンバーのイルマが捕獲され、連れ去られたことも混乱に拍車をかけていた。

 

刃を展開しながら高速で飛び回るピレスロイドはいくら撃ち落としてもキリがない。徐々に精彩を欠くなか、突貫したピレスロイドに腕を切り落とされ、ターニャ機がバランスを崩す。

 

そこへ捕獲用のワイヤーを展開した数機がターニャのパラメイルを拘束する。ターニャは必死に逃れようとするも、抵抗も虚しくターニャもまた彼方へと連れ去られていく。

 

「ターニャ!?」

 

その光景に残された面々は恐怖に叫び、混乱する。狭めるように迫るピレスロイドに恐怖するなか、降り注ぐ光弾に撃ち落とされる。

 

驚く一同の前に現われるアイオーンと周囲を飛び交うアイギスがガトリング砲を斉射し、ピレスロイドを次々と駆逐する。爆発の閃光が瞬くなかへと飛び込んでいくアイオーンが変形し、駆逐形態となってレーヴァティンを振り上げる。

 

巨大な刃に走る光が振るわれ、一閃が空を裂き、破壊の華を咲かせる。呆気に取られる一同を横にピレスロイドを次々と駆逐するアイオーンだったが、セラは突如感じた気配に反応し、機体を翻した。

 

虚空より放たれる一撃が機体を掠め、息を呑む。顔を向ける先の空間より姿を見せるワインレッドの機影。

 

「アーキバス? いや、違う――!」

 

一瞬の戸惑いはすぐに消し、機体を回避させる。手に構えるガトリング砲を放ちながら迫る機体、ディーヴァのコックピットでライダーであるアイビスが微かな笑みを浮かべる。

 

「ほう? 悪くない反応じゃないか――神様のお気に入り、試させてもらおうかい!」

 

バイザーを輝かせ、ガトリング砲を放ちながらもう片方の手に巨大なハルバートを持ち、迫るディーヴァにアイオーンもレーヴァティンを振り上げて受け止める。

 

擦れる金属の摩擦音とともに弾き合い、近距離で刃を振るい合う。密着状態で繰り広げられる斬撃の応酬を互いに機体を捻りながら回避し、相手の隙を狙う。

 

「この体裁き―――」

 

だが、攻撃を繰り広げるなかでアイビスは奇妙な違和感にとらわれていた。眼前のアイオーンと密着状態で繰り広げる応酬―――自惚れるわけではないが、アイビスは自身の操縦に自信を持っている。10年前でもここまで彼女と戦えたのはアレクトラぐらいだ。

 

拮抗した実力同士のやり合いでは、下手に距離を取れば不利―――却って、相手の懐にいた方が安全という場合もある。そこまで考えてアイビスは何かに気づいたように顔を愉しげに歪めた。

 

アイビスは至近距離でガトリング砲を放ち、セラもアイオーンを翻させて攻撃をかわし、距離を取る。アイビスは不適に笑いながらディーヴァを飛翔形態へと変形させ、アイオーンに向けて急加速した。

 

息を呑むセラにディーヴァはガトリング砲を斉射しながら機体に備わったマイクロミサイルを一斉射する。弧を描きながら迫るミサイルの弾幕にセラは眼を見開き、操縦桿を戻し、機体を飛翔形態に変形させてバーニアを噴射させ、機体を急降下させる。

 

追尾するミサイルを背に海面へと急接近し、激突スレスレで機首を引き上げる。ペダルを小刻みに踏んでバーニアを操作し、アイオーンは機体をバレルロールして一気に急上昇した。

 

飛沫を上げながら急上昇するアイオーンに目標を見失ったミサイルは飛沫にぶつかり、海上に爆発の華を咲かせ、近くにあったミスルギ艦艇を呑み込み、沈没させる。

 

上昇するアイオーンに急降下してくるディーヴァが空中ですれ違う。そのタイミングで互いの顔を視認したセラは息を呑む。

 

だが、アイビスは確信を得たように高らかに笑う。

 

「そうかい! やっぱりあの時のガキか!」

 

機体を旋回させ、空中で変形したディーヴァがハルバートを振り上げ、同じく旋回したアイオーンがレーヴァティンを振り被り、激突する。

 

「お前、あの時気まぐれでオレが教えたガキか!?」

 

接触回線で聞こえる声にセラが息を呑む。この声は眼前のパラメイルの――なら、相手はノーマか。戸惑っていたセラに聞こえる言葉に過去の記憶がフラッシュバックする。

 

10年前―――数日だけ、教示を得た女を―――名さえ聞かなかった、セラに『戦い』を仕込んだノーマを――――

 

「まさか、あの時のガキがその機体に乗ってるとはな!」

 

心底愉しげな声が不快感を煽る。セラはレーヴァティンを薙ぎ、ディーヴァを弾き飛ばす。

 

「戦場で殺そうとする奴は敵――――アンタにそう教えてもらったわね!」

 

思わず叫び、即座にレーヴァティンをライフルに変形させてチャージを行い、ビームの弾丸を発射する。撃ち放たれる光弾をかわしながら、アイビスは愉快そうに嗤う。

 

「覚えてたか、結構結構! なら、殺り合おうかい!」

 

言葉など不要―――そうとでも言いたげにディーヴァが変形し、上昇する。セラはレーヴァティンで狙い撃つも、ディーヴァは鋭く掻い潜りながらミサイルを一斉射する。

 

迫るミサイルをアイギスが撃ち落とし、爆発の閃光が瞬くなか、飛び込むアイオーンと閃光から飛び出すディーヴァが交錯し、刃をぶつけ合う。

 

