とある魔王の魔法戦記   作:WARA

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修正しました。


第1章 魔法世界編
TURN04   魔 王 の 旅 立 ち


 

 

 

 ――魔法世界。

 

 獣人や妖精などが存在し、魔法技術を基盤とした独自の文明が発達している世界。

 

 総人口は人間・亜人合わせておよそ12億人程度。

 

 この世界に地球から移住してきた人間、新しき民は「メガロメセンブリア」(旧世界の魔法使いの間では「本国」と呼ばれている)を盟主とする「北の連合(メセンブリーナ連合)」を、先住の獣人ら古き民は「南の帝国(ヘラス帝国)」を形成し共存していて、いくつかの国に分かれている。

 

 首都、MM(メガロメセンブリア)。

 

 魔法世界最大の軍事力を擁する超巨大魔法都市国家で、奇妙な捕り物劇が繰り広げられていた。

 

 

 

     ●

 

 

 

 ――MM(メガロメセンブリア)――

 

 俺は追われていた。

 

 息を乱し、幾重もの障害を乗り越えて逃げ回っていた。

 

 捕まれば強制送還なのは間違いない。

 

 それを知っているからこそ、自分は背後からの投降を呼び掛ける無数の声を無視した。

 

(誰が捕まってたまるか!)

 

 そう、絶対に逃げきってみせる。

 

 この――

 

「「「止まれっ! そこの密航者っ!」」」

 

 ―――MMの入国管理者達から。

 

 

 

     ●

 

 

 

 どうしてこうなった?

 

 今現在、俺はそんな心境におちいっている。

 

 魔法世界と旧世界・地球をつなぐゲートが開くのは週に一度、酷い時は一か月に一度程度らしい。

 

 ストーンヘンジのような不思議な空間。

 

 俺がそこへと着いた日の夜明けにゲートが開いたことはまさしく旅の幸先がよかったともいえる。

 

 ―――訳なんだが、クソッ!

 

 初めからなんたる失態だ。

 

 相変わらず突発的な事態に弱い己を呪う。

 

 なんだかんだ焦ってしまって、このザマとは。

 

 まさかMMの入国管理局に見つかることになろうとはな。

 

 いや、あれは俺に落ち度はなかったはずだ…当たり前だろうがっ。

 

 何故、ばれないように隅っこの方に《認識阻害》で隠れて居たというのにど真ん中に転移するんだ?

 

「はっ、発見! 地点A8にて不法入国者を発見しました!」

 

「ちぃっ。まったくしつこい連中だ!」

 

 そう毒づきながらも足を動かす。

 

 すべて上手く行くなんて思ってはいなかったが、こうまで追いかけ回されるはめになるとは。

 

 魔法が当り前のようにある世界なんだから…何処かの本にあった、透明マントが欲しいくらいだ。

 

「そこまでだ! 止まりなさい!」

 

 角を曲がったところで杖を構えた男に出くわす。

 

 ちっ、だがこんなところで早速強制送還なんて冗談ではない!

 

 《認識阻害》を解除。

 

 瞬間、両目が紅く染め上がる。

 

 ―戦いの歌!!―

 

 同時に魔力とギアスによる二重強化した足で強く踏み込む。

 

 ミシリと白塗りの床にひびが入るが、そんなこと知ったことではない。

 

 床を踏み砕き、破片を後方へと吹き飛ばす。

 

 それほどの強く鋭い踏み込みを以て瞬動に匹敵する速度で一気に接近。

 

 《ザ・パワー》で上昇した剛力が、右拳に集約され――

 

「オラァッ!」

 

 ―魔法の射手・雷の一矢!!―

 

 気合を込めて一撃。

 

 その幼子の見た目からは予測もつかないほどの速度で間合いを詰めての一撃には、さすがに魔法使いも意表を突かれたらしい。

 

 たやすく一撃は決まり――――

 

「ぐはあっ」

 

 と叫び声だけ残して一直線に飛んで行ってしまった。

 

 ……

 

 ………………

 

 ……………………………………え?

 

「……何?」

 

 あまりにも手応えのなさに驚く。

 

「がふっ。貴様……いったい」

 

「ほう。今の喰らって生きているとはな?」

 

 声がした方に目を向ければガラス張りの壁に磔のようになっている男の姿。

 

 どうやら角を曲がった先はT字路になっていたようで、そこの壁に衝突したらしい。

 

 流石にその音を聞きつけてきたのか背後から大勢の人間の気配。

 

 いや、背後からだけでは無く、T字路の両側からも。

 

「ゲホッ。この強さ。年齢詐称薬を使っていたのか。だが、大人しく捕まることだ。もう逃げられんぞ」

 

 いや、そもそもそんなものは使っていないのだが。

 

 まあ、そんな風に判断してしまうのはいたしかないことなのかも知れないが。

 

 こんな三歳児がいるなんて分かるわけもないしな。

 

 いや、そんなこと考えてる場合じゃないだろう。

 

 さすがに数で攻めてこられたらどうしようもない。

 

 やばいな。

 

 窓の外には魔法世界の街並みが見えてるというのに。

 

 こんなところで……ん?

