我が家の大天使雪風   作:イモリ

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プロットも書き置きもなく、突発的にぶち込んでやるぜー。すみません許してく(ry


天使様が降臨なされた日

 突然だが、俺は夢を見ているのだろうと思う。

 これが夢でなければなんなのだ。

 そう、こんな事が現実で起こるはずが、起こり得るはずがない。

 だから夢だ、これは。

 

 目の前に雪風がいるなんて。

 

 

「しれぇ、お腹すきましたー」

 

 そんな馬鹿な。有り得ない。有り得ていいわけがない。

 見ろ、俺の雪風はパソコンの中にいるではないか。

 ……いや、正確にはいた、か。

 まさかこの幸運六十の雪風が轟沈してしまったのだし。

 この時点で有り得ていい筈がないというのに、その瞬間目の前が眩く光り輝き、消えたと思ったら雪風がいたという。

 

 夢以外のなんなのだと。

 

「ねぇ、しれぇ。お腹すきましたってばー」

 

 いやしかし、随分とリアリティ溢れる夢だなぁ。

 艦これやってるときの声そのままだし、声優さんビックリじゃね?

 それに服引っ張ってくる感触も完璧に感じる。最近の夢は触覚まで兼ね備えているのか。

 見た目もそのまま、フィギュアかドールと取れてもいいかもしれん。運営がこれ見たら売り出しちゃうんじゃないかな。

 

 ……ここまで現実逃避、なんだよなぁ……。

 

「…………」

 

 チラッと雪風を見てみる。

 

「おーなーかーすーきーまーしーたー」

 

 相変わらず俺の服をグイグイと引っ張って、空腹アピールしている。

 

 どうしろってんだよ……。

 え? あの、これ、どうすりゃいいの?

 飯作ってやればいいの?

 でも艦娘って飯……食うのかもなぁ。間宮とかいるんだし、おそらく普通のご飯でも大丈夫だよな、たぶん。

 

 仕方ない。ここは一人暮らしで培った俺の調理スキルを、この雪風に見せ付けてやろうではないか。話はそれからだ。

 

 

 

 

 

「美味しいです、しれぇ!」

 

 あり合わせの炒飯を馳走してみた。

 本当にあり合わせ。冷ご飯、卵、人参、ベーコン、バター、塩コショウで適当に作っただけ。

 こんなん調理スキルなくとも作れるわ。

 

 それでも。

 こう、すっごい笑顔で幸せそうに適当な炒飯を頬張って、美味しい美味しい言ってくれる雪風を見ていると。

 なんというか、心が暖まる。

 

 一人暮らしで心磨り減ってたのかなぁ……。

 家を勘当されて、バイトしながら適当な大学出て、特にやりたい事もなく適当な中小企業でリーマンやって。

 部下のミスで突っ走って、上司の無理難題でどやされて、同期とは愚痴の言い合い。

 それなりに昇進して課長にはなれたけど、結局は中間管理職なわけで。上と下との板挟みで……。

 

 趣味のゲームに没頭して。

 艦これを始めてみれば、それなりにハマって。

 雪風とかレア艦出してはしゃいで、出撃させたら轟沈して、雪風現れて。

 

 最後がオカシイけど、磨り減ってたんだろう心が癒される感覚。

 きっと俺は、こういうのを求めていたんだろうなぁ。

 

「ご馳走様でした」

「ん……お粗末様」

 

 パンと手を合わせてお辞儀する雪風から皿とスプーンをひったくって洗う。

 

「なあ」

「はい?」

「雪風って、なんなのさ?」

 

 一段落したので、テーブルで向かい合って座る。

 そして質問タイム。

 取り敢えず関根から攻めねば。

 

「なに、と聞かれましても……。雪風は雪風です。しれぇが命を吹き込んでくれた、雪風です」

「……?」

 

 うん、つまりどういうことだってばよ。

 

「雪風はしれぇのご期待に応えられず、沈んでしまいました……けど、しれぇはそんな雪風を悼んでくれて、だから雪風はしれぇの前に、もう一度来たいって願ったんです」

「……その結果が今、と?」

「そうです!」

 

 胸張って言われても。

 まったく分からん。

 

 えー、つまり?

 雪風もなんか知らんがこっち来ちゃったって?

 どうしようもないじゃないか。

 

「はぁ……これからどうすりゃいいんだよ」

「えっと……しれぇ、迷惑でした……?」

「あ、いや、別に迷惑とかじゃないから」

 

 物凄い悲壮漂う表情になってしまった。

 これはマズったと言い返したが、もう雪風の中じゃ俺に迷惑被ってるとか決まっちまってるんだろう。表情も雰囲気も戻らない。

 うへぁ、面倒くせぇ。俺ってば何してんだよ、こんなちっさい子にこんな顔させるとか、クズのゴミじゃねえかな。

 

「……雪風」

「……しれぇ?」

 

 気付いたら雪風の頭をポン、と叩いていた。

 半ば無意識、条件反射のように、グリグリと撫でていく。

 

「俺は別に迷惑でもねえよ。なに、雪風一人増えたところで迷惑になる要素が何一つない。お前は胸張って堂々とここにいりゃいい」

「でも……」

 

 なんだろうか。

 こうして撫でていると、懐かしいような、何とも言えない感覚。

 人の頭を撫でたのなんて初めてのハズなのに、前からやっていたような。

 

「そうさな。なら、家事でもなんでも手伝ってくれ。働かざるなら迷惑だろうが、働いてくれるなら迷惑でもなんでもない。お前も気が楽になるだろう?」

「……はい、そうですね! では不肖雪風、しれぇの家事や炊事、洗濯にて働きます!」

「うむ、よろしく頼む」

「拝命いたしました!」

 

 

 まあなんだ、そんな感じで俺と雪風の生活は始まったらしい。


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