「あんな愚物どもを助けるか、とんだイカれ野郎ね!」

 

「はっ、誰があんな俗物どもに手を貸すか! オレは戦いたいから戦うんだよ!」

 

交錯する中でぶつけ合う感情は、自身の想いのままに行動するということだけが共通していた。アイオーンとディーヴァのぶつかり合う光景に思わず動きを止めていた第三中隊機だったが、戦場でそれは命取りだった。

 

まだ周囲には無数のピレスロイドが展開しており、それらが刃を回転させて襲い掛かり、機体が被弾する。衝撃に我に返ったライダー達は回避行動を取るも、今度は捕獲ではなく明らかに撃墜に向かってくる。

 

恐慌状態がより酷くなり、もはや応戦するだけで手一杯だった。そんな中、一人が放った連装砲が虚空を過ぎり、その一射がアイオーンと交錯し、こちらへと背中を向けたディーヴァに着弾する。

 

衝撃に微かに呻く。大したダメージではないが、アイビスは不機嫌気味に後方を睨む。

 

「せっかく熱くなってたのに――余計な水を差してくれんなよなぁぁぁぁぁっ!」

 

振り向きざまに加速し、第三中隊機に襲い掛かるディーヴァにセラが息を呑む。だが、距離を取り過ぎていたため、間に合わない。

 

急接近に気づいたライダー達が顔を上げた瞬間、頭上に掛かる機影のバイザーが禍々しく光る。

 

「弱い奴が、戦場に出るんじゃねえよ!」

 

見下し、そして侮蔑するアイビスがハルバートを振りかぶり、第三中隊機3機を横へ両断した。機体を上下に真っ二つにされた3機は瞬く間に爆発に包まれ、散華の閃光が瞬く。

 

爆発を背に佇むディーヴァのワインレッドのボディをより赤く染め、その光景にセラの感情が昂ぶり、鼓動が大きく脈打つ。

 

 

 

 

 

【MODE:BELIAL Ignition】

 

 

 

 

 

刹那、コンソールに灯る光―――アイオーンが全身を痙攣させるように震わせ、装甲がスライドし、真紅の光を解放する。

 

頭部のサイドが後方へと移動し、マスクが外れるとともにバイザーの下にあるツインアイが輝き、声ならぬ咆哮を上げる。

 

『ベリアル』―――神話にその名を轟かせる堕天使のごとき姿を顕在化させたアイオーンは、セラの内に昂まる感情に操られるようにレーヴァティンを構え、銃口から巨大な熱の弾丸が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フライトデッキでは、アイオーンが人間を排除したため、ヒルダ達が怪我人の手当てをはじめ、どうにか機体を発進できないか思考を巡らせていたが、完全に崩れた発進ゲートに辟易する。

 

そこへアンジュ達が駆け込んできた。

 

「アンジュ!」

 

「てめえ、どこで道草喰ってたんだよ!」

 

危うく死ぬかと思っただけに、ロザリーも気色ばむ。エルシャも銃撃戦の最中、アルゼナル内部に向かったため、戦力も低下していた。なにより、先に出た第三中隊の面々との通信も途切れており、すぐに出撃しなければならない。

 

だが、アンジュは鬼気迫る表情で睨み、ロザリーは声を引き攣らせて慄き、ヒルダも思わず圧倒される。そんな様子に構わず、アンジュはヴィルキスへ乗り込む。

 

「おい、アンジュ!?」

 

ただならぬ様子にヒルダが声を掛けるが、アンジュは険しい面持ちのまま、ヒルダを見やった。

 

「モモカを頼むわね――私、行かなくちゃいけないから」

 

エンジンを起動させ、ヴィルキスが起動するとアンジュは操縦桿を強く握り締める。

 

「アンジュリーゼ様……」

 

「モモカ、ごめん。でも私、行かなきゃ―――これ以上、私のためにあの子を傷つけさせたくないから」

 

決然と告げるアンジュにモモカは何も言えなくなり、押し黙りながらもそれを尊重するように毅然と見つめる。アンジュはギアを切り替え、ヴィルキスを浮上させて前進させる。

 

「おい、滑走路は使えねえぞ!」

 

わざわざ言うまでもないことだが、発進ゲートは完全に塞がれており、このままでは発進できないが、アンジュは知ったことかとばかりに前方の瓦礫を睨む。

 

「邪魔」

 

小さく吐き捨てると、操縦桿のスイッチを押し、ライフルを一斉射し、突然の砲撃にヒルダ達は反射的に身を低くする。

 

銃弾がゲートを塞いでいた瓦礫を吹き飛ばし、ゲートが開けると不敵に笑う。

 

「進路クリア―――!」

 

確認するや否や操縦桿を引き、ヴィルキスは瞬時に急加速でゲートから飛び出していった。漂う粉塵に咳き込みながらヒルダ達は悪態をつく。

 

「ったく、相変わらず無茶苦茶な奴――」

 

だが、結果的にはこれで進路は確保できた。その時、別の機体が飛び出していく。頭上を過ぎる機影と突風に頭を押さえる。

 

「な、何だ!?」

 

「アレって―――」

 

慄きながら顔を上げるロザリーとクリスの眼には、ゲートを飛び出していく銀と青の機体が映る。

 

「ナオミ? サリア?」

 

ヒルダは思わず今しがた飛び出していった機体のライダーを呟く。ナオミはともかく、サリアまでいったいどうしたというのか――困惑を隠せなかったが、ヒルダもまた決然と顔を上げる。