 

 窓の外には?

 

「はっ。何を考えているかは知らないが、もう逃げられん」

 

 さっきからうるさいぞ、黙っていろ。

 

 俺は磔されている男へ向けて走り出す。

 

 当然、最大出力の『戦いの歌』の状態で。

 

 ―出口がふさがれているのならば―

 

「なっ!? 待て!! やめてくr」

 

 ようやく、ルルーシュが何をしようと気づいたのか男の顔が恐怖に染まる。

 

 身を躱そうにも、さっきの一撃で身体が痺れてしまい動くに動けない状態だ。

 

「ぐふぅぅぅぅ!!」

 

 俺はそのままガラスの壁に磔されている男へと蹴りをぶち込んだ。

 

 さすがに男も素直に蹴られるというわけはなく、おそらく魔法なりで障壁を張ったんだろうが、別に固いというわけでもなくあっさりと障壁を蹴り砕く。

 

 ―別なところから出ればいいだけだ!!―

 

「くっくっくっくっく……はっははははははははは…………」

 

 ガラスを力任せに突き破り、壁も屋根もない自由な世界へと、俺と男は地上から四十メートルある空中に飛び出していた。

 

 高笑いをあげながら、そのまま下へと落下。

 

 風の魔法で落下の勢いと着地を和らげて、着地すると――上に居る連中が来る前に逃げるようにその場から後にした。

 

 一方――。

 

 蹴り飛ばされた男はいうと今日はなんて厄日だと思いながら意識を手放していた。

 

 

 

     ●

 

 

 

 それが今から大体三時間ほど前のこと。

 

 現在、俺はというと市内にある本屋に来ていた。

 

「えぇと。地図はどこにあるんだ?」

 

 というのも魔法世界に来てしまったことのさらなる誤算が発生したからだ。

 

 というのも――

 

「金はないが。立ち読みくらいならできるだろうしな」

 

 そう、金が無いのだ。

 

 滅んだ村から、色々とパクってきたモノは旅行の必需品である小さい鞄の中に入れてある。

 

 火事場泥棒、という単語が頭によぎったが放置しておいてもどのみち瓦礫に埋もれて紛失するものだったのだ。

 

 ならば有効に使った方がその方がいいに決まっている。

 

 そして、この小さな鞄は魔法工芸品できていて、鞄の中にいくらでも物が詰め込めると言う、一種の四次元ポケットのような物である。

 

 パクってきた金は、当然のようにイギリス通貨だ。

 

 そして魔法世界で使われているのはドラクマ。

 

 それを両替できるのはゲートを管理している入国管理局くらいなものだろう。

 

「まぁ、交流のほとんどない異世界だとは村の連中から聞いてはいたが。……っと、あったな」

 

 手持ちの金が使えないことだ。

 

 これは大きな壁となって立ちふさがった。

 

 つまりは食べる物を買えないということだ。

 

 泊まる場所も、まぁこちらのほうは三歳児が一人でホテルに宿泊となると無理があるだろうという考えがあったから、元々別の方策を考えるつもりではあったし、最悪野宿もやむなしかとは思ってはいたが、金でどうこうすることは出来なくなった。

 

 そして一番の問題は――

 

「やはり、ネックとなるのは交通費だな」

 

 地図を広げながら呟く。

 

 目当てのものはMMの地図ではなく、世界地図。

 

「ふーん…これが、魔法世界か!?」

 

 地図を眺めながら呟く。

 

 ……………………

 

 ………………

 

 …………

 

 ……ん?

 

「……ん? 魔法世界とはなんだか火星に似てはいないか」

 

 俺は昔見た火星の地図を思い浮かべながらあらためて世界地図を見る。

 

「ここの龍山大陸はなかったがそれ以外は本当に良く似ている。マリネリス渓谷の形はそっくりだしエリジウム大陸も……あれ、待てよ。オリンポスにヘラスだと……何なんだこれは!! そんなまさか!!」

 

 あまりにも火星との地形や地名の相似の数に驚いてしまう。

 

「まさか。魔法世界とは火星の大地を触媒にして成り立っている世界だというのか……?」

 

 今、自分が魔法世界と思い込んでいたこの場所が実は火星だったとは。

 

 自分は、いつの間にか宇宙旅行を体験してしまったようだ。

 

 

 

 

 

 




後書き
ルルーシュ大暴れww
ついでに魔法世界が火星と気かづく。

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