クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 紫銀の月 作:MIDNIGHT
ゆめおぼろ
――ごめんなさい……
誰かの声が聞こえる。
だが、その声の主は見えない。視界はまるでフィルターがかかったようにぼやけているため、まったくといっていいほど分からないからだ。
(誰なんだ――…なぜ、謝る)
感覚として見上げる判別もできない相手に向かって問いかけるも、答えは返ってこない。
―――あなたを過酷な世界に行かせてしまう…でも、生きて……
(生きる―――)
どこか悲しげな声色が発する言葉を反芻する。
―――生きて…生き抜いて……私は、いつでも貴方を見守っていますよ。
優しげに告げる相手に対して戸惑いとえもいえぬざわめきが過ぎり、形容しがたい感情が満ちる。
(誰なんだ、あなたは……)
返ってこないであろう答えに再度問いかける。
いったい誰なのだ……苛立ちを憶え、叫ぶように問いかけるも、やはり相手は一方的に告げてくるのみだ。
―――この宝石が貴方を守ってくれます。生きて…セラ――ナ………
その言葉を最後に意識が暗転し、声と共に途切れた。
「……っ」
気づいたときには、視界には突き抜けるような青空が広がっている。
暫し呆然と見上げていたが、寝そべる草の匂いと海から吹く潮風が、今の状況を思い出させてくれた。
自分がいるのは、ここでの自分のお気に入りの場所だった。ここで寝そべって昼寝をするのが楽しみなのだが、今みた夢のせいか、あまり心持ちはよろしくない。
「また、あの夢か―――」
どこかウンザリ気味に身体を起こし、その拍子に首にかけていた三日月をあしらったペンダントに埋めこまれた宝石が揺れる。
身を起こすと同時に自身の持つ紫銀の髪が揺れ、首筋で束ねている部分が風に揺れる。
ルビーのような真紅の瞳の先には、どこまでも広がる海が映る。だが、その瞳が何を視ているのか―――それは本人にも分からなかった。
しばらくそうしていたが、気分直しに再び寝そべり、眼を閉じようとした瞬間、上から影が掛かり、見上げるとそこに見覚えのある顔があった。
「やっぱりここにいたんだ、セラ」
楽しげに、そしてどこか呆れ気味に告げる少女にため息をつく。
「なんだ、ナオミか」
「なんだとは酷いな~~」
相変わらずの態度に苦笑するピンクの髪を持つ少女、ナオミに小さく一瞥しながら渋々といった調子で身を起こす。
「もうっ、今日は初めてのパラメイルの飛行訓練なんだよっ、こんなところで休んでていいの」
咎められるもどこ吹く風とばかりに聞き流し、これまたいつものことかと肩を落とす。
「忘れてないよ――そう怒るな」
反省が見えない態度で告げられ、何度目かのため息をつく。
「もう、先にいくから、早くね」
それだけ告げると、ナオミは足早にその場から離れていった。
一人残され、立ち上がった少女は再び視線を地平線の彼方へと向ける。
「私は生きる―――この
少女―――セラは虚空に向かってそう告げた。
突如として起きた旋風が身を包む。それは、この先に起こるであろう運命を告げているようだった。
次に書くのはどれがいいですか?
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クロスアンジュだよ
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BLOOD-Cによろしく
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今更ながらのプリキュアの続き