 

「ヒルダ――」

 

傷を押さえながら機体へと向かうヒルダを心配するように見るロザリーとクリスにヒルダが苦く笑う。

 

「あたしも行かなくちゃ――みんなを守るために」

 

決然と機体へと向かうヒルダの背中にロザリーとクリスも茫然となっていたが、やがて強く頷き合う。

 

 

 

 

 

 

戦場に走る巨大な熱の弾丸が空気を灼き、大気を震わせる。進路上に飛び交うピレスロイドは何の障害にもならず、その身を消滅させる。

 

それが無数に飛び交い、その灼熱に晒されるディーヴァは回避しながら、ガトリング砲で応戦するも、それは届く前に主を守る『盾』によって防がれる。そして、『盾』が壁を解くと同時のそのツインアイを輝かせながら真紅の粒子を纏う天使が銃口を向ける。

 

アイオーンの構えるレーヴァティンの銃口から光が迸り、またもや光熱の弾丸が発射される。真っ直ぐに向かってくる光弾を回避すると、それは海面を蒸発させ、進路上にあった艦艇を呑み込み、消滅させる。明らかに先程までと威力が桁違いになっている。

 

その光景にアイビスは舌打ちし、ミサイルをありったけ発射する。間隙なく迫るミサイルにアイオーンは怯むことなく加速し、レーヴァティンを一閃し、ミサイルを斬り裂く。

 

爆発の余波が周囲に拡散し、視界を覆う。

 

「ちっ! 見え見えなんだよ!」

 

歯噛みするアイビスの前に閃光から飛び出すアイオーンに向けてガトリング砲を放つ。だが、銃弾はアイオーンに着弾せず、まるですり抜けたようにアイオーンの姿が掻き消える。

 

眼を見開くアイビスは次の瞬間、衝撃に襲われる。

 

一気に懐へと飛び込んだアイオーンがレーヴァティンを振り下ろし、ガトリング砲ごと左腕を斬り落とす。舌打ちして左腕をパージし、ディーヴァは離脱するも、その後を追い、アイオーンもまた急上昇する。

 

「これが、あの機体の力――いや、眠れる鬼を起こしちまったってことかい!」

 

ぼやきながらも愉しげにディーヴァは右手にハルバートを構え、追いついたアイオーンと刃を斬り結ぶ。だが、状況はどう考えてもアイビスの不利だった。

 

「ここらが潮時か、ちぃぃ!」

 

小さく独りごちると同時に真下から伸びた左腕がディーヴァの右脚を掴み、強引に引き寄せて引きちぎる。ケーブルの裂く音と飛び散るオイルを振り払い、迫るアイオーンにハルバートを投擲し、瞬時に離脱する。迫るハルバートをアイギスが粉々に撃ち砕き、アイオーンはレーヴァティンを大きく振りかぶる。刃に走るエネルギーが増大し、巨大な光の剣を形成する。

 

「オマエだけは――墜とす!」

 

セラの中に燃える怒りを乗せるように振り下ろされた刃が迫り、アイビスは咄嗟に機体制御をカットし、主電源の落ちたディーヴァは急降下し、その刃を紙一重でかわす。刃がその先にあった艦艇ごと海を割り、巨大な飛沫が周囲を包む。その中にディーヴァが飛び込み、目標を見失ったセラは舌打ちする。

 

アイオーンにピレスロイドが襲い掛かり、セラはレーヴァティンを振り払って破壊する。爆発のなかを飛び、一目散にミスルギ艦隊の中枢へと加速した。

 

そのアイオーンに遅れてヴィルキスが戦場へと到着した。アンジュの眼には、艦隊の中枢へと強襲するアイオーンが見え、歯噛みしながら追おうと機体を駆る。

 

だが、戦場にはもはや出し惜しみはしないとミスルギ艦隊から放出されたピレスロイドが飛び交い、道を阻む。

 

「邪魔を、するなぁぁぁぁっ!」

 

焦燥感と苛立ち、そして怒りに猛る感情のまま、アンジュはヴィルキスを駆り、ピレスロイドを破壊していく。

 

背後に回り込むピレスロイドが撃ち落とされ、ハッと振り向くとそこには、サリアのアーキバスが急接近してきた。

 

「戻りなさい、アンジュ! 戻って使命を果たして!」

 

金切り声を上げて叫ぶサリアをうるさ気に一瞥し、アンジュはピレスロイドを破壊する。ヴィルキスの前へと回り込むアーキバスが対峙し、サリアはなおも叫ぶ。

 

「何が不満なの!? アンタは、アンタ達はアレクトラに選ばれたのよ! 私の役目も、夢も、居場所も全部奪ったんだから……そのくらい!」

 

涙を浮かべて募るサリアの心にはこの10年余の感情が去来する。努力してきた、ジルに認められたい、彼女の力になりたい―――だがそれは全て無駄だった。自分の目指していたものは全て否定された。

 

それを奪ったのは一番気に喰わなかった相手―――何故、自分は違ったのだ。どうして自分はその資格が与えられなかったのだ―――なのに、何故それを拒絶するのか……だが、そんなサリアの哀しみに対してアンジュは複雑な面持ちでため息をこぼした。

 

「―――同じね」

 

低い声で呟いたアンジュの言葉にサリアが戸惑う。

 

「本当に必要とされたい相手には必要とされていない―――なのに、望まない相手には必要とされる。どうして世界はこんなに理不尽なのよ!」

 

アンジュの記憶を過ぎるこの半年余―――最低最悪だった。なにもかもが皇女と違う―――だけど、『ここ』がいつのまにか好きになっていた。

 

『彼女』が居てくれたから―――自分に手を伸ばし、そして守ってくれた。それがなにより嬉しかった。

 

だが、先程見せた『別れ』―――『自分』なんかのために、自ら『地獄』へ堕ちると微笑んだ妹の顔がアンジュの心を痛く締め付ける。

 

「セラが――あの子が地獄に行くと言うのなら、私もそれに付き合うわ。それがせめてもの――姉として、あの子にしてあげられることだから!」

 

顔を上げたアンジュの瞳に悲哀と怒りの入り混じった色が浮かぶ。アンジュの指輪が光り、剣を抜きサリアのアーキバスに迫る。

 

息を呑むサリアの前でアーキバスの腕を斬り落とす。

 

「だから――私は行く……!」

 

返し手で振り上げた一撃がもう片方の腕を斬り飛ばし、体勢を崩すアーキバスを睨む。

 

「邪魔をするなら――殺すわ!」

 

身を捻って蹴りでアーキバスを弾き飛ばし、海面へと落とす。刹那、明滅していた指輪が輝き、コンソールに光が灯る。眼を見開くアンジュの前でヴィルキスは全身を真紅に染め上げる。

 

「アンジュ! アンジュ――――!」

 

海面へと落下してくアーキバスのコックピットでその光景を見たサリアは絶望と敗北感に打ちのめされる。

 

「赦さない……勝ち逃げなんて、絶対に赦さないんだから! アンジュの下半身デブ――――――!」

 

落ちていくサリアは叫びながら海中へと水没していった。

 

(サリア――)

 

その光景を遅れていたナオミは複雑な面持ちで見ていた。通信から聞こえたサリアの悲痛な叫び―――だが、今のナオミはそんなサリアを気に掛けている余裕はなかった。

 

(セラ…セラ、セラ!)

 

内心に何度も大切な名を呼びながらナオミは必死にアンジュの――その先にいるであろうセラを捜す。だが、機体性能の差からか、それとも限界か―――一向に追いつけない。

 

その間にも残存するピレスロイドが襲い掛かり、必死に応戦しながらナオミは焦燥感を募らせる。

 

 

 

 

カタパルトデッキでは、生き残っている整備班が最後の作業を進めていた。

 

「ヒルダ、発進準備完了だよ!」

 

疲労を隠せない憔悴した面持ちながら、自身の役目を全うしたとメイはサムアップする。

 

「ああ、あとは任せて早く逃げな」

 

「分かってるよ」

 

既に生き残りの面々は地下ドックへと向かっている。ヒルダ達を射出した後は施設を放棄するだけだ。メイが機体から離れると、操縦桿を握るヒルダにクリスが声を掛けた。

 

「ヒルダ……ううん、行こう――隊長」

 

その言葉にやや眼を剥くも、横に居るロザリーもぎこちなくだが頷いている。その様子にヒルダも小さく笑い、頷き返す。

 

「ああ―――ヒルダ隊、行くぜ!」

 

「「イエス・マム!」」

 

ヒルダのグレイブが発進すると同時にロザリーとクリスの機体もまた発進していく。それを見送るメイだったが、不意にゲートの先に見えた『モノ』に眼を見張った。

 

「ダメ! 戻って!」

 

その叫びは遅かった―――整備デッキの天井部から僅かに顔を出していた『ソレ』―――最初にカタパルトを破壊したピレスロイドの一機が不発でその場に留まっていた。発進するパラメイルにセンサーが反応し、起爆スイッチが入った瞬間、巨大な爆発が起こった。

 

「え……?」

 

クリスは一瞬、何が起こったか分からなかった。次の瞬間、炎と吹き飛んで崩落したガレキがハウザーに降り注いだ。

 

降り注ぐガレキがハウザーの機体を穿ち、衝撃で制御を失った機体はそのまま墜落し、その光景に飛び出したヒルダとロザリーは眼を見開いた。

 

「「クリス!?」」

 

予期せぬ状況にヒルダは動揺し、ロザリーは半狂乱になったアルゼナルに舞い戻ろうとする。だが、それを阻むかのようにピレスロイドが襲いかかってくる。

 

慌てて応戦しながらも、ロザリーは通信機に向かって叫ぶ。

 

「待ってろクリス! すぐに助けにいってやるからな!」

 

《う、うん……待っ――――》

 

通信から聞こえるクリスのか細い声が消え、同時にハウザーのエンジンが火を噴き、既に耐久性を失っていたカタパルトに致命傷を与え、ゲートが崩落する。その中へクリスは呑まれていった。

 

「クリ、ス―――」

 

粉塵が包む光景にロザリーは上擦った声で名を呼ぶも、もはや反応はなかった。その瞬間、ロザリーは眼に涙を浮かべ、口を強く噛み締める。

 

「ちっくしょぉぉぉぉぉ! てめえら全員! ぶっ殺してやる!!!」

 

怒りに駆られ、ロザリーはライフルと連装砲を狙いもつけず撃ちまくり、破壊していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沖合に向かうアイオーンを近づけさせまいと集中してくるピレスロイドを意にも返さず、セラはレーヴァティンを一閃するだけで無数の爆発の華が咲き渡る。

 

その姿に恐怖に駆られたのか、艦艇から無数のミサイルと機銃の弾幕が張られるも、アイオーンの前方にアイギスが3機中心で集まり、巨大な光の盾を作り出す。

 

爆発を物ともせず、防ぐと同時に分離して主のための道をつくる。開けた道をアイオーンは突き進み、艦艇の前方に突撃をかけ、レーヴァティンを振りかぶる。

 

迫るアイオーンにブリッジは大混乱に陥るも、次の瞬間には船体ごと真っ二つにされ、艦艇は爆発に呑まれて海の藻屑となる。

 

セラは返し手でレーヴァティンを振り払い、並走していた艦艇を横殴りに斬り裂き、破壊する。飛び上がると同時にレーヴァティンのビーム弾を発射し、海面を蒸発させながら数隻を消滅させた。

 

破壊を行いながら目指すは艦隊の中枢――旗艦を目指して飛翔するアイオーンはまさに『破壊天使』そのものだった。

 

一方の旗艦のブリッジではジュリオが混乱していた。旗艦の周囲に展開していた艦隊は次々と沈められた。反応の消失を伝えるオペレーターの悲鳴のような報告のみが木霊する。モニターに映るのは、エンブリヲが奪取の優先目標の一つとした機体『アイオーン』―――あの機体とそのライダーを捕縛するのが任務だ。

 

すぐさま捕獲にピレスロイドを向かわせるも、何の障害にもならず駆逐され、さらには旗艦を守っていた護衛艦も次々と撃沈されていく様にジュリオの思考に混乱の拍車がかかる。

 

「な、何をやっている!? 相手は一機―――!」

 

刹那、ブリッジの艦橋が輪切りにされ、オペレーター達はその艦橋ごと海へと落とされ、水没した。

 

「ひぃぃ!」

 

開けたブリッジの眼前に降下してくるアイオーンに腰を抜かす。

 

真紅の粒子を纏いながらバイザー越しにこちらを見据えるアイオーンにジュリオは声を引き攣らせる。胸部ハッチが開放され、その下から顔を出したライダーに驚愕する。

 

「お、オマエは―――ぎゃぁっ」

 

姿を晒したセラに驚くジュリオだったが、セラは何の躊躇いもなく銃を抜いてジュリオの脚を撃った。蹲るジュリオのもう片方の脚にも銃弾を撃ち込み、経験したことのない痛みにのたうち回るジュリオ。

 

『陛下!?』

 

状況に慄いていた近衛兵が慌てて駆け寄るも、セラは即座に近衛兵に向けて狙撃し、眉間を撃ち抜かれ、近衛兵はその場に倒れ伏す。

 

「ひ、ひぃぃぃぃ」

 

『死』すら知覚することもなく絶命した能面のような死顔と流れる血が手に触れ、ジュリオは股間を湿らせながら恐怖する。

 

「セ、セラフィーナ! セラフィーナなんだろ! 私は、オマエの兄だ! オマエは覚えていないかもしれないが、私はオマエを―――がぁっ」

 

セラに呼び掛けようとしたジュリオをセラは無表情のまま撃ち、掌を撃ち抜かれたジュリオは噴き出す血にもがく。

 

「その薄汚い口を今すぐ閉じさせてやる――」

 

冷たく一瞥し、セラはコックピットに戻り、ハッチを閉じると同時にレーヴァテインを振りかぶる。その光景にジュリオの顔はますます引き攣り、痛みも忘れて後ずさる。

 

「ま、待て、待ってくれ! 要求は何でも聞く! そ、そうだ! お、オマエの生存と皇族復帰を約束しよう! なんだったらアンジュリーゼも認める!」

 

その言葉に能面だったセラの眉が微かに吊り上がる。だが、そんな僅かな変化も気づかず、ジュリオは言葉を取り繕う。

 

「だ、だから! 殺さないでくれ!」

 

必死に命乞いをする様は、滑稽を通り越して見るに耐えないほどの醜さだった。

 

「つくづくあの時殺さなかった自分が腹立たしいわ―――」

 

同時に沸き上がる己への怒り。もはや躊躇いなど微塵もなかった。

 

「生きる価値すらないゴミが―――死ねぇぇぇっ!」

 

振りかぶったレーヴァティンを渾身の力を込めて振り下ろし、ジュリオの悲鳴と追いついたアンジュが眼を見開いた瞬間――――

 

「な、に……?」

 

振り下ろされたレーヴァティンの刃は眼前に現われた影の左腕に展開されるシールドによって止められていた。眼前に浮かぶ紫黒にその身を纏うパラメイルと思しき機体―――頭部に流れる女神の造形がどこか不敵に笑っているように見え、その下にあるツインアイが禍々しく光る。

 

「そこまでだよ、セラ」

 

「オマエは、さっきの――!?」

 

謎のパラメイルに戸惑うセラの耳に聞こえた声にハッと顔を上げると、いつ現われたのか、パラメイルの傍に先程出会った男が悠然と佇んでいた。

 

だが、その男が異質なのは空中に浮かんでいることだった。セラは咄嗟に距離を取る。謎のパラメイルは艦を背にこちらに対峙する。

 

「た、助けてください! エンブリヲ様! お願いします!」

 

思いがけない相手の登場にジュリオは恥も外聞もなく助けを求める。そんな様をエンブリヲと呼ばれた青年は煩げに一瞥する。

 

「エン…ブリヲ―――?」

 

男の名にセラが戸惑う。何故かは分からない―――だが、彼女の何かが油断するなと訴えている。

 

「ジュリオ君、私は君を少々過剰評価していたようだ―――私事に拘りすぎて、やり方が稚拙だ」

 

つまらなさ気に告げるエンブリヲにジュリオは思考が回らず、呆然となるだけだ。そんなジュリオに些かの興味も示さず、エンブリヲは眼前のアイオーンを――いや、『セラ』を直視する。

 

機体越しに感じる視線に嫌な気配を憶え、セラは顔を強張らせる。

 

「セラ―――君は、月のように孤高で美しい。その怒りも哀しみも、純粋で白い―――どんな状況であろうと、決して折れない心の強さを宿す炎…理不尽や不条理に立ち向かい、焼き尽くす炎のように、気高く美しい。自らを犠牲につまらない十字架を背負うなど、君自身を穢してはいけない……」

 

「何を言ってるの? オマエは、いったい……?」

 

「――――――だから、君の罪は私が背負う」

 

超然と語りかけていたエンブリヲは眼を閉じ、静かに歌唱する。浮上する機体にセラが息を呑む。

 

「これは―――」

 

エンブリヲが唄うのは、『永遠語り』だった。それにセラだけでなく、アンジュやジュリオもまた困惑する。上空へと舞い上がった機体が見下ろす様に、セラは嫌な予感が擡げる。

 

この感覚はあの時と―――竜のパラメイルが現われた時と同じ……それを裏付けるように紫黒のパラメイルの両肩が開き、連動するようにスラスターも変形し、その下に現われる宝玉にエネルギーが収束する。

 

「アレは―――!?」

 

「ヴィルキスと同じ!?」

 

見間違えるはずもない――アイオーンやヴィルキスの武装と同じ形態だ。視認するや否や、セラは傍で滞空するヴィルキスに向かって加速する。戸惑うアンジュは突如襲う振動に我に返る。アイオーンがヴィルキスを掴み、急ぎその場から離脱する。

 

次の瞬間―――歌が止み、紫黒のパラメイルの両肩から荒れ狂う竜巻状のエネルギーが解放され、真っ直ぐにジュリオが乗っている旗艦へと直撃する。

 

眩い閃光が戦場を覆い、その光の中にジュリオは呑み込まれていった。寸前で離脱したセラと呆然となっていたアンジュは、振り返った先に言葉を失う。

 

そこには、ジュリオが乗っていた旗艦は跡形もなく消え、海面に巨大な穴が開いていた。突如としてできた大穴へと流れ込む海水が引き起こす渦が、非現実的な光景に見える。

 

 

 

 

 

突如として起こった振動が海底ドックを揺さぶり、ジルは強ばった面持ちで顔を顰める。パメラ達もやや不安を隠せず怯える。

 

だが、ジルは冷静に命令を下す。

 

「注水はじめ」

 

「注水はじめ」

 

アウローラが鎮座するドック内に内壁から海水が流れ込み、ドック内を浸水していく。瞬く間に水位が上昇するなか、システムを水中航行モードに切り替える。

 

「アルゼナル内に生命反応なし、生存者の収容完了しました」

 

施設内を熱スキャンにかけたヒカルがどこか暗い面持ちで報告する。その報告にジルは反応しなかったが、ブリッジに顔を出したジャスミンやゾーラは顔を顰める。

 

結局、収容できた人員は全体の6割ほど―――満足に動くこともできなかった負傷者などは連れていけず見捨ててしまった者もいる。忸怩たる思いで俯く中、ジルは感傷を見せず指示を続ける。

 

「メインエンジン臨界まで後10秒――」

 

「隔壁内注水150、180……防水隔壁、全閉鎖を確認」

 

水位を示す数値が上昇すると同時に周囲の水は徐々にその船体を水没させていく。同時に各船体に繋がれていたケーブルがパージされる。

 

「外部電源カット」

 

「調圧弁30、FCSおよび全兵装バンク、レピテーター、オンライン」

 

電子兵装、そして各種兵装バンクのラインが艦橋に繋がり、発進準備が同時に整う。その瞬間、艦橋のガラス越しにも見えていた水が遂にドック内を満水にした。

 

「交戦中のパラメイル各機には、合流座標を暗号化して送信」

 

「了解」

 

「フルゲージ!」

 

水中に身を沈めたアウローラの眼前には、巨大な発進ゲートが聳える。

 

「メインゲート開放!」

 

ロックが解除され、ゲートを塞ぐ壁が4つに分かれて動き、四方に収納される。その先には同じ水中の滑走路が真っ直ぐに伸びていた。

 

水圧の差による船体への影響を難なくクリアし、あとは進むのみ。

 

「拘束アーム解除」

 

最後の戒めを解くようにアウローラの船体を両側から固定していた巨大なアームが離し、その拍子に沸く水泡。船体が軽い浮遊感に包まれ、水中にその巨大な船体を海流に揺らす。

 

「機関20%、微速前進」

 

パメラがゆっくりと操縦桿を引き、それに連動してエンジンが唸りを上げ、水中に炎が噴射される。その力がゆっくりと船体を押し、ゲート内へと進んでいく。

 

「アウローラ発進!」

 

刹那、エンジンが一気に噴射され、誘導ラインのゲート内を進んでいった。

 

 

 

 

 

もはやミスルギ艦隊の姿は影も形もない。あとは、自動操縦のピレスロイドが僅かに飛ぶ戦場のなか、ジュリオごと旗艦を消滅させたエンブリヲと謎のパラメイルに対峙するように相対するアイオーンとヴィルキス。

 

「オマエはいったい、誰なの? その機体はいったい……」

 

アイオーンやヴィルキスと同じ兵装――いや、威力だけなら上だろう。そしてこの男が『永遠語り』を口にしたことも混乱に拍車をかけていた。

 

セラが警戒を解かず問い掛けると、エンブリヲは悠然と笑う。不敵な態度に身構えるなか、エンブリヲは何かに気づき、それに反応するように機体が身を翻した瞬間、銃弾が過ぎる。

 

ハッと視線を向けると、飛行艇を操縦するタスクが機銃を向けていた。

 

「セラ! アンジュ! そいつは危険だ! 離れるんだ、今すぐ!!」

 

「タスク!?」

 

「どうしてココに!?」

 

その姿に驚く。アルゼナルに戻る前に別れた彼が何故ここにいるのか――タスクの背中にはヴィヴィアンが乗せられている。

 

あの後、アンジュを捜索する途中で離脱しようとしていた輸送機を爆破し、近くにいた兵士を排除したとき、連れ去られたヴィヴィアンを救出し、ここまで一緒に運んできた。戦場に近づいたタスクは聞こえた歌とその元凶であるパラメイルを確認した瞬間、驚愕と怒りに包まれた。

 

かつて、両親や仲間を死に追いやった仇敵の姿に―――その敵の前にセラやアンジュが相対したのを確認し、焦る心を必死に抑え込んで急いできた。

 

引き離そうと機銃で狙い撃つタスクにエンブリヲは不快気味に顔を顰める。

 

「無粋な―――虫けらが」

 

次の瞬間、紫黒のパラメイルがタスク目掛けて向きを変え、エンブリヲは再び歌唱する。それに呼応して機体が再び砲撃体勢に入る。

 

「いけない!」

 

「アンジュ!?」

 

気づいたアンジュが弾かれたようにヴィルキスを加速させ、セラも驚きながらも舌打ちし、後を追った。響く歌声に反応し、エネルギーが収束する。

 

それを背中越しに確認したセラは歯噛みして機体を更に加速させる。だが、あの目の当たりにした威力を正面から防げるか。こちらも同じ武器で応戦すればあの時のように相殺できるかもしれないが、今からでは間に合わない。

 

(せめて、アンジュ達だけでも――!)

 

そう決意した刹那、ペンダントが輝き、放出していた真紅の粒子に微かな虹色が混じる。息を呑むセラだったが、竜巻状のエネルギーが解放され、真っ直ぐに襲い掛かる。

 

ヴィルキスとアイオーンがタスクの飛行艇に辿り着いた瞬間、そしてナオミが沖合に到達した瞬間――アイオーンが咆哮を上げ、自身の周囲にいたヴィルキスと飛行艇ごと掻き消えた。

 

目標を見失ったエネルギーは海を割り、水柱を立ち上らせた。

 

「セラ――――――――――――――――――――――――――――――!!!!」

 

その光景にナオミは悲痛な叫びを上げる。

 

ようやく辿り着き、ナオミは周囲を必死に捜す。

 

「セラ! アンジュ!? どこ…どこにいるの!?」

 

半狂乱になって必死に名を呼ぶも返事は返ってこない。荒れる海だけがその現実を残酷に伝え、ナオミは愕然となり、掠れた声を漏らす。

 

「あ…あ…ああ……――うぁぁぁぁぁっ!」

 

慟哭がコックピットに響き渡り、ナオミは嗚咽を漏らす。

 

「セラ、セラ、セラ……」

 

泣きじゃくりながら大切な相手を反芻する。

 

「つまらん筋書きだが、悪くない――」

 

その時、ナオミの耳に聞こえる声にキッと顔を上げ、上空で佇む紫黒のパラメイルを睨みつける。

 

「セラやアンジュに何をしたの!? 答えて! 答えなければ撃つわ!」

 

グレイブの銃を突きつけ、怒りに染まるナオミは声を荒げる。エンブリヲは些かも動揺を見せなかったが、それに慌てたのは後方でピレスロイドを掃討していたヒルダとロザリーだ。

 

《おい、ナオミ! 何やってんだ、よせ!》

 

思わず通信機に向かって叫ぶ。だが、ナオミは首を振る。

 

「だってセラが! セラが! アンジュも一緒に消えちゃった!」

 

悲痛な叫びにヒルダも息を呑み、感情が沸騰しそうになるが、それを全理性を動員して抑え込んだ。

 

《ダメだ、下がれ! 撤退命令が出たんだぞ!》

 

もはやこの戦いは見切りだ――いや、それ以上に負け戦だ。第三中隊のメンバーはすべてロスト、クリスも殺られた。その上、セラとアンジュまで喪った以上、これ以上の犠牲は隊長として看過するわけにはいかなかった。

 

「ヒルダ、あなた達は逃げて! 私は…私は、この人を―――こいつを倒す!」

 

だが、そんなヒルダの命令も聞かず、ナオミはエンブリヲの機体を睨む。

 

《バカ、冷静になれ! 艦隊を一瞬で消滅させたんだぞ! まともに戦える相手じゃない!》

 

そんな事は言われなくても百も承知だ。ナオミとて敵うとは思っていない。だが、それでも―――

 

「せめて仇をとらなきゃ! でなきゃ、セラが!」

 

あの最後の別れが過ぎる。何も言えなかった―――あの時に感じた予感が現実となってしまった。セラを傷つけたこの世界が憎い、セラを殺したこの男が憎い―――なにより、何もできなかった『自分』が赦せない…今のナオミには、その感情しか無かった。

 

なおも制しようとするヒルダからの通信を切り、ナオミはグレイブのライフルを構え、発砲した。迫る銃弾を避けようともせず、滞空する機体の装甲に着弾するも、有効打は与えられていないのか、平然としている。

 

ナオミは歯噛みしながら距離を詰め、なおも銃撃する。

 

「やめたまえ、これ以上の攻撃は無駄だ」

 

まったくと言っていいほどダメージを負っていない敵機と淡々とした指摘にナオミは悔しくなる。

 

「無駄だからってやめられないでしょ! 私は絶対にあなたを赦さない!」

 

なおも撃ち続け、ライフルのグレネードを発射する。一点集中の砲撃に着弾した衝撃に敵機が僅かに怯む。だが、こちらも弾切れだ。

 

ライフルを捨て、剣を抜いてグレイブは迫る。ナオミは怒りの感情のままに剣を振り下ろすも、相手も右腕に光の刃を展開し、刃を受け止める。

 

いや、それだけに留まらず、熱が金属を融かし、刃が折れる。息を呑むナオミに向けて光の刃を突きつけ、右腕が吹き飛ばされる。

 

「きゃぁぁぁっ」

 

爆発の衝撃に呻き、体勢を崩すも、スラスターを噴射させてなんとか踏みとどまる。呼吸が荒れる中、それでも気丈に相手を睨む。

 

「心強き乙女よ…残念だが、君では私を倒すことは不可能だ」

 

冷静に告げれる事実にナオミは打ちのめされそうになる。だが、折れそうになる心を奮い立たせる。

 

「倒せなくてもいい、せめて一矢だけでも――!」

 

もはや残った武器は左腕の凍結バレットのみ。これでも相手に対してどれだけ効果があるのか怪しい。だが―――このまま何もできずにいることの方がなにより悔しい。

 

ナオミはそう覚悟を決めると、グレイブの左腕の凍結バレットを構える。その様子にエンブリヲは無言で見据える。

 

やがて、グレイブが残っているスラスターを全力で噴かし、急加速する。

 

「たぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

ナオミの気迫を込めた最後の一撃をエンブリヲに向けて繰り出そうとした瞬間、敵機がツインアイを輝かせ、突き出した左腕はエンブリヲのパラメイルに到達する前に砕け散った。

 

それだけに留まらず、暴発したバレットがグレイブに襲い掛かり、左腕が氷結して砕け散り、ナオミは悲鳴を上げる。

 

氷結の侵食は機体の中枢に及び、エンジンが停止し、グレイブは大きく仰け反りながら落下していく。既に制御を失い、愕然となるナオミに向かってエンブリヲは静かに告げる。

 

「気は済んだかね? たとえ私を殺したところで、無意味だということは分かっているはずだ」

 

その言葉がナオミの心を打ちのめすも、唇を噛んで反論する。

 

「知った風な口をきかないで! 私はあなたを殺さなきゃ、でなきゃ、セラに――ゴメン、セラ……私、やっぱりダメだった………」

 

だが、それは虚しいものでしかなかった。一矢を報いることもできず、無様に敗れた。この高度から落下すれば助かりはしないだろう。でももういいと思った。これで、セラのところへ逝けるのだから………

 

ナオミがそう思うと気を失い、氷結で強度を失ったハッチが砕け、ナオミの身体が機外へと放り出される。海面へと落ちていくなか、ナオミの身体は『何か』に受け止められた。

 

鮮明になるその機体―――漆黒の装甲に蒼穹のバイザーを輝かせる機体は、ヴィルキスやアイオーンに酷似したディテールを持っていた。

 

その機体が両掌でナオミの身体を守るように空中で静止する。その姿にエンブリヲは驚きに眼を見張る。

 

「ほう――これは驚きだ。まさか、君がその機体に選ばれるとは………いや、君もまた『鍵』を持つ者だったのか。フフフ、鍵の担い手は揃った」

 

僥倖に笑みを噛み殺すも、それでも抑えられないのか声が漏れる。エンブリヲの脳裏には他の場所での光景が再生されていた。

 

海中より引き上げられるアーキバスのコックピットで全身に海水を浴びて気を失うサリア、崩落した施設の隙間で血を流しながら横たわるクリス、子供の亡骸を抱えて哀しみに暮れるエルシャ―――その三人のもとにエンブリヲが現われ、そして近づいていく。

 

「失った最後の鍵の代わり――いや、今まさに鍵そのものとなった。『ミネルヴァ』の覚醒―――新しい再生の刻は近いよ。アイオーン――いや………『セレナ』―――」

 

遂に堪えきれなくなったのか、エンブリヲは高らかに哄笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

アルゼナルの崩壊―――消失したアイオーンとヴィルキス、そしてセラとアンジュ………運命は、次の幕を開ける――――――

 




終わった――第一章が(汗

おかしい―――予定では長くとも1万5千字ぐらいだったのに、いざ書き終わったら2万字近くになっていた。

文字数的には2話分に相当しますが、さすがにこれ以上分割するのもなんだったので、前半のラストだし、ボリュームがあってもいいかと思い、書いていたらこんな量になってしまった。



なにはともあれ、連載を始めて1年ちょっとで、ようやく折り返しに入りました。

最後にはナオミが今後乗る機体『ミネルヴァ』も出しました。次回からは第二章、ドラゴン~決戦編までを描いていきます。伏線の回収や謎の解明など、ますます複雑になりそう。(ホント、完結するのいつだろう……

ではでは、引き続き応援のほどお願いします。

次に書くのはどれがいいですか?

  • クロスアンジュだよ
  • BLOOD-Cによろしく
  • 今更ながらのプリキュアの続き

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